公葬等について
◎人第二〇七號
公葬等について
このことに付ては政教分離の見地から今後左記の樣な取扱に依つて實施するやう今般内務、文部兩次官から通牒ありましたから御了知の上遺憾のないやうに願ひます
記
一 地方官衙及び都道府縣市町村等の地方公共團體は公葬其の他宗教的儀式及び行事(慰靈祭、追弔會等)は其の對象の如何を問はず今後擧行しないこと、地方官衙及び地方公共團體の名において行ひ得るのは左の範圍に限る
イ 文民としての功勞者、殉教者に對し宗教的儀式を伴はない慰靈式等を行ふこと(例へば學校、警察署等で僧侶、牧師等の參加なしに教員、警察官で殉職したものの慰靈を行ふ如きこと)
ロ 文民としての功勞者、殉職者に對し哀悼の意を表する爲の休業、葬旗の揭揚、但し國旗揭揚に際しては豫め現地聯合軍側の諒解を得ること
ハ 文民としての功勞者、殉職者等に對して個人又は民間團體が行ふ葬儀、慰靈祭、追悼會等に弔慰金、花輪等を贈ること竝びに官公吏が公の資格で列席し又は弔辭を讀むこと
二 文民としての功勞者、殉職者に對して個人又は民間團體が葬儀其の他の宗教的儀式及び行事を行ふことは差支へないが、此の場合と雖も地方公共團體又は公の機關がその施設を貸すことは原則として避けられたい、但し他に適當な施設がないときは例外として一般に貸す場合と同樣の條件で學校又は公會堂等を使用せしめて差支へない
三 戰歿者に對する葬儀其の他の儀式及び行事を個人又は民間團體で行ふことは差支へない、倂し地方官衙又は地方公共團體が之を主催若は援助し又は其の名に於て敬弔の意を表明するやうなことはさくべきである、從つて前二項に於て文民としての功勞者、殉職者に對して許容される事項も戰歿者に之を適用しない、軍國主義者又は極端なる國家主義者に對する場合も同樣である
戰歿者の遺骨の輸送、保管、傳達に際し其の取扱は禮を失せざるやう敬虔に行ふべきである、遺骨の傳達は政府の行ふものであるから公共建物又は公共用地(學校及び其の構内を除く)を使用するのは差支へない、但し傳達式に一般公衆の參列は認められない又戰歿者の爲の葬儀其の他の儀式及び行事、遺骨の出迎へ等をなす場合教師が生徒兒童を引率して參加したり又は一般の者に對して參列を强制するが如きことのないやう又は軍國主義思想の鼓吹又は宣傳に涉らないやう注意せられたい
四 忠靈塔、忠魂碑其の他戰歿者の爲の記念碑、銅像等の建設竝びに軍國主義者又は極端なる國家主義者の爲にそれらを建設することは今後一切行はないこと、現在建設中のものについては直ちにその工事を中止すること、尚現存するものの取扱は左に依られたい
イ 學校又は其の構内に存在するものは之を撤去すること
ロ 公共の建造物及び其の構内又は公共用地に存在するもので明白に軍國主義的又は極端なる國家主義的思想の宣傳鼓吹を目的とするものは之を撤去すること
前項のことは戰歿者等の遺庭が私の記念碑や墓石等を建立することを禁止する趣旨ではない
五 一般文民の功勞者、殉職者等の爲に記念碑、銅像等を建設することや又はその保存事業を行ふことは差支へない
この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。