朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル刑法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽

明治四十年四月二十三日

內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 寺內正毅
農商務大臣 松岡康毅
海軍大臣 齋藤 實
大藏大臣 法學博士 阪谷芳郞
遞信大臣 山縣伊三郞
司法大臣 松田正久
內務大臣 原  敬
文部大臣 牧野伸顯
外務大臣 子爵 林  董


法律第四十五號

刑法別册ノ通之ヲ定ム

此法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

明治十三年法律第三十六號布吿刑法ハ此法律施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス

  (別册)

刑法

 第一編 總則

  第一章 法例

  第二章 刑

  第三章 期間計算

  第四章 刑ノ執行猶豫

  第五章 假出獄

  第六章 時効

  第七章 犯罪ノ不成立及ヒ刑ノ減免

  第八章 未遂罪

  第九章 倂合罪

  第十章 累犯

  第十一章 共犯

  第十二章 酌量減輕

  第十三章 加減例

 第二編 罪

  第一章 皇室ニ對スル罪

  第二章 內亂ニ關スル罪

  第三章 外患ニ關スル罪

  第四章 國交ニ關スル罪

  第五章 公務ノ執行ヲ妨害スル罪

  第六章 逃走ノ罪

  第七章 犯人藏匿及ヒ證憑湮滅ノ罪

  第八章 騷擾ノ罪

  第九章 放火及ヒ失火ノ罪

  第十章 溢水及ヒ水利ニ關スル罪

  第十一章 往來ヲ妨害スル罪

  第十二章 住居ヲ侵ス罪

  第十三章 祕密ヲ侵ス罪

  第十四章 阿片煙ニ關スル罪

  第十五章 飮料水ニ關スル罪

  第十六章 通貨僞造ノ罪

  第十七章 文書僞造ノ罪

  第十八章 有價證券僞造ノ罪

  第十九章 印章僞造ノ罪

  第二十章 僞證ノ罪

  第二十一章 誣吿ノ罪

  第二十二章 猥褻、姦淫及ヒ重婚ノ罪

  第二十三章 賭博及ヒ富籖ニ關スル罪

  第二十四章 禮拜所及ヒ墳墓ニ關スル罪

  第二十五章 瀆職ノ罪

  第二十六章 殺人ノ罪

  第二十七章 傷害ノ罪

  第二十八章 過失傷害ノ罪

  第二十九章 墮胎ノ罪

  第三十章 遺棄ノ罪

  第三十一章 逮捕及ヒ監禁ノ罪

  第三十二章 脅迫ノ罪

  第三十三章 略取及ヒ誘拐ノ罪

  第三十四章 名譽ニ對スル罪

  第三十五章 信用及ヒ業務ニ對スル罪

  第三十六章 竊盜及ヒ强盜ノ罪

  第三十七章 詐欺及ヒ恐喝ノ罪

  第三十八章 橫領ノ罪

  第三十九章 贓物ニ關スル罪

  第四十章 毀棄及ヒ隱匿ノ罪

刑法
第一編 總則
第一章 法例
第一條
本法ハ何人ヲ問ハス帝國內ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス
帝國外ニ在ル帝國船舶ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ付キ亦同シ
第二條
本法ハ何人ヲ問ハス帝國外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス
一 第七十三條乃至第七十六條ノ罪
二 第七十七條乃至第七十九條ノ罪
三 第八十一條乃至第八十九條ノ罪
四 第百四十八條ノ罪及ヒ其未遂罪
五 第百五十四條、第百五十五條、第百五十七條及ヒ第百五十八條ノ罪
六 第百六十二條及ヒ第百六十三條ノ罪
七 第百六十四條乃至第百六十六條ノ罪及ヒ第百六十四條第二項、第百六十五條第二項、第百六十六條第二項ノ未遂罪
第三條
本法ハ帝國外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル帝國臣民ニ之ヲ適用ス
一 第百八條、第百九條第一項ノ罪、第百八條、第百九條第一項ノ例ニ依リ處斷ス可キ罪及ヒ此等ノ罪ノ未遂罪
二 第百十九條ノ罪
三 第百五十九條乃至第百六十一條ノ罪
四 第百六十七條ノ罪及ヒ同條第二項ノ未遂罪
五 第百七十六條乃至第百七十九條、第百八十一條及ヒ第百八十四條ノ罪
六 第百九十九條、第二百條ノ罪及ヒ其未遂罪
七 第二百四條及ヒ第二百五條ノ罪
八 第二百十四條乃至第二百十六條ノ罪
九 第二百十八條ノ罪及ヒ同條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル罪
十 第二百二十條及ヒ第二百二十一條ノ罪
十一 第二百二十四條乃至第二百二十八條ノ罪
十二 第二百三十條ノ罪
十三 第二百三十五條乃至第二百三十六條、第二百三十八條乃至第二百四十一條及ヒ第二百四十三條ノ罪
十四 第二百四十六條乃至第二百五十條ノ罪
十五 第二百五十三條ノ罪
十六 第二百五十六條第二項ノ罪
第四條
本法ハ帝國外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル帝國ノ公務員ニ之ヲ適用ス
一 第百一條ノ罪及ヒ其未遂罪
二 第百五十六條ノ罪
三 第百九十三條、第百九十五條第二項、第百九十七條ノ罪及ヒ第百九十五條第二項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル罪
第五條
外國ニ於テ確定裁判ヲ受ケタル者ト雖モ同一行爲ニ付キ更ニ處罰スルコトヲ妨ケス但犯人既ニ外國ニ於テ言渡サレタル刑ノ全部又ハ一部ノ執行ヲ受ケタルトキハ刑ノ執行ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第六條
犯罪後ノ法律ニ因リ刑ノ變更アリタルトキハ其輕キモノヲ適用ス
第七條
本法ニ於テ公務員ト稱スルハ官吏、公吏、法令ニ依リ公務ニ從事スル議員、委員其他ノ職員ヲ謂フ
公務所ト稱スルハ公務員ノ職務ヲ行フ所ヲ謂フ
第八條
本法ノ總則ハ他ノ法令ニ於テ刑ヲ定メタルモノニ亦之ヲ適用ス但其法令ニ特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラス
第二章 刑
第九條
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及ヒ科料ヲ主刑トシ沒收ヲ附加刑トス
第十條
主刑ノ輕重ハ前條記載ノ順序ニ依ル但無期禁錮ト有期懲役トハ禁錮ヲ以テ重シトシ有期禁錮ノ長期有期懲役ノ長期ノ二倍ヲ超ユルトキハ禁錮ヲ以テ重シトス
同種ノ刑ハ長期ノ長キモノ又ハ多額ノ多キモノヲ以テ重シトシ長期又ハ多額ノ同シキモノハ其短期ノ長キモノ又ハ寡額ノ多キモノヲ以テ重シトス
二個以上ノ死刑又ハ長期若クハ多額及ヒ短期若クハ寡額ノ同シキ同種ノ刑ハ犯情ニ依リ其輕重ヲ定ム
第十一條
死刑ハ監獄內ニ於テ絞首シテ之ヲ執行ス
死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ其執行ニ至ルマテ之ヲ監獄ニ拘置ス
第十二條
懲役ハ無期及ヒ有期トシ有期懲役ハ一月以上十五年以下トス
懲役ハ監獄ニ拘置シ定役ニ服ス
第十三條
禁錮ハ無期及ヒ有期トシ有期禁錮ハ一月以上十五年以下トス
禁錮ハ監獄ニ拘置ス
第十四條
有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ加重スル場合ニ於テハ二十年ニ至ルコトヲ得之ヲ減輕スル場合ニ於テハ一月以下ニ降スコトヲ得
第十五條
罰金ハ二十圓以上トス但之ヲ減輕スル場合ニ於テハ二十圓以下ニ降スコトヲ得
第十六條
拘留ハ一日以上三十日未滿トシ拘留場ニ拘置ス
第十七條
科料ハ十錢以上二十圓未滿トス
第十八條
罰金ヲ完納スルコト能ハサル者ハ一日以上一年以下ノ期間之ヲ勞役場ニ留置ス
科料ヲ完納スルコト能ハサル者ハ一日以上三十日以下ノ期間之ヲ勞役場ニ留置ス
科料ヲ倂科シタル場合ト雖モ留置ノ期間ハ六十日ヲ超ユルコトヲ得ス
罰金又ハ科料ノ言渡ヲ爲ストキハ其言渡ト共ニ罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサル場合ニ於ケル留置ノ期間ヲ定メ之ヲ言渡ス可シ
罰金ニ付テハ裁判確定後三十日內科料ニ付テハ裁判確定後十日內ハ本人ノ承諾アルニ非サレハ留置ノ執行ヲ爲スコトヲ得ス
罰金又ハ科料ノ言渡ヲ受ケタル者其幾分ヲ納ムルトキハ罰金又ハ科料ノ金額ト留置日數トノ割合ニ從ヒ其金額ニ相當スル日數ヲ控除シテ之ヲ留置ス
留置期間內罰金又ハ科料ヲ納ムルトキハ前項ノ割合ヲ以テ殘日數ニ充ツ
留置一日ノ割合ニ滿タサル金額ハ之ヲ納ムルコトヲ得ス
第十九條
左ニ記載シタル物ハ之ヲ沒收スルコトヲ得
一 犯罪行爲ヲ組成シタル物
二 犯罪行爲ニ供シ又ハ供セントシタル物
三 犯罪行爲ヨリ生シ若クハ之ニ因リ得タル物
沒收ハ其物犯人以外ノ者ニ屬セサルトキニ限ル
第二十條
拘留又ハ科料ノミニ該ル罪ニ付テハ特別ノ規定アルニ非サレハ沒收ヲ科スルコトヲ得ス但第十九條第一項第一號ニ記載シタル物ノ沒收ハ此限ニ在ラス
第二十一條
未決勾留ノ日數ハ其全部又ハ一部ヲ本刑ニ算入スルコトヲ得
第三章 期間計算
第二十二條
期間ヲ定ムルニ月又ハ年ヲ以テシタルトキハ曆ニ從ヒテ之ヲ計算ス
第二十三條
刑期ハ裁判確定ノ日ヨリ起算ス
拘禁セラレサル日數ハ裁判確定後ト雖モ刑期ニ算入セス
第二十四條
受刑ノ初日ハ時間ヲ論セス全一日トシテ之ヲ計算ス時効期間ノ初日亦同シ
放免ハ刑期終了ノ翌日ニ於テ之ヲ行フ
第四章 刑ノ執行猶豫
第二十五條
左ニ記載シタル者二年以下ノ懲役若クハ禁錮ノ言渡ヲ受ケタルトキハ情狀ニ因リ裁判確定ノ日ヨリ一年以上五年以下ノ期間內其執行ヲ猶豫スルコトヲ得
一 前ニ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルコトナキ者
二 前ニ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルコトアルモ其執行ヲ終リ又ハ其執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ七年以內ニ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルコトナキ者
第二十六條
左ニ記載シタル場合ニ於テハ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消ス可シ
一 猶豫ノ期間內更ニ罪ヲ犯シ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
二 猶豫ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
三 前條第二號ニ記載シタル者ヲ除ク外猶豫ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルコト發覺シタルトキ
第二十七條
刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消サルルコトナクシテ猶豫ノ期間ヲ經過シタルトキハ刑ノ言渡ハ其効力ヲ失フ
第五章 假出獄
第二十八條
懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル者改悛ノ狀アルトキハ有期刑ニ付テハ其刑期三分ノ一無期刑ニ付テハ十年ヲ經過シタル後行政官廳ノ處分ヲ以テ假ニ出獄ヲ許スコトヲ得
第二十九條
左ニ記載シタル場合ニ於テハ假出獄ノ處分ヲ取消スコトヲ得
一 假出獄中更ニ罪ヲ犯シ罰金以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
二 假出獄前ニ犯シタル他ノ罪ニ付キ罰金以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
三 假出獄前他ノ罪ニ付キ罰金以上ノ刑ニ處セラレタル者ニシテ其刑ノ執行ヲ爲ス可キトキ
四 假出獄取締規則ニ違背シタルトキ
假出獄ノ處分ヲ取消シタルトキハ出獄中ノ日數ハ刑期ニ算入セス
第三十條
拘留ニ處セラレタル者ハ情狀ニ因リ何時ニテモ行政官廳ノ處分ヲ以テ假ニ出場ヲ許スコトヲ得
罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサルニ因リ留置セラレタル者亦同シ
第六章 時効
第三十一條
刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ時効ニ因リ其執行ノ免除ヲ得
第三十二條
時効ハ刑ノ言渡確定シタル後左ノ期間內其執行ヲ受ケサルニ因リ完成ス
一 死刑ハ三十年
二 無期ノ懲役又ハ禁錮ハ二十年
三 有期ノ懲役又ハ禁錮ハ十年以上ハ十五年、三年以上ハ十年、三年未滿ハ五年
四 罰金ハ三年
五 拘留、科料及ヒ沒收ハ一年
第三十三條
時効ハ法令ニ依リ執行ヲ猶豫シ又ハ之ヲ停止シタル期間內ハ進行セス
第三十四條
時効ハ刑ノ執行ニ付キ犯人ヲ逮捕シタルニ因リ之ヲ中斷ス
罰金、科料及ヒ沒收ノ時効ハ執行行爲ヲ爲シタルニ因リ之ヲ中斷ス
第七章 犯罪ノ不成立及ヒ刑ノ減免
第三十五條
法令又ハ正當ノ業務ニ因リ爲シタル行爲ハ之ヲ罰セス
第三十六條
急迫不正ノ侵害ニ對シ自己又ハ他人ノ權利ヲ防衞スル爲メ已ムコトヲ得サルニ出テタル行爲ハ之ヲ罰セス
防衞ノ程度ヲ超エタル行爲ハ情狀ニ因リ其刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第三十七條
自己又ハ他人ノ生命、身體、自由若クハ財產ニ對スル現在ノ危難ヲ避クル爲メ已ムコトヲ得サルニ出テタル行爲ハ其行爲ヨリ生シタル害其避ケントシタル害ノ程度ヲ超エサル場合ニ限リ之ヲ罰セス但其程度ヲ超エタル行爲ハ情狀ニ因リ其刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
前項ノ規定ハ業務上特別ノ義務アル者ニハ之ヲ適用セス
第三十八條
罪ヲ犯ス意ナキ行爲ハ之ヲ罰セス但法律ニ特別ノ規定アル場合ハ此限ニ在ラス
罪本重カル可クシテ犯ストキ知ラサル者ハ其重キニ從テ處斷スルコトヲ得ス
法律ヲ知ラサルヲ以テ罪ヲ犯ス意ナシト爲スコトヲ得ス但情狀ニ因リ其刑ヲ減輕スルコトヲ得
第三十九條
心神喪失者ノ行爲ハ之ヲ罰セス
心神耗弱者ノ行爲ハ其刑ヲ減輕ス
第四十條
瘖啞者ノ行爲ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ減輕ス
第四十一條
十四歲ニ滿タサル者ノ行爲ハ之ヲ罰セス
第四十二條
罪ヲ犯シ未タ官ニ發覺セサル前自首シタル者ハ其刑ヲ減輕スルコトヲ得
吿訴ヲ待テ論ス可キ罪ニ付キ吿訴權ヲ有スル者ニ首服シタル者亦同シ
第八章 未遂罪
第四十三條
犯罪ノ實行ニ著手シ之ヲ遂ケサル者ハ其刑ヲ減輕スルコトヲ得但自己ノ意思ニ因リ之ヲ止メタルトキハ其刑ヲ減輕又ハ免除ス
第四十四條
未遂罪ヲ罰スル場合ハ各本條ニ於テ之ヲ定ム
第九章 倂合罪
第四十五條
確定裁判ヲ經サル數罪ヲ倂合罪トス若シ或罪ニ付キ確定裁判アリタルトキハ止タ其罪ト其裁判確定前ニ犯シタル罪トヲ倂合罪トス
第四十六條
倂合罪中其一罪ニ付キ死刑ニ處ス可キトキハ他ノ刑ヲ科セス但沒收ハ此限ニ在ラス
其一罪ニ付キ無期ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス可キトキ亦他ノ刑ヲ科セス但罰金、科料及ヒ沒收ハ此限ニ在ラス
第四十七條
倂合罪中二個以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス可キ罪アルトキハ其最モ重キ罪ニ付キ定メタル刑ノ長期ニ其半數ヲ加ヘタルモノヲ以テ長期トス但各罪ニ付キ定メタル刑ノ長期ヲ合算シタルモノニ超ユルコトヲ得ス
第四十八條
罰金ト他ノ刑トハ之ヲ倂科ス但第四十六條第一項ノ場合ハ此限ニ在ラス
二個以上ノ罰金ハ各罪ニ付キ定メタル罰金ノ合算額以下ニ於テ處斷ス
第四十九條
倂合罪中重キ罪ニ沒收ナシト雖モ他ノ罪ニ沒收アルトキハ之ヲ附加スルコトヲ得
二個以上ノ沒收ハ之ヲ倂科ス
第五十條
倂合罪中既ニ裁判ヲ經タル罪ト未タ裁判ヲ經サル罪トアルトキハ更ニ裁判ヲ經サル罪ニ付キ處斷ス
第五十一條
倂合罪ニ付キ二個以上ノ裁判アリタルトキハ其刑ヲ倂セテ之ヲ執行ス但死刑ヲ執行ス可キトキハ沒收ヲ除ク外他ノ刑ヲ執行セス無期ノ懲役又ハ禁錮ヲ執行ス可キトキハ罰金、科料及ヒ沒收ヲ除ク外他ノ刑ヲ執行セス有期ノ懲役又ハ禁錮ノ執行ハ其最モ重キ罪ニ付キ定メタル刑ノ長期ニ其半數ヲ加ヘタルモノニ超ユルコトヲ得ス
第五十二條
倂合罪ニ付キ處斷セラレタル者或罪ニ付キ大赦ヲ受ケタル場合ニ於テハ特ニ大赦ヲ受ケサル罪ニ付キ刑ヲ定ム
第五十三條
拘留又ハ科料ト他ノ刑トハ之ヲ倂科ス但第四十六條ノ場合ハ此限ニ在ラス
二個以上ノ拘留又ハ科料ハ之ヲ倂科ス
第五十四條
一個ノ行爲ニシテ數個ノ罪名ニ觸レ又ハ犯罪ノ手段若クハ結果タル行爲ニシテ他ノ罪名ニ觸ルルトキハ其最モ重キ刑ヲ以テ處斷ス
第四十九條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ適用ス
第五十五條
連續シタル數個ノ行爲ニシテ同一ノ罪名ニ觸ルルトキハ一罪トシテ之ヲ處斷ス
第十章 累犯
第五十六條
懲役ニ處セラレタル者其執行ヲ終リ又ハ執行ノ免除アリタル日ヨリ五年內ニ更ニ罪ヲ犯シ有期懲役ニ處ストキハ之ヲ再犯トス
懲役ニ該ル罪ト同質ノ罪ニ因リ死刑ニ處セラレタル者其執行ノ免除アリタル日ヨリ又ハ減刑ニ因リ懲役ニ減輕セラレ其執行ヲ終リ若クハ執行ノ免除アリタル日ヨリ前項ノ期間內ニ更ニ罪ヲ犯シ有期懲役ニ處ス可キトキ亦同シ
倂合罪ニ付キ處斷セラレタル者其倂合罪中懲役ニ處ス可キ罪アリタルトキハ其罪最重ノモノニ非スト雖モ再犯例ノ適用ニ付テハ懲役ニ處セラレタルモノト看做ス
第五十七條
再犯ノ刑ハ其罪ニ付キ定メタル懲役ノ長期ノ二倍以下トス
第五十八條
裁判確定後再犯者タルコトヲ發見シタルトキハ前條ノ規定ニ從ヒ加重ス可キ刑ヲ定ム
懲役ノ執行ヲ終リタル後又ハ其執行ノ免除アリタル後發見セラレタル者ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セス
第五十九條
三犯以上ノ者ト雖モ仍ホ再犯ノ例ニ同シ
第十一章 共犯
第六十條
二人以上共同シテ犯罪ヲ實行シタル者ハ皆正犯トス
第六十一條
人ヲ敎唆シテ犯罪ヲ實行セシメタル者ハ正犯ニ準ス
敎唆者ヲ敎唆シタル者亦同シ
第六十二條
正犯ヲ幇助シタル者ハ從犯トス
從犯ヲ敎唆シタル者ハ從犯ニ準ス
第六十三條
從犯ノ刑ハ正犯ノ刑ニ照シテ減輕ス
第六十四條
拘留又ハ科料ノミニ處ス可キ罪ノ敎唆者及ヒ從犯ハ特別ノ規定アルニ非サレハ之ヲ罰セス
第六十五條
犯人ノ身分ニ因リ構成ス可キ犯罪行爲ニ加功シタルトキハ其身分ナキ者ト雖モ仍ホ共犯トス
身分ニ因リ特ニ刑ノ輕重アルトキハ其身分ナキ者ニハ通常ノ刑ヲ科ス
第十二章 酌量減輕
第六十六條
犯罪ノ情狀憫諒ス可キモノハ酌量シテ其刑ヲ減輕スルコトヲ得
第六十七條
法律ニ依リ刑ヲ加重又ハ減輕スル場合ト雖モ仍ホ酌量減輕ヲ爲スコトヲ得
第十三章 加減例
第六十八條
法律ニ依リ刑ヲ減輕ス可キ一個又ハ數個ノ原由アルトキハ左ノ例ニ依ル
一 死刑ヲ減輕ス可キトキハ無期又ハ十年以上ノ懲役若クハ禁錮トス
二 無期ノ懲役又ハ禁錮ヲ減輕ス可キトキハ七年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮トス
三 有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ減輕ス可キトキハ其刑期ノ二分ノ一ヲ減ス
四 罰金ヲ減輕ス可キトキハ其金額ノ二分ノ一ヲ減ス
五 拘留ヲ減輕ス可キトキハ其長期ノ二分ノ一ヲ減ス
六 科料ヲ減輕ス可キトキハ其多額ノ二分ノ一ヲ減ス
第六十九條
法律ニ依リ刑ヲ減輕ス可キ場合ニ於テ各本條ニ二個以上ノ刑名アルトキハ先ツ適用ス可キ刑ヲ定メ其刑ヲ減輕ス
第七十條
懲役、禁錮又ハ拘留ヲ減輕スルニ因リ一日ニ滿タサル時間ヲ剩ストキハ之ヲ除棄ス
罰金又ハ科料ヲ減輕スルニ因リ一錢ニ滿タサル金額ヲ剩ストキ亦同シ
第七十一條
酌量減輕ヲ爲ス可キトキ亦第六十八條及ヒ前條ノ例ニ依ル
第七十二條
同時ニ刑ヲ加重減輕ス可キトキハ左ノ順序ニ依ル
一 再犯加重
二 法律上ノ減輕
三 倂合罪ノ加重
四 酌量減輕
第二編 罪
第一章 皇室ニ對スル罪
第七十三條
天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ對シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ處ス
第七十四條
天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ對シ不敬ノ行爲アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第七十五條
皇族ニ對シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ處シ危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ處ス
第七十六條
皇族ニ對シ不敬ノ行爲アリタル者ハ二月以上四年以下ノ懲役ニ處ス
第二章 內亂ニ關スル罪
第七十七條
政府ヲ顚覆シ又ハ邦土ヲ僣竊シ其他朝憲ヲ紊亂スルコトヲ目的トシテ暴動ヲ爲シタル者ハ內亂ノ罪ト爲シ左ノ區別ニ從テ處斷ス
一 首魁ハ死刑又ハ無期禁錮ニ處ス
二 謀議ニ參與シ又ハ群衆ノ指揮ヲ爲シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ禁錮ニ處シ其他諸般ノ職務ニ從事シタル者ハ一年以上十年以下ノ禁錮ニ處ス
三 附和隨行シ其他單ニ暴動ニ干與シタル者ハ三年以下ノ禁錮ニ處ス

前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス擔前項第三號ニ記載シタル者ハ此限ニ在ラス

第七十八條
內亂ノ豫備又ハ陰謀ヲ爲シタル者ハ一年以上十年以下ノ禁錮ニ處ス
第七十九條
兵器、金穀ヲ資給シ其他ノ行爲ヲ以テ前二條ノ罪ヲ幇助シタル者ハ七年以下ノ禁錮ニ處ス
第八十條
前二條ノ罪ヲ犯スト雖モ未タ暴動ニ至ラサル前自首シタル者ハ其刑ヲ免除ス
第三章 外患ニ關スル罪
第八十一條
外國ニ通謀シテ帝國ニ對シ戰端ヲ開カシメ又ハ敵國ニ與シテ帝國ニ抗敵シタル者ハ死刑ニ處ス
第八十二條
要塞、陣營、軍隊、艦船其他軍用ニ供スル場所又ハ建造物ヲ敵國ニ交付シタル者ハ死刑ニ處ス
兵器、彈藥其他軍用ニ供スル物ヲ敵國ニ交付シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ處ス
第八十三條
敵國ヲ利スル爲メ要塞、陣營、艦船、兵器、彈藥、汽車、電車、鐵道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ物ヲ損壞シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ處ス
第八十四條
帝國ノ軍用ニ供セサル兵器、彈藥其他直接ニ戰闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵國ニ交付シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處ス
第八十五條
敵國ノ爲メニ間諜ヲ爲シ又ハ敵國ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ處ス
軍事上ノ機密ヲ敵國ニ漏泄シタル者亦同シ
第八十六條
前五條ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵國ニ軍事上ノ利益ヲ與ヘ又ハ帝國ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
第八十七條
前六條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第八十八條
第八十一條乃至第八十六條ニ記載シタル罪ノ豫備又ハ陰謀ヲ爲シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第八十九條
本章ノ規定ハ戰時同盟國ニ對スル行爲ニ亦之ヲ適用ス
第四章 國交ニ關スル罪
第九十條
帝國ニ滯在スル外國ノ君主又ハ大統領ニ對シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
帝國ニ滯在スル外國ノ君主又ハ大統領ニ對シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス但外國政府ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス
第九十一條
帝國ニ派遣セラレタル外國ノ使節ニ對シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
帝國ニ派遣セラレタル外國ノ使節ニ對シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ二年以下ノ懲役ニ處ス但被害者ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス
第九十二條
外國ニ對シ侮辱ヲ加フル目的ヲ以テ其國ノ國旗其他ノ國章ヲ損壞、除去又ハ汚穢シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス擔外國政府ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス
第九十三條
外國ニ對シ私ニ戰闘ヲ爲ス目的ヲ以テ其豫備又ハ陰謀ヲ爲シタル者ハ三月以上五年以下ノ禁錮ニ處ス但自首シタル者ハ其刑ヲ免除ス
第九十四條
外國交戰ノ際局外中立ニ關スル命令ニ違背シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第五章 公務ノ執行ヲ妨害スル罪
第九十五條
公務員ノ職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
公務員ヲシテ或處分ヲ爲サシメ若クハ爲ササラシムル爲メ又ハ其職ヲ辭セシムル爲メ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者亦同シ
第九十六條
公務員ノ施シタル封印又ハ差押ノ標示ヲ損壞シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ封印又ハ標示ヲ無効タラシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第六章 逃走ノ罪
第九十七條
既決、未決ノ囚人逃走シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ處ス
第九十八條
既決、未決ノ囚人又ハ勾引狀ノ執行ヲ受ケタル者拘禁場又ハ械具ヲ損壞シ若クハ暴行、脅迫ヲ爲シ又ハ二人以上通謀シテ逃走シタルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第九十九條
法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ奪取シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第百條
法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ逃走セシムル目的ヲ以テ器具ヲ給與シ其他逃走ヲ容易ナラシム可キ行爲ヲ爲シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ目的ヲ以テ暴行又ハ脅迫ヲ爲シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第百一條
法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ看守又ハ護送スル者被拘禁者ヲ逃走セシメタルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第百二條
本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第七章 犯人藏匿及ヒ證憑湮滅ノ罪
第百三條
罰金以上ノ刑ニ該ル罪ヲ犯シタル者又ハ拘禁中逃走シタル者ヲ藏匿シ又ハ隱避セシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百四條
他人ノ刑事被吿事件ニ關スル證憑ヲ湮滅シ又ハ僞造、變造シ若クハ僞造、變造ノ證憑ヲ使用シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百五條
前二條ノ罪ハ犯人又ハ逃走者ノ親族ニシテ犯人又ハ逃走者ノ利益ノ爲メニ犯シタルトキハ其刑ヲ罰セス
第八章 騷擾ノ罪
第百六條
多衆聚合シテ暴行又ハ脅迫ヲ爲シタル者ハ騷擾ノ罪ト爲シ左ノ區別ニ從テ處斷ス
一 首魁ハ一年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
二 他人ヲ指揮シ又ハ他人ニ率先シテ勢ヲ助ケタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
三 附和隨行シタル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第百七條
暴行又ハ脅迫ヲ爲ス爲メ多衆聚合シ當該公務員ヨリ解散ノ命令ヲ受クルコト三回以上ニ及フモ仍ホ解散セサルトキハ首魁ハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處シ其他ノ者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第九章 放火及ヒ失火ノ罪
第百八條
火ヲ放テ現ニ人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建造物、汽車、電車、艦船若クハ鑛坑ヲ燒燬シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ處ス
第百九條
火ヲ放テ現ニ人ノ住居ニ使用セス又ハ人ノ現在セサル建造物、艦船若クハ鑛坑ヲ燒燬シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス但公共ノ危險ヲ生セサルトキハ之ヲ罰セス
第百十條
火ヲ放テ前二條ニ記載シタル以外ノ物ヲ燒燬シ因テ公共ノ危險ヲ生セシメタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ一年以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百十一條
第百九條第二項又ハ前條第二項ノ罪ヲ犯シ因テ第百八條又ハ第百九條第一項ニ記載シタル物ニ延燒シタルトキハ三月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前條第二項ノ罪ヲ犯シ因テ前條第一項ニ記載シタル物ニ延燒シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百十二條
第百八條及ヒ第百九條第一項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第百十三條
第百八條又ハ第百九條第一項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其豫備ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ處ス但情狀ニ因リ其刑ヲ免除スルコトヲ得
第百十四條
火災ノ際鎭火用ノ物ヲ隱匿又ハ損壞シ若クハ其他ノ方法ヲ以テ鎭火ヲ妨害シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第百十五條
第百九條第一項及ヒ第百十條第一項ニ記載シタル物自己ノ所有ニ係ルト雖モ差押ヲ受ケ、物權ヲ負擔シ又ハ賃貸シ若クハ保險ニ付シタルモノヲ燒燬シタルトキハ他人ノ物ヲ燒燬シタル者ノ例ニ同シ
第百十六條
火ヲ失シテ第百八條ニ記載シタル物又ハ他人ノ所有ニ係ル第百九條ニ記載シタル物ヲ燒燬シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
火ヲ失シテ自己ノ所有ニ係ル第百九條ニ記載シタル物又ハ第百十條ニ記載シタル物ヲ燒燬シ因テ公共ノ危險ヲ生セシメタル者亦同シ
第百十七條
火藥、汽罐其他激發ス可キ物ヲ破裂セシメテ第百八條ニ記載シタル物又ハ他人ノ所有ニ係ル第百九條ニ記載シタル物ヲ損壞シタル者ハ放火ノ例ニ同シ自己ノ所有ニ係ル第百九條ニ記載シタル物又ハ第百十條ニ記載シタル物ヲ損壞シ因テ公共ノ危險ヲ生セシメタル者亦同シ
前項ノ行爲過失ニ出テタルトキハ失火ノ例ニ同シ
第百十八條
瓦斯、電氣又ハ蒸汽ヲ漏出若クハ流出セシメ又ハ之ヲ遮斷シ因テ人ノ生命、身體又ハ財產ニ危險ヲ生セシメタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
瓦斯、電氣又ハ蒸汽ヲ漏出若クハ流出セシメ又ハ之ヲ遮斷シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ從テ處斷ス
第十章 溢水及ヒ水利ニ關スル罪
第百十九條
溢水セシメテ現ニ人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建造物、汽車、電車若クハ鑛坑ヲ浸害シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ處ス
第百二十條
溢水セシメテ前條ニ記載シタル以外ノ物ヲ浸害シ因テ公共ノ危險ヲ生セシメタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
浸害シタル物自己ノ所有ニ係ルトキハ差押ヲ受ケ、物權ヲ負擔シ又ハ賃貸シ若クハ保險ニ付シタル場合ニ限リ前項ノ例ニ依ル
第百二十一條
水害ノ際防水用ノ物ヲ隱匿又ハ損壞シ若クハ其他ノ方法ヲ以テ水防ヲ妨害シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第百二十二條
過失ニ因リ溢水セシメテ第百十九條ニ記載シタル物ヲ浸害シタル者又ハ第百二十條ニ記載シタル物ヲ浸害シ因テ公共ノ危險ヲ生セシメタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百二十三條
堤防ヲ決潰シ、水閘ヲ破壞シ其他水利ノ妨害ト爲ル可キ行爲又ハ溢水セシム可キ行爲ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十一章 往來ヲ妨害スル罪
第百二十四條
陸路、水路又ハ橋梁ヲ損壞又ハ壅塞シテ往來ノ妨害ヲ生セシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ從テ處斷ス
第百二十五條
鐵道又ハ其標識ヲ損壞シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ汽車又ハ電車ノ往來ノ危險ヲ生セシメタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
燈臺又ハ浮標ヲ損壞シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ艦船ノ往來ノ危險ヲ生セシメタル者亦同シ
第百二十六條
人ノ現在スル汽車又ハ電車ヲ顚覆又ハ破壞シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處ス
人ノ現在スル艦船ヲ覆沒又ハ破壞シタル者亦同シ
前二項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ處ス
第百二十七條
第百二十五條ノ罪ヲ犯シ因テ汽車又ハ電車ノ顚覆若クハ破壞又ハ艦船ノ覆沒若クハ破壞ヲ致シタル者亦前條ノ例ニ同シ
第百二十八條
第百二十四條第一項、第百二十五條及ヒ第百二十六條第一項、第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第百二十九條
過失ニ因リ汽車、電車又ハ艦船ノ往來ノ危險ヲ生セシメ又ハ汽車、電車ノ顚覆若クハ破壞又ハ艦船ノ覆沒若クハ破壞ヲ致シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
其業務ニ從事スル者前項ノ罪ヲ犯シタルトキハ三年以下ノ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二章 住居ヲ侵ス罪
第百三十條
故ナク人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若クハ艦船ニ侵入シ又ハ要求ヲ受ケテ其場所ヨリ退去セサル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第百三十一條
故ナク皇居、禁苑、離宮マタハ行在所ニ侵入シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
神宮又ハ皇陵ニ侵入シタル者亦同シ
第百三十二條
本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十三章 祕密ヲ侵ス罪
第百三十三條
故ナク封緘シタル信書ヲ開披シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百三十四條
醫師、藥劑師、藥種商、產婆、弁護士、弁護人、公證人又ハ此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ祕密ヲ漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
宗敎若クハ禱祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ祕密ヲ漏泄シタルトキ亦同シ
第百三十五條
本章ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス
第十四章 阿片煙ニ關スル罪
第百三十六條
阿片煙ヲ輸入、製造又ハ販賣シ若クハ販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第百三十七條
阿片煙ヲ吸食スル器具ヲ輸入、製造又ハ販賣シ若クハ販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第百三十八條
稅關官吏阿片煙又ハ阿片煙吸食ノ器具ヲ輸入シ又ハ其輸入ヲ許シタルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第百三十九條
阿片煙ヲ吸食シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
阿片煙ヲ吸食スル爲メ房屋ヲ給與シテ利ヲ圖リタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第百四十條
阿片煙又ハ阿片煙吸食ノ器具ヲ所持シタル者ハ一年以下ノ懲役ニ處ス
第百四十一條
本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十五章 飮料水ニ關スル罪
第百四十二條
人ノ飮料ニ供スル淨水ヲ汚穢シ因テ之ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第百四十三條
水道ニ由リ公衆ニ供給スル飮料ノ淨水又ハ其水源ヲ汚穢シ因テ之ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第百四十四條
人ノ飮料ニ供スル淨水ニ毒物其他人ノ健康ヲ害ス可キ物ヲ混入シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百四十五條
前三條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ從テ處斷ス
第百四十六條
水道ニ由リ公衆ニ供給スル飮料ノ淨水又ハ其水源ニ毒物其他人ノ健康ヲ害ス可キ物ヲ混入シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ處ス
第百四十七條
公衆ノ飮料ニ供スル淨水ノ水道ヲ損壞又ハ壅塞シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第十六章 通貨僞造ノ罪
第百四十八條
行使ノ目的ヲ以テ通用ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ僞造又ハ變造シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處ス
僞造、變造ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ若クハ輸入シタル者亦同シ
第百四十九條
行使ノ目的ヲ以テ內國ニ流通スル外國ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ僞造又ハ變造シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
僞造、變造ノ外國ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ若クハ輸入シタル者亦同シ
第百五十條
行使ノ目的ヲ以テ僞造、變造ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ收得シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百五十一條
前三條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第百五十二條
貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ收得シタル後其僞造又ハ變造ナルコトヲ知テ之ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シタル者ハ其名價三倍以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス但一圓以下ニ降スコトヲ得ス
第百五十三條
貨幣、紙幣又ハ銀行券ノ僞造又ハ變造ノ用ニ供スル目的ヲ以テ器械又ハ原料ヲ準備シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第十七章 文書僞造ノ罪
第百五十四條
行使ノ目的ヲ以テ御璽、國璽若クハ御名ヲ使用シテ詔書其他ノ文書ヲ僞造シ又ハ僞造シタル御璽、國璽若クハ御名ヲ使用シテ詔書其他ノ文書ヲ僞造シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處ス
御璽、國璽ヲ押捺シ又ハ御名ヲ署シタル詔書其他ノ文書ヲ變造シタル者亦同シ
第百五十五條
行使ノ目的ヲ以テ公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書若クハ圖畫ヲ僞造シ又ハ僞造シタル公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書若クハ圖畫ヲ僞造シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
公務所又ハ公務員ノ捺印若クハ署名シタル文書若クハ圖畫ヲ變造シタル者亦同シ
前二項ノ外公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書若クハ圖畫ヲ僞造シ又ハ公務所又ハ公務員ノ作リタル文書若クハ圖畫ヲ變造シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百五十六條
公務員其職務ニ關シ行使ノ目的ヲ以テ虛僞ノ文書若クハ圖畫ヲ作リ又ハ文書若クハ圖畫ヲ變造シタルトキハ印章、署名ノ有無ヲ區別シ前二條ノ例ニ依ル
第百五十七條
公務員ニ對シ虛僞ノ申立ヲ爲シ權利、義務ニ關スル公正證書ノ原本ニ不實ノ記載ヲ爲サシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
公務員ニ對シ虛僞ノ申立ヲ爲シ免狀、鑑札又ハ旅券ニ不實ノ記載ヲ爲サシメタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
前二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第百五十八條
前四條ニ記載シタル文書若クハ圖畫ヲ行使シタル者ハ其文書又ハ圖畫ヲ僞造若クハ變造シ又ハ虛僞ノ文書若クハ圖畫ヲ作リ又ハ不實ノ記載ヲ爲サシメタル者ト同一ノ刑ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第百五十九條
行使ノ目的ヲ以テ他人ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ權利、義務又ハ事實證明ニ關スル文書若クハ圖畫ヲ僞造シ又ハ僞造シタル他人ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ權利、義務又ハ事實證明ニ關スル文書若クハ圖畫ヲ僞造シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
他人ノ印章ヲ押捺シ若クハ他人ノ署名シタル權利、義務又ハ事實證明ニ關スル文書若クハ圖畫ヲ變造シタル者亦同シ
前二項ノ外權利、義務又ハ事實證明ニ關スル文書若クハ圖畫ヲ僞造又ハ變造シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百六十條
醫師公務所ニ提出ス可キ診斷書、檢案書又ハ死亡證書ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタルトキハ三年以下ノ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百六十一條
前二條ニ記載シタル文書又ハ圖畫ヲ行使シタル者ハ其文書又ハ圖畫ヲ僞造若クハ變造シ又ハ虛僞ノ記載ヲ爲シタル者ト同一ノ刑ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十八章 有價證券僞造ノ罪
第百六十二條
行使ノ目的ヲ以テ公債證書、官府ノ證券、會社ノ株券其他ノ有價證券ヲ僞造又ハ變造シタル者ハ三月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
行使ノ目的ヲ以テ有價證券ニ虛僞ノ記入ヲシタル者亦同シ
第百六十三條
僞造、變造ノ有價證券又ハ虛僞ノ記入ヲ爲シタル有價證券ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ若クハ輸入シタル者ハ三月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十九章 印章僞造ノ罪
第百六十四條
行使ノ目的ヲ以テ御璽、國璽又ハ御名ヲ僞造シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
御璽、國璽又ハ御名ヲ不正ニ使用シ又ハ僞造シタル御璽、國璽又ハ御名ヲ使用シタル者亦同シ
第百六十五條
行使ノ目的ヲ以テ公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ僞造シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ不正ニ使用シ又ハ僞造シタル公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ使用シタル者亦同シ
第百六十六條
行使ノ目的ヲ以テ公務所ノ記號ヲ僞造シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
公務所ノ記號ヲ不正ニ使用シ又ハ僞造シタル公務所ノ記號ヲ使用シタル者亦同シ
第百六十七條
行使ノ目的ヲ以テ他人ノ印章若クハ署名ヲ僞造シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
他人ノ印章若クハ署名ヲ不正ニ使用シ又ハ僞造シタル印章若クハ署名ヲ使用シタル者亦同シ
第百六十八條
第百六十四條第二項、第百六十五條第二項、第百六十六條第二項及ヒ前條第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二十章 僞證ノ罪
第百六十九條
法律ニ依リ宣誓シタル證人虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第百七十條
前條ノ罪ヲ犯シタル者證言シタル事件ノ裁判確定前又ハ懲戒處分前自白シタルトキハ其刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第百七十一條
法律ニ依リ宣誓シタル鑑定人又ハ通事虛僞ノ鑑定又ハ通譯ヲ爲シタルトキハ前二條ノ例ニ同シ
第二十一章 誣吿ノ罪
第百七十二條
人ヲシテ刑事又ハ懲戒ノ處分ヲ受ケシムル目的ヲ以テ虛僞ノ申吿ヲ爲シタル者ハ第百六十九條ノ例ニ同シ
第百七十三條
前條ノ罪ヲ犯シタル者申吿シタル事件ノ裁判確定前又ハ懲戒處分前自白シタルトキハ其刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第二十二章 猥褻、姦淫及ヒ重婚ノ罪
第百七十四條
公然猥褻ノ行爲ヲ爲シタル者ハ科料ニ處ス
第百七十五條
猥褻ノ文書、圖畫其他ノ物ヲ頒布若クハ販賣シ又ハ公然之ヲ陳列シタル者ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者亦同シ
第百七十六條
十三歲以上ノ男女ニ對シ暴行又ハ脅迫ヲ以テ猥褻ノ行爲ヲ爲シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス十三歲ニ滿タサル男女ニ對シ猥褻ノ行爲ヲ爲シタル者亦同シ
第百七十七條
暴行又ハ脅迫ヲ以テ十三歲以上ノ婦女ヲ姦淫シタル者ハ强姦ノ罪ト爲シ二年以上ノ有期懲役ニ處ス十三歲ニ滿タサル婦女ヲ姦淫シタル者亦同シ
第百七十八條
人ノ心神喪失若クハ抗拒不能ニ乘シ又ハ之ヲシテ心神ヲ喪失セシメ若クハ抗拒不能ナラシメテ猥褻ノ行爲ヲ爲シ又ハ姦淫シタル者ハ前二條ノ例ニ同シ
第百七十九條
前三條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第百八十條
前四條ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス
第百八十一條
第百七十六條乃至第百七十九條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處ス
第百八十二條
營利ノ目的ヲ以テ淫行ノ常習ナキ婦女ヲ勸誘シテ姦淫セシメタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百八十三條
有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス其相姦シタル者亦同シ
前項ノ罪ハ本夫ノ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス但本夫姦通ヲ從容シタルトキハ吿訴ノ効ナシ
第百八十四條
配偶者アル者重ネテ婚姻ヲ爲シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス其相婚シタル者亦同シ
第二十三章 賭博及ヒ富籖ニ關スル罪
第百八十五條
偶然ノ輸贏ニ關シ財物ヲ以テ博戯又ハ賭事ヲ爲シタル者ハ千圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス但一時ノ娛樂ニ供スル物ヲ賭シタル者ハ此限ニ在ラス
第百八十六條
常習トシテ博戯又ハ賭事ヲ爲シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
賭博場ヲ開張シ又ハ博徒ヲ結合シテ利ヲ圖リタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第百八十七條
富籖ヲ發賣シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
富籖發賣ノ取次ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
前二項ノ外富籖ヲ授受シタル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第二十四章 禮拜所及ヒ墳墓ニ關スル罪
第百八十八條
神祠、佛堂、墓所其他禮拜所ニ對シ公然不敬ノ行爲アリタル者ハ六月以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
說敎、禮拜又ハ葬式ヲ妨害シタル者ハ一年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第百八十九條
墳墓ヲ發掘シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ處ス
第百九十條
死體、遺骨、遺髮又ハ棺內ニ藏置シタル物ヲ損壞、遺棄又ハ領得シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第百九十一條
第百八十九條ノ罪ヲ犯シ死體、遺骨、遺髮又ハ棺內ニ藏置シタル物ヲ損壞、遺棄又ハ領得シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第百九十二條
檢視ヲ經スシテ變死者ヲ葬リタル者ハ五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第二十五章 瀆職ノ罪
第百九十三條
公務員其職權ヲ濫用シ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ權利ヲ妨害シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第百九十四條
裁判、檢察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職權ヲ濫用シ人ヲ逮捕又ハ監禁シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第百九十五條
裁判、檢察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職務ヲ行フニ當リ刑事被吿人其他ノ者ニ對シ暴行又ハ陵虐ノ行爲ヲ爲シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ看守又ハ護送スル者被拘禁者ニ對シ暴行又ハ陵虐ノ行爲ヲ爲シタルトキ亦同シ
第百九十六條
前二條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ從テ處斷ス
第百九十七條
公務員又ハ仲裁人其職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其價額ヲ追徵ス
第百九十八條
公務員又ハ仲裁人ニ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第二十六章 殺人ノ罪
第百九十九條
人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ處ス
第二百條
自己又ハ配偶者ノ直系尊屬ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ處ス
第二百一條
前二條ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其豫備ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ處ス但情狀ニ因リ其刑ヲ免除スルコトヲ得
第二百二條
人ヲ敎唆若クハ幇助シテ自殺セシメ又ハ被殺者ノ囑託ヲ受ケ若クハ其承諾ヲ得テ之ヲ殺シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第二百三條
第百九十九條、第二百條及ヒ前條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二十七章 傷害ノ罪
第二百四條
人ノ身體ヲ傷害シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金若クハ科料ニ處ス
第二百五條
身體傷害ニ因リ人ヲ死ニ致シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
自己又ハ配偶者ノ直系尊屬ニ對シテ犯シタルトキハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處ス
第二百六條
前二條ノ犯罪アルニ當リ現場ニ於テ勢ヲ助ケタル者ハ自ラ人ヲ傷害セスト雖モ一年以下ノ懲役又ハ五十圓以下ノ罰金若クハ科料ニ處ス
第二百七條
二人以上ニテ暴行ヲ加ヘ人ヲ傷害シタル場合ニ於テ傷害ノ輕重ヲ知ルコト能ハス又ハ其傷害ヲ生セシメタル者ヲ知ルコト能ハサルトキハ共同者ニ非スト雖モ共犯ノ例ニ依ル
第二百八條
暴行ヲ加ヘタル者人ヲ傷害スルニ至ラサルトキハ一年以下ノ懲役若クハ五十圓以下ノ罰金又ハ拘留若クハ科料ニ處ス
前項ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十八章 過失傷害ノ罪
第二百九條
過失ニ因リ人ヲ傷害シタル者ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
前項ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二百十條
過失ニ因リ人ヲ死ニ致シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二百十一條
業務上必要ナル注意ヲ怠リ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十九章 墮胎ノ罪
第二百十二條
懷胎ノ婦女藥物ヲ用ヒ又ハ其他ノ方法ヲ以テ墮胎シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ處ス
第二百十三條
婦女ノ囑託ヲ受ケ又ハ其承諾ヲ得テ墮胎セシメタル者ハ二年以下ノ懲役ニ處ス因テ婦女ヲ死傷ニ致シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第二百十四條
醫師、產婆、藥劑師又ハ藥種商婦女ノ囑託ヲ受ケ又ハ其承諾ヲ得テ墮胎セシメタルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス因テ婦女ヲ死傷ニ致シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第二百十五條
婦女ノ囑託ヲ受ケス又ハ其承諾ヲ得スシテ墮胎セシメタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二百十六條
前條ノ罪ヲ犯シ因テ婦女ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ從テ處斷ス
第三十章 遺棄ノ罪
第二百十七條
老幼、不具又ハ疾病ノ爲メ扶助ヲ要ス可キ者ヲ遺棄シタル者ハ一年以下ノ懲役ニ處ス
第二百十八條
老者、幼者、不具者又ハ病者ヲ保護ス可キ責任アル者之ヲ遺棄シ又ハ其生存ニ必要ナル保護ヲ爲ササルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
自己又ハ配偶者ノ直系尊屬ニ對シテ犯シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第二百十九條
前二條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ從テ處斷ス
第三十一章 逮捕及ヒ監禁ノ罪
第二百二十條
不法ニ人ヲ逮捕又ハ監禁シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
自己又ハ配偶者ノ直系尊屬ニ對シテ犯シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第二百二十一條
前條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ從テ處斷ス
第三十二章 脅迫ノ罪
第二百二十二條
生命、身體、自由、名譽又ハ財產ニ對シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ人ヲ脅迫シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
親族ノ生命、身體、自由、名譽又ハ財產ニ對シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ人ヲ脅迫シタル者亦同シ
第二百二十三條
生命、身體、自由、名譽若クハ財產ニ對シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ脅迫シ又ハ暴行ヲ用ヒ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ權利ヲ妨害シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
親族ノ生命、身體、自由、名譽又ハ財產ニ對シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ脅迫シ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ權利ヲ妨害シタル者亦同シ
前二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第三十三章 略取及ヒ誘拐ノ罪
第二百二十四條
未成年者ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第二百二十五條
營利、猥褻又ハ結婚ノ目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第二百二十六條
帝國外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
帝國外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ賣買シ又ハ被拐取者若クハ被賣者ヲ帝國外ニ移送シタル者亦同シ
第二百二十七條
第二百二十四條、前三條ノ罪ヲ犯シタル者ヲ幇助スル目的ヲ以テ被拐取者又ハ被賣者ヲ收受若クハ藏匿シ又ハ隱避セシメタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
營利又ハ猥褻ノ目的ヲ以テ被拐取者又ハ被賣者ヲ收受シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第二百二十八條
本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二百二十九條
第二百二十六條ノ罪、同條ノ罪ヲ幇助スル目的ヲ以テ犯シタル第二百二十七條第一項ノ罪及ヒ此等ノ罪ノ未遂罪ヲ除ク外本章ノ罪ハ營利ノ目的ニ出テサル場合ニ限リ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス但被拐取者又ハ被賣者犯人ト婚姻ヲ爲シタルトキハ婚姻ノ無効又ハ取消ノ裁判確定ノ後ニ非サレハ吿訴ノ効ナシ
第三十四章 名譽ニ對スル罪
第二百三十條
公然事實ヲ摘示シ人ノ名譽ヲ毀損シタル者ハ其事實ノ有無ヲ問ハス一年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
死者ノ名譽ヲ毀損シタル者ハ誣罔ニ出ツルニ非サレハ之ヲ罰セス
第二百三十一條
事實ヲ摘示セスト雖モ公然人ヲ侮辱シタル者ハ拘留又ハ科料ニ處ス
第二百三十二條
本章ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス
第三十五章 信用及ヒ業務ニ對スル罪
第二百三十三條
虛僞ノ風說ヲ流布シ又ハ僞計ヲ用ヒ人ノ信用ヲ毀損シ若クハ其業務ヲ妨害シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二百三十四條
威力ヲ用ヒ人ノ業務ヲ妨害シタル者亦前條ノ例ニ同シ
第三十六章 竊盜及ヒ强盜ノ罪
第二百三十五條
他人ノ財物ヲ竊取シタル者ハ竊盜ノ罪ト爲シ十年以下ノ懲役ニ處ス
第二百三十六條
暴行又ハ脅迫ヲ以テ他人ノ財物ヲ强取シタル者ハ强盜ノ罪ト爲シ五年以上ノ有期懲役ニ處ス
前項ノ方法ヲ以テ財產上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ
第二百三十七條
强盜ノ目的ヲ以テ其豫備ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ處ス
第二百三十八條
竊盜財物ヲ得テ其取還ヲ拒キ又ハ逮捕ヲ免レ若クハ罪跡ヲ湮滅スル爲メ暴行又ハ脅迫ヲ爲シタルトキハ强盜ヲ以テ論ス
第二百三十九條
人ヲ昏醉セシメテ其財物ヲ盜取シタル者ハ强盜ヲ以テ論ス
第二百四十條
强盜人ヲ傷シタルトキハ無期又ハ七年以上ノ懲役ニ處ス死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ處ス
第二百四十一條
强盜婦女ヲ强姦シタルトキハ無期又ハ七年以上ノ懲役ニ處ス因テ婦女ヲ死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ處ス
第二百四十二條
自己ノ財物ト雖モ他人ノ占有ニ屬シ又ハ公務所ノ命ニ因リ他人ノ看守シタルモノナルトキハ本章ノ罪ニ付テハ他人ノ財物ト看做ス
第二百四十三條
第二百三十五條、第二百三十六條、第二百三十八條乃至第二百四十一條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二百四十四條
直系血族、配偶者及ヒ同居ノ親族又ハ家族ノ間ニ於テ第二百三十五條ノ罪及ヒ其未遂罪ヲ犯シタル者ハ其刑ヲ免除シ其他ノ親族又ハ家族ニ係ルトキハ吿訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
親族又ハ家族ニ非サル共犯ニ付テハ前項ノ例ヲ用ヒス
第二百四十五條
本章ノ罪ニ付テハ電氣ハ之ヲ財物ト看做ス
第三十七章 詐欺及ヒ恐喝ノ罪
第二百四十六條
人ヲ欺罔シテ財物ヲ騙取シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ方法ヲ以テ財產上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ
第二百四十七條
他人ノ爲メ其事務ヲ處理スル者自己若クハ第三者ノ利益ヲ圖リ又ハ本人ニ損害ヲ加フル目的ヲ以テ其任務ニ背キタル行爲ヲ爲シ本人ニ財產上ノ損害ヲ加ヘタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二百四十八條
未成年者ノ知慮淺薄又ハ人ノ心神耗弱ニ乘シテ其財物ヲ交付セシメ又ハ財產上不法ノ利益ヲ得若クハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ處ス
第二百四十九條
人ヲ恐喝シテ財物ヲ交付セシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ方法ヲ以テ財產上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ
第二百五十條
本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二百五十一條
本章ノ罪ニハ第二百四十二條、第二百四十四條及ヒ第二百四十五條ノ規定ヲ準用ス
第三十八章 橫領ノ罪
第二百五十二條
自己ノ占有スル他人ノ物ヲ橫領シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス
自己ノ物ト雖モ公務所ヨリ保管ヲ命セラレタル場合ニ於テ之ヲ橫領シタル者亦同シ
第二百五十三條
業務上自己ノ占有スル他人ノ物ヲ橫領シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス
第二百五十四條
遺失物、漂流物其他占有ヲ離レタル他人ノ物ヲ橫領シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金若クハ科料ニ處ス
第二百五十五條
本章ノ罪ニハ第二百四十四條ノ規定ヲ準用ス
第三十九章 贓物ニ關スル罪
第二百五十六條
贓物ヲ收受シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス
贓物ノ運搬、寄藏、故買又ハ牙保ヲ爲シタル者ハ十年以下ノ懲役及ヒ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二百五十七條
直系血族、配偶者、同居ノ親族又ハ家族及ヒ此等ノ者ノ配偶者ノ間ニ於テ前條ノ罪ヲ犯シタル者ハ其刑ヲ免除ス
親族又ハ家族ニ非サル共犯ニ付テハ前項ノ例ヲ用ヒス
第四十章 毀棄及ヒ隱匿ノ罪
第二百五十八條
公務所ノ用ニ供スル文書ヲ毀棄シタル者ハ三月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第二百五十九條
權利、義務ニ關スル他人ノ文書ヲ毀棄シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス
第二百六十條
他人ノ建造物又ハ艦船ヲ損壞シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ從テ處斷ス
第二百六十一條
前三條ニ記載シタル以外ノ物ヲ損壞又ハ傷害シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金若クハ科料ニ處ス
第二百六十二條
自己ノ物ト雖モ差押ヲ受ケ、物權ヲ負擔シ又ハ賃貸シタルモノヲ損壞又ハ傷害シタルトキハ前三條ノ例ニ依ル
第二百六十三條
他人ノ信書ヲ隱匿シタル者ハ六月以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五十圓以下ノ罰金若クハ科料ニ處ス
第二百六十四條
第二百五十九條、第二百六十一條及ヒ前條ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。