列王紀略下(文語訳)

<聖書<文語訳旧約聖書

舊新約聖書 [文語]』日本聖書協会、1953年

明治元訳聖書

列王紀略下

第1章

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アハブの死しのちモアブ、イスラエルにそむけり

アハジヤ、サマリヤにあるその樓の欄杆よりおちて病をおこせしかば使を遣さんとして之にいひけるは往てエクロンの神バアルゼブブにわがこの病の愈るや否を問べしと

時にヱホバの使テシベ人エリヤにいひけるは起てサマリヤ王の使にあひて之に言べし汝等がエクロンの神バアルゼブブに問んとてゆくはイスラエルに神なきがゆゑなるか

是によりてヱホバかくいふ汝はその登りし牀より下ることなかるべし汝かならず死んとエリヤ乃ち往り

使者たちアハジアに返りければアハジア彼等に何故に返りしやといふに

かれら之にいひけるは一箇の人上りきたりて我らに會ひわれらにいひけるは往てなんぢらを遣はせし王の所にかへり之にいふべしヱホバ斯いひたまふなんぢエクロンの神バアルゼブブに問んとて人を遣すはイスラエルに神なきがゆゑなるか然ば汝その登りし牀より下ることなかるべし汝かならず死んと

アハジア彼等にいひけるはそののぼりきたりて汝等に會ひ此等の言を汝らに告たる人の形状は如何なりしや

かれら對へていひけるはそれは毛深き人にして腰に革の帶をむすび居たり彼いひけるはその人はテシベ人エリヤなりと

是に於て王五十人の長とその五十人をエリヤの所に遣はせり彼エリヤの所に上りゆくに視よエリヤは山の嶺に坐し居たりかれエリヤにいひけるは神の人よ王いひたまふ下るべし

エリヤこたへて五十人の長にいひけるはわれもし神の人たらば火天より降りて汝と汝の五十人とを燒盡すべしと火すなはち天より降りて彼とその五十人とを燒盡せり

アハジアまた他の五十人の長とその五十人をエリヤに遣せりかれ上りてエリヤにいひけるは神の人よ王かく言たまふ速かに下るべし

エリヤ答て彼にいひけるはわれもし神の人たらば火天より降りて爾となんぢの五十人を燒盡すべしと神の火すなはち天より降りてかれとその五十人を燒盡せり

かれまた第三の五十人の長とその五十人を遣せり第三の五十人の長のぼりいたりてエリヤのまへに跪きこれに願ひていひけるは神の人よ願くはわが生命となんぢの僕なるこの五十人の生命をなんぢの目に貴重き者と見なしたまへ

視よ火天より降りて前の五十人の長二人とその五十人を燒盡せり然どわが生命をば汝の目に貴重き者となしたまへ

時にヱホバの使エリヤに云けるはかれとともに下れかれをおそるることなかれとエリヤすなはち起てかれとともに下り王の許に至り

之にいひけるはヱホバかくいひたまふ汝エクロンの神バアルゼブブに問んとて使者を遣るはイスラエルにその言を問ふべき神なきがゆゑなるか是によりて汝はその登し牀より下ることなかるべし汝かならず死んと

彼エリヤの言たるヱホバの言の如く死けるが彼に子なかりしかばヨラムこれに代りて王となれり是はユダの王ヨシヤパテの子ヨラムの二年にあたる

アハジヤのなしたる其餘の事業はイスラエルの王の歴代志の書に記載さるるにあらずや


第2章

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ヱホバ大風をもてエリヤを天に昇らしめんとしたまふ時エリヤはエリシヤとともにギルガルより出往り

エリヤ、エリシヤにいひけるは請ふここに止まれヱホバわれをベテルに遣はしたまふなりとエリシヤいひけるはヱホバは活く汝の霊魂は活く我なんぢをはなれじと彼等つひにベテルに下れり

ベテルに在る預言者の徒エリシヤの許に出きたりて之にいひけるはヱホバの今日なんぢの主をなんぢの首の上よりとらんとしたまふを汝知やかれいふ然りわれ知り汝等默すべし

エリヤかれにいひけるはエリシヤよ請ふ汝ここに止れヱホバわれをヱリコに遣したまふなりとエリシヤいふヱホバは活くなんぢの霊魂は活く我なんぢを離じとかれらヱリコにいたる

ヱリコに在る預言者の徒エリシヤに詣りて彼にいひけるはヱホバの今日なんぢの主をなんぢの首の上よりとらんとしたまふを汝知るやエリシヤ言ふ然り知り汝ら默すべしと

エリヤまたかれにいひけるは請ふここに止れヱホバわれをヨルダンにつかはしたまふなりとかれいふヱホバは活くなんぢの霊魂は活くわれ汝をはなれじと二人進ゆくに

預言者の徒五十人ゆきて遥に立て望めり彼ら二人はヨルダンの濱に立けるが

エリヤその外套をとりて之を巻き水をうちけるに此旁と彼旁にわかれたれば二人は乾ける土の上をわたれり

渉りける時エリヤ、エリシヤにいひけるは我が取れてなんぢを離るる前に汝わが汝になすべきことを求めよエリシヤいひけるはなんぢの霊の二の分の我にをらんことを願ふ

エリヤいひけるは汝難き事を求む汝もしわが取れてなんぢを離るるを見ばこの事なんぢにならんしからずば此事なんぢにならじ

彼ら進みながら語れる時火の車と火の馬あらはれて二人を隔てたりエリヤは大風にのりて天に昇れり

エリシヤ見てわが父わが父イスラエルの兵車よその騎兵よと叫びしが/再びかれを見ざりき是においてエリシヤその衣をとらへて之を二片に裂き

エリヤの身よりおちたるその外套をとりあげ返りてヨルダンの岸に立ち

エリヤの身よりおちたる外套をとりて水をうちエリヤの神ヱホバはいづくにいますやと言ひ而して己も水をうちけるに水此旁と彼旁に分れたればエリシヤすなはち渡れり

ヱリコにある預言者の徒對岸にありて彼を見て言けるはエリヤの霊エリシヤの上にとどまるとかれら來りてかれを迎へその前に地に伏て

かれにいひけるは僕等に勇力者五十人あり請ふかれらをして往てなんぢの主を尋ねしめよ恐くはヱホバの霊かれを曳あげてこれを或山か或谷に放ちしならんとエリシヤ遣すなかれと言けれども

かれら彼の愧るまでに強ければすなはち遣せといへり是に於てかれら五十人の者を遣しけるが三日の間たづねたれども彼を看いださざりしかば

エリシヤの尚ヱリコに止れる時かれら返りてかれの許にいたりしにエリシヤかれらに言けるはわれ往ことなかれと汝らにいひしにあらずやと

邑の人々エリシヤにいひけるは視よ吾主の見たまふごとく此邑の建る處は善しされど水あしくしてこの地流產をおこす

かれ言けるは新しき皿に鹽を盛て我に持ち來れよと乃ちもちきたりければ

彼いでて水の源に至り鹽を其處になげ入ていひけるはヱホバかくいひたまふわれこの水を愈す此處よりして重て死あるひは流產おこらじと

其水すなはちエリシヤのいひし如くに愈て今日にいたる

かれそこよりベテルに上りしが上りて途にありけるとき小童等邑よりいでて彼を嘲り彼にむかひて禿首よのぼれ禿首よのぼれといひければ

かれ回轉りてかれらをみヱホバの名をもてかれらを呪詛ひければ林の中より二頭の牝熊出てその兒子輩の中四十二人をさきたり

かれ彼處よりカルメル山にゆき其處よりサマリヤにかへれり

第3章

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ユダの王ヨシヤパテの十八年にアハブの子ヨラム、サマリヤにありてイスラエルを治め十二年位にありき

かれはヱホバの目のまへに惡をなせしかどもその父母の如くはあらざりきそは彼その父の造りしバアルの像を除きたればなり

されど彼はかのイスラエルに罪を犯させたるネバテの子ヤラベアムの罪を行ひつづけて之をはなれざりき

モアブの王メシヤは羊を有つ者にして十萬の羔と十萬の牡羊の毛とをイスラエルの王に納めをりしが

アハブの死しのちモアブの王はイスラエルの王にそむけり

是に於てヨラム王其時サマリヤを出てイスラエル人をことごとく集め

また往て人をユダの王ヨシヤパテに遣していはしむモアブの王われに背けり汝われとともにモアブに攻ゆくやと彼いひけるは我上らん我は汝の如くわが民はなんぢの民のごとくまたわが馬は汝の馬の如しと

ヨラムいひけるは我儕いづれの路より上らんかかれいふエドムの曠野の途よりせんと

イスラエルの王すなはちユダの王およびエドムの王と共に出ゆきけるが行めぐること七日路にして軍勢とこれにしたがふ家畜の飮むべき水なかりしかば

イスラエルの王いひけるは嗚呼ヱホバこの三人の王をモアブの手にわたさんと召し集めたまへりと

ヨシヤバテいひけるは我儕が由てヱホバに問ふべきヱホバの預言者此にあらざるやとイスラエルの王の臣僕の一人答へていふエリヤの手に水をそそぎたるシヤパテの子エリシヤ此にあり

ヨシヤパテいひけるはヱホバの言彼にありとかくてイスラエルの王およびヨシヤパテとエドムの王かれの許に下りゆきけるに

エリシヤ、イスラエルの王に言けるはわれ汝と何の干與あらんや汝の父の預言者と汝の母の預言者の所にゆくべしとイスラエルの王かれにいひけるは然ずそはヱホバこの三人の王をモアブの手に付さんとて召集めたまへばなり

エリシヤ言けるはわが事ふる萬軍のヱホバは活く我ユダの王ヨシヤパテのためにするにあらすばかならず汝を顧みず汝を見ざらんものを

今樂人をわれにつれ來れと而して樂人の樂をなすにおよびてヱホバの手かれに臨みて

彼いひけるはヱホバかくいひたまふ此谷に許多の溝を設けよ

それヱホバかく言ひたまふ汝ら風を見ず雨をも見ざるに此谷に水盈て汝等と汝等の家畜および汝らの獣飮ことを得ん

然るも是はヱホバの目には瑣細き事なりヱホバ、モアブ人をも汝らの手にわたしたまはん

汝等は保障ある諸の邑と諸の美しき邑とを撃ち諸の佳樹を斫倒し諸の水の井を塞ぎ石をもて諸の善地を壞ふにいたらん

かくて朝におよびて供物を献ぐる時に水エドムの途より流れきたりて水國に充つ

偖またモアブ人はみな王等の己に攻のぼれるを聞しかば甲を著ることを得る以上の者を盡く集めてその境に備へしが

朝はやく興いでしに水の上に日昇りゐて對面の水血の如くに赤かりければモアブ人これを見て

いひけるはこれ乃はち血なり王たち戰ひて死たるならん互に相撃たるなるべし然ばモアブよ掠取に行けと

而してモアブ人イスラエルの陣營に至るにイスラエル人起てこれを撃たればすなはちその前より逃はしれり是においてイスラエル人進みてモアブ人を撃てその國にいり

その邑々を撃圮し各石を諸の善地に投てこれに填し水の井をことごとく塞ぎ佳樹をことごとく斫たふし唯キルハラセテにその石をのこせしのみなるに至る但し石を投るもの周りあるきてこれを撃り

モアブ王戰闘の手いたくして當りがたきを見て劍を抜く者七百人をひきゐてエドム王の所にまで衝きいたらんとせしが遂に果さざりしかば

己の位を継べきその長子をとりてこれを石垣の上にささげて燔祭となしたり是に於てイスラエルに大なる憤怒おこりぬ彼等すなはちかれをすててその國に歸れり

第4章

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預言者の徒の妻の中なる一人の婦人エリシヤに呼はりていひけるは汝の僕なるわが夫死りなんぢの僕のヱホバを畏れしことはなんぢの知るところなり今債主きたりてわが二人の子をとりて奴僕となさんとすと

エリシヤ之にいひけるはわれなんぢの爲に何をなすべきや汝の家に如何なる物あるかわれに告よ彼いひけるは僅少の油のほかは汝の婢の家に有ものなし

彼いひけるは往て外より鄰の人々より器を借よ空たる器を借るべし少許を借るなかれ

而してなんぢ入て汝の子等とともに戸の内に閉こもりそのすべての器に油をつぎてその盈るところの者をとりのけおくべし

婦人すなはち彼を離れて去りその子等とともに戸の内に閉こもり子等のもちきたる器に油をつぎたりしが

器のみな盈たるときその子にむかひ尚われに器をもちきたれといひけるに器はもはやあらずといひたればその油すなはち止る

是においてその婦神の人にいたりてかくと告ければかれいふ往て油をうりてその負債をつくのひその餘分をもて汝と汝の子等生計をなすべしと

一日エリシヤ、シユネムにゆきしに其所に一人の大なる婦人ありてしきりにこれに食をすすめたれば彼かしこを過る毎にそこに入て食をなせり

茲にその婦人夫にいひけるは視よ此つねにわれらを過る人は我これを見るに神の聖き人なり

請ふ小き室を石垣の上につくりそこに臥床と案と榻と燭臺をかれのために備へん彼われらに至る時はそこに入るべしと

かくてのちある日エリシヤそこに至りその室に入てそこに臥たりしが

その僕ゲハジにむかひ彼のシユナミ人を召きたれといへり彼かの婦人を召たればその前にきたりて立つに

エリシヤ、ゲハジにいひけるは彼にかく言へ汝かく懇に我らのために意を用ふ汝のために何をなすべきや王または軍勢の長に汝のことを告られんことを望むかと彼答へてわれはわが民の中にをるなりといふ

エリシヤいひけるは然ばかれのために何をなすべきやゲハジ答へけるは誠にかれは子なくその夫は老たりと

是においてエリシヤかれを召といひければこれを呼に來りて戸口に立たれば

エリシヤいふ明る年の今頃汝子を抱くあらん彼いひけるはいなわが主神の人よなんぢの婢をあざむきたまふなかれと

かくて婦つひに孕て明る年にいたりてエリシヤのいへるその頃に子を生り

その子育ちてある日刈獲人の所にいでゆきてその父にいたりしが

父にわが首わが首といひたれば父少者に彼を母のもとに負ゆけと言り

すなはちこれを負て母にいたりしに午まで母の膝に坐り居て遂に死たれば

母のぼりゆきてこれを神の人の臥床の上に置きこれをとぢこめて出で

その夫をよびていひけるは請ふ一人の僕と一頭の驢馬を我につかはせ我神の人の許にはせゆきて歸らんと

夫いふ何故に汝は今日かれにいたらんとするや今日は朔日にもあらず安息日にもあらざるなり彼いひけるは宜しと

婦すなはち驢馬に鞍おきてその僕にいひけるは驅て進め吾が命ずることなくば我が騎すすむることに緩漫あらしめざれと

つひにカルメル山にゆきて神の人にいたるに/神の人遥にかれの來るを見て僕ゲハジにいひけるは視よかしこにかのシユナミ人をる

請ふ汝はしりゆきて彼をむかへて言へなんぢは平安なるやなんぢの夫はやすらかなるやなんぢの子はやすらかなるやと彼こたへて平安なりといひ

遂に山にきたりて神の人にいたりその足を抱きたればゲハジこれを逐ひはらはんとて近よりしに神の人いひけるは容しおけ彼は心の中に苦あるなりまたヱホバその事を我にかくしていまだわれに告たまはざるなり

婦いひけるはわれわが主に子を求めしやわれをあざむきたまふなかれとわれは言ざりしや

エリシヤすなはちゲハジにいひけるはなんぢ腰をひきからげわが杖を手にもちて行け誰に逢も禮をなすべからず又なんぢに禮をなす者あるともそれに答ふることなかれわが杖をかの子の面の上におけよと

その子の母いひけるはヱホバは活くなんぢの霊魂は生く我は汝を離れじと是をもてエリシヤついに起て婦に從ひ行ぬ

ゲハジはかれらに先だちゆきて杖をかの子の面の上に置たるが聲もなく聞もせざりしかばかへりきたりてエリシヤに逢てこれに子いまだ目をさまさずと言ふ

エリシヤここにおいて家に入て視に子は死ておのれの臥床の上に臥てあれば

すなはち入り戸をとぢて二人内におりてヱホバに祈り

而してエリシヤ上りて子の上に伏し己が口をその口におのが目をその目に己が手をその手の上にあて身をもてその子を掩しに子の身體やうやく温まり來る

かくしてエリシヤかへり來て家の内に其處此處とあゆみをり又のぼりて身をもて子をおほひしに子七度嚏して目をひらきしかば

ゲハジを呼てかのシユナミ人をよべと言ければすなはちこれを呼り

彼入來りしかばエリシヤなんぢの子を取ゆけと言りかれすなはち入りてエリシヤの足下に伏し地に身をかがめて其子を取あげて出づ

斯てエリシヤまたギルガルにいたりしがその地に饑饉あり預言者の徒その前に坐しをる是において彼その僕にいひけるは大なる釜をすゑて預言者の徒のために羹を煮よと

時に一人田野にゆきて菜蔬を摘しが野籐のあるを見て其より野瓜を一風呂鋪摘きたりて羹の釜の中に截こみたり其は皆それをしらざればなり

斯てこれを盛て人々に食はせんとせしに彼等その羹を食はんとするにあたりて叫びて嗚呼神の人よ釜の中に死をきたらする者ありといひて得食はざりしかば

エリシヤさらば粉をもちきたれといひてこれを釜になげ入れ盛て人々に食しめよと言り釜の中にはすなはち害物あらずなりぬ

茲にバアルシヤリシヤより人來り初穂のパンと大麥のパン二十と圃の初物一袋とを神の人の許にもちいたりたればエリシヤ衆人にあたへて食はしめよと言ふに

その奴僕いひけるは如何にとや我これを百人の前にそなふべきかと然るに彼また言ふ衆人にあたへて食しめよ夫ヱホバかくいひたまふかれら食ふて尚あます所あらんと

すなはち之をその前にそなへたればみな食ふてなほ餘せりヱホバの言のごとし

第5章

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スリア王の軍勢の長ナアマンはその主君のまへにありて大なる者にしてまた貴き者なりき是はヱホバ曾て彼をもてスリアに拯救をほどこしたまひしが故なり彼は大勇士なりしが癩病をわづらひ居る

昔にスリア人隊を組ていでたりし時にイスラエルの地より一人の小女を執へゆけり彼ナアマンの妻に事たりしが

その女主にむかひわが主サマリヤに居る預言者の前にいまさば善らん者をかれその癩病を痊すならんと言たれば

ナアマン入りてその主君に告てイスラエルの地よりきたれる女子斯々語りたりと言ふに

スリヤ王いひけるは往よ往よ我イスラエルの王に書をおくるべしと是において彼いでゆき銀十タラントと金六千および衣服十襲をたづさヘ

イスラエルの王にその書をもちゆけりその文に曰くこの書汝にいたらば視よ我わが臣ナアマンをなんぢに遣はせるなりこは汝にその癩病を痊されんがためなり

イスラエルの王その書を讀み衣を裂ていふ我神ならんや爭か殺すことをなし生すことをなしえん然るに此人なんぞ癩病の人を我に遣はしてこれを痊さしめんとするや然ば請ふ汝等彼が如何に我に爭を求むるかを見て知れと

茲に神の人エリシヤ、イスラエルの王がその衣を裂たることをきき王に言遣しけるは汝何とて汝の衣をさきしや彼をわがもとにいたらしめよ然ば彼イスラエルに預言者のあることを知にいたるべし

是においてナアマンその馬と車とをしたがへ來りてエリシヤの家の門に立けるに

エリシヤ使をこれに遣して言ふ汝ゆきて身をヨルダンに七たび洗へ然ば汝の肉本にかへりて汝は清く爲べしと

ナアマン怒りて去り言けるは我は彼かならず我もとにいできたりて立ちその神ヱホバの名を呼てその所の上に手を動して癩病を痊すならんと思へり

ダマスコの河アバナとパルパルはイスラエルのすべての河水にまさるにあらずや我これらに身を洗ふて清まることを得ざらんやと乃ち身をめぐらし怒りて去る

時にその僕等近よりてこれにいひけるは我父よ預言者なんぢに大なる事をなせと命ずるとも汝はそれを爲ざらんや况て彼なんぢに身を洗ひて清くなれといふをやと

是においてナアマン下りゆきて神の人の言のごとくに七たびヨルダンに身を洗ひしにその肉本にかへり嬰兒の肉の如くになりて清くなりぬ

かれすなはちその從者とともに神の人の許にかへりきたりてその前に立ていふ我いまイスラエルのほかは全地に神なしと知る然ば請ふ僕より禮物をうけよ

エリシヤいひけるはわが事へまつるヱホバは活く肯て禮物をうけじとかれ強て之を受しめんとしたれども遂にこれを辭したり

ナアマンいひけるは然ば請ふ騾馬に二駄の土を僕にとらせよ僕は今よりのち他の神には燔祭をも祭品をもささげずして只ヱホバにのみ献げんとす

ねがはくは主この事につきて僕をゆるしたまへ即ちわが主君リンモンの宮にいりそこにて崇拝をなしてわが手に倚ることありまた我リンモンの宮にありて身をかがむることあらんわがリンモンの宮において身をかがむる時に願くはヱホバその事につきて僕をゆるしたまへと

エリシヤ彼になんぢ安じて去れといひければ彼エリシヤをはなれて少しく進みゆきけるに

神の人エリシヤの僕ゲハジいいひけるは吾が主人は此スリア人ナアマンをいたはりて彼が手に携へきたれるものを受ざりしがヱホバは活くわれ彼のあとを追かけて彼より少く物をとらんと

ゲハジすなはちナアマンのあとをおひ行くにナアマンはおのれのあとに走り來る者あるを見て車より下りこれを迎へて皆平安やと言ふに

彼言けるは皆平安しわが主我を遣していはしむ只今エフライムの山より預言者の徒なる二人の少者わが許に來れり請ふ汝かれらに銀一タラントと衣二襲をあたへよと

ナアマンいひけるは望むらくは二タラントを取れとてかれを強ひ銀二タラントを二の袋にいれ衣二襲を添て二人の僕に負せたれば彼等これをゲハジの前に負きたりしが

彼岡に至りしとき之をかれらの手より取て室のうちにをさめかれらを放ちて去しめ

而して入てその主人のまへに立つにエリシヤこれにいひけるはゲハジよ何處より來りしや答へていふ僕は何處にもゆかず

エリシヤいひけるはその人が車をはなれ來りてなんぢを迎へし時にわが心其處にあらざりしや今は金をうけ衣をうけ橄欖園葡萄園羊牛僕婢をうくべき時ならんや

然ばナアマンの癩病はなんぢにつき汝の子孫におよびて限なからんと彼その前より退ぞくに癩病發して雪のごとくになりぬ

第6章

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茲に預言者の徒エリシヤに言けるは視よ我儕が汝とともに住ふ所はわれらのために隘し

請ふ我儕をしてヨルダンに往しめよ我儕おのおの彼處より一の材木を取て其處に我儕の住べき處を設けんエリシヤ往よと言ふ

時にその一人希はくは汝も僕等と共に往けと言ければエリシヤ答へて我ゆかんと言ふ

エリシヤかく彼等とともに往り彼等すなはちヨルダンにいたりて樹を砍りたふしけるが

一人の材木を砍りたふすに方りてその斧水におちいりしかば叫びて嗚呼主よ是は乞得たる者なりと言ふ

神の人其は何處におちいりしやと言ふにその處をしらせしかば則ち枝を切おとして其處に投いれてその斧を浮ましめ

汝これを取れと言ければその人手を伸てこれを取り

茲にスリアの王イスラエルと戰ひをりその臣僕と評議して斯々の處に我陣を張んと言たれば

神の人イスラエルの王に言おくりけるは汝愼んで某の處を過るなかれ其はスリア人其處に下ればなりと

イスラエルの王是において神の人が己に告げ己に敎たる處に人を遣して其處に自防しこと一二回に止まらざりき

是をもてスリアの王是事のために心をなやましその臣僕を召て我儕の中誰がイスラエルの王と通じをるかを我に告ざるやと言ふに

その臣僕の一人言ふ王わが主よ然るにあらず但イスラエルの預言者エリシヤ汝が寝室にて語る所の言語をもイスラエルの王に告るなり

王いひけるは往て彼が安に居かを見よ我人をやりてこれを執へんと茲に彼はドタンに居ると王に告ていふ者ありければ

王そこに馬と車および大軍をつかはせり彼等すなはち夜の中に來りてその邑を取かこみけるが

神の人の從屬夙に興て出て見に軍勢馬と車をもて邑を取かこみ居ればその少者エリシヤに言けるは嗚呼わが主よ我儕如何にすべきや

エリシヤ答へけるは懼るなかれ我儕とともにある者は彼等とともにある者よりも多しと

ヱリシヤ祈りて願くはヱホバかれの目を開きて見させたまへと言ければヱホバその少者の眼を開きたまへり彼すなはち見るに火の馬と火の車山に盈てエリシヤの四面に在り

スリア人エリシヤの所に下りいたれる時エリシヤ、ヱホバに祈りて言ふ願くは此人々をして目昏しめたまへと即ちエリシヤの言のごとくにその目を昏しめたまへり

是においてエリシヤ彼らに言けるは是はその途にあらず是はその城にもあらず我に從ひて來れ我汝らを汝らが尋ぬる人の所に携ゆかんとて彼等をサマリヤにひき至れり

彼等がサマリヤに至りし時エリシヤ言けるはヱホバよ此人々の目をひらきて見させたまへと即ちヱホバかれらの目を開きたまひたれば彼等見るにその身はサマリヤの中にあり

イスラエルの王かれらを見てエリシヤに言けるはわが父よ我撃殺すべきや撃殺すべきや

エリシヤ答けるは撃殺すべからず汝劍と弓をもて擄にせる者等を撃殺すことを爲んやパンと水と彼らの前にそなへて食飮せしめてその主君に往しむべきなり

王すなはちかれらの爲に大なる饗宴をまうけ其食飮ををはるに及びてこれを去しめたればすなはち其主君に歸れり是をもてスリアの兵ふたたびイスラエルの地に入ざりき

此後スリアの王ベネハダデその全軍を集めて上りきたりてサマリヤを攻圍みければ

サマリヤ大に糧食に乏しくなれり即ちかれら之を攻かこみたれば遂に驢馬の頭一箇は銀八十枚にいたり鳩の糞一カブの四分の一は銀五枚にいたる

茲にイスラエルの王石垣の上を通りをる時一人の婦人かれに呼はりて我主王よ助けたまへと言ければ

彼言ふヱホバもし汝を助けたまはずば我何をもてか汝を助くることを得ん禾場の物をもてせんか酒榨の中の物をもてせんか

王すなはち婦に何事なるやと言ば答へて言ふ此婦人我にむかひ汝の子を與へよ我儕今日これを食ひて明日わが子を食ふべしと言り

斯われら吾子を煮てこれを食ひけるが我次の日にいたりて彼にむかひ汝の子を與へよ我儕これを食はんと言しに彼その子を隱したり

王その婦人の言を聞て衣を裂き而して石垣の上を通りをりしが民これを見るにその膚に麻布を著居たり

王言けるは今日シヤパテの子エリシヤの首その身の上にすわりをらば神われに斯なしまた重ねてかく成たまへ

時にエリシヤはその家に坐しをり長老等これと共に坐し居る王すなはち己の所より人を遣しけるがエリシヤはその使者の未だ己にいたらざる前に長老等に言ふ汝等この人を殺す者の子が我の首をとらんとて人を遣はすを見るや汝等觀てその使者至らば戸を閉てこれを戸の内にいるるなかれ彼の主君の足音その後にするにあらずやと

斯彼等と語をる間にその使者かれの許に來りしが王もつづいて來り言けるは此災はヱホバより出たるなり我なんぞ此上ヱホバを待べけんや

第7章

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エリシヤ言けるは汝らヱホバの言を聽けヱホバかく言たまふ明日の今頃サマリヤの門にて麥粉一セアを一シケルに賣り大麥二セアを一シケルに賣にいたらん

時に一人の大將すなはち王のその手に依る者神の人に答へて言けるは由やヱホバ天に窓をひらきたまふも此事あるべけんやエリシヤいひけるは汝は汝の目をもて之を見ん然どこれを食ふことはあらじ

茲に城邑の門の入口に四人の癩病人をりしが互に言けるは我儕なんぞ此に坐して死るを待べけんや

我ら若邑にいらんと言ば邑には食物竭てあれば我ら其處に死んもし又此に坐しをらば同く死ん然ば我儕ゆきてスリアの軍勢の所にいたらん彼ら我らを生しおかば我儕生ん若われらを殺すも死るのみなりと

すなはちスリア人の陣營にいたらんとて黄昏に起あがりしがスリアの陣營の邊にいたりて視に一人も其處にをる者なし

是より先に主スリアの軍勢をして車の聲馬の聲大軍の聲を聞しめたまひしかば彼ら互に言けるは視よイスラエルの王われらに敵せんとてヘテ人の王等およびエジプトの王等を傭ひきたりて我らを襲はんとすと

すなはち黄昏に起て逃げその天幕と馬と驢馬とを棄て陣營をその儘になしおき生命を全うせんとて逃たり

かの癩病人等陣營の邊に至りしが遂に一の天幕にいりて食飮し其處より金銀衣服を持さりて往てこれを隱し又きたりて他の天幕にいり其處よりも持さりて往てこれを隱せり

かくて彼等互に言けるは我儕のなすところ善らず今日は好消息ある日なるに我儕は默し居る若夜明まで待ば菑害身におよばん然ば來れ往て王の眷屬に告んと

すなはち來りて邑の門を守る者を呼びこれに告て言けるは我儕スリア人の陣營にいたりて視に其處には一人も居る者なく亦人の聲もせず但馬のみ繋ぎてあり驢馬のみ繋ぎてあり天幕は其儘なりと

是において門を守る者呼はりてこれを王の家の中に報せたれば

王夜の中に興いでてその臣下に言けるは我スリア人が我儕になせる所の如何を汝等に示さん彼等はわれらの饑たるを知が故に陣營を去て野に隱る是はイスラエル人邑を出なば生擒て邑に推いらんと言て然せるなり

その臣下の一人對へて言けるは請ふ尚遺されて邑に存れる馬の中五匹を取しめよ我儕人を遣て窺はしめん視よ是等は邑の中に遺れるイスラエルの全群衆のごとし視よ是等は滅び亡たるイスラエルの全群衆のごとくなりと

是において二輛の戰車とその馬を取り王すなはち往て見よといひて人を遣はしてスリアの軍勢の跡を尾しめたれば

彼らその跡を尾てヨルダンにいたりしが途には凡てスリア人が狼狽逃る時に棄たる衣服と器具盈りその使者かへりてこれを王に告ければ

民いでてスリア人の陣營を掠めたり斯在しかば麥粉一セアは一シケルとなり大麥二セアは一シケルと成るヱホバの言のごとし

爰に王その手に依ところの彼大將を立て門を司らしめたるに民門にて彼を踐たれば死り即ち神の人が王のおのれに下り來し時に言たる言のごとし

又神の人が王につげて明日の今頃サマリヤの門にて大麥二セアを一シケルに賣り麥粉二セアを一シケルに賣にいたらんと言しごとくに成ぬ

彼大將その時に神の人にこたへてヱホバ天に窓をひらきたまふも此事あるべけんやと言たりしかば答へて汝目をもてこれを見べけれどもこれを食ふことはあらじと言たりしが

そのごとくになりぬ即ち民門にてかれを踐て死しめたり

第8章

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エリシヤ甞てその子を甦へらせて與へし婦に言しことあり曰く汝起て汝の家族とともに往き汝の寄寓んとおもふ處に寄寓れ其はヱホバ饑饉を呼くだしたまひたれば七年の間この地に臨むべければなりと

是をもて婦起て神の人の言のごとくに爲しその家族とともに往てペリシテ人の地に七年寄寓ぬ

かくて七年を經て後婦人ペリシテ人の地より歸りしが自己の家と田畝のために王に呼もとめんとて往り

時に王は神の人の僕ゲハジにむかひ請ふエリシヤが爲し諸の大なる事等を我に告よと言てこれと談話をる

即ち彼エリシヤが死人を甦らせしことを王にものがたりをる時にその子を彼が甦らせし婦自己の家と田畝のために王に呼もとめければゲハジ言ふわが主王よ是すなはちその婦人なり是すなはちエリシヤが甦らせしその子なり

王すなはちその婦に尋ねけるにこれを陳たれば王彼のために一人の官吏を派出して言ふ凡て彼に屬する物並に彼がこの地を去し日より今にいたるまでの其田畝の產出物を悉く彼に還せよと

エリシヤ、ダマスコに至れる事あり時にスリアの王ベネハダデ病にかかりをりしがこれにつげて神の人此にきたると言ふ者ありければ

王ハザエルに言ふ汝手に禮物をとり往て神の人を迎へ彼によりてヱホバに吾この病は愈るやと言て問へ

是においてハザエルかれを迎へんとて出往きダマスコのもろもろの佳物駱駝に四十駄を禮物に携へて到りて彼の前に立ち曰けるは汝の子スリアの王ベネハダデ我を汝につかはして吾この病は愈るやと言しむ

エリシヤかれに言けるは往てかれに汝はかならず愈べしと告よ但しヱホバかれはかならず死んと我にしめしたまふなり

而して神の人瞳子をさだめて彼の羞るまでに見つめ乃て哭いでたれば

ハザエルわが主よ何て哭たまふやと言ふにエリシヤ答へけるは我汝がイスラエルの子孫になさんところの害惡を知ばなり即ち汝は彼等の城に火をかけ壯年の人を劍にころし子等を挫ぎ孕女を刳ん

ハザエル言けるは汝の僕は犬なるか何ぞ斯る大なる事をなさんエリシヤ答へけるはヱホバ我にしめしたまふ汝はスリアの王となるにいたらん

斯て彼エリシヤを離れて去てその主君にいたるにエリシヤは汝に何と言しやと尋ければ答へて彼汝はかならず愈るあらんと我に告たりと言ふ

翌日にいたりてハザエル粗き布をとりて水に浸しこれをもて王の面を覆ひたれば死りハザエルすなはち之にかはりて王となる

イスラエルの王アハブの子ヨラムの五年にはヨシヤパテ尚ユダの王たりき此年にユダの王ヨシヤバテの子ヨラム位に即り

彼は位に即し時三十二歳にして八年の間エルサレムにて世を治めたり

彼はアハブの家のなせるがごとくにイスラエルの王等の道を行へりアハブの女かれの妻なりければなり斯彼はヱホバの目の前に惡をなせしかども

ヱホバその僕ダビデのためにユダを滅すことを好みたまはざりき即ち彼にその子孫によりて恒に光明を與んと言たまひしがごとし

ヨラムの代にエドム叛きてユダの手に服せず自ら王を立たれば

ヨラムその一切の戰車をしたがへてザイルに渉りしが遂に夜の中に起あがりて自己を圍めるエドム人を撃ちその戰車の長等を撃り斯して民はその天幕に逃ゆきぬ

エドムは斯叛きてユダの手に服せずなりしが今日まで然り此時にあたりてリブナもまた叛けり

ヨラムのその餘の行爲およびその凡て爲たる事等はユダの王の歴代志の書に記さるるにあらずや

ヨラムその先祖等とともに寝りてダビデの邑にその先祖たちと同じく葬られその子アハジアこれに代りて王となれり

イスラエルの王アハブの子ヨラムの十二年にユダの王ヨラムの子アハジア位に即り

アハジアは位に即し時二十二歳にしてエルサレムにて一年世を治めたりその母はイスラエルの王オムリの孫女にして名をアタリヤといふ

アハジアはアハブの家の道にあゆみアハブの家のごとくにヱホバの目の前に惡をなせり是かれはアハブの家の婿なりければなり

茲にアハブの子ヨラム自身ゆきてスリアの王ハザエルとギレアデのラモテに戰ひけるがスリア人等ヨラムに傷を負せたり

是に於てヨラム王はそのスリアの王ハザエルと戰ふにあたりてラマに於てスリア人に負せられたるところの傷を療さんとてヱズレルに歸れりユダの王ヨラムの子アハジアはアハブの子ヨラムが病をるをもてヱズレルに下りて之を訪ふ

第9章

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茲に預言者エリシヤ預言者の徒一人を呼てこれに言ふ汝腰をひきからげ此膏の瓶を手にとりてギレアデのラモテに往け

而して汝かしこに到らばニムシの子なるヨシヤパテの子ヱヒウを其處に尋獲て内に入り彼をその兄弟の中より起しめて奧の間につれゆき

膏の瓶をとりその首に灌ぎて言へヱホバかく言たまふ我汝に膏をそそぎてイスラエルの王となすと而して戸を開きて逃されよ止ること勿れ

是において預言者の僕なるその少者ギレアデのラモテに往けるが

到りて見るに軍勢の長等坐してをりければ將軍よ我汝に告べき事ありと言ふにヱヒウこたへて我儕諸人の中の誰にかと言たれば將軍よ汝にと言ふ

ヱヒウすなはち起て家にいりければ彼その首に膏をそそぎて之に言ふイスラエルの神ヱホバかく言たまふ我汝に膏をそそぎてヱホバの民イスラエルの王となす

汝はその主アハブの家を撃ほろぼすべし其によりて我わが僕なる預言者等の血とヱホバの諸の僕等の血をイゼベルの身に報いん

アハブの家は全く滅亡べしアハブに屬する男はイスラエルにありて繋がれたる者も繋がれざる者もともに之を絶べし

我アハブの家をネバテの子ヤラベアムの家のごとくに爲しアヒヤの子バアシヤの家のごとくになさん

ヱズレルの地において犬イゼベルを食ふべし亦これを葬るものあらじと而して戸を啓きて逃されり

かくてヱヒウその主の臣僕等の許にいできたりたれば一人之に言ふ平安なるやこの狂る者何のために汝にきたりしやヱヒウこたへて汝等はかの人を知りまたその言ところを知なりと言ふに

彼等言けらく謊なり其を我儕に告よと是においてヱヒウ言けるは彼斯々我につげて言りヱホバかく言たまふ我汝に膏をそそぎてイスラエルの王となすと

彼等すなはち急ぎて各人その衣服をとりこれを階の上ヱヒウの下に布き喇叭を吹てヱヒウは王たりと言り

ニムシの子なるヨシヤバテの子ヱヒウ斯ヨラムに叛けり(ヨラムはイスラエルを盡くひきゐてギレアデのラモテに於てスリアの王ハザエルを禦ぎたりしが

ヨラム王はそのスリアの王ハザエルと戰ふ時にスリア人に負せられたるところの傷を痊さんとてヱズレルに歸りてをる)ヱヒウ言けるは若なんぢらの心にかなはば一人もこの邑より走いでてこれをヱズレルに言ふ者なからしめよと

ヱヒウすなはちヱズレルをさして乗往りヨラムかしこに臥をればなりまたユダの王アハジアはヨラムを訪に下りてをる

ヱズレルの戌樓に一箇の守望者立をりしがヱヒウの群衆のきたるを見て我群衆を見るといひければヨラム言ふ一人を馬に乗て遣し其に會しめて平安なるやと言しめよと

是において一人馬にて行てこれに會ひ王かく宣まふ平安なるやと言ふにヱヒウ言けるは平安は汝の與るところならんや吾後にまはれと守望者また告て言ふ使者かれらの許に往たるが歸り來ずと

是をもて再び人を馬にて遣したればその人かれらに到りて王かく宣まふ何か變事あるやと言ふにヱヒウ答て平安は汝の與るところならんや吾後にまはれと言ふ

守望者また告て言ふ彼も彼等の所にまで到りしが歸り來ずその車を趨するはニムシの子ヱヒウが趨するに似狂ふて趨らせ來る

是においてヨラム車を整へよと言ひけるが車整ひたればイスラエルの王ヨラムとユダの王アハジアおのおのその車にて出たり即ちかれらヱヒウにむかひて出きたりヱズレル人ナボテの地にて之に會けるが

ヨラム、ヱヒウを見てヱヒウよ平安なるやといひたればヱヒウこたへて汝の母イゼベルの姦淫と魔術と斯多かれば何の平安あらんやと云り

ヨラムすなはち手をめぐらして逃げアハジアにむかひ反逆なりアハジアよと言ふに

ヱヒウ手に弓をひきしぼりてヨラムの肩の間を射たればその矢かれの心をいぬきて出で彼は車の中に偃ししづめり

ヱヒウその將ビデカルに言けるは彼をとりてヱズレル人ナボテの地の中に投すてよ其は汝憶ふべし甞て我と汝と二人ともに乗て彼の父アハブに從へる時にヱホバ斯かれの事を預言したまへり

曰くヱホバ言ふ誠に我昨日ナボテの血とその子等の血を見たりヱホバ言ふ我この地において汝にむくゆることあらんと然ば彼をとりてその地になげすててヱホバの言のごとくにせよ

ユダの王アハジアはこれを視て園の家の途より逃ゆきけるがヱヒウその後を追ひ彼をも車の中に撃ころせと言しかばイブレアムの邊なるグルの坂にてこれを撃たればメギドンまで逃ゆきて其處に死り

その臣僕等すなはち之を車にのせてエルサレムにたづさへゆきダビデの邑においてかれの墓にその先祖等とおなじくこれを葬れり

アハブの子ヨラムの十一年にアハジアはユダの王となりしなり

斯てヱヒウ、ヱズレルにきたりしかばイゼベル聞てその目を塗り髮をかざりて窓より望みけるが

ヱヒウ門に入きたりたればその主を弑せしジムリよ平安なるやと言り

ヱヒウすなはち面をあげて窓にむかひ誰か我に與ものあるや誰かあるやと言けるに二三の寺人ヱヒウを望みたれば

彼を投おとせと言りすなはち之を投おとしたればその血牆と馬とにほどばしりつけりヱヒウこれを踏とほれり

斯て彼内にいりて食飮をなし而して言けるは往てかの詛はれし婦を見これを葬れ彼は王の女子なればなりと

是をもて彼を葬らんとて往て見るにその頭骨と足と掌とありしのみなりければ

歸りで彼につぐるに彼言ふ是すなはちヱホバがその僕なるテシベ人エリヤをもて告たまひし言なり云くヱズレルの地において犬イゼベルの肉を食はん

イゼベルの屍骸はヱズレルの地に於て糞土のごとくに野の表にあるべし是をもて是はイゼベルなりと指て言ふこと能ざらん

第10章

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アハブ、サマリヤに七十人の子あり茲にヱヒウ書をしたためてサマリヤにおくり邑の牧伯等と長老等とアハブの子等の師傳等とに傳へて云ふ

汝らの主の子等汝らとともにあり又汝等は車も馬も城もあり且武器もあれば此書汝らの許にいたらば

汝らの主の子等の中より最も優れる方正き者を選みだ出してその父の位に置ゑ汝等の主の家のために戰へよ

彼ら大に恐れて言ふ二人の王等すでに彼に當ることを得ざりしなれば我儕いかでか當ることを得んと

乃ち家宰邑宰長老師傳等ヱヒウに言おくりけるは我儕は汝の僕なり凡て汝が我儕に命ずる事を爲ん我儕は王を立るを好まず汝の目に善と見ゆる所を爲せ

是においてヱヒウ再度かれらに書をおくりて云ふ汝らもし我に與き我言にしたがふならば汝らの主の子なる人々の首をとりて明日の今頃ヱズレルにきたりて吾許にいたれと當時王の子七十人はその師傳なる邑の貴人等とともに居る

その書かれらに至りしかば彼等王の子等をとらへてその七十人をことごとく殺しその首を籃につめてこれをヱズレルのヱヒウの許につかはせり

すなはち使者いたりてヱヒウに告て人衆王の子等の首をたづさへ來れりと言ければ明朝までそれを門の入口に二山に積おけと言り

朝におよび彼出て立ちすべての民に言ふ汝等は義し我はわが主にそむきて之を弑したり然ど此すべての者等を殺せしは誰なるぞや

然ば汝等知れヱホバがアハブの家につきて告たまひしヱホバの言は一も地に隕ず即ちヱホバはその僕エリヤによりて告し事を成たまへりと

斯てヱヒウはアハブの家に屬する者のヱズレルに遺れるを盡く殺しまたその一切の重立たる者その親き者およびその祭司等を殺して彼に屬する者を一人も遺さざりき

ヱヒウすなはち起て往てサマリヤに至りしがヱヒウ途にある時牧者の集會所において

ユダの王アハジアの兄弟等に遇ひ汝等は何人なるやと言けるに我儕はアハジアの兄弟なるが王の子等と王母の子等の安否を問んとて下るなりと答へたれば

彼等を生擒れと言り即ちかれらを生擒りその集會所の穴の側にて彼等四十二人を盡く殺し一人をも遺さざりき

斯てヱヒウ其處より進みゆきしがレカブの子ヨナダブの己を迎にきたるに遭ければその安否をとふてこれに汝の心はわが心の汝の心と同一なるがごとくに眞實なるやと言けるにヨナダブ答へて眞實なりと言たれば然ば汝の手を我に伸よと言ひその手を伸ければ彼を挽て己の車に登らしめて

言ふ我とともに來りて我がヱホバに熱心なるを見よと斯かれを己の車に乗しめ

サマリヤにいたりてアハブに屬する者のサマリヤに遺れるを盡く殺して遂にその一族を滅せりヱホバのエリヤに告たまひし言語のごとし

茲にヱヒウ民をことごとく集てこれに言けるはアハブは少くバアルに事たるがヱヒウは大にこれに事へんとす

然ば今バアルの諸の預言者諸の臣僕諸の祭司等を我許に召せ一人も來らざる者なからしめよ我大なる祭祀をバアルのためになさんとするなり凡て來らざる者は生しおかじと但しヱヒウ、バアルの僕等を滅さんとて偽りて斯なせるなり

ヱヒウすなはちバアルの祭禮を設よと言ければ之を宣たり

是てヱヒウあまねくイスラエルに人をつかはしたればバアルの僕たる者皆きたれり一人も來らずして遺れるものはあらざりき彼等バアルの家にいりたればバアルの家は末より末まで充わたれり

時にヱヒウ衣裳を掌どる者てむかひ禮服をとりいだしてバアルの凡の僕等にあたへよといひければすなはち禮服をとりいだせり

斯ありてヱヒウはレカブの子ヨナダブとともにバアルの家にいりしがバアルの僕等に言ふ汝等尋ね見て此には只バアルの僕のみあらしめヱホバの僕を一人も汝らの中にあらしめざれと

彼等犠牲と燔祭を献げんとて入し時ヱヒウ八十人の者を外に置て言ふ凡てわがその手にわたすところの人を一人にても逃れしむる者は己の生命をもてその人の生命に代べしと

期て燔祭を献ぐることの終りし時ヱヒウその士卒と諸將に言ふ入てかれらを殺せ一人をも出すなかれとすなはち刃をもて彼等を撃ころせり而して士卒と諸將これを投いだしてバアルの家の内殿に入り

諸の像をバアルの家よりとりいだしてこれを燒り

即ちかれらバアルの像をこぼちバアルの家をこぼち其をもて厠を造りしが今日までのこる

ヱヒウかくイスラエルの中よりバアルを絶さりたりしかども

ヱヒウは尚かのイスラエルに罪を犯させたるネバテの子ヤラベアムの罪に離るることをせざりき即ち彼なほベテルとダンにあるところの金の犢に事たり

ヱホバ、ヱヒウに言たまひけらく汝わが義と視るところの事を行ふにあたりて善く事をなしまたわが心にある諸の事をアハブの家になしたれば汝の子孫は四代までイスラエルの位に坐せんと

然るにヱヒウは心を盡してイスラエルの神ヱホバの律法をおこなはんとはせず尚かのイスラエルに罪を犯させたるヤラベアムの罪に離れざりき

是時にあたりてヱホバ、イスラエルを割くことを始めたまへりハザエルすなはちイスラエルの一切の邊境を侵し

ヨルダンの東においてギレアデの全地ガド人ルベン人マナセ人の地を侵しアルノン河の邊なるアロエルよりギレアデにいたりバシヤンにおよべり

ヱヒウのその餘の行爲とその凡て爲たる事むよびその大なる能はイスラエルの王の歴代志の書に記さるるにあらずや

ヱヒウその先祖等とともに寝りたればこれをサマリヤに葬りぬその子ヱホアハズこれに代て王となれり

ヱヒウがサマリヤにをりてイスラエルに王たりし間は二十八年なりき


第11章

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茲にアハジアの母アタリヤその子の死たるを見て起て王の種を盡く滅したりしが

ヨラム王の女にしてアハジアの姉妹なるヱホシバといふ者アハジアの子ヨアシを王の子等の殺さるる者の中より竊みとり彼とその乳母を夜着の室にいれて彼をアタリヤに匿したれば終にころされざりき

ヨアシは彼とともに六年ヱホバの家に隱れてをりアタリヤ國を治めたり

第七年にいたりヱホヤダ人を遣して近衛兵の大將等を招きよせヱホバの家にきたりて己に就しめ彼等と契約を結び彼らにヱホバの家にて誓をなさしめて王の子を見し

かれらに命じて言ふ汝等がなすべき事は是なり汝等安息日に入きたる者は三分の一は王の家をまもり

三分の一はスル門にをり三分の一は近衛兵の後の門にをるべし斯なんぢら宮殿をまもりて人をいるべからず

また凡て汝等安息日に出ゆく者はその二手ともにヱホバの家において王をまもるべし

すなはち汝らおのおの武器を手にとりて王を環て立べし凡てその列を侵す者をば殺すべし汝等又王の出る時にも入る時にも王とともにをるべし

是においてその將官等祭司ヱホヤダが凡て命ぜしごとくにおこなへり即ちかれらおのおの其手の人の安息日に入くべき者と安息日に出ゆくべき者とを率て祭司ヱホヤダに至りしかば

祭司はヱホバの殿にあるダビデ王の槍と楯を大將等にわたせり

近衛兵はおのおの手に武器をとりて王の四周にをり殿の右の端より左の端におよびて壇と殿にそひて立つ

ヱホヤダすなはち王子を進ませて之に冠冕をいただかせ律法をわたし之を王となして之に膏をそそぎければ人衆手を拍て王長壽かれと言り

茲にアタリヤ近衛兵と民の聲を聞きヱホバの殿にいりて民の所にいたり

見るに王は常例のごとくに高座の上に立ち其傍に大將等と喇叭手立をり又國の民みな喜びて喇叭を吹をりしかばアタリヤ其衣を裂て反逆なり反逆なりと叫べり

時に祭司ヱホヤダ大將等と軍勢の士官等に命じてこれに言ふ彼をして列の間をとほりて出しめよ彼に從がふ者をば劍をもて殺せと前にも祭司は彼をヱホバの家に殺すべからずと言おけり

是をもて彼のために路をひらきければ彼王の家の馬道をとほりゆきしが遂に其處に殺されぬ

斯てヱホヤダはヱホと王と民の間にその皆ヱホバの民とならんといふ契約を立しめたり亦王と民の間にもこれを立しめたり

是をもて國の民みなバアルの家にいりてこれを毀ちその壇とその像を全く打碎きバアルの祭司マツタンをその壇の前に殺せり而して祭司ヱホバの家に監督者を設けたり

ヱホヤダすなはち大將等と近衛兵と國の諸の民を率てヱホバの家より王をみちびき下り近衛兵の門の途よりして王の家にいたり王の位に坐せしめたり

斯有しかば國の民はみな喜びて邑は平穩なりきアタリヤは王の家に殺されぬ

ヨアシは位に即し時七歳なりき

第12章

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ヨアシはヱヒウの七年に位に即きエルサレムにおいて四十年世を治めたりその母はベエルシバより出たるものにて名をヂビアといへり

ヨアシは祭司ヱホヤダの己を誨ふる間は恒にヱホバの善と視たまふ事をおこなへり

然ど崇邱は除かずしてあり民は尚その崇邱において犠牲をささげ香を焚り

茲にヨアシ祭司等に言けるは凡てヱホバの家に聖別て献納るところの金即ち核數らるる人の金估價にしたがひて出すところの身の代の金および人々が心より願てヱホバの家に持きたるところの金

これを祭司等おのおのその知人より受をさめ何處にても殿に破壞の見る時はこれをもてその破壞を修繕ふべしと

然るにヨアシ王の二十三年におよぶまで祭司等殿の破壞を修繕ふにいたらざりしかば

ヨアシ王祭司ヱホヤダおよびその他の祭司等を召てこれに言ふ汝等などて殿の破壞を修繕はざるや然ば今よりは汝等の知人より金を受て自己のためにすべからず唯殿の破壞の修理に其を供ふべしと

祭司等は重て民より自己のために金を受ず又殿の破壞を修理ふことをせじと約せり

斯て後祭司ヱホヤダ一箇の櫃をとりその蓋に孔を穿ちてこれをヱホバの家の入口の右において壇の傍に置り門守の祭司等すなはちヱホバの家に入きたるところの金をことごとくその中に入たり

爰にその櫃の中に金の多くあることを見たれば王の書記と祭司長と上り來りてそのヱホバの家に積りし金を包みてこれを數へ

その數へし金をこの工事をなす者に付せり即ちヱホバの家の監督者にこれを付しければ彼等またヱホバの家を修理ふところの木匠と建築師にこれを與へ

石工および琢石者に與へまたこれをもてヱホバの家の破壞を修繕ふ材木と琢石を買ひ殿を修理ふために用ふる諸の物のためにこれを費せり

但しヱホバの家にり來れるその金をもてヱホバの家のために銀の盂燈剪鉢喇叭金の器銀の器等を造ることはせざりき

唯これをその工事をなす者にわたして之をもてヱホバの家を修理はしめたり

またその金を手にわたして工人にはらはしめたる人々と計算をなすことをせざりき是は彼等忠厚に事をなしたればなり

愆金と罪金はヱホバの家にいらずして祭司に歸せり

當時スリアの王ハザエルのぼり來りてガテを攻てこれを取り而してハザエル、エルサレムに攻のぼらんとてその面をこれに向たり

是をもてユダの王ヨアシその先祖たるユダの王ヨシヤパテ、ヨラム、アハジア等が聖別て献げたる一切の物および自己が聖別て献げたる物ならびにヱホバの家の庫と王の家とにあるところの金を悉く取てこれをスリアの王ハザエルにおくりければ彼すなはちエルサレムを離れて去ぬ

ヨアシのその餘の行爲およびその凡て爲たる事はユダの王の歴代志の書に記さるるにあらずや

茲にヨアシの臣僕等おこりて黨をむすびシラに下るところのミロの家にてヨアシを弑せり

即ちその僕シメアテの子ヨザカルとシヨメルの子ヨザバデかれを弑して死しめたればその先祖とおなじくこれをダビデの邑に葬れりその子アマジヤこれに代りて王となる

第13章

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ユダの王アハジアの子ヨアシの二十三年にヱヒウの子ヨハアズ、サマリヤにおいてイスラエルの王となり十七年位にありき

彼はヱホバの目の前に惡をなし夫のイスラエルに罪を犯させたるネバテの子ヤラベアムの罪を行ひつづけて之に離れざりき

是においてヱホバ、イスラエルにむかひて怒を發しこれをその代のあひだ恒にスリアの王ハザエルの手にわたしおき又ハザエルの子ベネハダデの手に付し置たまひしが

ヨアハズ、ヱホバに請求めたればヱホバつひにこれを聽いれたまへり其はイスラエルの苦難を見そなはしたればなり即ちスリアの王これをなやませるなり

ヱホバつひに救者をイスラエルにたまひたればイスラエルの子孫はスリア人の手を脱れて疇昔の如くに己々の天幕に住にいたれり

但し彼等はイスラエルに罪を犯さしめたるヤラベアムの家の罪をはなれずして之をおこなひつづけたりサマリヤにも亦アシタロテの像たちをりぬ

嚮にスリアの王は民を滅し踐くだく塵のごとくに是をなして只騎兵五十人車十輌歩兵一萬人而巳をヨアハズに遺せり

ヨアハズのその餘の行爲とその凡て爲たる事およびその能はイスラエルの王の歴代志の書にしるさるるに非ずや

ヨアハズその先祖等とともに寝りたればこれをサマリヤに葬れりその子ヨアシこれに代て王となる

ユダの王ヨアシの三十七年にヨアハズの子ヨアシ、サマリヤにおいてイスラエルの王となり十六年位にありき

彼ヱホバの目の前に惡をなし夫のイスラエルに罪を犯させたるネバテの子ヤラベアムの諸の罪にはなれずしてこれを行ひつづけたり

ヨアシのその餘の行爲とその凡て爲たる事およびそのユダの王アマジヤと戰ひし能はイスラエルの王の歴代志の書に記さるるに非ずや

ヨアシその先祖等とともに寝りてヤラベアム位にのぼれりヨアシはイスラエルの王等とおなじくサマリヤに葬らる

茲にエリシヤ死病にかかりて疾をりしかばイスラエルの王ヨアシ彼の許にくだり來てその面の上に涙をこぼし吾父吾父イスラエルの兵車よその騎兵よと言り

エリシヤかれにむかひ弓矢をとれと言ければすなはち弓矢をとれり

エリシヤまたイスラエルの王に汝の手を弓にかけよと言ければすなはちその手をかけたり是においてエリシヤその手を王の手の上に按て

東向の窓を開けと言たれば之を開きけるにエリシヤまた射よと言り彼すなはち射たればエリシヤ言ふヱホバよりの拯救の矢スリアに對する拯救の矢汝必らずアベクにおいてスリア人を撃やぶりてこれを滅しつくすにいたらん

エリシヤまた矢を取れと言ければ取りエリシヤまたイスラエルの王に地を射よといひけるに三次射て止たれば

神の人怒て言ふ汝は五回も六回も射るべかりしなり然せしならば汝スリアを撃やぶりて之を滅しつくすことを得ん然ど今然せざれば汝がスリアを撃やぶることは三次のみなるべしと

エリシヤ終に死たればこれを葬りしが年の立かへるに及てモアブの賊黨國にいりきたれり

時に一箇の人を葬らんとする者ありしが賊黨を見たればその人をエリシヤの墓におしいれけるにその人いりてエリシヤの骨にふるるや生かへりて起あがれり

スリアの王ハザエルはヨアハズの一生の間イスラエルをなやましたりしが

ヱホバそのアブラハム、イサク、ヤコブと契約をむすびしがためにイスラエルをめぐみ之を憐みこれを眷みたまひ之を滅すことを好まず尚これをその前より棄はなちたまはざりき

スリアの王ハザエルつひに死てその子ベネハダデこれに代りて王となれり

是においてヨアズの子ヨアシはその父ヨアハズがハザエルに攻取れたる邑々をハザエルの子ベネハダデの手より取かへせり即ちヨアシは三次かれを敗りてイスラエルの邑々を取かへしぬ

第14章

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イスラエルの王ヨアハズの子ヨアシの二年にユダの王ヨアシの子アマジヤ王となれり

彼は王となれる時二十五歳にして二十九年の間エルサレムにて世を治めたりその母はエルサレムの者にして名をヱホアダンと云り

アマジヤはヱホバの善と見たまふ事をなしたりしがその先祖ダビデのごとくはあらざりき彼は萬の事において其父ヨアシがなせしごとくに事をなせり

惟崇邱はのぞかずしてあり民はなほその崇邱において犠牲をささげ香を焚り

彼は國のその手に堅くたつにおよびてその父王を弑せし臣僕等を殺したりしが

その弑殺人の子女等は殺さざりき是はモーセの律法の書に記されたる所にしたがへるなり即ちヱホバ命じて言たまはく子女の故によりて父を殺すべからず父の故によりて子女を殺すべからず人はみなその身の罪によりて死べき者なりと

アマジヤまた鹽谷においてエドミ人一萬を殺せり亦セラを攻とりてその名をヨクテルとなづけしが今日まで然り

かくてアマジヤ使者をヱヒウの子ヨアハズの子なるイスラエルの王ヨアシにおくりて來れ我儕たがひに面をあはせんと言しめければ

イスラエルの王ヨアシ、ユダの王アマジヤに言おくりけるはレバノンの荊棘かつてレバノンの香柏に汝の女子をわが子の妻にあたへよと言おくりたることありしにレバノンの野獣とほりてその荊棘を踏たふせり

汝は大にエドムに勝たれば心に誇るその榮譽にやすんじて家に居れなんぞ禍を惹おこして自己もユダもともに亡んとするやと

然るにアマジヤ聽ことをせざりしかばイスラエルの王ヨアシのぼり來れり是において彼とユダの王アマジヤはユダのベテシメシにてたがひに面をあはせたりしが

ユダ、イスラエルに敗られて各人その天幕に逃かへりぬ

是においてイスラエルの王ヨアシはアジアの子ヨアシの子なるユダの王アマジヤをベテシメシに擒へ而してエルサレムにいたりてエルサレムの石垣をエフライムの門より隅の門まで凡そ四百キユビトを毀ち

またヱホバの家と王の家の庫とにあるところの金銀および諸の器をとりかつ人質をとりてサマリヤにかへれり

ヨアシがなしたるその餘の行爲とその能およびそのイスラエルの王アマジヤと戰ひし事はイスラエルの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

ヨアシその先祖等とともに寝りてイスラエルの王等とともにサマリヤに葬られその子ヤラベアムこれに代りて王となれり

ヨアシの子なるユダの王アマジヤはヨアハズの子なるイスラエルの王ヨアシの死てより後なほ十五年生存へたり

アマジヤのその餘の行爲はユダの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

茲にエルサレムにおいて黨をむすびて彼に敵する者ありければ彼ラキシに逃ゆきけるにその人々ラキシに人をやりて彼を彼處に殺さしめたり

人衆かれを馬に負せてもちきたりエルサレムにおいてこれをその先祖等とともにダビデの邑に葬りぬ

ユダの民みなアザリヤをとりて王となしてその父アマジヤに代しめたり時に年十六なりき

彼エラテの邑を建てこれを再びユダに歸せしめたり是はかの王がその先祖等とともに寝りし後なりき

ユダの王ヨアシの子アマジヤの十五年にイスラエルの王ヨアシの子ヤラベアム、サマリヤにおいて王となり四十一年位にありき

彼はヱホバの目の前に惡をなし夫のイスラエルに罪を犯さしめたるネバテの子ヤラベアムの罪に離れざりき

彼ハマテの入處よりアラバの海までイスラエルの邊境を恢復せりイスラエルの神ヱホバがガテヘペルのアミツタイの子なるその僕預言者ヨナによりて言たまひし言のごとし

ヱホバ、イスラエルの艱難を見たまふに其は甚だ苦かり即ち繋れたる者もあらず繋れざる者もあらず又イスラエルを助る者もあらず

ヱホバは我イスラエルの名を天下に塗抹んとすと言たまひしこと無し反てヨアシの子ヤラベアムの手をもてこれを拯ひたまへり

ヤラベアムのその餘の行爲とその凡てなしたる事およびその戰爭をなせし能その昔にユダに屬し居たることありしダマスコとハマテを再びイスラエルに歸せしめたる事はイスラエルの王の歴代志の書に記さるるにあらずや

ヤラベアムその先祖たるイスラエルの王等とともに寝りその子ザカリヤこれに代りて王となれり

第15章

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イスラエルの王ヤラベアムの二十七年にユダの王アマジヤの子アザリヤ王となれり

彼は王となれる時に十六歳なりしが五十二年の間エルサレムにおいて世を治めたりその母はエルサレムの者にして名をヱコリアと言ふ

彼はヱホバの善と見たまふ事をなし萬の事においてその父アマジヤがなしたるごとく行へり

惟崇邱は除かずしてあり民は尚その崇邱の上に犠牲をささげ香をたけり

ヱホバ王を撃たまひしかばその死る日まで癩病人となり別殿に居ぬその子ヨタム家の事を管理て國の民を審判り

アザリヤのその餘の行爲とその凡てなしたる事はユダの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

アザリヤその先祖等とともに寝りたればこれをダビデの邑にその先祖等とともに葬れりその子ヨタムこれに代りて王となる

ユダの王アザリヤの三十八年にヤラベアムの子ザカリア、サマリヤにおいてイスラエルの王となれりその間は六月

彼その先祖等のなせしごとくヱホバの目の前に惡を爲し夫のイスラエルに罪を犯させたるネバテの子ヤラベアムの罪に離れざりき

茲にヤベシの子シヤルム黨をむすびて之に敵し民の前にてこれを撃て弑しこれに代りて王となれり

ザカリヤのその餘の行爲はイスラエルの王の歴代志の書に記さる

ヱホバのヱヒウに告たまひし言は是なり云く汝の子孫は四代までイスラエルの位に坐せんと果して然り

ヤベシの子シヤルムはユダの王ウジヤの三十九年に王となりサマリヤにおいて一月の間王たりき

時にガデの子メナヘム、テルザより上りでサマリヤに來りヤベシの子シヤルムをサマリヤに撃てこれを殺し之にかはりて王となれり

シヤルムのその餘の行爲とその徒黨をむすびし事はイスラエルの王の歴代志の書にしるさる

その後メナヘム、テルザよりいたりてテフサとその中にあるところの者およびその四周の地を撃り即ちかれら己がために開くことをせざりしかばこれを撃てその中の孕婦をことごとく刳剔たり

ユダの王アザリヤの三十九年にガデの子メナヘム、イスラエルの王となりサマリヤにおいて十年の間世を治めたり

彼ヱホバの目の前に惡をなし彼のイスラエルに罪を犯させたるネバテの子ヤラベアムの罪に生涯離れざりき

茲にアツスリヤの王ブルその地に攻きたりければメナヘム銀一千タラントをブルにあたへたり是は彼をして己を助けしめ是によりて國を己の手に堅く立しめんとてなりき

即ちメナヘムその銀をイスラエルの諸の大富者に課しその人々に各々銀五十シケルを出さしめてこれをアツスリヤの王にあたへたり是をもてアツスリヤの王は歸りゆきて國に止ることをせざりき

メナヘムのその餘の行爲とその凡てなしたる事はイスラエルの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

メナヘムその先祖等とともに寝りその子ペカヒヤこれに代て王となれり

メナヘムの子ペカヒヤはユダの王アザリヤの五十年にサマリヤにおいてイスラエルの王となり二年のあひだ位にありき

彼ヱホバの目のまへに惡をなし彼のイスラエルに罪を犯させたるネバテの子ヤラベアムの罪に離れざりき

茲にその將官なるレマリヤの子ペカ黨をむすびて彼に敵しサマリヤにおいて王の家の奧の室にこれを撃ころしアルゴブとアリエをもこれとともに殺せり時にギレアデ人五十人ペカとともにありきペカすなはち彼をころしかれに代て王となれり

ベカヒヤのその餘の行爲とその凡て爲たる事はイスラエルの王の歴代志の書にしるさる

レマリヤの子ペカはユダの王アザリヤの五十二年にサマリヤに於てイスラエルの王となり二十年位にありき

彼ヱホバの目の前に惡をなし彼のイスラエルに罪ををかさせたるネバテの子ヤラベアムの罪にはなれざりき

イスラエルの王ペカの代にアツスリヤの王テグラテビレセル來りてイヨン、アベルベテマアカ、ヤノア、ケデシ、ハゾルおよびギレアデならびにナフタリの全地ガリラヤを取りその人々をアツスリヤに擄へうつせり

茲にエラの子ホセア黨をむすびてレマリヤの子ペカに敵しこれを撃て殺しこれに代て王となれり是はウジヤの子ヨタムの二十年にあたれり

ペカのその餘の行爲とその凡てなしたる事はイスラエルの王の歴代志の書にしるさる

レマリヤの子イスラエルの王ペカの二年にウジヤの子ユダの王ヨタム王となれり

彼は王となれる時二十五歳なりしがヱルサレムにて十六年世を治めたり母はザドクの女にして名をヱルシヤといへり

彼はヱホバの目にかなふ事をなし凡てその父ウジヤのなしたるごとくにおこなへり

惟崇邱は除かずしてあり民なほその崇邱の上に犠牲をささげ香を焚り彼ヱホバの家の上の門を建たり

ヨタムのその餘の行爲とその凡てなしたる事はユダの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

當時ヱホバ、スリアの王レヂンとレマリヤの子ペカをユダにせめきたらせたまへり

ヨタムその先祖等とともに寝りてその父ダビデの邑にその先祖等とともに葬られその子アハズこれに代りて王となれり


第16章

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レマリヤの子ペカの十七年にユダの王ヨタムの子アハズ王となれり

アハズは王となれる時二十歳にしてエルサレムにおいて十六年世を治めたりしがその神ヱホバの善と見たまふ事をその父ダビデのごとくは行はざりき

彼はイスラエルの王等の道にあゆみまたその子に火の中を通らしめたり是はヱホバがイスラエルの子孫の前より逐はらひたまひし異邦人のおこなふところの憎むべき事にしたがへるなり

彼は崇邱の上丘の上一切の靑木の下に犠牲をささげ香をたけり

この頃スリアの王レヂンおよびレマリヤの子なるイスラエルの王ペカ、エルサレムにせめのぼりてアハズを圍みけるが勝ことを得ざりき

この時にあたりてスリアの王レヂン復エラテをスリアに歸せしめユダヤ人をエラテより逐いだせり而してスリア人エラテにきたりて其處に住み今日にいたる

是においてアハズ使者をアツスリヤの王テグラテピレセルにつかはして言しめけるは我は汝の臣僕汝の子なりスリアの王とイスラエルの王と我に攻かかりをれば請ふ上りきたりてかれらの手より我を救ひいだしたまへと

アハズすなはちヱホバの家と王の家の庫とにあるところの銀と金をとりこれを禮物としてアツスリヤの王におくりしかば

アツスリヤの王かれの請を容たりアツスリヤの王すなはちダマスコに攻のぼりて之をとりその民をキルに擄うつしまたレヂンを殺せり

かくてアハズはアツスリヤの王テグラテピレセルに會んとてダマスコにゆきけるがダマスコにおいて一箇の祭壇を見たればアスス王その祭壇の工作にしたがひて委くこれが圖と式樣を制へて祭司ウリヤにこれをおくれり

是において祭司ウリヤはアハズ王がダマスコよりおくりたる所にてらして一箇の祭壇をつくりアハズ王がダマスコより來るまでにこれを作りおけり

茲に王ダマスコより歸りてその祭壇を見壇にちかよりてこれに上り

壇の上に燔祭と素祭を焚き灌祭をそそぎ酬恩祭の血を灑げり

彼またヱホバの前なる銅の壇を家の前より移せり即ちこれをかの新しき壇とヱホバの家の間より移してかの壇の北の方に置たり

而してアハズ王祭司ウリヤに命じて言ふ朝の燔祭夕の素祭および王の燔祭とその素祭ならびに國中の民の燔祭とその素祭および灌祭はこの大なる壇の上に焚べし又この上に燔祭の牲の血と犠牲の物の血をすべて灑ぐべし彼の銅の壇の事はなほ考ふるあらん

祭司ウリヤすなはちアハズ王のすべて命じたるごとくに然なせり

またアハズ王臺の邊を削りて洗盤をその上よりうつしまた海をその下なる銅の牛の上よりおろして石の座の上に置ゑ

また家に造りたる安息日用の遊廊および王の外の入口をアツスリヤの王のためにヱホバの家の中に變じたり

アハズのなしたるその餘の行爲はユダの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

アハズその先祖等とともに寝りてダビデの邑にその先祖等とともに葬られその子ヒゼキヤこれにかはりて王となれり

第17章

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ユダの王アハズの十二年にエラの子ホセア王となりサマリヤにおいて九年イスラエルを治めたり

彼ヱホバの目の前に惡をなせしがその前にありしイスラエルの王等のごとくはあらざりき

アッスリヤの王シヤルマネセル攻のぼりたればホセアこれに臣服して貢を納たりしが

アッスリヤの王つひにホセアの己に叛けるを見たり其は彼使者をエジプトの王ソにおくり且前に歳々なせしごとくに貢をアッスリヤ王に納ざりければなり是においてアツスリヤの王かれを禁錮て獄におけり

すなはちアッスリヤの王せめ上りて國中を遍くゆきめぐりサマリヤにのぼりゆきて三年が間これをせめ圍みたりしが

ホセアの九年におよびてアッスリヤの王つひにサマリヤを取りイスラエルをアッスリヤに擄へゆきてこれをハラとハボルとゴザン河の邊とメデアの邑々とにおきぬ

此事ありしはイスラエルの子孫己をエジプトの地より導きのぼりてエジプトの王パロの手を脱しめたるその神ヱホバに對て罪を犯し他の神々を敬ひ

ヱホバがイスラエルの子孫の前より逐はらひたまひし異邦人の法度にあゆみ又イスラエルの王等の設けし法度にあゆみたるに因てなり

イスラエルの子孫義からぬ事をもてその神ヱホバを掩ひかくしその邑々に崇邱をたてたり看守臺より城にいたるまで然り

彼等一切の高丘の上一切の靑樹の下に偶像とアシラ像を立て

ヱホバがかれらの前より移したまひし異邦人のなせしごとくにその崇邱に香を焚き又惡を行ひてヱホバを怒らせたり

ヱホバかれらに汝等これらの事を爲べからずと言おきたまひしに彼等偶像に事ふることを爲しなり

ヱホバ諸の預言者諸の先見者によりてイスラエルとユダに見證をたて汝等翻へりて汝らの惡き道を離れわが誡命わが法度をまもり我が汝等の先祖等に命じまたわが僕なる預言者等によりて汝等に傳へし法に率由ふやうにせよと言たまへり

然るに彼ら聽ことをせずしてその項を強くせり彼らの先祖等がその神ヱホバを信ぜずしてその項を強くしたるが如し

彼等はヱホバの法度を棄てヱホバがその先祖等と結びたまひし契約を棄てまたその彼等に見證したまひし證言を棄て且虚妄物にしたがひて虚浮なりまたその周圍なる異邦人の跡をふめり是はヱホバが是のごとくに事をなすべからずと彼らに命じ給ひし者なり

彼等その神ヱホバの諸の誡命を遺て己のために二の牛の像を鑄なし又アシラ像を造り天の衆群を拝み且バアルに事へ

またその子息息女に火の中を通らしめ卜筮および禁厭をなしヱホバの目の前に惡を爲ことに身を委ねてその怒を惹起せり

是をもてヱホバ大にイスラエルを怒りこれをその前より除きたまひたればユダの支派のほかは遺れる者なし

然るにユダもまたその神ヱホバの誡命を守ずしてイスラエルの立たる法度にあゆみたれば

ヱホバ、イスラエルの苗裔ぞことごとく棄これを苦しめこれをその掠むる者の手に付して遂にこれをその前より打すてたまへり

すなはちイスラエルをダビデの家より裂はなしたまひしかばイスラエル、ネバテの子ヤラベアムを王となせしにヤラベアム、イスラエルをしてヱホバにしたがふことを止しめてこれに大なる罪を犯さしめたりしが

イスラエルの子孫はヤラベアムのなせし諸の罪をおこなひつづけてこれに離るることなかりければ

遂にヱホバその僕なる諸の預言者をもて言たまひしごとくにイスラエルをその前より除きたまへりイスラエルはすなはちその國よりアッスリヤにうつされて今日にいたる

斯てアッスリヤの王バビロン、クタ、アワ、ハマテおよびセパルワイムより人をおくりてこれをイスラエルの子孫の代にサマリヤの邑々に置ければその人々サマリヤを有ちてその邑々に住しが

その彼處に始て住る時には彼等ヱホバを敬ふことをせざりしかばヱホバ獅子をかれらの中に送りたまひてその獅子かれら若干を殺せり

是によりてアッスリヤの王に告て言ふ汝が移てサマリヤの邑々におきたまひしかの國々の民はこの地の神の道を知ざるが故にその神獅子をかれらの中におくりて獅子かれらを殺せり是は彼等その國の神の道を知ざるに因てなり

アッスリヤの王すなはち命を下して言ふ汝等が彼處より曳きたりし祭司一人を彼處に携ゆけ即ち彼をして彼處にいたりて住しめその國の神の道をその人々に敎へしめよと

是に於てサマリヤより移れし祭司一人きたりてベテルに住みヱホバの敬ふべき事をかれらに敎へたり

その民はまた各々自分自分の神々を造りてこれをかのサマリア人が造りたる諸の崇邱に安置せり民みなその住る邑々において然なしぬ

即ちバビロンの人々はスコテペノテを作りクタの人々はネルガルを作りハマテの人々はアシマを作り

アビ人はニブハズとタルタクを作りセパルワイ人は其子女を火に焚てセパルワイムの神アデランメルクおよびアナンメルクに奉げたり

彼ら又ヱホバを敬ひ凡俗の民をもて崇邱の祭司となしたれば其人これがために崇邱に家々にて職務をなせり

斯その人々ヱホバを敬ひたりしが亦その携へ出されし國々の風俗にしたがひて自己自己の神々に事へたり

今日にいたるまで彼等は前の習俗にしたがひて事をなしヱホバを敬はず彼等の法度をも例典をも行はず又ヱホバがイスラエルを名けたまひしヤコブの子孫に命じたまひし律法をも誡命をも行はざるなり

昔ヱホバこれと契約をたてこれに命じて言たまひけらく汝等は他の神を敬ふべからずまたこれを拝みこれに事へこれに犠牲をささぐべからず

只大なる能をもて腕を伸て汝等をエジプトの地より導き上りしヱホバをのみ汝等敬ひこれを拝みこれにこれに犠牲をささぐべし

またその汝等のために録したまへる法度と例典と律法と誡命を汝等謹みて恒に守るべし他の神々を敬ふべからず

我が汝等とむすびし契約を汝等忘るべからず又他の神々を敬ふべからず

只汝らの神ヱホバを敬ふべし彼なんじらをその諸の敵の手より救ひいださん

然るに彼等は聽ことをせずしてなほ前の習俗にしたがひて事を行へり

偖この國々の民は斯ヱホバを敬ひまたその雕める像に事たりしがその子も孫も共に然りその先祖のなせしごとくに今日までも然なすなり

第18章

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イスラエルの王エラの子ホセアの三年にユダの王アハズの子ヒゼキア王となれり

彼は王となれる時二十五歳にしてエルサレムにて二十九年世ををさめたりその母はザカリヤの女にして名をアビといへり

ヒゼキヤはその父ダビデの凡てなせしごとくヱホバの善と見たまふ事をなし

崇邱を除き偶像を毀ちアシラ像を斫たふしモーセの造りし銅の蛇を打碎けりこの時までイスラエルの子孫その蛇にむかひて香を焚たればなり人々これをネホシタン(銅物)と稱なせり

ヒゼキヤはイスラエルの神ヱホバを賴り是をもて彼の後にも彼の先にもユダの諸の王等の中に彼に如ものなかりき

即ち彼は固くヱホバに身をよせてこれに從ふことをやめずヱホバがモーセに命じたまひしその誡命を守れり

ヱホバ彼とともに在したれば彼はその往ところにて凡て利達を得たり彼はアッスリヤの王に叛きてこれに事へざりき

彼ペリシテ人を撃敗りてガザにいたりその境に達し看守臺より城にまで及べり

ヒゼキヤ王の四年すなはちイスラエルの王エラの子ホセアの七年にアッスリヤの王シヤルマネセル、サマリヤに攻のぼりてこれを圍みけるが

三年の後つひに之を取りサマリヤの取れしはヒゼキヤの六年にしてイスラエルの王ホセアの九年にあたる

アッスリヤの王イスラエルをアッスリヤに擄へゆきてこれをハラとゴザン河の邊とメデアの邑々におきぬ

是は彼等その神ヱホバの言に遵はずその契約を破りヱホバの僕モーセが凡て命じたる事をやぶりこれを聽ことも行ふこともせざるによりてなり

ヒゼキヤ王の十四年にアッスリヤの王セナケリブ攻のぼりてユダの諸の堅き邑を取ければ

ユダの王ヒゼキヤ人をラキシにつかはしてアッスリヤの王にいたらしめて言ふ我過てり我を離れて歸りたまへ汝が我に蒙らしむる者は我これを爲べしとアッスリヤの王すなはち銀三百タラント金三十タラントをユダの王ヒゼキヤに課したり

是においてヒゼキヤ、ヱホバの家と王の家の庫とにあるところの銀をことごとく彼に與へたり

此時ユダの王ヒゼキヤまた己が金を著たりしヱホバの宮の戸および柱を剥てこれをアッスリヤの王に與へたり

アッスリヤの王またタルタン、ラブサリスおよびラブシヤケをしてラキシより大軍をひきゐてエルサレムにむかひてヒゼキヤ王の所にいたらしめたればすなはち上りてエルサレムにきたれり彼等則ち上り來り漂布場の大路に沿るよの池塘の水道の邊にいたりて立り

而して彼等王を呼たればヒルキヤの子なる宮内卿エリアキム書記官セブナおよびアサフの子なる史官ヨア出きたりて彼等に詣りけるに

ラブシヤケこれに言けるは汝等ヒゼキヤに言べし大王アッスリヤの王かく言たまふ此汝が賴むところの者は何ぞや

汝戰爭をなすの謀計と勇力とを言も只これ口の先の言語たるのみ誰を恃みて我に叛くことをせしや

視よ汝は折かかれる葦の杖なるエジプトを賴む其は人の其に倚るあればすなはちその手を刺とほすなりエジプトの王パロは凡てこれを賴む者に斯あるなり

汝等あるひは我はわれらの神ヱホバを賴むと我に言ん彼はヒゼキヤがその崇邱と祭壇とを除きたる者にあらずやまた彼はユダとエルサレムに告て汝等はエルサレムに於てこの壇の前に祷拝をなすべしと言しにあらずや

然ば請ふわが主君アッスリヤの王に約をなせ汝もし人を乗しむることを得ば我馬二千匹を汝にあたへん

汝いかにしてか吾主君の諸臣の中の最も微き一將だにも退くることを得ん汝なんぞエジプトを賴みて兵車と騎兵をこれに仰がんとするや

また我とても今ヱホバの旨によらずして比處を滅しに上れるならんやヱホバ我に此處に攻のぼりてこれを滅せと言たり

時にヒルキヤの子エリアキムおよびセブナとヨア、ラダシヤケにいひけるは請ふスリアの語をもて僕等に語りたまへ我儕これを識なり石垣の上にをる民の聞るところにてユダヤ語をもて我儕に言談たまふなかれ

ラブシヤケかれらに言ふわが君唯我を汝の主と汝とにつかはして此言をのべしめたまふならんや亦石垣の上に坐する人々にも我を遣して彼等をして汝等とともに自己の便溺を食ひ且飮にいたらしめんとしたまふにあらずやと

而してラブシヤケ起あがりユダヤ語をもて大聲に呼はり言をいだして曰けるは汝等大王アッスリヤの王の言を聽け

王かく言たまふ汝等ヒゼキヤに欺かるるなかれ彼は汝等をわが手より救ひいだすことをえざるなり

ヒゼキヤがヱホバかならず我らを救ひたまはん此邑はアッスリヤの王の手に陷らじと言て汝らにヱホバを賴ましめんとするとも

汝等ヒゼキヤの言を聽なかれアッスリヤの王かく言たまふ汝等約をなして我に降れ而して各人おのれの葡萄の樹の果を食ひ各人おのれの無花果樹の果をくらひ各人おのれの井水を飮めよ

我來りて汝等を一の國に携ゆかん其は汝儕の國のごとき國穀と酒のある地パンと葡萄園のある地油の出る橄欖と蜜とのある地なり汝等は生ることを得ん死ることあらじヒゼキヤ、ヱホバ我儕を救ひたまはんと言て汝らを勸るともこれを聽なかれ

國々の神の中執かその國をアッスリヤの王の手より救ひたりしや

ハマテおよびアルパデの神々は何處にあるセパルワイム、ヘナおよびアワの神々は何處にあるやサマリヤをわが手より救ひ出せし神々あるや

國々の神の中にその國をわが手より救ひいだせし者ありしや然ばヱホバいかでかエルサレムをわが手より救ひいだすことを得んと

然ども民は默して一言もこれに應へざりき其は王命じてこれに應ふるなかれと言おきたればなり

かくてヒルキヤの子なる宮内卿エリアキム書記官セブナおよびアサの子なる史官ヨアその衣をさきてヒゼキヤの許にいたりラブシヤケの言をこれに告たり

第19章

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ヒゼキヤ王これを聞てその衣を裂き麻布を身にまとひてヱホバの家に入り

宮内卿エリアキムと書記官セブナと祭司の中の長老等とに麻布を衣せてこれをアモツの子預言者イザヤに遣せり

彼等イザヤに言けるはヒゼキヤかく言ふ今日は艱難の日懲罰の日打棄らるる日なり嬰孩すでに產門にいたりて之を產いだす力なき也

ラブシヤケその主君なるアッスリヤの王に差遣れて來り活る神を謗る汝の神ヱホバあるひは彼の言を聞たまはん而して汝の神ヱホバその聞る言語を責罰たまふこともあらん然ば汝この遺る者の爲に祈祷をたてまつれと

ヒゼキヤ王の僕等すなはちイザヤの許にいたりければ

イザヤかれらに言けるは汝等の主君にかく言べしヱホバかく言たまふアッスリヤの王の臣僕等が我を謗るところの言を汝聞て懼るるなかれ

我かれの氣をうつして風聲を聞て己の國にかへるにいたらしめん我また彼をして自己の國に於て劍に斃れしむべしと

偖またラブシヤケは歸りゆきてアッスリヤの王がリブナに戰爭をなしをるとこるに至れり其は彼そのラキシを離れしを聞たればなり

茲にアッスリヤの王はエテオピアの王テルハカ汝に攻きたると言ふを聞てまた使者をヒゼキヤにつかはして言しむ

汝等ユダの王ヒゼキヤに告て言べし汝エルサレムはアッスリヤの王の手に陷らじと言て汝が賴むところの神に欺かるるなかれ

汝はアッスリヤの王等が萬の國々になしたるところの事を知る即ちこれを滅しつくせしなり然ば汝いかで救らんや

吾父等はゴザン、ハラン、レゼフおよびテラサルのエデンの人々等を滅ぼせしがその國々の神これを救ひたりしや

ハマテの王アルバデの王セバルワイムの邑およびヘナとアワの王等は何處にあるや

ヒゼキヤ使者の手より書を受てこれを讀みヱホバの家にのぼりゆきてヱホバの前にこれを展開げ

而してヒゼキヤ、ヱホバの前に祈りて言けるはケルビムの間にいますイスラエルの神ヱホバよ世の國々の中において只汝のみ神にいます也汝は天地を造りたまひし者にいます

ヱホバよ耳を傾けて聞たまへヱホバよ目を開きて見たまへセナケリブが活る神を謗りにおくれる言語を聞たまへ

ヱホバよ誠にアッスリヤの王等は諸の民とその國々を滅し

又その神々を火になげいれたり其等は神にあらず人の手の作れる者にして木石たればこれを滅せしなり

今われらの神ヱホバよ願くは我らをかれの手より拯ひいだしたまへ然ば世の國々皆汝ヱホバのみ神にいますことを知にいたらん

茲にアモツの子イザヤ、ヒゼキヤに言つかはしけるはイスラエルの神ヱホバかく言たまふ汝がセナケリブの事につきて我に祈るところの事は我これを聽り

ヱホバが彼の事につきて言ふところの言語は是のごとし云く處女なる女子シオンは汝を藐視じ汝を嘲る女子エルサレムは汝にむかひて頭を搖る

汝誰を謗りかつ罵詈しや汝誰にむかひて聲をあげしや汝はイスラエルの聖者にむかひて汝の目を高く擧たるなり

汝使者をもて主を謗て言ふ我夥多き兵車をひきゐて山々の嶺にのぼりレバノンの奧にいたり長高き香柏と美しき松樹を斫たふす我その境の休息所にいたりその園の林にいたる

我は外國の地をほりて水を飮む我は足の跖をもてエジプトの河々をことごとくふみ涸すなり

汝聞ずや昔われ之を作し古時よりわれ之を定めたり今われ之をおこなふ即ち堅き邑々は汝のために坵墟となるなり

是をもてそれらの中にすむ民は力弱かり懼れかつ驚くなり彼等は野の草のごとく靑菜のごとく屋蓋の草のごとく枯る苗のごとし

汝の止ると汝の出ると汝の入と汝の我にむかひて怒くるふとは我の知ところなり

汝の怒くるふ事と汝の傲慢ところの事上りてわが耳にいりたれば我圏を汝の鼻につけ轡を汝の唇にほどこして汝を元來し道へひきかへすべし

是は汝にあたふる徴なり即ち一年は穭を食ひ第二年には又その穭を食ふあらん第三年には汝ら稼ことをし穡ことをし又葡萄園をつくりてその果を食ふべし

ユダの家の逃れて遺れる者は復根を下に張り實を上に結ばん

即ち殘餘者エルサレムより出で逃避たる者シオン山より出きたらんヱホバの熱心これを爲べし

故にヱホバ、アッスリヤの王の事をかく言たまふ彼は此邑に入じ亦これに矢を發つことあらず楯を之にむかひて竪ることあらず亦壘をきづきてこれを攻ることあらじ

彼はその來し路より歸らん此邑にいることあらじヱホバこれを言ふ

我わが身のため又わが僕ダビデのためにこの邑を守りてこれを救ふべし

その夜ヱホバの使者いでてアッスリヤ人の陣營の者十八萬五千人を撃ころせり朝早く起いでて見るに皆死て屍となりをる

アッスリヤの王セナケリブすなはち起いで歸りゆきてニネベに居しが

その神ニスロクの家にありて禮拝をなしをる時にその子アデランメレクとシヤレゼル劍をもてこれを殺せり而して彼等はアララテの池に逃ゆけり是においてその子エサルハドンこれに代りて王となれり

第20章

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當時ヒゼキヤ病て死なんとせしことありアモツの子預言者イザヤ彼の許にいたりて之にいひけるはヱホバかく言たまふ汝家の人に遺命をなせ汝は死ん生ることを得じと

是においてヒゼキヤその面を壁にむけてヱホバに祈り

嗚呼ヱホバよ願くは我が眞實と一心をもて汝の前にあゆみ汝の目に適ふことを行ひしを記憶たまへと言て痛く泣り

かくてイザヤ未だ中の邑を出はなれざる間にヱホバの言これに臨みて言ふ

汝還りてわが民の君ヒゼキヤに告よ汝の父ダビデの神ヱホバかく言ふ我汝の祈祷を聽り汝の涙を看たり然ば汝を愈すべし第三日には汝ヱホバの家に入ん

我汝の齢を十五年増べし我汝とこの邑とをアッスリヤの王の手より救ひ我名のため又わが僕ダビデのためにこの邑を守らんと

是に於てイザヤ乾無花果の団塊一箇を持きたれと言ければすなはち之を持きたりてその腫物に貼たればヒゼキヤ愈ぬ

ヒゼキヤ、イザヤに言けるはヱホバが我を愈したまふ事と第三日に我がヱホバの家にのぼりゆく事とにつきては何の徴あるや

イザヤ言けるはヱホバがその言しところを爲たまはん事につきては汝ヱホバよりこの徴を得ん日影進めること十度なり若日影十度退かば如何

ヒゼキヤ答へけるは日影の十度進むは易き事なり然せざれ日影を十度しりぞかしめよ

是において預言者イザヤ、ヱホバに龥はりければアハスの日晷の上に進みし日影を十度しりぞかしめたまへり

その頃バラダンの子なるバビロンの王メロダクバラダン書および禮物をヒゼキヤにおくれり是はヒゼキヤの疾をるを聞たればなり

ヒゼキヤこれがために喜びその寶物の庫金銀香物貴き膏および武器庫ならびにその府庫にあるところの一切の物を之に見せたりその家にある物もその國の中にある物も何一箇としてヒゼキヤが彼等に見せざる者はなかりき

茲に預言者イザヤ、ヒゼキヤ王のもとに來りてこれに言けるは夫の人々は何を言しや何處より來りしやヒゼキヤ言けるは彼等は遠き國より即ちバビロンより來れり

イザヤ言ふ彼等は汝の家にて何を見しやヒゼキヤ答へて云ふ吾家にある物は皆かれら之を見たり我庫の中には我がかれに見せざる者なきなり

イザヤすなはちヒゼキヤに言けるは汝ヱホバの言を聞け

ヱホバ言たまふ視よ日いたる凡て汝の家にある物および汝の先祖等が今日までに積蓄へたる物はバビロンに携ゆかれん遺る者なかるべし

汝の身より出る汝の生んところの子等の中を彼等携へ去ん其等はバビロンの王の殿において官吏となるべし

ヒゼキヤ、イザヤに言ふ汝が語れるヱホバの言は善し又いふ若わが世にある間に大平と眞實とあらば善にあらずや

ヒゼキヤのその餘の行爲その能およびその池塘と水道を作りて水を邑にひきし事はユダの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

ヒゼキヤその先祖等とともに寝りてその子マナセこれに代りて王となれり

第21章

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マナセ十二歳にして王となり五十五年の間ヱルサレムにて世を治めたりその母の名はヘフジバといふ

マナセはヱホバの目の前に惡をなしヱホバがイスラエルの子孫の前より逐はらひたまひし國々の人がなすところの憎むべき事に傚へり

彼はその父ヒゼキヤが毀たる崇邱を改め築き又イスラエルの王アハブのなせしごとくバアルのために祭壇を築きアシラ像を作り天の衆群を拝みてこれに事へ

またヱホバの家の中に數箇の祭壇を築けり是はヱホバがこれをさして我わが名をヱルサレムにおかんと言たまひし家なり

彼ヱホバの家の二の庭に祭壇を築き

またその子に火の中を通らしめ卜占をなし魔術をおこなひ口寄者と卜筮師を取もちひヱホバの目の前に衆多の惡を爲てその震怒を惹おこせり

彼はその作りしアシラの銅像を殿にたてたりヱホバこの殿につきてダビデとその子ソロモンに言たまひしことあり云く我この家と我がイスラエルの諸の支派の中より選みたるヱルサレムとに吾名を永久におかん

彼等もし我が凡てこれに命ぜし事わが僕モーセがこれに命ぜし一切の律法を謹みて行はば我これが足をしてわがその先祖等に與へし地より重てさまよひ出ることなからしむべしと

然るに彼等は聽ことをせざりきマナセが人々を誘ひて惡をなせしことはヱホバがイスラエルの子孫の前に滅したまひし國々の人よりも甚だしかりき

是においてヱホバその僕なる預言者等をもて語て言給はく

ユダの王マナセこれらの憎むべき事を行ひその前にありしアモリ人の凡て爲しところにも踰たる惡をなし亦ユダをしてその偶像をもて罪を犯させたれば

イスラエルの神ヱホバかく言ふ視よ我ヱルサレムとユダに災害をくだす是を聞く者はその耳ふたつながら鳴ん

我サマリヤを量りし繩とアハブの家にもちひし準縄をヱルサレムにほどこし人が皿を拭ひこれを拭ひて反覆がごとくにヱルサレムを拭ひさらん

我わが產業の民の殘餘を棄てこれをその敵の手に付さん彼等はその諸の敵の擄掠にあひ掠奪にあふべし

是は彼等その先祖等がエジプトより出し日より今日にいたるまで吾目の前に惡をおこなひて我を怒らするが故なり

マナセはヱホバの目の前に惡をおこなひてユダに罪を犯させたる上にまた無辜者の血を多く流してヱルサレムのこの極よりかの極にまで盈せり

マナセのその餘の行爲とその凡て爲たる事およびその犯したる罪はユダの王の歴代志の書にしるさるるにあらすや

マナセその先祖等とともに寝りてその家の園すなはちウザの園に葬られその子アモンこれに代りて王となれり

アモンは王となれる時二十二歳にしてヱルサレムにおいて二年世を治めたりその母はヨテバのハルツの女にしてその名をメシユレメテと云ふ

アモンはその父マナセのなせしごとくヱホバの目の前に惡をなせり

すなはち彼は凡てその父のあゆみし道にあゆみその父の事へし偶像に事へてこれを拝み

その先祖等の神ヱホバを棄てヱホバの道にあゆまざりき

茲にアモンの臣僕等黨をむすびて王をその家に弑したりしが

國の民そのアモン王に敵して黨をむすびし者をことごとく撃ころせり而して國の民アモンの子ヨシアを王となしてそれに代らしむ

アモンのなしたるその餘の行爲はユダの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

アモンはウザの園にてその墓に葬られその子ヨシアこれに代りて王となれり

第22章

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ヨシアは八歳にして王となりヱルサレムにおいて三十一年世を治めたり其母はボヅカテのアダヤの女にして名をヱデダと曰ふ

ヨシアはヱホバの目に適ふ事をなしその父ダビデの道にあゆみて右にも左にも轉らざりき

ヨシア王の十八年に王メシユラムの子アザリヤの子なる書記官シヤパンをヱホバの家に遣せり即ちこれに言けらく

汝祭司の長ヒルキヤの許にのぼり行てヱホバの家にいりし銀すなはち門守が民よりあつめし者を彼に計算しめ

工事を司どるヱホバの家の監督者の手にこれを付さしめ而してまた彼らをしてヱホの家にありて工事をなすところの者にこれを付さしめ殿の破壞を修理はしめよ

即ち工匠と建築者と石工にこれを付さしめ又これをもて殿を修理ふ材木と斫石を買しむべし

但し彼らは誠實に事をなせば彼らの手にわたすところの銀の計算をかれらとするには及ばざるなり

時に祭司の長ヒルキヤ書記官シヤパンに言けるは我ヱホバの家において律法の書を見いだせりとヒルキヤすなはちその書をシヤパンにわたしたれば彼これを讀り

かくて書記官シヤパン王の許にいたり王に返事まうして言ふ僕等殿にありし金を打あけてこれを工事を司どるヱホバの家の監督者の手に付せりと

書記官シヤパンまた王につげて祭司ヒルキヤ我に一書をわたせりと言ひシヤパン其を王の前に讀けるに

王その律法の書の言を聞やその衣を裂り

而して王祭司ヒルキヤとシヤパンの子アヒカムとミカヤの子アクボルと書記官シヤパンと王の内臣アサヤとに命じて言ふ

汝等往てこの見當し書の言につきて我のため民のためユダ全國のためにヱホバに問へ其は我儕の先祖等はこの書の言に聽したがひてその凡て我儕のために記されたるところを行ふことをせざりしに因てヱホバの我儕にむかひて怒を發したまふこと甚だしかるべければなり

是において祭司ヒルキヤ、アヒカム、アクボル、シヤパンおよびアサヤ等シヤルムの妻なる女預言者ホルダの許にいたれりシヤルムはハルハスの子なるテクワの子にして衣裳の室を守る者なり時にホルダはヱルサレムの下邑に住をる彼等すなはちホルダに物語せしかば

ホルダかれらに言けるはイスラエルの神ヱホバかく言たまふ汝等を我につかはせる人に告よ

ヱホバかく言ふ我ユダの王が讀たるかの書の一切の言にしたがひて災害をこの處と此にすめる民に降さんとす

彼等はわれを棄て他の神に香を焚きその手に作れる諸の物をもて我を怒らするなり是故に我この處にむかひて怒の火を發す是は滅ざるべし

但し汝等をつかはして我に問しむるユダの王には汝等かく言べし汝が聞る言につきてイスラエルの神ヱホバかく言たまふ

汝はわが此處と此にすめる民にむかひて是は荒地となり呪詛とならんと言しを聞たる時に心柔にしてヱホバの前に身を卑し衣を裂て吾前に泣たれば我もまた聽ことをなすなりヱホバこれを言ふ

然ば視よ我なんぢを汝の先祖等に歸せしめん汝は安全に墓に歸することをうべし汝はわが此處にくだす諸の災害を目に見ることあらじと彼等すなはち王に返事まうしぬ

第23章

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是において王人をつかはしてユダとヱルサレムの長老をことごとく集め

而して王ヱホバの家にのぼれりユダの諸の人々ヱルサレムの一切の民および祭司預言者ならびに大小の民みな之にしたがふ王すなはちヱホバの家に見あたりし契約の書の言をことごとくかれらの耳に讀きかせ

而して王高座の上に立てヱホバの前に契約をなしヱホバにしたがひて歩み心をつくし精神をつくしてその誡命と律法と法度を守り此書にしるされたる此契約の言をおこなはんと言り民みなその契約に加はりぬ

かくして王祭司の長ヒルキヤとその下にたつところの祭司等および門守等に命じてヱホバの家よりしてバアルとアシラと天の衆群との爲に作りたる諸の器と執いださしめヱルサレムの外にてキデロンの野にこれを燒きその灰をベテルに持ゆかしめ

又ユダの王等が立てダの邑々とヱルサレムの四圍なる崇邱に香をたかしめたる祭司等を廢しまたバアルと日月星宿と天の衆群とに香を焚く者等をも廢せり

彼またヱホバの家よりアシラ像をとりいだしヱルサレムの外に持ゆきてキデロン川にいたりキデロン川においてこれを燒きこれを打碎きて粉となしその粉を民の墓に散し

またヱホバの家の旁にある男娼の家を毀てり其處はまた婦人がアシラのために天幕を織ところなりき

彼またユダの邑々より祭司をことごとく召よせまた祭司が香をたきたる崇邱をばゲバよりベエルシバまでこれを汚しまた門にある崇邱を毀てり是等の崇邱は一は邑の宰ヨシユアの門の入口にあり一は邑の門にありて之に入る人の左にあたる

崇邱の祭司等はエルサレムにおいてヱホバの壇にのぼることをせざりき但し彼等はその兄弟の中にありて無酵パンを食へり

王また人がその子息息女に火の中を通らしめて之をモロクにささぐることなからんためにベンヒンノムの谷にあるトペテを汚し

またユダの王等が日のためにささげてヱホバの家の門における馬をうつせりこの馬はパルリムにある侍從ナタンメレクの室にをりしなり彼また日の車を皆火に焚り

またユダの王等がアハズの桜の屋背につくりたる祭壇とマナセがヱホバの家の兩の庭につくりたる祭壇とは王これを毀ちこれを其處より取くづしてその碎片をキデロン川になげ捨たり

またイスラエルの王ソロモンが昔シドン人の憎むべき者なるアシタロテとモアブ人の憎むべき者なるケモシとアンモンの子孫の憎むべき者なるモロクのためにヱルサレムの前において殲滅山の右に築きたる崇邱も王これを汚し

また諸の像をうち碎きアシラ像をきりたふし人の骨をもてその處々に充せり

またベテルにある壇かのイスラエルに罪を犯させたるネバテの子ヤラベアムが造りし崇邱すなはちその壇もその崇邱も彼これを毀ちその崇邱を焚てこれを粉にうち碎きかつアシラ像を焚り

茲にヨシア身をめぐらして山に墓のあるを見人をやりてその墓より骨をとりきたらしめ之をその壇の上に焚てそれを汚せり即ち神の人が宣たるヱホバの言のごとし昔神の人この言語を宣しことありしなり

ヨシアまた其處に見ゆる碑は何なるやと言しに邑の人々これに告て其は汝がベテルの壇にむかひて爲るこの事等をユダより來りて宣たる神の人の墓なりと言ければ

すなはち其には手をつくるなかれ誰もその骨を移すなかれと言り是をもてその骨とサマリヤより來りし預言者の骨には手をつけざりき

またイスラエルの王等がサマリヤの邑々に造りてヱホバを怒せし崇邱の家も皆ヨシアこれを取のぞき凡てそのベテルになせしごとくに之に事をなせり

彼また其處にある崇邱の祭司等を壇の上にころし人の骨を壇の上に焚てヱルサレムに歸りぬ

而して王一切の民に命じて言ふ汝らこの契約の書に記されたるごとくに汝らの神ヱホバに逾越の節を執行ふべしと

士師のイスラエルを治めし日より已來もまたユダの王等とイスラエルの王等の代にも斯のごとき逾越の節を守りしことはなかりしが

ヨシア王の十八年にいたりてヱルサレムにて斯逾越節をヱホバに守りしなり

ヨシアまた祭司ヒルキヤがヱホバの家にて見いだせし書に記されたる律法の言を世におこなはんために口寄者と卜筮師とテラピムと偶像およびユダの地とヱルサレムに見ゆる諸の憎むべき者を取のぞけり

ヨシアの如くに心を盡し精神を盡し力を盡してモーセの法に全くしたがひてヱホに歸向せし王はヨシアの先にはあらざりきまた彼の後にも彼のごとき者はなし

斯有しかどもヱホバはユダにむかひて怒を發したるその大いなる燃たつ震怒を息ることをしたまはざりき是はマナセ諸の憤らしき事をもてヱホバを怒らせしによるなり

ヱホバすなはち言たまはく我イスラエルを移せし如くにユダをもわが目の前より拂ひ移し我が選みし此ヱルサレムの邑と吾名をそこに置んといひしこの殿とを棄べしと

ヨシアのその餘の行爲とその凡て爲たる事はユダの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

ヨシアの代にエジプトの王パロネコ、アッスリヤの王と戰はんとてユフラテ河をさして上り來しがヨシア王これを防がんとて進みゆきければ彼これに出あひてメギドンにこれを殺せり

その僕等すなはちこれが死骸を車にのせてメギドンよりヱルサレムに持ゆきこれをその墓に葬れり國の民ここに於てヨシアの子ヱホアハズを取りこれに膏をそそぎて王となしてその父にかはらしめたり

ヱホアハズは王となれる時二十三歳にしてヱルサレムにて三月世を治めたりその母はリブナのエレミヤの女にして名をハムタルと云ふ

ヱホアハズはその先祖等が凡てなしたるごとくにヱホバの目の前に惡をなせしが

パロネコ彼をハマテの地のリブラに繋ぎおきてヱルサレムにおいて王となりをることを得ざらしめ且銀百タラント金一タラントの罰金を國に課したり

而してパロネコはヨシアの子エリアキムをしてその父ヨシアにかはりて王とならしめ彼の名をヱホヤキムと改めヱホアハズを曳て去ぬヱホアハズはエジプトにいたりて其處に死り

ヱホヤキムは金銀をパロにおくれり即ち彼國に課してパロの命のままに金を出さしめ國の民各人に割つけて金銀を征取りてこれをパロネコにおくれり

ヱホヤキムは二十五歳にして王となりヱルサレムにおいて十一年世を治めたりその母はルマのペダヤの女にして名をゼブタと云ふ

ヱホヤキムはその先祖等が凡てなしたるごとくにヱホバの目の前に惡をなせり

第24章

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ヱホヤキムの代にバビロンの王ネブカデネザル上り來りければヱホヤキムこれに臣服して三年をへたりしが遂にひるがへりて之に叛けり

ヱホバ、カルデヤの軍兵スリアの軍兵モアブの軍兵アンモンの軍兵をしてヱホヤキムの所に攻きたらしめたまへり即ちユダを滅さんがためにこれをユダに遣はしたまふヱホバがその僕なる預言者等によりて言たまひし言語のごとし

この事は全くヱホバの命によりてユダにのぞみし者にてユダをヱホバの目の前より拂ひ除かんがためなりき是はマナセがその凡てなす所において罪を犯したるにより

また無辜人の血をながし無辜人の血をヱルサレムに充したるによりてなりヱホバはその罪を赦すことをなしたまはざりき

ヱホヤキムのその餘の行爲とその凡て爲たる事はユダの王の歴代志の書にしるさるるにあらずや

ヱホヤキムその先祖等とともに寝りその子ヱコニアこれに代りて王となれり

却説またエジプトの王は重てその國より出きたらざりき其はバビロンの王エジプトの河よりユフラテ河まで凡てエジプトの王に屬する者を悉く取たればなり

ヱコニアは王となれる時十八歳にしてヱルサレムにて三月世を治めたりその母はヱルサレムのエルナタンの女にして名をネホシタと云ふ

ヱコニアはその父の凡てなしたるごとくにヱホバの目の前に惡をなせり

その頃バビロンの王ネブカデネザルの臣ヱルサレムに攻のぼりて邑を圍めり

即ちバビロンの王ネブカデネザル邑に攻來りてその臣にこれを攻惱さしめたれば

ユダの王ヱコニアその母その臣その牧伯等およびその侍從等とともに出てバビロンの王に降れりバビロンの王すなはち彼を執ふ是はその代の八年にあたれり

而して彼ヱホバの家の諸の寶物および王の家の寶物を其處より携へ去りイスラルの王ソロモンがヱホバの宮に造りたる諸の金の器を切はがせりヱホバの言たまひしごとし

彼またヱルサレムの一切の民および一切の牧伯等と一切の大なる能力ある者ならびに工匠と鍛冶とを一萬人擄へゆけり遺れる者は國の民の賤き者のみなりき

彼すなはちヱコニアをバビロンに擄へゆきまた王の母王の妻等および侍從と國の中の能力ある者をもエルサレムよりバビロンに擄へうつせり

凡て能力ある者七千人工匠と鍛冶一千人ならびに強壯して善戰ふ者是等をバビロンの王擄へてバビロンにうつせり

而してバビロンの王またヱコニアの父の兄弟マツタニヤを王となしてヱコニアに代へ其が名をゼデキヤと改めたり

ゼデキヤは二十一歳にして王となりヱルサレムにて十一年世を治めたりその母はリブナのヱレミヤの女にして名をハムタルと曰ふ

ゼデキヤはエホヤキムが凡てなしたるごとくにヱホバの目の前に惡をなせり

ヱルサレムとユダに斯る事ありしはヱホバの震怒による者にしてヱホバつひにその人々を自己の前よりはらひ棄たまへり偖またゼデキヤはバビロンの王に叛けり

第25章

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茲にゼデキヤの代の九年の十月十日にバビロンの王ネブカデネザルその諸軍勢を率てヱルサレムに攻きたりこれにむかひて陣を張り周圍に雲梯を建てこれを攻たり

かくこの邑攻かこまれてゼデキヤ王の十一年にまでおよびしが

その四月九日にいたりて城邑の中饑ること甚だしくなりその地の民食物を得ざりき

是をもて城邑つひに打破られければ兵卒はみな王の園の邊なる二箇の石垣の間の途より夜の中に逃いで皆平地の途にしたがひておちゆけり時にカルデア人は城邑を圍みをる

茲にカルデア人の軍勢王を追ゆきヱリコの平地にてこれに追つきけるにその軍勢みな彼を離れて散しかば

カルデア人王を執へてこれをリブラにをるバビロンの王の許に曳ゆきてその罪をさだめ

ゼデキヤの子等をゼデキヤの目の前に殺しゼデキヤの目を抉しこれを鋼索につなぎてバビロンにたづさへゆけり

バビロンの王ネブカデネザルの代の十九年の五月七日にバビロンの王の臣侍衛の長ネブザラダン、ヱルサレムにきたり

ヱホバの室と王の室を燒き火をもてヱルサレムのすべての室と一切の大なる室を燒り

また侍衛の長とともにありしカルデア人の軍勢ヱルサレムの四周の石垣を毀てり

侍衛の長ネブザラダンすなはち邑に遺されし殘餘の民およびバビロンの王に降りし降人と群衆の殘餘者を擄へうつせり

但し侍衛の長その地の或貧者をのこして葡萄をつくる者となし農夫となせり

カルデア人またヱホバの家の銅の柱と洗盤の臺と銅の海をくだきてその銅をバビロンに運び

また鍋と火鏟と燈剪と匙および凡て役事に用ふる銅の器を取り

侍衛の長また火盤と鉢など金銀にて作れる物を取り

またソロモンがヱホバの室に造しところの二の柱と一の海と臺とを取り此もろもろの銅の重は量るべからず

この柱は高さ十八キユビトにしてその上に銅の頂ありその頂の高は三キユビトその頂の四周に網子と石榴とありて皆銅なり他の柱とその網子もこれに同じ

侍衛の長は祭司の長セラヤと第二の祭司ゼパニヤと三人の門守を執へ

また兵卒を督どる一人の寺人と王の前にはべる者の中邑にて遇しところの者五人とその地の民を募る軍勢の長なる書記官と城邑の中にて遇しところの六十人の者を邑より擄へされり

侍衛の長ネブザラダンこれらを執へてリブラにをるバビロンの王の許にいたりければ

バビロンの王ハマテの地のリブラにてこれらを撃殺せりかくユダはおのれの地よりとらへ移されたり

かくてバビロンの王ネブカデネザルは自己が遺してユダの地に止らしめし民の上にシヤパンの子なるアヒカムの子ゲダリヤをたててこれをその督者となせり

茲に軍勢の長等およびこれに屬する人々みなバビロンの王がゲダリヤを督者となせしことを聞しかばすなはちネタニヤの子イシマエル、カレヤの子ヨナハン、ネトバ人タンホメテの子セラヤおよび或マアカ人の子ヤザニヤならびに彼らに屬する人々ミヅパにきたりてゲダリヤの許にいたれり

ゲダリヤすなはち彼等とかれらに屬する人々に誓ひてこれに言けるは汝等カルデア人の僕となることを恐るるなかれこの地に住てバビロンの王につかへなば汝等幸福ならんと

然るに七月に王の血統なるエリシヤマの子ネタニヤの子なるイシマエル十人の者とともに來りてゲダリヤを撃ころし又彼とともにミヅパにをりしユダヤ人とカルデア人を殺せり

是において大小の民および軍勢の長等みな起てエジプトにおもむけり是はカルデヤ人をおそれたればなり

ユダの王ヱホヤキムがとらへ移れたる後三十七年の十二月二十七日バビロンの王エビルメロダクその代の一年にユダの王ヱホヤキムを獄より出してその首をあげしめ

善言をもて彼をなぐさめその位をバビロンにともに居るところの王等の位よりも高くし

その獄の衣服を易しめたりヱホヤキムは一生のあひだつねに王の前に食をなせり

かれ一生のあひだたえず日々の分を王よりたまはりてその食物となせり