公教要理教案.3/09-11

Wikisource:宗教 > カテキズム

[114]

（一一）戦（たゝか）ひの教会（けうくわい）に於（お）ける諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）

　　　　　予　備（よび）

〇公教会（こうけうくわい）の信者（しんじゃ）とは、たゞ現世（このよ）の信者（しんじゃ）ばかりですか?…天国（てんごく）の聖人（せいじん）や、煉獄（れんごく）の霊魂（れいこん）も、やはり公教会（こうけうくわい）に属（ぞく）するのですか?…お互（たがひ）の間（あひだ）に連絡（つながり）がありますか?…その連絡（つながり）を何（なん）と申（まを）しますか?…何（ど）んな人（ひと）が諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）に与（あづか）り得（え）ないのですか?。

[目的指示（もくてきしし）]今日（けふ）は戦（たゝか）ひの教会（けうくわい）に於（おい）て、諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）が如何（どん）な塩梅（あんばい）に行（おこな）はれるか、と云（い）ふこ

[115]

とを硏究（けんきゅう）して見（み）ます。

　　　　　提　示（ていじ）

〇現世（このよ）に於（お）ける教会（けうくわい）は、天主様（てんしゅさま）を父（ちゝ）とせる一（ひとつ）の大（おほ）きな家族（かぞく）です。お互（たがひ）に同（おな）じ信仰（しんかう）、同（おな）じ希望（きぼう）、同（おな）じ愛（あい）の綱（つな）をもって繫（つな）がれて居（ゐ）ます。所（ところ）で子供（こども）と云（い）ふものは、一家（いっか）の財産（ざいさん）を相続（さうぞく）し、且（か）つ之（これ）を使用（しよう）する權利（けんり）を有（も）って居（ゐ）ますでせう。然（しか）らば信者（しんじゃ）たる私等（わたくしたち）も、公教会（こうけうくわい）の大（おほ）きな財産（ざいさん）の分配（ぶんぱい）に与（あづ）かる權利（けんり）が無（な）いでせうか。

△屹（き）っと有（あ）ります。

〇然（さ）うです。私等（わたくしたち）信者（しんじゃ）は一（ひとつ）の大（おほ）きな家族（かぞく）をなし、その霊的宝（れいてきたから）を共有（もやひ）にして居（ゐ）るのです。善業（ぜんげふ）の功徳（くどく）こそ人（ひと）に譲（ゆづ）ること出來（でき）ないが、その償（つぐのひ）を施（ほどこ）すことが出来（でき）ます。人（ひと）の為（ため）に祈（いの）ることが出来（でき）ます。或（あるひ）はその善業（ぜんげふ）を献（さゝ）げて、人（ひと）の為（ため）に恩恵（めぐみ）を乞求（こひもと）めて上（あ）げることも出来（でき）ます。固（もと）より各自（めいゝゝ）の行（おこな）ふ善業（ぜんげふ）は、僅少（わづか）なものです。然（しか）しイエズス・キリスト様（さま）の限（かぎ）りなき功徳（くどく）があります。聖母（せいぼ）マリア、諸聖人（しょせいじん）の償（つぐのひ）の残余（あまり）があります。毎日（まいにち）全世界（ぜんせかい）に行（おこな）はれるミサ聖祭（せいさい）、七（なゝつ）の秘蹟（ひせき）もあります。随（したが）って公教会（こうけうくわい）の宝（たから）と云（い）ふものは無尽蔵（むじんざう）（かぎりなし）です。幾（いく）ら使（つか）っても使（つか）っても減少（すくなく）なる様（やう）な気遣（きづか）ひがありますでせうか。

[116]

△決（けっ）してありません。

〇聖（せい）パウロは公教会（こうけうくわい）を一個（いっこ）の身体（からだ）に譬（たと）へ、イエズス・キリスト様（さま）が頭首（あたま）で、私等（わたくしたち）信者（しんじゃ）はその手足（てあし）や、胴（どう）やである、と言（い）って居（ゐ）られます。身体（からだ）と云（い）ふものは、頭首（あたま）から全体（ぜんたい）に亘（わた）って同（おな）じ生気（せいき）が通（かよ）ひ、皆（みんな）が同（おな）じ精神（せいしん）で以（もっ）て活（い）きる。歡喜（よろこび）も、悲哀（かなしみ）も、苦（くるしみ）も、楽（たのしみ）も共（とも）にして行（ゆ）くので。さうぢゃ無（な）いですか。

△必（かなら）ず然（さ）うあらねばなりません。

〇公教会（こうけうくわい）もやはり其通（そのとほ）りです。一人（ひとり）が聖寵（せいちょう）を蒙（かうむ）ると、夫（それ）が本人（ほんにん）に益（えき）するのは申（まを）すまでもなく、他（た）の人（ひと）にまで多少（いくぶん）の益（えき）を来（きた）します。一人（ひとり）が祈（いのり）をなし、施（ほどこし）をなし、苦行（くぎゃう）をなしますと、その功（くどく）を蒙（かうむ）り、恩恵（めぐみ）を戴（いたゞ）くのは固（もと）より其人（そのひと）ですが、然（しか）し他（た）の人（ひと）にも亦幾分（またいくぶん）その分配（わけまへ）を与（あた）へることが出来（でき）ます。

△すると善業（ぜんげふ）を行（おこな）ふ人（ひと）も行（おこな）はない人（ひと）も、一様（いちやう）にその功徳（くどく）を蒙（かうむ）るのですか。

〇否（いえ）、違（ちが）ひます。すべての善業（ぜんげふ）は、その善（ぜん）なる所（ところ）からは功徳（くどく）を生（しゃう）じます。その功徳（くどく）は善業（ぜんげふ）を行（おこな）った其人（そのひと）のもので、之（これ）を他（た）に譲（ゆづ）ることは出来（でき）ません。然（しか）しながら善業（ぜんげふ）は之（これ）を行（おこな）ふに当（あた）って多少苦（たせうくる）

[117]

しく覚（おぼ）える所（ところ）から償（つぐのひ）を生（しゃう）じます。償（つぐのひ）はイエズス・キリストや、聖母（せいぼ）マリアや、諸聖人（しょせいじん）の償（つぐのひ）と合（あ）って贖宥（しょくいう）となります。他（た）に譲（ゆづ）ることも出来（でき）るのです。其上（そのうへ）、すべての善業（ぜんげふ）は祈禱（いのり）と同（おな）じく、天主様（てんしゅさま）の御恵（おめぐみ）を乞受（こいう）ける力（ちから）を有（も）って居（ゐ）ますから、之（これ）に由（よ）って他（た）の人（ひと）も色々（いろゝゝ）と有難（ありがた）い聖寵（せいちょう）を蒙（かうむ）れる訳（わけ）になります。

△誰（たれ）でも一様（いちやう）に蒙（かうむ）れるのですか。

〇夫（それ）は天主様（てんしゅさま）のお摂理（はからひ）に由（よ）ることで、何（なん）とも分（わか）りません。然（しか）しながら熱心（ねっしん）な人（ひと）と不熱心（ふねっしん）な人（ひと）、誠意（まごころ）こめて天主様（てんしゅさま）にお事（つか）へ申（まを）す人（ひと）と、やっと信者（しんじゃ）の務（つとめ）を果（はた）して居（ゐ）る様（やう）な人（ひと）とは、諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）を蒙（かうむ）るに於（おい）ても、大（おほい）に差別（さべつ）があることだけは疑（うたがひ）ありません。天主様（てんしゅさま）の為（ため）に十分身（じふぶんみ）を尽（つく）して働（はたら）く人（ひと）は、沢山之（たくさんこれ）を戴（いたゞ）き、聖会（せいくわい）の霊的宝（れいてきたから）を殖（ふや）すが為（ため）に格別働（かくべつはたら）きもしない人（ひと）は、少（すこし）しか分（わ）けて戴（いたゞ）かないのは、当然（あたりまへ）ぢゃありませんか。

△すると罪人（つみびと）は如何（どう）なりますか。

〇成聖（せいせい）の聖寵（せいちょう）を有（も）たない罪人（つみびと）は、償（つぐのひ）の功徳（くどく）を蒙（かうむ）ることが出来（でき）ない。償（つぐのひ）と云（い）ふものは、赦（ゆる）されたる罪（つみ）に当（あた）る有限（いうげん）の罸（ばつ）を贖（あがな）ふ為（ため）のものです。罸（ばつ）を消（け）して戴（いたゞ）くには、先（ま）づ其罪（そのつみ）を赦（ゆる）されねばなぬ。だから罪人（つみびと）は贖宥（しょくいう）を蒙（かうむ）れない訳（わけ）になる。然（しか）し他（た）の人（ひと）の祈禱（いのり）や、善業（ぜんげふ）によって、改心（かいしん）の恵（めぐみ）

[118]

らを乞受（こいう）けて戴（いたゞ）くことは出来（でき）ます。

△さすれば罪人（つみびと）も全（まった）く諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）に与（あづか）れない訳（わけ）では無（な）いのですね。

〇然（さ）うです、異教者（いけうしゃ）や、棄教者（ききょうしゃ）、破門者（はもんしゃ）ならば、全（まった）く聖会（せいくわい）と縁（えん）が切（き）れて居（ゐ）る。何等（なんら）の通功（つうこう）にも与（あづか）れません。然（しか）し罪人（つみびと）は聖会（せいくわい）の肢（えだ）の一（ひと）つです。聖寵（せいちょう）の血液（けつえき）が通（かよ）はないで、死（し）んだ様（やう）にはなって居（ゐ）るが、未（ま）だ全（まった）くは切棄（きりす）てられて居（ゐ）ません。容易（ようい）に気息（いき）を吹（ふ）き返（かへ）すことが出来（でき）るのです。分（わか）りましたか。

△ハイ、分（わか）りました。

〇要（えう）するに、成聖（せいせい）の聖寵（せいちょう）を常（つね）に保（たも）ち、聖会（せいくわい）の生（い）きた肢（えだ）でありますと、諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）に全部与（ぜんぶあづか）ることが出来（でき）ます。其方（そのほう）から見（み）ても、非常（ひじゃう）に利益（りえき）です。だから平素注意（へいそちゅうい）して、罪（つみ）に遠（とほざ）かり、屢秘蹟（しばゝゞひせき）を授（さづ）るやら、善業（ぜんげふ）を励（はげ）むやらして、成聖（せいせい）の聖寵（せいちょう）を増（ま）し、たんと諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）に与（あづか）れる様（やう）、務（つと）めなければなりません。

　　　　整　理（せいり）

〇現世（このよ）の教会（けうくわい）は譬（たと）へば何（ど）んな様（やう）なものでせうか。△天主様（てんしゅさま）を父（ちゝ）とせる一（ひとつ）の大（おほ）きな家族見（かぞくみ）た(:いな)様（やう）なものであります。

[119]

〇一家（いっか）の子供（こども）は何（ど）んな権利（けんり）を有（も）って居（ゐ）ますか△一家（いっか）の財産（ざいさん）を相続（さうぞく）し、之（これ）を使用（しよう）する権利（けんり）を有（も）って居（ゐ）ます。

〇信者（しんじゃ）たるものも、聖会（せいくわい）の財産（ざいさん）を使用（しよう）することが出来（でき）ますか△ハイ、出来（でき）ます。

〇何（ど）んな塩梅（あんばい）に?…△善業（ぜんげふ）の功徳（くどく）こそ人（ひと）に譲（ゆづ）って戴（いたゞ）くことは出来（でき）ませんが、然（しか）しその善業（ぜんげふ）から生（しゃう）ずる償（つぐのひ）は譲受（ゆづりう）けることが出来（でき）ます。

〇其他（そのほか）?△人（ひと）の為（ため）に祈（いの）って戴（いたゞ）いたり、善業（ぜんげふ）を献（さゝ）げてお恵（めぐみ）を乞求（こいもと）めて戴（いたゞ）いたりすることも出来（でき）ます。

〇だって私等（わたくしたち）の善業（ぜんげふ）ったら僅少（わづか）なものじゃありませんか△ですけれどもイエズス・キリスト様（さま）の限（かぎ）りなき功徳（くどく）や、聖母（せいぼ）マリア、諸聖人（しょせいじん）の償（つぐのひ）の余（あまり）や、毎日（まいにち）全世界（ぜんせかい）に行（おこな）はれるミサ聖祭（せいさい）、七（なゝつ）の秘蹟（ひせき）があります。

〇すると聖会（せいくわい）の宝（たから）は無尽蔵（むじんざう）ですね△ハイ、幾（いく）ら使（つか）っても減（へ）る気遣（きづか）ひはありません。

〇聖（せい）パウロは聖会（せいくわい）を何（なに）に譬（たと）へられましたか△一個（いっこ）の身体（からだ）に譬（たと）へられました。

〇その身体（からだ）は何（ど）んな風（ふう）になって居（ゐ）るんですか△イエズス・キリスト様（さま）が頭首（あたま）で、私等（わたくしたち）信者（しんじゃ）はその手足（てあし）や、胴（どう）なのです。

[120]

〇一個（いっこ）の身体（からだ）ですと、お互（たがひ）の関係（くわんけい）は如何（どんな）になりますか△頭首（あたま）から全体（からだじう）に同（おな）じ生気（せいき）が通（かよ）ひ、皆（みんな）が同（おな）じ精神（せいしん）で以（もっ）て活（い）きて居（ゐ）るのです。

〇何事（なにごと）も共（とも）にして行（ゆ）きますか△歡喜（よろこび）も、悲哀（かなしみ）も、苦（くるしみ）も楽（たのしみ）も共（とも）にして行（ゆ）きます。

〇公教会（こうけうくわい）も其（そ）んなになって居（ゐ）ますか△ハイ、一人（ひとり）が聖寵（せいちょう）を蒙（かうむ）り、祈（いのり）をなし、善業（ぜんげふ）を行（おこな）ひますと先（ま）づ本人（ほんにん）がその功徳（くどく）を蒙（かうむ）ります。然（しか）し他（た）の人（ひと）も幾分（いくぶん）その分配（わけまへ）に与（あづか）るのです。

〇すると自分（じぶん）で善業（ぜんげふ）を行（おこな）はなくとも、人（ひと）のを分配（ぶんぱい）して戴（いたゞ）く様（やう）にすれば可（よ）い訳（わけ）ですね△そんなことはありません。

〇何故（なぜ）?△自分（じぶん）で善業（ぜんげふ）を行（おこな）へば、その善（ぜん）なる所（ところ）から功徳（くどく）を生（しゃう）じます。

〇その功徳（くどく）は何（なに）になるのですか△その功徳（くどく）によって聖寵（せいちょう）を増（ま）して戴（いたゞ）きます。天国（てんごく）の福栄（さいはひ）も夫（それ）だけ多（おほ）くなる訳（わけ）です。

〇その功徳（くどく）は人（ひと）に譲（ゆづ）れますか△否（いえ）、夫（それ）は本人（ほんにん）のものです。人（ひと）には譲（ゆづ）れません。

〇善業（ぜんげふ）は功徳（くどく）を生（しゃう）ずるばかりですか△善業（ぜんげふ）を行（おこな）ふのは、多少苦（たせうくる）しく覚（おぼ）えられます。その苦（くる）しい所（ところ）から償（つぐのひ）を生（しゃう）じます。

〇その償（つぐのひ）は何（なに）になるんですか△イエズス・キリスト様（さま）の限（かぎ）りなき功徳（くどく）、聖母（せいぼ）マリア、諸聖人（しょせいじん）

[121]

の償（つぐのひ）の余（あま）りと合（あ）って贖宥（しょくいう）となります。他（た）に譲（ゆづ）ることも出来（でき）ます。

〇善業（ぜんげふ）はたゞ贖宥（しょくいう）となるばかりですか△善業（ぜんげふ）は祈（いのり）と同（おな）じく、天主様（てんしゅさま）の御恵（おめぐみ）を乞受（こひう）ける力（ちから）を有（も）って居（ゐ）ます。

〇信者（しんじゃ）たる者（もの）は、皆（み）な一様（いちやう）に諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）に与（あづ）かれますか△夫（それ）は天主様（てんしゅさま）のお摂理（はからひ）によることで何（なん）とも分（わか）りません。

〇全（まった）く分（わか）りませんか△熱心（ねっしん）な人（ひと）と不熱心（ふねっしん）な人（ひと）、誠意（まごゝろ）から天主様（てんしゅさま）にお事（つか）へ申（まを）す人（ひと）と、やっと信者（しんじゃ）の務（つとめ）を果（はた）して居（ゐ）る人（ひと）とは、大（おほい）に差別（さべつ）があることだけは疑（うたがひ）を容（い）れません。

〇罪人（つみびと）は如何（どう）なりますか△償（つぐのひ）の功徳（くどく）を蒙（かうむ）ることが出来（でき）ません。

〇何（ど）うして?△償（つぐのひ）と云（い）ふものは赦（ゆる）されたる罪（つみ）に当（あた）る有限（いうげん）の罸（ばつ）を贖（あがな）ふ為（ため）のものです。

〇夫（それ）で何（なん）ですか△罪（つみ）を赦（ゆる）されない先（さ）きに、罸（ばつ）を消（け）して戴（いたゞ）ける筈（はず）がありません。

〇すると罪人（つみびと）は何（なん）にも蒙（かうむ）れないのですか△否（いえ）、祈禱（いのり）や善業（ぜんげふ）によって、改心（かいしん）の恵（めぐみ）を乞受（こひう）けて戴（いたゞ）くことが出来（でき）ます。

〇して見（み）ると罪人（つみびと）は、異端者（いたんしゃ）や、破門者（はもんしゃ）とは違（ちが）ひますね△ハイ、異端者（いたんしゃ）や破門者（はもんしゃ）やと云（い）ふものは、聖会（せいくわい）と全（まった）く縁（えん）が切（き）れて了（しま）って居（ゐ）るのです。

[122]

〇罪人（つみびと）も然（さ）うぢゃないのですか△罪人（つみびと）は聖寵（せいちょう）の血液（けつえき）が通（かよ）はないで、死（し）んだ様（やう）になっては居（ゐ）ますが全（まった）く切棄（きりす）てられて了（しま）った訳（わけ）ではありません。まだ聖会（せいくわい）の肢（えだ）の一（ひと）つです。

〇気息（いき）を吹（ふ）き返（かへ）すことが出来（でき）ますか△出来（でき）ます。むつかしくはありません。

〇成聖（せいせい）の聖寵（せいちょう）を保（たも）ち、聖会（せいくわい）の生（い）きた肢（えだ）であると云（い）ふのは利益（りえき）ですか△諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）に全部与（ぜんぶあづか）れます。非常（ひじゃう）に利益（りえき）です。

〇だから信者（しんじゃ）たるものは、平生（へいぜい）から何（ど）んな心掛（こころがけ）であらねばなりませんか△注意（ちゅうい）して罪（つみ）に遠（とほざ）からねばなりません。

〇夫（それ）から?△屢（しばゝゞ）秘蹟（ひせき）を授（さづ）かるやら、善業（ぜんげふ）を励（はげ）むやらして、成聖（せいせい）の聖寵（せいちょう）を増（ま）し、たんと諸聖人（しょせいじん）の通功（つうこう）に与（あづか）れる様（やう）に務（つと）めねばなりません。

[実例（じつれい）]

　ソドマとゴモラの町人（まちびと）は不潔（ふけつ）な罪（つみ）を數々重（かずゝゞかさ）ねて、一向悔（いっかうく）い改（あらた）めようとしません。天主樣（てんしゅさま）も終（つひ）に愛相（あいさう）をつかして、之（これ）を焼滅（やきほろぼ）さうと思召（おぼしめし）になりました。アブラハムは其事（そのこと）を知（し）って不憫（ふびん）の淸（じゃう）に堪（た）へず、何（なん）とかして赦（ゆる）して戴（いたゞ）きたいものと思（おも）ひまして、若（も）し町中（まちなか）に五十人（ごじふにん）の義（たゞ）しい人（ひと）が見付（みつ）かったら、夫（それ）に免（めん）じて皆（みんな）に赦（ゆる）して下（くだ）さいませんでせうか、とお願（ねが）ひ申（まを）しました。天主様（てんしゅさま）はアブラ

[123]

ムの願（ねがひ）をお聴容（きゝい）れになりました。然（しか）しソドマには五十人（ごじふにん）の義（たゞ）しい人（ひと）が居（ゐ）なかったのです。アブラハムはだんゞゝ値切（ねぎ）って五十人（ごじふにん）から、四十五人（しじふごにん）、四十人（しじふにん）、三十人（さんじふにん）、二十人（にじふにん）となし、終（つひ）には十人（じふにん）まで行（ゆ）きました。『十人（じふにん）でも見付（みつか）ったら、恕（ゆる）して遣（つかは）す。滅（ほろぼ）しはせぬ』と天主様（てんしゅさま）は仰有（おっしゃ）って下（くだ）さいました。然（しか）し実（じつ）は十人（じふにん）の義（たゞ）しい人（ひと）も居（ゐ）なかったのです。到頭天（たうとうてん）から硫黄（いわう）と火（ひ）の雨（あめ）が降（ふ）って町（まち）も人（ひと）も草木（くさき）までも残（のこ）らず焼滅（やきほろぼ）されて了（しま）ひました。たゞアブラハムの甥（をひ）に当（あた）るロトの一家（いっか）だけは、正（たゞ）しい道（みち）を踏（ふ）んで居（ゐ）ましたので、天主様（てんしゅさま）の御憐（おんあはれみ）を蒙（かうむ）り、その災難（さいなん）を遁（のが）れることが出来（でき）ました。