万葉集/第六巻

第六巻


[歌番号]06/0910

[題詞](雑歌 / 養老七年癸亥夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])或本反<歌>曰

[原文]神柄加 見欲賀藍 三吉野乃 瀧<乃>河内者 雖見不飽鴨

[訓読]神からか見が欲しからむみ吉野の滝の河内は見れど飽かぬかも

[仮名]かむからか みがほしからむ みよしのの たきのかふちは みれどあかぬかも

[左注]なし

[校異]謌歌 -> 歌 [西(訂正)] / <> -> 乃 [元][金][類][紀]

[事項]雑歌 作者:笠金村 吉野 行幸 従駕 宮廷讃美 離宮 養老7年5月 年紀 或本歌 異伝 地名

[訓異]かむからか,[寛]かみからか,

みがほしからむ,[寛]みまほしからむ,

みよしのの[寛],

たきのかふちは,[寛]たきつかうちは,

みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,


[歌番号]06/0911

[題詞]((雑歌 / 養老七年癸亥夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])或本反<歌>曰)

[原文]三芳野之 秋津乃川之 万世尓 断事無 又還将見

[訓読]み吉野の秋津の川の万代に絶ゆることなくまたかへり見む

[仮名]みよしのの あきづのかはの よろづよに たゆることなく またかへりみむ

[左注]なし

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:笠金村 吉野 行幸 従駕 宮廷讃美 離宮 養老7年5月 年紀 或本歌 異伝 地名

[訓異]みよしのの[寛],

あきづのかはの,[寛]あきつのかはの,

よろづよに,[寛]よろつよに,

たゆることなく[寛],

またかへりみむ[寛],


[歌番号]06/0912

[題詞]((雑歌 / 養老七年癸亥夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])或本反<歌>曰)

[原文]泊瀬女 造木綿花 三吉野 瀧乃水沫 開来受屋

[訓読]泊瀬女の造る木綿花み吉野の滝の水沫に咲きにけらずや

[仮名]はつせめの つくるゆふばな みよしのの たきのみなわに さきにけらずや

[左注]なし

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:笠金村 吉野 行幸 従駕 宮廷讃美 離宮 養老7年5月 年紀 或本歌 異伝 地名

[訓異]はつせめの[寛],

つくるゆふばな,[寛]つくるゆふはな,

みよしのの[寛],

たきのみなわに,[寛]たきのみなはに,

さきにけらずや,[寛]さききたらすや,


[歌番号]06/0913

[題詞]車持朝臣千年作歌一首[并短歌]

[原文]味凍 綾丹乏敷 鳴神乃 音耳聞師 三芳野之 真木立山湯 見降者 川之瀬毎 開来者 朝霧立 夕去者 川津鳴奈<拝> 紐不解 客尓之有者 吾耳為而 清川原乎 見良久之惜蒙

[訓読]味凝り あやにともしく 鳴る神の 音のみ聞きし み吉野の 真木立つ山ゆ 見下ろせば 川の瀬ごとに 明け来れば 朝霧立ち 夕されば かはづ鳴くなへ 紐解かぬ 旅にしあれば 我のみして 清き川原を 見らくし惜しも

[仮名]うまこり あやにともしく なるかみの おとのみききし みよしのの まきたつやまゆ みおろせば かはのせごとに あけくれば あさぎりたち ゆふされば かはづなくなへ ひもとかぬ たびにしあれば わのみして きよきかはらを みらくしをしも

[左注](右年月不審 但以歌類載於此次焉 / 或本云 養老七年五月幸于芳野離宮之時作)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 辨詳 -> 拝 [元][類][紀] [古](楓) 利

[事項]雑歌 作者:車持千年 吉野 行幸 従駕 宮廷讃美 羈旅 養老7年5月 年紀 動物 地名 枕詞

[訓異]うまこり,[寛]あちこりの,

あやにともしく[寛],

なるかみの[寛],

おとのみききし[寛],

みよしのの[寛],

まきたつやまゆ[寛],

みおろせば,[寛]みくたせは,

かはのせごとに,[寛]かはのせことに,

あけくれば,[寛]あけくれは,

あさぎりたち,[寛]あさきりたちて,

ゆふされば,[寛]ゆふされは,

かはづなくなへ,[寛]かはつなきなへ,

ひもとかぬ,[寛]ひもとかす,

たびにしあれば,[寛]たひにしあるは,

わのみして,[寛]われにして,

きよきかはらを[寛],

みらくしをしも[寛],


[歌番号]06/0914

[題詞](車持朝臣千年作歌一首[并短歌])反歌一首

[原文]瀧上乃 三船之山者 雖<畏> 思忘 時毛日毛無

[訓読]滝の上の三船の山は畏けど思ひ忘るる時も日もなし

[仮名]たきのうへの みふねのやまは かしこけど おもひわするる ときもひもなし

[左注](右年月不審 但以歌類載於此次焉 / 或本云 養老七年五月幸于芳野離宮之時作)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 畏 [西(右書)][元][金][類]

[事項]雑歌 作者:車持千年 吉野 行幸 従駕 宮廷讃美 羈旅 養老7年5月 年紀 地名

[訓異]たきのうへの[寛],

みふねのやまは[寛],

かしこけど,[寛]かしこけと,

おもひわするる[寛],

ときもひもなし[寛],


[歌番号]06/0915

[題詞](車持朝臣千年作歌一首[并短歌])或本反歌曰

[原文]千鳥鳴 三吉野川之 <川音> 止時梨二 所思<公>

[訓読]千鳥泣くみ吉野川の川音のやむ時なしに思ほゆる君

[仮名]ちどりなく みよしのかはの かはおとの やむときなしに おもほゆるきみ

[左注](右年月不審 但以歌類載於此次焉 / 或本云 養老七年五月幸于芳野離宮之時作)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 音成 -> 川音 [金][紀] / 君 -> 公 [元][金][類]

[事項]雑歌 作者:車持千年 吉野 行幸 従駕 宮廷讃美 羈旅 養老7年5月 年紀 或本歌 異伝 枕詞 動物 序詞

[訓異]ちどりなく,[寛]ちとりなく,

みよしのかはの[寛],

かはおとの,[寛]おとしなみ,

やむときなしに[寛],

おもほゆるきみ[寛],


[歌番号]06/0916

[題詞]((車持朝臣千年作歌一首[并短歌])或本反歌曰)

[原文]茜刺 日不並二 吾戀 吉野之河乃 霧丹立乍

[訓読]あかねさす日並べなくに我が恋は吉野の川の霧に立ちつつ

[仮名]あかねさす ひならべなくに あがこひは よしののかはの きりにたちつつ

[左注]右年月不審 但以歌類載於此次焉 / 或本云 養老七年五月幸于芳野離宮之時作

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 五 [元][金][紀] 正

[事項]雑歌 作者:車持千年 吉野 行幸 従駕 讃美 羈旅 養老7年5月 年紀 或本歌 異伝 枕詞 恋情 地名

[訓異]あかねさす[寛],

ひならべなくに,[寛]ひをもへなくに,

あがこひは,[寛]わかこふる,

よしののかはの[寛],

きりにたちつつ[寛],


[歌番号]06/0917

[題詞]神龜元年甲子冬十月五日幸于紀伊國時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌]

[原文]安見知之 和期大王之 常宮等 仕奉流 左日鹿野由 背<匕>尓所見 奥嶋 清波瀲尓 風吹者 白浪左和伎 潮干者 玉藻苅管 神代従 然曽尊吉 玉津嶋夜麻

[訓読]やすみしし 我ご大君の 常宮と 仕へ奉れる 雑賀野ゆ そがひに見ゆる 沖つ島 清き渚に 風吹けば 白波騒き 潮干れば 玉藻刈りつつ 神代より しかぞ貴き 玉津島山

[仮名]やすみしし わごおほきみの とこみやと つかへまつれる さひかのゆ そがひにみゆる おきつしま きよきなぎさに かぜふけば しらなみさわき しほふれば たまもかりつつ かむよより しかぞたふとき たまつしまやま

[左注](右年月不記 但称従駕玉津嶋也 因今檢注行幸年月以載之焉)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 上 -> 匕 [西(右貼紙)][元][金]

[事項]雑歌 作者:山部赤人 紀州 和歌山 行幸 神亀1年10月5日 年紀 土地讃美 羈旅 地名 枕詞

[訓異]やすみしし[寛],

わごおほきみの,[寛]わかおほきみの,

とこみやと[寛],

つかへまつれる[寛],

さひかのゆ[寛],

そがひにみゆる,[寛]そかひにみゆる,

おきつしま[寛],

きよきなぎさに,[寛]きよきなきさに,

かぜふけば,[寛]かせふけは,

しらなみさわき[寛],

しほふれば,[寛]しほひれは,

たまもかりつつ[寛],

かむよより,[寛]かみよより,

しかぞたふとき,[寛]しかそたふとき,

たまつしまやま[寛],


[歌番号]06/0918

[題詞](神龜元年甲子冬十月五日幸于紀伊國時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌二首

[原文]奥嶋 荒礒之玉藻 潮干満 伊隠去者 所念武香聞

[訓読]沖つ島荒礒の玉藻潮干満ちい隠りゆかば思ほえむかも

[仮名]おきつしま ありそのたまも しほひみち いかくりゆかば おもほえむかも

[左注](右年月不記 但称従駕玉津嶋也 因今檢注行幸年月以載之焉)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:山部赤人 紀州 和歌山 行幸 神亀1年10月5日 年紀 土地讃美 羈旅 地名

[訓異]おきつしま[寛],

ありそのたまも,[寛]あらいそのたまも,

しほひみち,[寛]しほみちて,

いかくりゆかば,[寛]いかくれゆかは,

おもほえむかも,[寛]おもほへむかも,


[歌番号]06/0919

[題詞]((神龜元年甲子冬十月五日幸于紀伊國時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌二首)

[原文]若浦尓 塩満来者 滷乎無美 葦邊乎指天 多頭鳴渡

[訓読]若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る

[仮名]わかのうらに しほみちくれば かたをなみ あしへをさして たづなきわたる

[左注]右年月不記 但称従駕玉津嶋也 因今檢注行幸年月以載之焉

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:山部赤人 紀州 和歌山 行幸 土地讃美 羈旅 地名 動物 神亀1年10月5日 年紀

[訓異]わかのうらに[寛],

しほみちくれば,[寛]しほみちくれは,

かたをなみ[寛],

あしへをさして[寛],

たづなきわたる,[寛]たつなきわたる,


[歌番号]06/0921

[題詞](神龜二年乙丑夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首

[原文]萬代 見友将飽八 三芳野乃 多藝都河内乃 大宮所

[訓読]万代に見とも飽かめやみ吉野のたぎつ河内の大宮所

[仮名]よろづよに みともあかめや みよしのの たぎつかふちの おほみやところ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:笠金村 吉野 行幸 宮廷讃美 神亀2年5月 年紀 地名

[訓異]よろづよに,[寛]よろつよに,

みともあかめや[寛],

みよしのの[寛],

たぎつかふちの,[寛]たきつかうちの,

おほみやところ[寛],


[歌番号]06/0931

[題詞]車持朝臣千年作歌一首[并短歌]

[原文]鯨魚取 濱邊乎清三 打靡 生玉藻尓 朝名寸二 千重浪縁 夕菜寸二 五百重<波>因 邊津浪之 益敷布尓 月二異二 日日雖見 今耳二 秋足目八方 四良名美乃 五十開廻有 住吉能濱

[訓読]鯨魚取り 浜辺を清み うち靡き 生ふる玉藻に 朝なぎに 千重波寄せ 夕なぎに 五百重波寄す 辺つ波の いやしくしくに 月に異に 日に日に見とも 今のみに 飽き足らめやも 白波の い咲き廻れる 住吉の浜

[仮名]いさなとり はまへをきよみ うちなびき おふるたまもに あさなぎに ちへなみよせ ゆふなぎに いほへなみよす へつなみの いやしくしくに つきにけに ひにひにみとも いまのみに あきだらめやも しらなみの いさきめぐれる すみのえのはま

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 浪 -> 波 [元][紀][細] / 日 [元][温][矢] 々

[事項]雑歌 作者:車持千年 難波 大阪 住吉 離宮 宮廷讃美 羈旅 地名 枕詞

[訓異]いさなとり[寛],

はまへをきよみ[寛],

うちなびき,[寛]うちなひき,

おふるたまもに[寛],

あさなぎに,[寛]あさなきに,

ちへなみよせ,[寛]ちへになみよせ,

ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,

いほへなみよす,[寛]いほへなみよる,

へつなみの[寛],

いやしくしくに,[寛]ますしくしくに,

つきにけに[寛],

ひにひにみとも,[寛]ひひにみれとも,

いまのみに[寛],

あきだらめやも,[寛]あきたらめやも,

しらなみの[寛],

いさきめぐれる,[寛]いさきめくれる,

すみのえのはま[寛],


[歌番号]06/0941

[題詞]((山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首)

[原文]明方 潮干乃道乎 従明日者 下咲異六 家近附者

[訓読]明石潟潮干の道を明日よりは下笑ましけむ家近づけば

[仮名]あかしがた しほひのみちを あすよりは したゑましけむ いへちかづけば

[左注]なし

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:山部赤人 播磨 兵庫 羈旅 望郷 地名

[訓異]あかしがた,[寛]あかしかた,

しほひのみちを[寛],

あすよりは[寛],

したゑましけむ,[寛]したうれしけむ,

いへちかづけば,[寛]いへちかつけは,


[歌番号]06/0951

[題詞](五年戊辰幸于難波宮時作歌四首)

[原文]見渡者 近物可良 石隠 加我欲布珠乎 不取不巳

[訓読]見わたせば近きものから岩隠りかがよふ玉を取らずはやまじ

[仮名]みわたせば ちかきものから いはがくり かがよふたまを とらずはやまじ

[左注](右笠朝臣金村之歌中出也 或云車持朝臣千年作<之>也)

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:笠金村歌集 車持千年 作者異伝 難波 大阪 比喩 恋愛 神亀5年 年紀 掛醎合媿 地名

[訓異]みわたせば,[寛]みわたせは,

ちかきものから[寛],

いはがくり,[寛]いそかくれ,

かがよふたまを,[寛]かかよふたまを,

とらずはやまじ,[寛]とらすはやまし,


[歌番号]06/0961

[題詞]帥大伴卿宿次田温泉聞鶴喧作歌一首

[原文]湯原尓 鳴蘆多頭者 如吾 妹尓戀哉 時不定鳴

[訓読]湯の原に鳴く葦鶴は我がごとく妹に恋ふれや時わかず鳴く

[仮名]ゆのはらに なくあしたづは あがごとく いもにこふれや ときわかずなく

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:大伴旅人 太宰府 福岡 二日市温泉 妻 地名 動物 恋情

[訓異]ゆのはらに[寛],

なくあしたづは,[寛]なくあしたつは,

あがごとく,[寛]わかことく,

いもにこふれや[寛],

ときわかずなく,[寛]ときわかすなく,


[歌番号]06/0971

[題詞]四年壬申藤原宇合卿遣西海道節度使之時高橋連蟲麻呂作歌一首[并短歌]

[原文]白雲乃 龍田山乃 露霜尓 色附時丹 打超而 客行<公>者 五百隔山 伊去割見 賊守 筑紫尓至 山乃曽伎 野之衣寸見世常 伴部乎 班遣之 山彦乃 将應極 谷潜乃 狭渡極 國方乎 見之賜而 冬<木>成 春去行者 飛鳥乃 早御来 龍田道之 岳邊乃路尓 丹管土乃 将薫時能 櫻花 将開時尓 山多頭能 迎参出六 <公>之来益者

[訓読]白雲の 龍田の山の 露霜に 色づく時に うち越えて 旅行く君は 五百重山 い行きさくみ 敵守る 筑紫に至り 山のそき 野のそき見よと 伴の部を 班ち遣はし 山彦の 答へむ極み たにぐくの さ渡る極み 国形を 見したまひて 冬こもり 春さりゆかば 飛ぶ鳥の 早く来まさね 龍田道の 岡辺の道に 丹つつじの にほはむ時の 桜花 咲きなむ時に 山たづの 迎へ参ゐ出む 君が来まさば

[仮名]しらくもの たつたのやまの つゆしもに いろづくときに うちこえて たびゆくきみは いほへやま いゆきさくみ あたまもる つくしにいたり やまのそき ののそきみよと とものへを あかちつかはし やまびこの こたへむきはみ たにぐくの さわたるきはみ くにかたを めしたまひて ふゆこもり はるさりゆかば とぶとりの はやくきまさね たつたぢの をかへのみちに につつじの にほはむときの さくらばな さきなむときに やまたづの むかへまゐでむ きみがきまさば

[左注](右檢補任文八月十七日任東山々陰西海節度使)

[校異]06/0971D01歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 君 -> 公 [元][類][紀] / <> -> 木 [元][類][紀] / 君 -> 公 [元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:高橋虫麻呂 藤原宇合 羈旅 送別 大夫 天平4年8月17日 年紀 枕詞 植物 地名

[訓異]しらくもの[寛],

たつたのやまの[寛],

つゆしもに[寛],

いろづくときに,[寛]いろつくときに,

うちこえて[寛],

たびゆくきみは,[寛]たひゆくきみは,

いほへやま[寛],

いゆきさくみ,[寛]いゆきさくみて,

あたまもる[寛],

つくしにいたり[寛],

やまのそき[寛],

ののそきみよと[寛],

とものへを[寛],

あかちつかはし,[寛]わかちつかはし,

やまびこの,[寛]やまひこの,

こたへむきはみ[寛],

たにぐくの,[寛]たにくくの,

さわたるきはみ,[寛]さわたるきわみ,

くにかたを[寛],

めしたまひて,[寛]みせしたまひて,

ふゆこもり,[寛]ふゆこなり,

はるさりゆかば,[寛]はるさりゆけは,

とぶとりの,[寛]とふとりの,

はやくきまさね,[寛]はやみきたりて,

たつたぢの,[寛]たつたちの,

をかへのみちに[寛],

につつじの,[寛]につつしの,

にほはむときの[寛],

さくらばな,[寛]さくらはな,

さきなむときに[寛],

やまたづの,[寛]やまたつの,

むかへまゐでむ,[寛]むかへまゐてむ,

きみがきまさば,[寛]きみかきませは,


[歌番号]06/0981

[題詞]大伴坂上郎女月歌三首

[原文]猟高乃 高圓山乎 高弥鴨 出来月乃 遅将光

[訓読]狩高の高円山を高みかも出で来る月の遅く照るらむ

[仮名]かりたかの たかまとやまを たかみかも いでくるつきの おそくてるらむ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:坂上郎女 題詠 奈良 地名

[訓異]かりたかの,[寛]かるたかの,

たかまとやまを[寛],

たかみかも[寛],

いでくるつきの,[寛]いてくるつきの,

おそくてるらむ[寛],


[歌番号]06/0991

[題詞]同鹿人至泊瀬河邊作歌一首

[原文]石走 多藝千流留 泊瀬河 絶事無 亦毛来而将見

[訓読]石走りたぎち流るる泊瀬川絶ゆることなくまたも来て見む

[仮名]いはばしり たぎちながるる はつせがは たゆることなく またもきてみむ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:紀鹿人 桜井 奈良 土地讃美 大伴荘園 地名

[訓異]いはばしり,[寛]いしはしる,

たぎちながるる,[寛]たきちなかるる,

はつせがは,[寛]はつせかは,

たゆることなく[寛],

またもきてみむ[寛],


[歌番号]06/1000

[題詞](春三月幸于難波宮之時歌六首)

[原文]兒等之有者 二人将聞乎 奥渚尓 鳴成多頭乃 暁之聲

[訓読]子らしあらばふたり聞かむを沖つ洲に鳴くなる鶴の暁の声

[仮名]こらしあらば ふたりきかむを おきつすに なくなるたづの あかときのこゑ

[左注]右一首守部王作

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:守部王 行幸 大阪 恋情 望郷 天平6年3月 年紀 地名

[訓異]こらしあらば,[寛]こらかあらは,

ふたりきかむを[寛],

おきつすに[寛],

なくなるたづの,[寛]なくなるたつの,

あかときのこゑ,[寛]あかつきのこゑ


[歌番号]06/1001

[題詞](春三月幸于難波宮之時歌六首)

[原文]大夫者 御<猟>尓立之 未通女等者 赤裳須素引 清濱備乎

[訓読]大夫は御狩に立たし娘子らは赤裳裾引く清き浜びを

[仮名]ますらをは みかりにたたし をとめらは あかもすそひく きよきはまびを

[左注]右一首山部宿祢赤人作

[校異]臈 -> 猟 [西(左貼紙)][元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:山部赤人 行幸 大阪 難波 従駕 宮廷歌人 天平6年3月 年紀 地名

[訓異]ますらをは[寛],

みかりにたたし[寛],

をとめらは[寛],

あかもすそひく,[寛]あかもすそひき,

きよきはまびを,[寛]きよきはまへを,


[歌番号]06/1002

[題詞](春三月幸于難波宮之時歌六首)

[原文]馬之歩 押止駐余 住吉之 岸乃黄土 尓保比而将去

[訓読]馬の歩み抑へ留めよ住吉の岸の埴生ににほひて行かむ

[仮名]うまのあゆみ おさへとどめよ すみのえの きしのはにふに にほひてゆかむ

[左注]右一首安<倍>朝臣豊継作

[校異]部 -> 倍 [元][細]

[事項]雑歌 作者:安倍豊継 行幸 羈旅 土地讃美 大阪 難波 天平6年3月 地名

[訓異]うまのあゆみ[寛],

おさへとどめよ,[寛]をしてととめよ,

すみのえの[寛],

きしのはにふに[寛],

にほひてゆかむ[寛],


[歌番号]06/1003

[題詞]筑後守外従五位下葛井連大成遥見海人釣船作歌一首

[原文]海D嬬 玉求良之 奥浪 恐海尓 船出為利所見

[訓読]海女娘子玉求むらし沖つ波畏き海に舟出せり見ゆ

[仮名]あまをとめ たまもとむらし おきつなみ かしこきうみに ふなでせりみゆ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:葛井大成 羈旅 佐賀 土地 叙景 漁夫 地名 属目

[訓異]あまをとめ[寛],

たまもとむらし[寛],

おきつなみ[寛],

かしこきうみに[寛],

ふなでせりみゆ,[寛]ふなてせりみゆ,


[歌番号]06/1004

[題詞]按作村主益人歌一首

[原文]不所念 来座君乎 <佐>保<川>乃 河蝦不令聞 還都流香聞

[訓読]思ほえず来ましし君を佐保川のかはづ聞かせず帰しつるかも

[仮名]おもほえず きまししきみを さほがはの かはづきかせず かへしつるかも

[左注]右内<匠>大属按作村主益人聊設<飲饌>以饗長官佐為王 未及日斜王既還歸 於時益人怜惜不猒之歸仍作此歌

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 左 -> 佐 [元][類][紀] / 河 -> 川 [元][類][紀] / 匠寮 -> 匠 [元][紀] / 饌飲 -> 飲饌 [元][紀] / 歌 [西] 謌

[事項]雑歌 作者:按作益人 宴席 主人 も賸渧賖 佐為王 別悞 哀惜 地名 奈良

[訓異]おもほえず,[寛]おもほえす,

きまししきみを,[寛]きませるきみを,

さほがはの,[寛]さほかはの,

かはづきかせず,[寛]かはつきかせて,

かへしつるかも,[寛]かへりつるかも,


[歌番号]06/1005

[題詞]八年丙子夏六月幸于芳野離宮之時山<邊>宿祢赤人應詔作歌一首[并短歌]

[原文]八隅知之 我大王之 見給 芳野宮者 山高 雲曽軽引 河速弥 湍之聲曽清寸 神佐備而 見者貴久 宜名倍 見者清之 此山<乃> 盡者耳社 此河乃 絶者耳社 百師紀能 大宮所 止時裳有目

[訓読]やすみしし 我が大君の 見したまふ 吉野の宮は 山高み 雲ぞたなびく 川早み 瀬の音ぞ清き 神さびて 見れば貴く よろしなへ 見ればさやけし この山の 尽きばのみこそ この川の 絶えばのみこそ ももしきの 大宮所 やむ時もあらめ

[仮名]やすみしし わがおほきみの めしたまふ よしののみやは やまたかみ くもぞたなびく かははやみ せのおとぞきよき かむさびて みればたふとき よろしなへ みればさやけし このやまの つきばのみこそ このかはの たえばのみこそ ももしきの おほみやところ やむときもあらめ

[左注]なし

[校異]部 -> 邊 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短哥 / 久 (楓) 之 / 之 -> 乃 [元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:山部赤人 行幸 従駕 応詔 吉野 離宮 宮廷讃美 天平8年6月 年紀 地名

[訓異]やすみしし[寛],

わがおほきみの,[寛]わかおおきみの,

めしたまふ,[寛]みせたまふ,

よしののみやは[寛],

やまたかみ[寛],

くもぞたなびく,[寛]くもそたなひく,

かははやみ[寛],

せのおとぞきよき,[寛]せのおとそきよき,

かむさびて,[寛]かみさひて,

みればたふとき,[寛]みれはたふとく,

よろしなへ[寛],

みればさやけし,[寛]みれはさやけし,

このやまの[寛],

つきばのみこそ,[寛]つきはのみこそ,

このかはの[寛],

たえばのみこそ,[寛]たえはのみこそ,

ももしきの[寛],

おほみやところ[寛],

やむときもあらめ[寛],


[歌番号]06/1006

[題詞](八年丙子夏六月幸于芳野離宮之時山<邊>宿祢赤人應詔作歌一首[并短歌])反歌一首

[原文]自神代 芳野宮尓 蟻通 高所知者 山河乎吉三

[訓読]神代より吉野の宮にあり通ひ高知らせるは山川をよみ

[仮名]かむよより よしののみやに ありがよひ たかしらせるは やまかはをよみ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:山部赤人 行幸 従駕 応詔 吉野 離宮 讃美 天平8年6月 年紀 地名

[訓異]かむよより,[寛]かみよより,

よしののみやに[寛],

ありがよひ,[寛]ありかよひ,

たかしらせるは,[寛]たかくしれるは,

やまかはをよみ[寛],


[歌番号]06/1007

[題詞]市原王悲獨子歌一首

[原文]言不問 木尚妹與兄 有云乎 直獨子尓 有之苦者

[訓読]言問はぬ木すら妹と兄とありといふをただ独り子にあるが苦しさ

[仮名]こととはぬ きすらいもとせと ありといふを ただひとりこに あるがくるしさ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:市原王 独り 悲哀

[訓異]こととはぬ[寛],

きすらいもとせと,[寛]きすらいもとせ,

ありといふを[寛],

ただひとりこに,[寛]たたひとりこに,

あるがくるしさ,[寛]あるかくるしさ,


[歌番号]06/1008

[題詞]忌部首黒麻呂恨友賖来歌一首

[原文]山之葉尓 不知世經月乃 将出香常 我待君之 夜者更降管

[訓読]山の端にいさよふ月の出でむかと我が待つ君が夜はくたちつつ

[仮名]やまのはに いさよふつきの いでむかと わがまつきみが よはくたちつつ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:忌部黒麻呂 怨恨 待攦 宴席

[訓異]やまのはに[寛],

いさよふつきの[寛],

いでむかと,[寛]いてむかと,

わがまつきみが,[寛]わかまつきみか,

よはくたちつつ,[寛]よはふけにつつ,


[歌番号]06/1009

[題詞]冬十一月左大辨葛城王等賜姓橘氏之時御製歌一首

[原文]橘者 實左倍花左倍 其葉左倍 枝尓霜雖降 益常葉之<樹>

[訓読]橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどいや常葉の木

[仮名]たちばなは みさへはなさへ そのはさへ えにしもふれど いやとこはのき

[左注]右冬十一月九日 従三位葛城王従四位上佐為王等 辞皇族之高名 賜外家之橘姓已訖 於時太上天皇々后共在于皇后宮 以為肆宴而即御製賀橘之歌 并賜御酒宿祢等也 或云 此歌一首太上天皇御歌 但天皇々后御歌各有一首者 其歌遺落未得<探>求焉 今檢案内 八年十一月九日葛城王等願橘宿祢之姓上表 以十七日依表乞賜橘宿祢

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 樹 [西(上書訂正)][元][類] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 此歌 [西] 此謌 [西(訂正)] 此歌 / 御歌 [西] 御哥 [西(訂正)] 御歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 其歌 [西] 其謌 [西(訂正)] 其歌 / 採 -> 探 [元][紀]

[事項]雑歌 作者:聖武天皇 元正天皇 作者異伝 讃美 宴席 寿歌 祝媿 天平8年11月 植物

[訓異]たちばなは,[寛]たちはなは,

みさへはなさへ[寛],

そのはさへ[寛],

えにしもふれど,[寛]えたにしもおけと,

いやとこはのき,[寛]ましとこはのき,


[歌番号]06/1010

[題詞]橘宿祢奈良麻呂應詔歌一首

[原文]奥山之 真木葉凌 零雪乃 零者雖益 地尓落目八方

[訓読]奥山の真木の葉しのぎ降る雪の降りは増すとも地に落ちめやも

[仮名]おくやまの まきのはしのぎ ふるゆきの ふりはますとも つちにおちめやも

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:橘奈良麻呂 応詔 寿歌 祝媿 天平8年11月 植物

[訓異]おくやまの[寛],

まきのはしのぎ,[寛]まきのはしのき,

ふるゆきの[寛],

ふりはますとも[寛],

つちにおちめやも[寛],


[歌番号]06/1011

[題詞]冬十二月十二日歌儛所之諸王臣子等集葛井連廣成家宴歌二首 / 比来古儛盛興 古歳漸晩 理宜共盡古情同唱<古>歌 故擬此趣<輙>獻古曲二節 風流意氣之士儻有此集之中 争發念心々和古體

[原文]我屋戸之 梅咲有跡 告遣者 来云似有 散去十方吉

[訓読]我が宿の梅咲きたりと告げ遣らば来と言ふに似たり散りぬともよし

[仮名]わがやどの うめさきたりと つげやらば こといふににたり ちりぬともよし

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 宴歌 [西] 宴謌 [西(訂正)] 宴歌 / 此 -> 古 [元(赭)] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 輙 [西(右書)][類][紀]

[事項]雑歌 古歌 唱和 伝誦 葛井広成 風流 天平8年12月12日 年紀 植物

[訓異]わがやどの,[寛]わかやとの,

うめさきたりと[寛],

つげやらば,[寛]つけやらは,

こといふににたり,[寛]こてふににたり,

ちりぬともよし[寛],


[歌番号]06/1012

[題詞](冬十二月十二日歌儛所之諸王臣子等集葛井連廣成家宴歌二首 / 比来古儛盛興 古歳漸晩 理宜共盡古情同唱<古>歌 故擬此趣<輙>獻古曲二節 風流意氣之士儻有此集之中 争發念心々和古體)

[原文]春去者 乎呼理尓乎呼里 鴬<之 鳴>吾嶋曽 不息通為

[訓読]春さればををりにををり鴬の鳴く我が山斎ぞやまず通はせ

[仮名]はるされば ををりにををり うぐひすの なくわがしまぞ やまずかよはせ

[左注]なし

[校異]<> -> 之鳴 [西(左書)][元][類][紀]

[事項]雑歌 古歌 唱和 伝誦 葛井広成 風流 天平8年12月12日 年紀 動物

[訓異]はるされば,[寛]はるされは,

ををりにををり[寛],

うぐひすの,[寛]うくひすの,

なくわがしまぞ,[寛]なくわかしまそ,

やまずかよはせ,[寛]やますかよはせ,


[歌番号]06/1013

[題詞]九年丁丑春正月橘少卿并諸大夫等集弾正尹門部王家宴歌二首

[原文]豫 公来座武跡 知麻世婆 門尓屋戸尓毛 珠敷益乎

[訓読]あらかじめ君来まさむと知らませば門に宿にも玉敷かましを

[仮名]あらかじめ きみきまさむと しらませば かどにやどにも たましかましを

[左注]右一首主人門部王 [後賜姓大原真人氏也]

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:門部王 宴席 歓迎 天平9年1月 年紀

[訓異]あらかじめ,[寛]かねてより,

きみきまさむと[寛],

しらませば,[寛]しらませは,

かどにやどにも,[寛]かとにやとにも,

たましかましを[寛],


[歌番号]06/1014

[題詞](九年丁丑春正月橘少卿并諸大夫等集弾正尹門部王家宴歌二首)

[原文]前日毛 昨日毛<今>日毛 雖見 明日左倍見巻 欲寸君香聞

[訓読]一昨日も昨日も今日も見つれども明日さへ見まく欲しき君かも

[仮名]をとつひも きのふもけふも みつれども あすさへみまく ほしききみかも

[左注]右一首橘宿祢文成 [即少卿之子也]

[校異]尓 -> 今 [西(貼紙)][元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:橘文成 宴席 主人讃美 天平9年

[訓異]をとつひも,[寛]さきつひも,

きのふもけふも[寛],

みつれども,[寛]みつれとも,

あすさへみまく[寛],

ほしききみかも[寛],


[歌番号]06/1015

[題詞]榎井王後追和歌一首 [志貴親王之子也]

[原文]玉敷而 待益欲利者 多鷄蘇香仁 来有今夜四 樂所念

[訓読]玉敷きて待たましよりはたけそかに来る今夜し楽しく思ほゆ

[仮名]たましきて またましよりは たけそかに きたるこよひし たのしくおもほゆ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:榎井王 追和 門部王 宴席

[訓異]たましきて[寛],

またましよりは[寛],

たけそかに[寛],

きたるこよひし[寛],

たのしくおもほゆ,[寛]たのくおもほゆ,


[歌番号]06/1016

[題詞]春二月諸大夫等集左少辨巨勢宿奈麻呂朝臣家宴歌一首

[原文]海原之 遠渡乎 遊士之 遊乎将見登 莫津左比曽来之

[訓読]海原の遠き渡りを風流士の遊ぶを見むとなづさひぞ来し

[仮名]うなはらの とほきわたりを みやびをの あそぶをみむと なづさひぞこし

[左注]右一首書白紙懸著屋壁也 題云 蓬莱仙媛所<化>嚢蘰 為風流秀才之士矣 斯凡客不所望見哉

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 化 [元][類][紀]

[事項]雑歌 巨勢宿奈麻呂 宴席 風流 神仙 遊び 天平9年2月

[訓異]うなはらの[寛],

とほきわたりを[寛],

みやびをの,[寛]たわれをの,

あそぶをみむと,[寛]あそふをみむと,

なづさひぞこし,[寛]なつさひそこし,


[歌番号]06/1017

[題詞]夏四月大伴坂上郎女奉拝賀茂神社之時便超相坂山望見近江海而晩頭還来作歌一首

[原文]木綿疊 手向乃山乎 今日<越>而 何野邊尓 廬将為<吾>等

[訓読]木綿畳手向けの山を今日越えていづれの野辺に廬りせむ我れ

[仮名]ゆふたたみ たむけのやまを けふこえて いづれののへに いほりせむわれ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 超 -> 越 [元][類] / 子 -> 吾 [元][類][紀][細]

[事項]雑歌 作者:坂上郎女 京都 羈旅 黒人 旅愁 天平9年4月

[訓異]ゆふたたみ[寛],

たむけのやまを[寛],

けふこえて[寛],

いづれののへに,[寛]いつれののへに,

いほりせむわれ,[寛]いほりせむこら,


[歌番号]06/1018

[題詞]十年戊寅元興寺之僧自嘆歌一首

[原文]白珠者 人尓不所知 不知友縦 雖不知 吾之知有者 不知友任意

[訓読]白玉は人に知らえず知らずともよし知らずとも我れし知れらば知らずともよし

[仮名]しらたまは ひとにしらえず しらずともよし しらずとも われししれらば しらずともよし

[左注]右一首<或云> 元興寺之僧獨覺多智 未有顯聞 衆諸<狎>侮 因此僧作此歌 自嘆身才也

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 或云 [元][細] / 押 -> 狎 [代匠記精撰本] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:元興寺僧 孤高 天平10年 年紀

[訓異]しらたまは[寛],

ひとにしらえず,[寛]ひとにしられす,

しらずともよし,[寛]しらすともよし,

しらずとも,[寛]しらすとも,

われししれらば,[寛]われししれらは,

しらずともよし,[寛]しらすともよし,


[歌番号]06/1019

[題詞]石上乙麻呂卿配土左國之時歌三首[并短歌]

[原文]石上 振乃尊者 弱女乃 或尓縁而 馬自物 縄取附 肉自物 弓笶圍而 王 命恐 天離 夷部尓退 古衣 又打山従 還来奴香聞

[訓読]石上 布留の命は 手弱女の 惑ひによりて 馬じもの 縄取り付け 獣じもの 弓矢囲みて 大君の 命畏み 天離る 鄙辺に罷る 古衣 真土の山ゆ 帰り来ぬかも

[仮名]いそのかみ ふるのみことは たわやめの まどひによりて うまじもの なはとりつけ ししじもの ゆみやかくみて おほきみの みことかしこみ あまざかる ひなへにまかる ふるころも まつちのやまゆ かへりこぬかも

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌

[事項]雑歌 石上乙麻呂 流罪 久米若賣 密通 天平11年 年紀 土佐 高知 同情 歌語り

[訓異]いそのかみ[寛],

ふるのみことは[寛],

たわやめの[寛],

まどひによりて,[寛]まとひによりて,

うまじもの,[寛]むましもの,

なはとりつけ,[寛]なはとりつけて,

ししじもの,[寛]しししもの,

ゆみやかくみて,[寛]ゆみやかこみて,

おほきみの[寛],

みことかしこみ[寛],

あまざかる,[寛]あまさかる,

ひなへにまかる,[寛]ひなへにまかり,

ふるころも[寛],

まつちのやまゆ,[寛]まつちやまより,

かへりこぬかも[寛],


[歌番号]06/1020,1021

[題詞](石上乙麻呂卿配土佐國之時歌三首[并短歌])

[原文]王 命恐見 刺<並> 國尓出座 <愛>耶 吾背乃公<矣> 繋巻裳 湯々石恐石 住吉乃 荒人神 <船>舳尓 牛吐賜 付賜将 嶋之<埼>前 依賜将 礒乃埼前 荒浪 風尓不<令>遇 <莫>管見 身疾不有 急 令變賜根 本國部尓

[訓読]大君の 命畏み さし並ぶ 国に出でます はしきやし 我が背の君を かけまくも ゆゆし畏し 住吉の 現人神 船舳に うしはきたまひ 着きたまはむ 島の崎々 寄りたまはむ 磯の崎々 荒き波 風にあはせず 障みなく 病あらせず 速けく 帰したまはね もとの国辺に

[仮名]おほきみの みことかしこみ さしならぶ くににいでます はしきやし わがせのきみを かけまくも ゆゆしかしこし すみのえの あらひとがみ ふなのへに うしはきたまひ つきたまはむ しまのさきざき よりたまはむ いそのさきざき あらきなみ かぜにあはせず つつみなく やまひあらせず すむやけく かへしたまはね もとのくにへに

[左注]なし

[校異]並之 -> 並 [元][紀][細] / <> -> 愛 [万葉集注釈] / 矣 [西(上書訂正)][元][紀][細] / 舡 -> 船 [元][紀][細] / 崎 -> 埼 [元][細] / 合 -> 令 [元][紀][細] / 草 -> 莫 [玉勝間]

[事項]雑歌 石上乙麻呂 流罪 久米若賣 密通 天平11年 年紀 土佐 高知 同情 歌語り

[訓異]おほきみの[寛],

みことかしこみ[寛],

さしならぶ,[寛]さしなみし,

くににいでます,[寛]くににいてますや,

はしきやし,

わがせのきみを,[寛]わかせのきみを,

かけまくも[寛],

ゆゆしかしこし[寛],

すみのえの[寛],

あらひとがみ,[寛]あらひとかみの,

ふなのへに[寛],

うしはきたまひ[寛],

つきたまはむ[寛],

しまのさきざき,[寛]しまのさきさき,

よりたまはむ[寛],

いそのさきざき,[寛]いそのさきさき,

あらきなみ,[寛]あらなみの,

かぜにあはせず,[寛]かせにあはせす,

つつみなく,[寛]くさつつみ,

やまひあらせず,[寛]やまひあらせす,

すむやけく,[寛]すみやかに,

かへしたまはね,[寛]かはりたまはね,

もとのくにへに[寛],


[歌番号]06/1022

[題詞](石上乙麻呂卿配土佐國之時歌三首[并短歌])

[原文]父公尓 吾者真名子叙 妣刀自尓 吾者愛兒叙 参昇 八十氏人乃 手向<為> 恐乃坂尓 <幣>奉 吾者叙追 遠杵土左道矣

[訓読]父君に 我れは愛子ぞ 母刀自に 我れは愛子ぞ 参ゐ上る 八十氏人の 手向けする 畏の坂に 幣奉り 我れはぞ追へる 遠き土佐道を

[仮名]ちちぎみに われはまなごぞ ははとじに われはまなごぞ まゐのぼる やそうぢひとの たむけする かしこのさかに ぬさまつり われはぞおへる とほきとさぢを

[左注]なし

[校異]為等 -> 為 [元][細] / 弊 -> 幣 [元][細]

[事項]雑歌 石上乙麻呂 流罪 久米若賣 密通 天平11年 土佐 高知 同情 歌語り

[訓異]ちちぎみに,[寛]ちちきみに,

われはまなごぞ,[寛]われはまなこそ,

ははとじに,[寛]ははとしに,

われはまなごぞ,[寛]われはまなこそ,

まゐのぼる,[寛]まうのほり,

やそうぢひとの,[寛]やそうちひとの,

たむけする,[寛]たむけすと,

かしこのさかに[寛],

ぬさまつり[寛],

われはぞおへる,[寛]われはそおへる,

とほきとさぢを,[寛]とほきとさちを,


[歌番号]06/1023

[題詞](石上乙麻呂卿配土佐國之時歌三首[并短歌])反歌一首

[原文]大埼乃 神之小濱者 雖小 百船<純>毛 過迹云莫國

[訓読]大崎の神の小浜は狭けども百舟人も過ぐと言はなくに

[仮名]おほさきの かみのをばまは せばけども ももふなびとも すぐといはなくに

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 能 -> 純 [元][類][紀]

[事項]雑歌 石上乙麻呂 流罪 久米若賣 密通 天平11年 年紀 土佐 高知 同情 歌語り

[訓異]おほさきの[寛],

かみのをばまは,[寛]かみのをはまは,

せばけども,[寛]せはけれと,

ももふなびとも,[寛]ももふなひとも,

すぐといはなくに,[寛]すくといはなくに,


[歌番号]06/1024

[題詞]秋八月廿日宴右大臣橘家歌四首

[原文]長門有 奥津借嶋 奥真經而 吾念君者 千歳尓母我毛

[訓読]長門なる沖つ借島奥まへて我が思ふ君は千年にもがも

[仮名]ながとなる おきつかりしま おくまへて あがもふきみは ちとせにもがも

[左注]右一首長門守巨曽倍對馬朝臣

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:巨曽倍對馬 橘諸兄 天平11年8月20日 年紀 主人讃美 宴席 山口 長門 長寿 地名

[訓異]ながとなる,[寛]なかとなる,

おきつかりしま[寛],

おくまへて,[寛]おきまへて,

あがもふきみは,[寛]わかおもふきみは,

ちとせにもがも,[寛]ちとせにもかも,


[歌番号]06/1025

[題詞](秋八月廿日宴右大臣橘家歌四首)

[原文]奥真經而 吾乎念流 吾背子者 千<年>五百歳 有巨勢奴香聞

[訓読]奥まへて我れを思へる我が背子は千年五百年ありこせぬかも

[仮名]おくまへて われをおもへる わがせこは ちとせいほとせ ありこせぬかも

[左注]右一首右大臣和歌

[校異]歳 -> 年 [元][類][紀] / 歌 [西] 哥 [西(訂正)] 謌

[事項]雑歌 作者:橘諸兄 天平11年8月20日 年紀 宴席 長寿

[訓異]おくまへて,[寛]おきまへて,

われをおもへる[寛],

わがせこは,[寛]わかせこは,

ちとせいほとせ[寛],

ありこせぬかも[寛],


[歌番号]06/1026

[題詞](秋八月廿日宴右大臣橘家歌四首)

[原文]百礒城乃 大宮人者 今日毛鴨 暇<无>跡 里尓不<出>将有

[訓読]ももしきの大宮人は今日もかも暇をなみと里に出でずあらむ

[仮名]ももしきの おほみやひとは けふもかも いとまをなみと さとにいでずあらむ

[左注]右一首右大臣傳云 故豊嶋采女歌

[校異]無 -> 无 [元][類] / 去 -> 出 [類][古] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:豊島采女 伝誦 橘諸兄 宴席 天平11年8月20日 年紀

[訓異]ももしきの[寛],

おほみやひとは[寛],

けふもかも[寛],

いとまをなみと,[寛]いとまなけれと,

さとにいでずあらむ,[寛]さとにゆかさらむ,


[歌番号]06/1027

[題詞](秋八月廿日宴右大臣橘家歌四首)

[原文]橘 本尓道履 八衢尓 物乎曽念 人尓不所知

[訓読]橘の本に道踏む八衢に物をぞ思ふ人に知らえず

[仮名]たちばなの もとにみちふむ やちまたに ものをぞおもふ ひとにしらえず

[左注]右一首右大辨高<橋>安麻呂卿語云 故豊嶋采女之作也 但或本云三方沙弥戀妻苑臣作歌也 然則豊嶋采女當時當所口吟此歌歟

[校異]橘 -> 橋 [西(訂正)][元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 此歌 [西] 此謌 [西(訂正)] 此歌

[事項]雑歌 作者:豊島采女 三方沙弥 伝誦 高橋安麻呂 宴席 古歌 植物 鬱屈 天平11年8月20日 年紀


[訓異]たちばなの,[寛]たちはなの,

もとにみちふむ[寛],

やちまたに[寛],

ものをぞおもふ,[寛]ものをりおもふ,

ひとにしらえず,[寛]ひとにしられぬ,


[歌番号]06/1028

[題詞]十一年己卯 天皇遊猟高圓野之時小獣<泄>走<都>里之中 於是適値勇士生而見獲即以此獣獻上御在所<副>歌一首 [獣名俗曰牟射佐妣]

[原文]大夫之 高圓山尓 迫有者 里尓下来流 牟射佐i曽此

[訓読]ますらをの高円山に迫めたれば里に下り来るむざさびぞこれ

[仮名]ますらをの たかまとやまに せめたれば さとにおりける むざさびぞこれ

[左注]右一首大伴坂上郎女作之也 但未逕奏而小獣死斃 因此獻歌停之

[校異]泄 [西(上書訂正)][紀][細] / 堵 -> 都 [元][紀] / 製 -> 副 [西(訂正右書)][元][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 之也 [元][紀](塙) 之 / 歌 [西] 謌

[事項]雑歌 作者:坂上郎女 聖武天皇 遊猟 不奏 天平11年 年紀 動物 奈良 地名

[訓異]ますらをの[寛],

たかまとやまに[寛],

せめたれば,[寛]せめたれは,

さとにおりける,[寛]さとにおりくる,

むざさびぞこれ,[寛]むささひそこれ,


[歌番号]06/1029

[題詞]十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時河口行宮内舎人大伴宿祢家持作歌一首

[原文]河口之 野邊尓廬而 夜乃歴者 妹之手本師 所念鴨

[訓読]河口の野辺に廬りて夜の経れば妹が手本し思ほゆるかも

[仮名]かはぐちの のへにいほりて よのふれば いもがたもとし おもほゆるかも

[左注]なし

[校異]太 -> 大 [紀][細][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:大伴家持 羈旅 行幸従駕 聖武天皇 伊勢 三重 天平12年10月 年紀 望郷 三重県 地名

[訓異]かはぐちの,[寛]かはくちの,

のへにいほりて[寛],

よのふれば,[寛]よのふれは,

いもがたもとし,[寛]いもかたもとし,

おもほゆるかも[寛],


[歌番号]06/1030

[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)天皇御製歌一首

[原文]妹尓戀 吾乃松原 見渡者 潮干乃滷尓 多頭鳴渡

[訓読]妹に恋ひ吾の松原見わたせば潮干の潟に鶴鳴き渡る

[仮名]いもにこひ あがのまつばら みわたせば しほひのかたに たづなきわたる

[左注]右一首今案 吾松原在三重郡 相去河口行宮遠矣 若疑御在朝明行宮之時 所製御歌 傳者誤之歟

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:聖武天皇 望郷 行幸 羈旅 三重 天平12年10月 年紀 叙景 三重県 地名

[訓異]いもにこひ[寛],

あがのまつばら,[寛]わかのまつはら,

みわたせば,[寛]みわたせは,

しほひのかたに[寛],

たづなきわたる,[寛]たつなきわたる,


[歌番号]06/1031

[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)丹比屋主真人歌一首

[原文]後尓之 <人>乎思久 四泥能埼 木綿取之泥而 <好>住跡其念

[訓読]後れにし人を思はく思泥の崎木綿取り垂でて幸くとぞ思ふ

[仮名]おくれにし ひとをおもはく しでのさき ゆふとりしでて さきくとぞおもふ

[左注]右案此歌者不有此<行>之作乎 所以然言 勅大夫従河口行宮還京勿令従駕焉 何有詠思泥埼作歌哉

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 人 [西(右書)][元][類][紀] / 將 -> 好 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 行宮 -> 行 [元][類][紀][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:丹比屋主 行幸従駕 望郷 羈旅 三重 天平12年10月 年紀 家主 地名

[訓異]おくれにし[寛],

ひとをおもはく[寛],

しでのさき,[寛]してのさき,

ゆふとりしでて,[寛]ゆふとりしてて,

さきくとぞおもふ,[寛]すまむとそおもふ,


[歌番号]06/1032

[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)狭殘<行宮>大伴宿祢家持作歌二首

[原文]天皇之 行幸之随 吾妹子之 手枕不巻 月曽歴去家留

[訓読]大君の行幸のまにま我妹子が手枕まかず月ぞ経にける

[仮名]おほきみの みゆきのまにま わぎもこが たまくらまかず つきぞへにける

[左注]なし

[校異]<> -> 大宮 [西(右書)][元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:大伴家持 行幸従駕 望郷 羈旅 三重 天平12年10月 年紀 地名

[訓異]おほきみの,[寛]すめろきの,

みゆきのまにま,[寛]みゆきのままに,

わぎもこが,[寛]わきもこか,

たまくらまかず,[寛]たまくらまかす,

つきぞへにける,[寛]つきそへにける,


[歌番号]06/1033

[題詞]((十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)狭殘<行宮>大伴宿祢家持作歌二首)

[原文]御食國 志麻乃海部有之 真熊野之 小船尓乗而 奥部榜所見

[訓読]御食つ国志摩の海人ならしま熊野の小舟に乗りて沖へ漕ぐ見ゆ

[仮名]みけつくに しまのあまならし まくまのの をぶねにのりて おきへこぐみゆ

[左注]なし

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:大伴家持 叙景 羈旅 天平12年10月 年紀 三重 属目 地名

[訓異]みけつくに[寛],

しまのあまならし,[寛]しまのあすならし,

まくまのの,[寛]みくまのの,

をぶねにのりて,[寛]をふねにのりて,

おきへこぐみゆ,[寛]おきへこくみゆ,


[歌番号]06/1034

[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)美濃國多藝行宮大伴宿祢東人作歌一首

[原文]従古 人之言来流 老人之 <變>若云水曽 名尓負瀧之瀬

[訓読]いにしへゆ人の言ひ来る老人の変若つといふ水ぞ名に負ふ瀧の瀬

[仮名]いにしへゆ ひとのいひける おいひとの をつといふみづぞ なにおふたきのせ

[左注]なし

[校異]戀 -> 變 [西(訂正左書)][元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:大伴東人 岐阜 羈旅 土地讃美 天平12年10月 年紀 養老瀧 地名

[訓異]いにしへゆ,[寛]むかしより,

ひとのいひける,[寛]ひとのいひくる,

おいひとの[寛],

をつといふみづぞ,[寛]わかゆてふみつそ,

なにおふたきのせ[寛],


[歌番号]06/1035

[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)大伴宿祢家持作歌一首

[原文]田跡河之 瀧乎清美香 従古 <官>仕兼 多藝乃野之上尓

[訓読]田跡川の瀧を清みかいにしへゆ宮仕へけむ多芸の野の上に

[仮名]たどかはの たきをきよみか いにしへゆ みやつかへけむ たぎのののへに

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 宮 -> 官 [元][類][古][細]

[事項]雑歌 作者:大伴家持 岐阜 羈旅 宮廷讃美 大夫 天平12年10月 年紀 養老瀧 地名

[訓異]たどかはの,[寛]たとかはの,

たきをきよみか[寛],

いにしへゆ,[寛]むかしより,

みやつかへけむ[寛],

たぎのののへに,[寛]たきのののうへに,


[歌番号]06/1036

[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)不破行宮大伴宿祢家持作歌一首

[原文]關無者 還尓谷藻 打行而 妹之手枕 巻手宿益乎

[訓読]関なくは帰りにだにもうち行きて妹が手枕まきて寝ましを

[仮名]せきなくは かへりにだにも うちゆきて いもがたまくら まきてねましを

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:大伴家持 羈旅 行幸従駕 望郷 天平12年10月 年紀 岐阜 地名

[訓異]せきなくは[寛],

かへりにだにも,[寛]かへりにたにも,

うちゆきて[寛],

いもがたまくら,[寛]いもかたまくら,

まきてねましを[寛],


[歌番号]06/1037

[題詞]十五年癸未秋八月十六日内舎人大伴宿祢家持讃久邇京作歌一首

[原文]今造 久<邇>乃王都者 山河之 清見者 宇倍所知良之

[訓読]今造る久迩の都は山川のさやけき見ればうべ知らすらし

[仮名]いまつくる くにのみやこは やまかはの さやけきみれば うべしらすらし

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 尓 -> 邇 [元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:大伴家持 宮廷讃美 京都 天平15年8月16日 地名

[訓異]いまつくる[寛],

くにのみやこは[寛],

やまかはの[寛],

さやけきみれば,[寛]きよくみゆれは,

うべしらすらし,[寛]うへしらるらし,


[歌番号]06/1038

[題詞]高丘河内連歌二首

[原文]故郷者 遠毛不有 一重山 越我可良尓 念曽吾世思

[訓読]故郷は遠くもあらず一重山越ゆるがからに思ひぞ我がせし

[仮名]ふるさとは とほくもあらず ひとへやま こゆるがからに おもひぞわがせし

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:高丘河内 望郷 京都 地名

[訓異]ふるさとは[寛],

とほくもあらず,[寛]とほくもあらす,

ひとへやま[寛],

こゆるがからに,[寛]こゆるわれからに,

おもひぞわがせし,[寛]おもひそわかせし,


[歌番号]06/1039

[題詞](高丘河内連歌二首)

[原文]吾背子與 二人之居者 山高 里尓者月波 不曜十方余思

[訓読]我が背子とふたりし居らば山高み里には月は照らずともよし

[仮名]わがせこと ふたりしをらば やまたかみ さとにはつきは てらずともよし

[左注]なし

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:高丘河内 恋情 相聞 京都 地名

[訓異]わがせこと,[寛]わかせこと,

ふたりしをらば,[寛]ふたりしをれは,

やまたかみ[寛],

さとにはつきは[寛],

てらずともよし,[寛]てらすともよし,


[歌番号]06/1040

[題詞]安積親王宴左少辨藤原八束朝臣家之日内舎人大伴宿祢家持作歌一首

[原文]久堅乃 雨者零敷 念子之 屋戸尓今夜者 明而将去

[訓読]ひさかたの雨は降りしけ思ふ子がやどに今夜は明かして行かむ

[仮名]ひさかたの あめはふりしけ おもふこが やどにこよひは あかしてゆかむ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:大伴家持 安積皇子 藤原八束 宴席 京都 地名 久邇京

[訓異]ひさかたの[寛],

あめはふりしけ,[寛]あめはふりしく,

おもふこが,[寛]おもふこの,

やどにこよひは,[寛]やとにこよひは,

あかしてゆかむ[寛],


[歌番号]06/1041

[題詞]十六年甲申春正月五日諸卿大夫集安倍蟲麻呂朝臣家宴歌一首 [作者不審]

[原文]吾屋戸乃 君松樹尓 零雪<乃> 行者不去 待西将待

[訓読]我がやどの君松の木に降る雪の行きには行かじ待にし待たむ

[仮名]わがやどの きみまつのきに ふるゆきの ゆきにはゆかじ まちにしまたむ

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 之 -> 乃 [元][類][紀]

[事項]雑歌 安倍虫麻呂 宴席 京都 久邇京 地名 天平16年1月5日 年紀

[訓異]わがやどの,[寛]わかやとの,

きみまつのきに[寛],

ふるゆきの[寛],

ゆきにはゆかじ,[寛]ゆききはゆかし,

まちにしまたむ[寛],


[歌番号]06/1042

[題詞]同月十一日登活道岡集一株松下飲歌二首

[原文]一松 幾代可歴流 吹風乃 聲之清者 年深香聞

[訓読]一つ松幾代か経ぬる吹く風の音の清きは年深みかも

[仮名]ひとつまつ いくよかへぬる ふくかぜの おとのきよきは としふかみかも

[左注]右一首市原王作

[校異]歌 [西] 哥 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:市原王 宴席 天平16年1月11日 年紀 寿 京都 久邇京 地名

[訓異]ひとつまつ[寛],

いくよかへぬる[寛],

ふくかぜの,[寛]ふくかせの,

おとのきよきは,[寛]こゑのすめるは,

としふかみかも,[寛]としふかきかも,


[歌番号]06/1043

[題詞](同月十一日登活道岡集一株松下飲歌二首)

[原文]霊剋 壽者不知 松之枝 結情者 長等曽念

[訓読]たまきはる命は知らず松が枝を結ぶ心は長くとぞ思ふ

[仮名]たまきはる いのちはしらず まつがえを むすぶこころは ながくとぞおもふ

[左注]右一首大伴宿祢家持作

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:大伴家持 宴席 天平16年1月11日 年紀 永遠 寿 京都 久邇京 地名

[訓異]たまきはる[寛],

いのちはしらず,[寛]いのちはしらす,

まつがえを,[寛]まつのえを,

むすぶこころは,[寛]むすふこころは,

ながくとぞおもふ,[寛]なかくとそおもふ,


[歌番号]06/1044

[題詞]傷惜寧樂京荒墟作歌三首 [作者不審]

[原文]紅尓 深染西 情可母 寧樂乃京師尓 年之歴去倍吉

[訓読]紅に深く染みにし心かも奈良の都に年の経ぬべき

[仮名]くれなゐに ふかくしみにし こころかも ならのみやこに としのへぬべき

[左注]なし

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 哀惜 平城京 荒都歌 奈良 地名

[訓異]くれなゐに[寛],

ふかくしみにし,[寛]ふかくそみにし,

こころかも[寛],

ならのみやこに[寛],

としのへぬべき,[寛]としのへぬへき,

[左注]



[歌番号]06/1045

[題詞](傷惜寧樂京荒墟作歌三首 [作者不審])

[原文]世間乎 常無物跡 今曽知 平城京師之 移徙見者

[訓読]世間を常なきものと今ぞ知る奈良の都のうつろふ見れば

[仮名]よのなかを つねなきものと いまぞしる ならのみやこの うつろふみれば

[左注]なし

[校異]なし

[事項]雑歌 哀惜 平城京 荒都歌 無常 奈良 地名

[訓異]よのなかを[寛],

つねなきものと[寛],

いまぞしる,[寛]いまそしる,

ならのみやこの[寛],

うつろふみれば,[寛]うつろふみれは,


[歌番号]06/1046

[題詞](傷惜寧樂京荒墟作歌三首 [作者不審])

[原文]石綱乃 又變若反 青丹吉 奈良乃都乎 又将見鴨

[訓読]岩綱のまた変若ちかへりあをによし奈良の都をまたも見むかも

[仮名]いはつなの またをちかへり あをによし ならのみやこを またもみむかも

[左注]なし

[校異]なし

[事項]雑歌 哀惜 平城京 荒都歌 奈良 京都

[訓異]いはつなの[寛],

またをちかへり,[寛]またわかかへり,

あをによし[寛],

ならのみやこを[寛],

またもみむかも[寛],


[歌番号]06/1047

[題詞]悲寧樂故郷作歌一首[并短歌]

[原文]八隅知之 吾大王乃 高敷為 日本國者 皇祖乃 神之御代自 敷座流 國尓之有者 阿礼将座 御子之嗣継 天下 所知座跡 八百萬 千年矣兼而 定家牟 平城京師者 炎乃 春尓之成者 春日山 御笠之野邊尓 櫻花 木晩牢 皃鳥者 間無數鳴 露霜乃 秋去来者 射駒山 飛火賀<す>丹 芽乃枝乎 石辛見散之 狭男<壮>鹿者 妻呼令動 山見者 山裳見皃石 里見者 里裳住吉 物負之 八十伴緒乃 打經而 思<煎>敷者 天地乃 依會限 萬世丹 榮将徃迹 思煎石 大宮尚矣 恃有之 名良乃京矣 新世乃 事尓之有者 皇之 引乃真尓真荷 春花乃 遷日易 村鳥乃 旦立徃者 刺竹之 大宮人能 踏平之 通之道者 馬裳不行 人裳徃莫者 荒尓異類香聞

[訓読]やすみしし 我が大君の 高敷かす 大和の国は すめろきの 神の御代より 敷きませる 国にしあれば 生れまさむ 御子の継ぎ継ぎ 天の下 知らしまさむと 八百万 千年を兼ねて 定めけむ 奈良の都は かぎろひの 春にしなれば 春日山 御笠の野辺に 桜花 木の暗隠り 貌鳥は 間なくしば鳴く 露霜の 秋さり来れば 生駒山 飛火が岳に 萩の枝を しがらみ散らし さを鹿は 妻呼び響む 山見れば 山も見が欲し 里見れば 里も住みよし もののふの 八十伴の男の うちはへて 思へりしくは 天地の 寄り合ひの極み 万代に 栄えゆかむと 思へりし 大宮すらを 頼めりし 奈良の都を 新代の ことにしあれば 大君の 引きのまにまに 春花の うつろひ変り 群鳥の 朝立ち行けば さす竹の 大宮人の 踏み平し 通ひし道は 馬も行かず 人も行かねば 荒れにけるかも

[仮名]やすみしし わがおほきみの たかしかす やまとのくには すめろきの かみのみよより しきませる くににしあれば あれまさむ みこのつぎつぎ あめのした しらしまさむと やほよろづ ちとせをかねて さだめけむ ならのみやこは かぎろひの はるにしなれば かすがやま みかさののへに さくらばな このくれがくり かほどりは まなくしばなく つゆしもの あきさりくれば いこまやま とぶひがたけに はぎのえを しがらみちらし さをしかは つまよびとよむ やまみれば やまもみがほし さとみれば さともすみよし もののふの やそとものをの うちはへて おもへりしくは あめつちの よりあひのきはみ よろづよに さかえゆかむと おもへりし おほみやすらを たのめりし ならのみやこを あらたよの ことにしあれば おほきみの ひきのまにまに はるはなの うつろひかはり むらとりの あさだちゆけば さすたけの おほみやひとの ふみならし かよひしみちは うまもゆかず ひともゆかねば あれにけるかも

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 塊 -> す [元][細] / 牡 -> 壮 [元][紀][細][温] / 並 -> 煎 [定本] / 踏 [元][類](塙) 蹈

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 哀惜 平城京 荒都歌 動物 植物 奈良 地名

[訓異]やすみしし[寛],

わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,

たかしかす,[寛]たかしきし,

やまとのくには[寛],

すめろきの[寛],

かみのみよより[寛],

しきませる[寛],

くににしあれば,[寛]くににしあれは,

あれまさむ[寛],

みこのつぎつぎ,[寛]みこのつきつき,

あめのした[寛],

しらしまさむと,[寛]しらしめませと,

やほよろづ,[寛]やほよろつ,

ちとせをかねて,[寛]ちともをかねて,

さだめけむ,[寛]さためけむ,

ならのみやこは[寛],

かぎろひの,[寛]かけろふの,

はるにしなれば,[寛]はるにしなれは,

かすがやま,[寛]かすかやま,

みかさののへに[寛],

さくらばな,[寛]さくらはな,

このくれがくり,[寛]このくれかくれ,

かほどりは,[寛]かほとりは,

まなくしばなく,[寛]まなくしはなく,

つゆしもの[寛],

あきさりくれば,[寛]あきさりくれは,

いこまやま[寛],

とぶひがたけに,[寛]とふひかくれに,

はぎのえを,[寛]はきのえを,

しがらみちらし,[寛]しからみちらし,

さをしかは[寛],

つまよびとよむ,[寛]つまよひとよめ,

やまみれば,[寛]やまみれは,

やまもみがほし,[寛]やまもみかほし,

さとみれば,[寛]さとみれは,

さともすみよし[寛],

もののふの[寛],

やそとものをの,[寛]やそともをの,

うちはへて[寛],

おもへりしくは,[寛]おもひなみしけは,

あめつちの[寛],

よりあひのきはみ,[寛]よりあはむかきり,

よろづよに,[寛]よろつよに,

さかえゆかむと[寛],

おもへりし,[寛]おもひにし,

おほみやすらを[寛],

たのめりし[寛],

ならのみやこを[寛],

あらたよの,[寛]あたらよの,

ことにしあれば,[寛]ことにしあれは,

おほきみの,[寛]すめろきの,

ひきのまにまに[寛],

はるはなの[寛],

うつろひかはり,[寛]うつろひやすく,

むらとりの[寛],

あさだちゆけば,[寛]あさたちゆけは,

さすたけの[寛],

おほみやひとの[寛],

ふみならし[寛],

かよひしみちは[寛],

うまもゆかず,[寛]うまもゆかす,

ひともゆかねば,[寛]ひともゆかねは,

あれにけるかも[寛],


[歌番号]06/1048

[題詞](悲寧樂故郷作歌一首[并短歌])反歌二首

[原文]立易 古京跡 成者 道之志婆草 長生尓異<煎>

[訓読]たち変り古き都となりぬれば道の芝草長く生ひにけり

[仮名]たちかはり ふるきみやこと なりぬれば みちのしばくさ ながくおひにけり

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 利 -> 煎 [類][紀][細]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 哀惜 平城京 荒都歌 植物 奈良 地名

[訓異]たちかはり[寛],

ふるきみやこと[寛],

なりぬれば,[寛]なりぬれは,

みちのしばくさ,[寛]みちのしはくさ,

ながくおひにけり,[寛]なかくおひにけり,


[歌番号]06/1049

[題詞]((悲寧樂故郷作歌一首[并短歌])反歌二首)

[原文]名付西 奈良乃京之 荒行者 出立毎尓 嘆思益

[訓読]なつきにし奈良の都の荒れゆけば出で立つごとに嘆きし増さる

[仮名]なつきにし ならのみやこの あれゆけば いでたつごとに なげきしまさる

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 哀惜 平城京 荒都歌 奈良 地名

[訓異]なつきにし,[寛]なつけにし,

ならのみやこの[寛],

あれゆけば,[寛]あれゆけは,

いでたつごとに,[寛]いてたつことに,

なげきしまさる,[寛]なけきしますも,


[歌番号]06/1050

[題詞]讃久邇新京歌二首[并短歌]

[原文]明津神 吾皇之 天下 八嶋之中尓 國者霜 多雖有 里者霜 澤尓雖有 山並之 宜國跡 川次之 立合郷跡 山代乃 鹿脊山際尓 宮柱 太敷奉 高知為 布當乃宮者 河近見 湍音叙清 山近見 鳥賀鳴慟 秋去者 山裳動響尓 左男鹿者 妻呼令響 春去者 岡邊裳繁尓 巌者 花開乎呼理 痛A怜 布當乃原 甚貴 大宮處 諾己曽 吾大王者 君之随 所聞賜而 刺竹乃 大宮此跡 定異等霜

[訓読]現つ神 我が大君の 天の下 八島の内に 国はしも さはにあれども 里はしも さはにあれども 山なみの よろしき国と 川なみの たち合ふ里と 山背の 鹿背山の際に 宮柱 太敷きまつり 高知らす 布当の宮は 川近み 瀬の音ぞ清き 山近み 鳥が音響む 秋されば 山もとどろに さを鹿は 妻呼び響め 春されば 岡辺も繁に 巌には 花咲きををり あなあはれ 布当の原 いと貴 大宮所 うべしこそ 吾が大君は 君ながら 聞かしたまひて さす竹の 大宮ここと 定めけらしも

[仮名]あきつかみ わがおほきみの あめのした やしまのうちに くにはしも さはにあれども さとはしも さはにあれども やまなみの よろしきくにと かはなみの たちあふさとと やましろの かせやまのまに みやばしら ふとしきまつり たかしらす ふたぎのみやは かはちかみ せのおとぞきよき やまちかみ とりがねとよむ あきされば やまもとどろに さをしかは つまよびとよめ はるされば をかへもしじに いはほには はなさきををり あなあはれ ふたぎのはら いとたふと おほみやところ うべしこそ わがおほきみは きみながら きかしたまひて さすたけの おほみやここと さだめけらしも

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 久邇京 新都讃美 動物 植物 京都 地名

[訓異]あきつかみ[寛],

わがおほきみの,[寛]わかすめろきの,

あめのした[寛],

やしまのうちに,[寛]やしまのなかに,

くにはしも[寛],

さはにあれども,[寛]おほくあれとも,

さとはしも[寛],

さはにあれども,[寛]さはにあれとも,

やまなみの[寛],

よろしきくにと[寛],

かはなみの[寛],

たちあふさとと[寛],

やましろの[寛],

かせやまのまに[寛],

みやばしら,[寛]みやはしら,

ふとしきまつり,[寛]ふとしきたてて,

たかしらす[寛],

ふたぎのみやは,[寛]ふたいのみやは,

かはちかみ[寛],

せのおとぞきよき,[寛]せおとそきよき,

やまちかみ[寛],

とりがねとよむ,[寛]とりかねいたむ,

あきされば,[寛]あきされは,

やまもとどろに,[寛]やまもととろに,

さをしかは[寛],

つまよびとよめ,[寛]つまよひとよめ,

はるされば,[寛]はるされは,

をかへもしじに,[寛]をかへもししに,

いはほには[寛],

はなさきををり[寛],

あなあはれ,[寛]いとあはれ,

ふたぎのはら,[寛]ふたいのはらに,

いとたふと,[寛]いとたかき,

おほみやところ[寛],

うべしこそ,[寛]うへしこそ,

わがおほきみは,[寛]わかおほきみは,

きみながら,[寛]きみかまに,

きかしたまひて[寛],

さすたけの[寛],

おほみやここと[寛],

さだめけらしも,[寛]さためけらしも,


[歌番号]06/1051

[題詞](讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌二首

[原文]三日原 布當乃野邊 清見社 大宮處 [一云 此跡標刺] 定異等霜

[訓読]三香の原布当の野辺を清みこそ大宮所 [一云 ここと標刺し] 定めけらしも

[仮名]みかのはら ふたぎののへを きよみこそ おほみやところ [こことしめさし] さだめけらしも

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 久邇京 新都讃美 京都 地名

[訓異]みかのはら[寛],

ふたぎののへを,[寛]ふたいののへを,

きよみこそ[寛],

おほみやところ[寛],

[こことしめさし],

さだめけらしも,[寛]さためけらしも,


[歌番号]06/1052

[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌二首)

[原文]<山>高来 川乃湍清石 百世左右 神之味将<徃> 大宮所

[訓読]山高く川の瀬清し百代まで神しみゆかむ大宮所

[仮名]やまたかく かはのせきよし ももよまで かむしみゆかむ おほみやところ

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]弓 -> 山 [万葉考] / <> -> 徃 [西(右書)][元][古][紀]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 久邇京 新都讃美 京都 地名

[訓異]やまたかく[寛],

かはのせきよし[寛],

ももよまで,[寛]ももよまて,

かむしみゆかむ,[寛]かみのみゆかむ,

おほみやところ[寛],


[歌番号]06/1053

[題詞](讃久邇新京歌二首[并短歌])

[原文]吾皇 神乃命乃 高所知 布當乃宮者 百樹成 山者木高之 落多藝都 湍音毛清之 鴬乃 来鳴春部者 巌者 山下耀 錦成 花咲乎呼里 左<壮>鹿乃 妻呼秋者 天霧合 之具礼乎疾 狭丹頬歴 黄葉散乍 八千年尓 安礼衝之乍 天下 所知食跡 百代尓母 不可易 大宮處

[訓読]吾が大君 神の命の 高知らす 布当の宮は 百木盛り 山は木高し 落ちたぎつ 瀬の音も清し 鴬の 来鳴く春へは 巌には 山下光り 錦なす 花咲きををり さを鹿の 妻呼ぶ秋は 天霧らふ しぐれをいたみ さ丹つらふ 黄葉散りつつ 八千年に 生れ付かしつつ 天の下 知らしめさむと 百代にも 変るましじき 大宮所

[仮名]わがおほきみ かみのみことの たかしらす ふたぎのみやは ももきもり やまはこだかし おちたぎつ せのおともきよし うぐひすの きなくはるへは いはほには やましたひかり にしきなす はなさきををり さをしかの つまよぶあきは あまぎらふ しぐれをいたみ さにつらふ もみちちりつつ やちとせに あれつかしつつ あめのした しらしめさむと ももよにも かはるましじき おほみやところ

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]牡 -> 壮 [元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 久邇京 新都讃美 京都 地名

[訓異]わがおほきみ,[寛]わかきみの,

かみのみことの[寛],

たかしらす[寛],

ふたぎのみやは,[寛]ふたいのみやは,

ももきもり,[寛]ももきなす,

やまはこだかし,[寛]やまはこたかし,

おちたぎつ,[寛]おちたきつ,

せのおともきよし,[寛]せおともきよし,

うぐひすの,[寛]うくひすの,

きなくはるへは[寛],

いはほには[寛],

やましたひかり[寛],

にしきなす[寛],

はなさきををり[寛],

さをしかの[寛],

つまよぶあきは,[寛]つまよふあきは,

あまぎらふ,[寛]あまきりあふ,

しぐれをいたみ,[寛]しくれをはやみ,

さにつらふ[寛],

もみちちりつつ[寛],

やちとせに[寛],

あれつかしつつ,[寛]あれつきしつつ,

あめのした[寛],

しらしめさむと[寛],

ももよにも[寛],

かはるましじき,[寛]かはるへからぬ,

おほみやところ[寛],


[歌番号]06/1054

[題詞](讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首

[原文]泉<川> 徃瀬乃水之 絶者許曽 大宮地 遷徃目

[訓読]泉川行く瀬の水の絶えばこそ大宮所移ろひ行かめ

[仮名]いづみがは ゆくせのみづの たえばこそ おほみやところ うつろひゆかめ

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 河 -> 川 [元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 久邇京 新都讃美 京都 地名

[訓異]いづみがは,[寛]いつみかは,

ゆくせのみづの,[寛]ゆくせのみつの,

たえばこそ,[寛]たえはこそ,

おほみやところ[寛],

うつろひゆかめ,[寛]うつりもゆかめ,


[歌番号]06/1055

[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首)

[原文]布當山 山並見者 百代尓毛 不可易 大宮處

[訓読]布当山山なみ見れば百代にも変るましじき大宮所

[仮名]ふたぎやま やまなみみれば ももよにも かはるましじき おほみやところ

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 久邇京 新都讃美 京都 地名

[訓異]ふたぎやま,[寛]ふたいやま,

やまなみみれば,[寛]やまなみみれは,

ももよにも[寛],

かはるましじき,[寛]かはるへからす,

おほみやところ[寛],


[歌番号]06/1056

[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首)

[原文]D嬬等之 續麻繁云 鹿脊之山 時之徃<者> 京師跡成宿

[訓読]娘子らが続麻懸くといふ鹿背の山時しゆければ都となりぬ

[仮名]をとめらが うみをかくといふ かせのやま ときしゆければ みやことなりぬ

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]去 -> 者 [元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 久邇京 新都讃美 京都 地名

[訓異]をとめらが,[寛]をとめらか,

うみをかくといふ[寛],

かせのやま[寛],

ときしゆければ,[寛]ときのゆけれは,

みやことなりぬ[寛],


[歌番号]06/1057

[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首)

[原文]鹿脊之山 樹立矣繁三 朝不去 寸鳴響為 鴬之音

[訓読]鹿背の山木立を茂み朝さらず来鳴き響もす鴬の声

[仮名]かせのやま こだちをしげみ あささらず きなきとよもす うぐひすのこゑ

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 久邇京 新都讃美 京都 地名

[訓異]かせのやま[寛],

こだちをしげみ,[寛]こたちをしけみ,

あささらず,[寛]あささらす,

きなきとよもす,[寛]きなきとよます,

うぐひすのこゑ,[寛]うくひすのこゑ


[歌番号]06/1058

[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首)

[原文]狛山尓 鳴霍公鳥 泉河 渡乎遠見 此間尓不通 [一云 渡遠哉 不通<有>武]

[訓読]狛山に鳴く霍公鳥泉川渡りを遠みここに通はず [一云 渡り遠みか通はずあるらむ]

[仮名]こまやまに なくほととぎす いづみがは わたりをとほみ ここにかよはず [わたりとほみか かよはずあるらむ]

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]者 -> 有 [元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 久邇京 新都讃美 京都 地名

[訓異]こまやまに[寛],

なくほととぎす,[寛]なくほとときす,

いづみがは,[寛]いつみかは,

わたりをとほみ[寛],

ここにかよはず,[寛]ここにかよはす,

[わたりとほみか,

かよはずあるらむ]


[歌番号]06/1059

[題詞]春日悲傷三香原荒墟作歌一首[并短歌]

[原文]三香原 久邇乃京師者 山高 河之瀬清 在吉迹 人者雖云 在吉跡 吾者雖念 故去之 里尓四有者 國見跡 人毛不通 里見者 家裳荒有 波之異耶 如此在家留可 三諸著 鹿脊山際尓 開花之 色目列敷 百鳥之 音名束敷 在<杲>石 住吉里乃 荒樂苦惜哭

[訓読]三香の原 久迩の都は 山高み 川の瀬清み 住みよしと 人は言へども ありよしと 我れは思へど 古りにし 里にしあれば 国見れど 人も通はず 里見れば 家も荒れたり はしけやし かくありけるか みもろつく 鹿背山の際に 咲く花の 色めづらしく 百鳥の 声なつかしく ありが欲し 住みよき里の 荒るらく惜しも

[仮名]みかのはら くにのみやこは やまたかみ かはのせきよみ すみよしと ひとはいへども ありよしと われはおもへど ふりにし さとにしあれば くにみれど ひともかよはず さとみれば いへもあれたり はしけやし かくありけるか みもろつく かせやまのまに さくはなの いろめづらしく ももとりの こゑなつかしく ありがほし すみよきさとの あるらくをしも

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 在 [類](塙) 住 / 耶 (塙[全釈捄よる]) 耶思 / 果 -> 杲 [細][矢][京]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 荒都歌 久邇京 京都 地名

[訓異]みかのはら[寛],

くにのみやこは[寛],

やまたかみ[寛],

かはのせきよみ,[寛]かはのせきよし,

すみよしと,[寛]ありよしと,

ひとはいへども,[寛]ひとはいへとも,

ありよしと[寛],

われはおもへど,[寛]われはおもへと,

ふりにし,[寛]ふるされし,

さとにしあれば,[寛]さとにしあれは,

くにみれど,[寛]くにみれと,

ひともかよはず,[寛]ひともかよはす,

さとみれば,[寛]さとみれは,

いへもあれたり[寛],

はしけやし[寛],

かくありけるか[寛],

みもろつく[寛],

かせやまのまに[寛],

さくはなの[寛],

いろめづらしく,[寛]いろめつらしく,

ももとりの[寛],

こゑなつかしく[寛],

ありがほし,[寛]ありかほし,

すみよきさとの,[寛]すみよしさとの,

あるらくをしも,[寛]あれらくをしも,


[歌番号]06/1060

[題詞](春日悲傷三香原荒墟作歌一首[并短歌])反歌二首

[原文]三香原 久邇乃京者 荒去家里 大宮人乃 遷去礼者

[訓読]三香の原久迩の都は荒れにけり大宮人のうつろひぬれば

[仮名]みかのはら くにのみやこは あれにけり おほみやひとの うつろひぬれば

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 荒都歌 久邇京 京都 地名

[訓異]みかのはら[寛],

くにのみやこは[寛],

あれにけり[寛],

おほみやひとの[寛],

うつろひぬれば,[寛]うつりいぬれは,


[歌番号]06/1061

[題詞]((春日悲傷三香原荒墟作歌一首[并短歌])反歌二首)

[原文]咲花乃 色者不易 百石城乃 大宮人叙 立易<奚>流

[訓読]咲く花の色は変らずももしきの大宮人ぞたち変りける

[仮名]さくはなの いろはかはらず ももしきの おほみやひとぞ たちかはりける

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]去 -> 奚 [元][紀]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 荒都歌 久邇京 京都 地名

[訓異]さくはなの[寛],

いろはかはらず,[寛]いろはかはらす,

ももしきの[寛],

おほみやひとぞ,[寛]おほみやひとそ,

たちかはりける,[寛]たちかはりぬる,


[歌番号]06/1062

[題詞]難波宮作歌一首[并短歌]

[原文]安見知之 吾大王乃 在通 名庭乃宮者 不知魚取 海片就而 玉拾 濱邊乎近見 朝羽振 浪之聲糝 夕薙丹 櫂合之聲所聆 暁之 寐覺尓聞者 海石之 塩干乃共 <汭>渚尓波 千鳥妻呼 葭部尓波 鶴鳴動 視人乃 語丹為者 聞人之 視巻欲為 御食向 味原宮者 雖見不飽香聞

[訓読]やすみしし 我が大君の あり通ふ 難波の宮は 鯨魚取り 海片付きて 玉拾ふ 浜辺を清み 朝羽振る 波の音騒き 夕なぎに 楫の音聞こゆ 暁の 寝覚に聞けば 海石の 潮干の共 浦洲には 千鳥妻呼び 葦辺には 鶴が音響む 見る人の 語りにすれば 聞く人の 見まく欲りする 御食向ふ 味経の宮は 見れど飽かぬかも

[仮名]やすみしし わがおほきみの ありがよふ なにはのみやは いさなとり うみかたづきて たまひりふ はまへをきよみ あさはふる なみのおとさわく ゆふなぎに かぢのおときこゆ あかときの ねざめにきけば いくりの しほひのむた うらすには ちどりつまよび あしへには たづがねとよむ みるひとの かたりにすれば きくひとの みまくほりする みけむかふ あぢふのみやは みれどあかぬかも

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(別筆訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌 / 納 -> 汭 [万葉集略解]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 難波 大阪 新都讃美 地名

[訓異]やすみしし[寛],

わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,

ありがよふ,[寛]ありかよふ,

なにはのみやは[寛],

いさなとり[寛],

うみかたづきて,[寛]うみかたつきて,

たまひりふ,[寛]たまひろふ,

はまへをきよみ,[寛]はまへをちかみ,

あさはふる[寛],

なみのおとさわく,[寛]なみのおとさわき,

ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,

かぢのおときこゆ,[寛]かかひのおときこゆ,

あかときの,[寛]あかつきの,

ねざめにきけば,[寛]ねさめにきけは,

いくりの,[寛]あまいしの,

しほひのむた,[寛]しほひのむたに,

うらすには,[寛]いりすには,

ちどりつまよび,[寛]ちとりつまよひ,

あしへには[寛],

たづがねとよむ,[寛]たつかねとよみ,

みるひとの[寛],

かたりにすれば,[寛]かたりにすれは,

きくひとの[寛],

みまくほりする,[寛]みまくほりして,

みけむかふ[寛],

あぢふのみやは,[寛]あちふのみやは,

みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,


[歌番号]06/1063

[題詞](難波宮作歌一首[并短歌])反歌二首

[原文]有通 難波乃宮者 海近見 <漁>童女等之 乗船所見

[訓読]あり通ふ難波の宮は海近み海人娘子らが乗れる舟見ゆ

[仮名]ありがよふ なにはのみやは うみちかみ あまをとめらが のれるふねみゆ

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 漁 [西(右書)] 海 [元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 難波 大阪 新都讃美 地名

[訓異]ありがよふ,[寛]ありかよふ,

なにはのみやは[寛],

うみちかみ[寛],

あまをとめらが,[寛]あまをとめらか,

のれるふねみゆ[寛],


[歌番号]06/1064

[題詞]((難波宮作歌一首[并短歌])反歌二首)

[原文]塩干者 葦邊尓糝 白鶴乃 妻呼音者 宮毛動響二

[訓読]潮干れば葦辺に騒く白鶴の妻呼ぶ声は宮もとどろに

[仮名]しほふれば あしへにさわく しらたづの つまよぶこゑは みやもとどろに

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]なし

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 難波 大阪 新都讃美 地名

[訓異]しほふれば,[寛]しほひれは,

あしへにさわく[寛],

しらたづの,[寛]あしたつの,

つまよぶこゑは,[寛]つまよふこゑは,

みやもとどろに,[寛]みやもととろに,


[歌番号]06/1065

[題詞]過敏馬浦時作歌一首[并短歌]

[原文]八千桙之 神乃御世自 百船之 泊停跡 八嶋國 百船純乃 定而師 三犬女乃浦者 朝風尓 浦浪左和寸 夕浪尓 玉藻者来依 白沙 清濱部者 去還 雖見不飽 諾石社 見人毎尓 語嗣 偲家良思吉 百世歴而 所偲将徃 清白濱

[訓読]八千桙の 神の御代より 百舟の 泊つる泊りと 八島国 百舟人の 定めてし 敏馬の浦は 朝風に 浦波騒き 夕波に 玉藻は来寄る 白真砂 清き浜辺は 行き帰り 見れども飽かず うべしこそ 見る人ごとに 語り継ぎ 偲ひけらしき 百代経て 偲はえゆかむ 清き白浜

[仮名]やちほこの かみのみよより ももふねの はつるとまりと やしまくに ももふなびとの さだめてし みぬめのうらは あさかぜに うらなみさわき ゆふなみに たまもはきよる しらまなご きよきはまへは ゆきかへり みれどもあかず うべしこそ みるひとごとに かたりつぎ しのひけらしき ももよへて しのはえゆかむ きよきしらはま

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 羈旅 土地讃美 兵庫 地名

[訓異]やちほこの[寛],

かみのみよより[寛],

ももふねの[寛],

はつるとまりと[寛],

やしまくに[寛],

ももふなびとの,[寛]ももふなひとの,

さだめてし,[寛]さためてし,

みぬめのうらは[寛],

あさかぜに,[寛]あさかせに,

うらなみさわき[寛],

ゆふなみに[寛],

たまもはきよる[寛],

しらまなご,[寛]しらまなこ,

きよきはまへは[寛],

ゆきかへり[寛],

みれどもあかず,[寛]みれともあかす,

うべしこそ,[寛]うへしこそ,

みるひとごとに,[寛]みるひとことに,

かたりつぎ,[寛]かたりつき,

しのひけらしき[寛],

ももよへて[寛],

しのはえゆかむ,[寛]しのはれゆかむ,

きよきしらはま[寛],


[歌番号]06/1066

[題詞](過敏馬浦時作歌一首[并短歌])反歌二首

[原文]真十鏡 見宿女乃浦者 百船 過而可徃 濱有<七>國

[訓読]まそ鏡敏馬の浦は百舟の過ぎて行くべき浜ならなくに

[仮名]まそかがみ みぬめのうらは ももふねの すぎてゆくべき はまならなくに

[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 七 [西(上書訂正)][元][類][紀]

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 羈旅 土地讃美 兵庫 地名

[訓異]まそかがみ,[寛]まそかかみ,

みぬめのうらは[寛],

ももふねの[寛],

すぎてゆくべき,[寛]すきてゆくへき,

はまならなくに[寛],


[歌番号]06/1067

[題詞]((過敏馬浦時作歌一首[并短歌])反歌二首)

[原文]濱清 浦愛見 神世自 千船湊 大和太乃濱

[訓読]浜清み浦うるはしみ神代より千舟の泊つる大和太の浜

[仮名]はまきよみ うらうるはしみ かむよより ちふねのはつる おほわだのはま

[左注]右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[事項]雑歌 作者:田辺福麻呂歌集 羈旅 土地讃美 兵庫 地名

[訓異]はまきよみ[寛],

うらうるはしみ,[寛]うらなつかしみ,

かむよより,[寛]かみよより,

ちふねのはつる,[寛]ちふねのとまる,

おほわだのはま,[寛]おほわたのはま,