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だいくわ 原 罪げんざい

42●人祖じんそ天主てんしゅ特恩とくおんたもったか

いな人祖じんそ悪魔あくま誘惑いざないしたがひ、天主てんしゅいましめそむき、其特恩そのとくおんうしなひました。

特恩とくおん

とは、聖寵及せいてうおよこれ特別とくべつくはへられた天主てんしゅ御恩ごおん

[下段]

ふ。

悪魔あくま誘惑すゝめしたが

とは、人間にんげんもとより何事なにごと天主てんしゅしたがはずなれば、其徴そのしるしとして「でもべていがひとつだけべるならぬぞ」と、天主てんしゅよりきびしくいましめられた。そこ悪魔あくまへびあるひじゃ)に………「べてもけっしてぬるものではない、かへっ天主様てんしゅさまのやうにって、善悪よしあしるであらう」とって、エワだましたれば、アダム

天主てんしゅいましめそむいて

べた、それ折角与せっかくあたへられた

特恩とくおんうしな

ったのである。

43●人祖じんそつみ人祖じんそばかりにとゞまったか

人祖じんそつみ其子孫そのしそんつたはったにって、ひとうまれながら、此罪このつみ其結果そのけっくわとをけてるものであります。

アダムつみ

は、一寸思ちょっとおもふやうに、べるなとはれたものべたばかりでない。(一)帰服きふくしるしとして、(二)きびしくきんぜられたのに、(三)したがふことはいとやすかった、それに(四)傲慢がうまんおこして帰服きふくせず、(五)天主てんしゅおどされたばつうたがひ、

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(六)天主てんしゅおほせよりも悪魔あくまこと聴容きゝいれ(七)あまつさなぬところでなく天主てんしゅのやうにことのぞんで、(八)御誡おんいましめかろんじたことなれば、大罪だいざいるに相違さうゐない。

人祖じんそばかりにとゞまったか。

一寸考ちょっとかんがへれば、其罪そのつみ人祖じんそとゞまりさうなものとおもはるれど、人祖じんそ一切すべて人間にんげんおやとして、人類じんるゐ代表だいへうし、一切すべて人間にんげん善悪よしあしゆづるべきものにってったから、其罪そのつみは、一身いっしんとゞまらず、子孫しそんにもあたはずった。

人祖じんそつみ子孫しそんつたはった

とは、其罪そのつみわざではない、其結果そのけっくわである。其過失そのくわしつ責任せきにんではない、罪人ざいにん身分みぶんである。すなは罪人ざいにんたるもの子孫しそんにしておやとも天主てんしゅより勘当かんだうけるものったのである。

うまれながら

すなはアダム子孫しそんうまれるをもって、なんにもらぬうち其罪そのつみけがされる。てう監獄かんごくうまれるおもはずらずおやつみ抱込だきこまれるがごとし。

其罪そのつみうて

とは、人祖じんそっては自罪じざいであったから、地獄ぢごくもっばつせられるはずなれども、子孫しそんには

[下段]

うでない。人祖じんそつみけがれそまったけれども、其為そのため地獄ぢごくられるではない、叉痛悔またつうくわいなしにきよめられる。たとへば立派りっぱ官宅くわんたくすまって役人やくにんなら、其家族そのかぞくともすまってるけれども、若親もしおや法律はふりつそむいて刑務所けいむしょにでもれらるれば、家族かぞく官宅くわんたくからされるが、刑務所けいむしょにはれられぬのとおな道理だうりである。

其罪そのつみ結果けっくわけてる、

すなはアダム子孫しそんゆづはず聖寵せいてう特恩とくおん没収ぼっしうされたによって、我々われゝゝついでこれうしなったわけである。もとよりいままゝ天主てんしゅよりつくられるものなら無理むりとはけっしてはれぬ、唯折角親たゞせっかくおやいたゞいためぐみ我々われゝゝうばはれただけでもそんって堕落だらくはれる。もとから貧乏びんぼういへまれたひと当然あたりまへなれど、金持かねもちいへうまれておやあやまちため貧乏びんぼうったとおな道理だうりである。平民へいみんうまれてももとより不足ふそくなけれど、華族かぞくうまれるはずものおや失策しっさくため平民へいみんうまれたときとはたいしたちがひである。

ちゅう原罪げんざい結果けっくわ言過いひすごさぬやうに注意ちういせねばならぬ。ルーテルごとく、原罪げんざいもっ人類じんるゐ堕落だらくしてしまった、こゝろ

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わるってぜんれぬやうにった、とふやうなことはなはだしい間違まちがひである。叉アダムつみかったならば、いまのやうな禍等わざはひなどはずである、とふのもしからぬ言過いひすごしである、アダム子孫しそんでもつみをかされぬことはなかったから。叉大抵またたいていわざはひ自罪じざいすなは面々めんゝゝ承諾せうだくしてをか種々さまゞゝつみ結果けっくわである。こと邪欲烈じゃよくはげしく、ひとあさましい事等ことなどひとアダムかぶせるよりは、面々めんゝゝあやまちかぶせるが本当ほんとうである。天使てんしつみをかしたれど、本性ほんせい持前もちまへうしなはず、ひと矢張其通やはりそのとほり。人性じんせいきずつけるのは、原罪げんざいふよりむし自罪じざいである。すなは面々承諾めんゝゝせうだくしてつみをか度毎たびごとよわり、悪心弥増あくしんいやまばかりでなく、遺伝ゐでんして、子孫しそんまでにおそろしいきずおよぼし、なにより邪欲じゃよく焚付たきつけるゆゑこれ余程用心よほどようじんせねばならぬ。

44●人祖じんそからつたはったつみなんふか

人祖じんそからつたはったつみ原罪げんざいひます。

原罪げんざい

とは、もとつみ