刑法 (昭和16年法律第61号による改正)


目次

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刑法

 第一編 總則

  第一章 法例

  第二章 刑

  第三章 期間計算

  第四章 刑ノ執行猶豫

  第五章 假出獄

  第六章 時効

  第七章 犯罪ノ不成立及ヒ刑ノ減免

  第八章 未遂罪

  第九章 倂合罪

  第十章 累犯

  第十一章 共犯

  第十二章 酌量減輕

  第十三章 加減例

 第二編 罪

  第一章 皇室ニ對スル罪

  第二章 內亂ニ關スル罪

  第三章 外患ニ關スル罪

  第四章 國交ニ關スル罪

  第五章 公務ノ執行ヲ妨害スル罪

  第六章 逃走ノ罪

  第七章 犯人藏匿及ヒ證憑湮滅ノ罪

  第七章ノ二 安寧秩序ニ對スル罪

  第八章 騷擾ノ罪

  第九章 放火及ヒ失火ノ罪

  第十章 溢水及ヒ水利ニ關スル罪

  第十一章 往來ヲ妨害スル罪

  第十二章 住居ヲ侵ス罪

  第十三章 祕密ヲ侵ス罪

  第十四章 阿片煙ニ關スル罪

  第十五章 飮料水ニ關スル罪

  第十六章 通貨僞造ノ罪

  第十七章 文書僞造ノ罪

  第十八章 有價證券僞造ノ罪

  第十九章 印章僞造ノ罪

  第二十章 僞證ノ罪

  第二十一章 誣吿ノ罪

  第二十二章 猥褻、姦淫及ヒ重婚ノ罪

  第二十三章 賭博及ヒ富籖ニ關スル罪

  第二十四章 禮拜所及ヒ墳墓ニ關スル罪

  第二十五章 瀆職ノ罪

  第二十六章 殺人ノ罪

  第二十七章 傷害ノ罪

  第二十八章 過失傷害ノ罪

  第二十九章 墮胎ノ罪

  第三十章 遺棄ノ罪

  第三十一章 逮捕及ヒ監禁ノ罪

  第三十二章 脅迫ノ罪

  第三十三章 略取及ヒ誘拐ノ罪

  第三十四章 名譽ニ對スル罪

  第三十五章 信用及ヒ業務ニ對スル罪

  第三十六章 竊盜及ヒ强盜ノ罪

  第三十七章 詐欺及ヒ恐喝ノ罪

  第三十八章 橫領ノ罪

  第三十九章 贓物ニ關スル罪

  第四十章 毀棄及ヒ隱匿ノ罪

本則

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刑法
第一編 總則
第四條 
(略)
一 (略)
二 (略)
三 第百九十三條、第百九十五條第二項、第百九十七條乃至第百九十七條ノ三ノ罪及ヒ第百九十五條第二項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル罪
第十八條 
罰金ヲ完納スルコト能ハサル者ハ一日以上二年以下ノ期間之ヲ勞役場ニ留置ス
(略)
罰金ヲ倂科シタル場合又ハ罰金ト科料トヲ倂科シタル場合ニ於ケル留置ノ期間ハ三年ヲ超ユルコトヲ得ス科料ヲ倂科シタル場合ニ於ケル留置ノ期間ハ六十日ヲ超ユルコトヲ得ス
(略)
(略)
(略)
(略)
(略)
第十九条 
(略)
一 (略)
二 (略)
三 犯罪行爲ヨリ生シ若クハ之ニ因リ得タル物又ハ犯罪行為ノ報酬トシテ得タル物
四 前號ニ記載シタル物ノ対価トシテ得タル物
沒收ハ其物犯人以外ノ者ニ屬セサルトキニ限ル但犯罪ノ後犯人以外ノ者情ヲ知リテ其物ヲ取得シタルトキハ犯人以外ノ者ニ屬スル場合ト雖モ之ヲ没収スルコトヲ得
第十九條ノ二 
前條第一項第三號及ヒ第四號ニ記載シタル物ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其價額ヲ追徵スルコトヲ得
第二編 罪
第九十六條ノ二 
强制執行ヲ免ルル目的ヲ以テ財產ヲ隱匿、損壞若クハ假裝讓渡シ又ハ假裝ノ債務ヲ負擔シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十六條ノ三 
僞計若クハ威力ヲ用ヒ公ノ競賣又ハ入札ノ公正ヲ害スヘキ行爲ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
公正ナル價格ヲ害シ又ハ不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ談合シタル者亦同シ
第七章 犯人藏匿及ヒ證憑湮滅ノ罪
(略)
第七章ノ二 安寧秩序ニ對スル罪
第百五條ノ二 
人心ヲ惑亂スルコトヲ目的トシテ虛僞ノ事實ヲ流布シタル者ハ五年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
銀行預金ノ取付其他經濟上ノ混亂ヲ誘發スルコトヲ目的トシテ虛僞ノ事實ヲ流布シタル者ハ七年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第百五條ノ三 
戰時、天災其他ノ事變ニ際シ人心ノ惑亂又ハ經濟上ノ混亂ヲ誘發スヘキ虛僞ノ事實ヲ流布シタル者ハ三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第百五條ノ四 
戰時、天災其他ノ事變ニ際シ暴利ヲ得ルコトヲ目的トシテ金融界ノ攪亂、重要物資ノ生產又ハ配給ノ阻害其他ノ方法ニ依リ國民經濟ノ運行ヲ著シク阻害スル虞アル行爲ヲ爲シタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情狀ニ因リ十萬圓以下ノ罰金ヲ倂科スルコトヲ得
第八章 騒擾ノ罪
(略)
第百十六條 
火ヲ失シテ第百八條ニ記載シタル物又ハ他人ノ所有ニ係ル第百九條ニ記載シタル物ヲ燒燬シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
(略)
第百十七條ノ二 
第百十六條又ハ前條第一項ノ行爲カ業務上必要ナル注意ヲ怠リタルニ因ルトキ又ハ重大ナル過失ニ出テタルトキハ三年以上ノ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第百五十七條 
公務員ニ對シ虛僞ノ申立ヲ爲シ權利、義務ニ關スル公正證書ノ原本ニ不實ノ記載ヲ爲サシメタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
公務員ニ對シ虛僞ノ申立ヲ爲シ免狀、鑑札又ハ旅劵ニ不實ノ記載ヲ爲サシメタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
(略)
第百九十七條 
公務員又ハ仲裁人其職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス請託ヲ受ケタル場合ニ於テハ五年以下ノ懲役ニ處ス
公務員又ハ仲裁人タラントスル者其擔當スヘキ職務ニ關シ請託ヲ受ケテ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ公務員又ハ仲裁人ト爲リタル場合ニ於テハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百九十七條ノ二 
公務員又ハ仲裁人其職務ニ關シ請託ヲ受ケテ第三者ニ賄賂ヲ供與セシメ又ハ其供與ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百九十七條ノ三 
公務員又ハ仲裁人前二條ノ罪ヲ犯シ因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
公務員又ハ仲裁人其職務上不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササリシコトニ關シ賄賂ヲ收受、要求若クハ約束シ又ハ第三者ニ之ヲ供與セシメ其供與ヲ要求若クハ約束シタルトキ亦同シ
公務員又ハ仲裁人タリシ者其在職中請託ヲ受ケテ職務上不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササリシコトニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百九十七條ノ四 
犯人又ハ情ヲ知リタル第三者ノ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス其全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其價額ヲ追徵ス
第百九十八條 
第百九十七條乃至第百九十七條ノ三ニ規定スル賄賂ヲ供與シ又ハ其申込若クハ約束ヲ爲シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス

改正法令

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朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル刑法中改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽

昭和十六年三月十一日

內閣總理大臣 侯爵 近衛 文麿
內務大臣 男爵 平沼騏一郎
厚生大臣 金光 庸夫
拓務大臣 秋  田清
陸軍大臣 東條 英機
外務大臣 松岡 洋右
文部大臣 橋田 邦彦
商工大臣 小林 一三
大藏大臣 河田  烈
遞信大臣 村田 省藏
農林大臣 石黒 忠篤
海軍大臣 及川古志郎
鐵道大臣 小川郷太郎
司法大臣 柳川 平助


法律第六十一號

刑法中左ノ通改正ス

目次中「第七章 犯人藏匿及ヒ證憑湮滅ノ罪」ノ次ニ「第七章ノ二 安寧秩序ニ對スル罪」ヲ加フ

第四條第三號中「第百九十七條ノ罪」ヲ「第百九十七條乃至第百九十七條ノ三ノ罪」ニ改ム

第十八條第一項中「一日以上一年以下」ヲ「一日以上二年以下」ニ改メ同條第三項ヲ左ノ如ク改ム

罰金ヲ倂科シタル場合又ハ罰金ト科料トヲ倂科シタル場合ニ於ケル留置ノ期閒ハ三年ヲ超ユルコトヲ得ス科料ヲ倂科シタル場合ニ於ケル留置ノ期閒ハ六十日ヲ超ユルコトヲ得ス

第十九條第一項第三號中「又ハ之ニ因リ得タル物」ヲ「若クハ之ニ因リ得タル物又ハ犯罪行爲ノ報酬トシテ得タル物」ニ改メ同項ニ左ノ一號ヲ加フ

四 前號ニ記載シタル物ノ對價トシテ得タル物

同條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ

但犯罪ノ後犯人以外ノ者情ヲ知リテ其物ヲ取得シタルトキハ犯人以外ノ者ニ屬スル場合ト雖モ之ヲ沒收スルコトヲ得
第十九條ノ二 
前條第一項第三號及ヒ第四號ニ記載シタル物ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其價額ヲ追徵スルコトヲ得

第二編第五章中第九十六條ノ次ニ左ノ二條ヲ加フ

第九十六條ノ二 
强制執行ヲ免ルル目的ヲ以テ財產ヲ隱匿、損壞若クハ假裝讓渡シ又ハ假裝ノ債務ヲ負擔シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十六條ノ三 
僞計若クハ威力ヲ用ヒ公ノ競賣又ハ入札ノ公正ヲ害スヘキ行爲ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
公正ナル價格ヲ害シ又ハ不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ談合シタル者亦同シ

第百五條ノ次ニ左ノ一章ヲ加フ

第七章ノ二 安寧秩序ニ對スル罪
第百五條ノ二 
人心ヲ惑亂スルコトヲ目的トシテ虛僞ノ事實ヲ流布シタル者ハ五年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
銀行預金ノ取付其他經濟上ノ混亂ヲ誘發スルコトヲ目的トシテ虛僞ノ事實ヲ流布シタル者ハ七年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第百五條ノ三 
戰時、天災其他ノ事變ニ際シ人心ノ惑亂又ハ經濟上ノ混亂ヲ誘發スヘキ虛僞ノ事實ヲ流布シタル者ハ三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第百五條ノ四 
戰時、天災其他ノ事變ニ際シ暴利ヲ得ルコトヲ目的トシテ金融界ノ攪亂、重要物資ノ生產又ハ配給ノ阻害其他ノ方法ニ依リ國民經濟ノ運行ヲ著シク阻害スル虞アル行爲ヲ爲シタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情狀ニ因リ十萬圓以下ノ罰金ヲ倂科スルコトヲ得

第百十六條第一項中「三百圓以下ノ罰金」ヲ「千圓以下ノ罰金」ニ改ム

第百十七條ノ二 
第百十六條又ハ前條第一項ノ行爲カ業務上必要ナル注意ヲ怠リタルニ因ルトキ又ハ重大ナル過失ニ出テタルトキハ三年以上ノ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス

第百五十七條第一項中「二年以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金」ヲ「五年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金」ニ、同條第二項中「六月以下ノ懲役又ハ五十圓以下ノ罰金」ヲ「一年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金」ニ改ム

第百九十七條 
公務員又ハ仲裁人其職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス請託ヲ受ケタル場合ニ於テハ五年以下ノ懲役ニ處ス
公務員又ハ仲裁人タラントスル者其擔當スヘキ職務ニ關シ請託ヲ受ケテ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ公務員又ハ仲裁人ト爲リタル場合ニ於テハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百九十七條ノ二 
公務員又ハ仲裁人其職務ニ關シ請託ヲ受ケテ第三者ニ賄賂ヲ供與セシメ又ハ其供與ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百九十七條ノ三 
公務員又ハ仲裁人前二條ノ罪ヲ犯シ因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
公務員又ハ仲裁人其職務上不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササリシコトニ關シ賄賂ヲ收受、要求若クハ約束シ又ハ第三者ニ之ヲ供與セシメ其供與ヲ要求若クハ約束シタルトキ亦同シ
公務員又ハ仲裁人タリシ者其在職中請託ヲ受ケテ職務上不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササリシコトニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百九十七條ノ四 
犯人又ハ情ヲ知リタル第三者ノ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス其全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其價額ヲ追徵ス
第百九十八條 
第百九十七條乃至第百九十七條ノ三ニ規定スル賄賂ヲ供與シ又ハ其申込若クハ約束ヲ爲シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス

   附 則

本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム



 

この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)


この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。