ヱレミヤ記(文語訳)

<聖書<文語訳旧約聖書

w:舊新約聖書 [文語]』w:日本聖書協会、1953年

w:明治元訳聖書

ヱレミヤ記

第1章

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こはベニヤミンの地アナトテの祭司の一人なるヒルキヤの子ヱレミヤの言なり

アモンの子ユダの王ヨシヤの時すなはちその治世の十三年にヱホバの言ヱレミヤに臨めり

その言またヨシヤの子ユダの王ヱホヤキムの時にものぞみてヨシヤの子ユダの王ゼデキヤの十一年のをはり即ちその年の五月ヱルサレムの民の移されたる時までにいたれり

ヱホバの言我にのぞみて云ふ

われ汝を腹につくらざりし先に汝をしり汝が胎をいでざりし先に汝を聖め汝をたてて萬國の預言者となせりと

我こたへけるは噫主ヱホバよ視よわれは幼少により語ることを知らず

ヱホバわれにいひたまひけるは汝われは幼少といふ勿れすべて我汝を遣すところにゆき我汝に命ずるすべてのことを語るべし

なんぢ彼等の面を畏るる勿れ蓋われ汝と偕にありて汝をすくふべければなりとヱホバいひたまへり

ヱホバ遂にその手をのべて我口につけヱホバ我にいひたまひけるは視よわれ我言を汝の口にいれたり

みよ我けふ汝を萬民のうへと萬國のうへにたて汝をして或は抜き或は毀ち或は滅し或は覆し或は建て或は植しめん

ヱホバの言また我に臨みていふヱレミヤよ汝何をみるや我こたへけるは巴旦杏の枝をみる

ヱホバ我にいひたまひけるは汝善く見たりそはわれ速に我言をなさんとすればなり

ヱホバの言ふたたび我に臨みていふ汝何をみるや我こたへけるは沸騰たる鑊をみるその面は北より此方に向ふ

ヱホバ我にいひたまひけるは災北よりおこりてこの地に住るすべての者にきたらん

ヱホバいひたまひけるはわれ北の國々のすべての族をよばん彼等きたりてヱルサレムの門の入口とその周圍のすべての石垣およびユダのすべての邑々に向ひておのおのその座を設けん

われかれらの凡の惡事のために我鞫をかれにつげん是はかれら我をすてて別の神に香を焚きおのれの手にて作りし物を拝するによる

汝腰に帶して起ちわが汝に命ずるすべての事を彼等につげよその面を畏るる勿れ否らざれば我かれらの前に汝を辱かしめん

視よわれ今日この全國とユダの王とその牧伯とその祭司とその地の民の前に汝を堅き城 鐵の柱 銅の牆となせり

彼等なんぢと戰はんとするも汝に勝ざるべしそはわれ汝とともにありて汝をすくふべければなりとヱホバいひたまへり

第2章

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ヱホバの言我にのぞみていふ

ゆきてヱルサレムに住る者の耳につげよヱホバ斯くいふ我汝につきて汝の若き時の懇切なんぢが契をなせしときの愛曠野なる種播ぬ地にて我に從ひしことを憶ゆと

イスラエルはヱホバの聖物にしてその初に結べる實なりすべて之を食ふものは罰せられ災にあふべしとヱホバ云ひたまへり

ヤコブの家とイスラエルの家の諸の族よヱホバの言をきけ

ヱホバかくいひたまふ汝等の先祖は我に何の惡事ありしを見て我に遠かり 虛しき物にしたがひて虛しくなりしや

かれらは我儕をエジプトの地より導きいだし曠野なる岩穴ある荒たる地 旱きたる死の蔭の地 人の過ぎざる地 人の住はざる地を通らしめしヱホバはいづこにあるといはざりき

われ汝等を導きて園のごとき地にいれ其實と佳物をくらはしめたり然ど汝等此處にいり我地を汚し我產業を憎むべきものとなせり

祭司はヱホバは何處にいますといはず律法をあつかふ者は我を知らず牧者は我に背き預言者はバアルによりて預言し益なきものに從へり

故にわれ尚汝等とあらそはん且汝の子孫とあらそふべしとヱホバいひたまふ

汝等キッテムの諸島にわたりて觀よまた使者をケダルにつかはし斯のごとき事あるや否やを詳細に察せしめよ

その神を神にあらざる者に易たる國ありや然るに我民はその榮を益なき物にかへたり

天よこの事を驚け慄けいたく怖れよとヱホバいひたまふ

蓋わが民はふたつの惡事をなせり即ち活る水の源なる我をすて自己水溜を掘れりすなはち壞れたる水溜にして水を有たざる者なり

イスラエルはしもべなるか家にうまれし僕なるかいかにして擄掠となれるや

わかき獅子かれにむかひて哮えその聲をあげてその地を荒せりその諸邑は焚れて住む人なし

ノフとタパネスの諸子も汝の頭首の髮をくらはん

汝の神ヱホバの汝を途にみちびきたまへる時に汝これを棄たるによりて此事汝におよぶにあらずや

汝ナイルの水を飮んとてエジプトの路にあるは何ゆゑぞまた河の水を飮んとてアツスリヤの路にあるは何故ぞ

汝の惡は汝をこらしめ汝の背は汝をせめん斯く汝が汝の神ヱホバをすてたると我を畏るることの汝の衷にあらざるとは惡く且つ苦きことなるを汝見てしるべしと主なる萬軍のヱホバいひ給ふ

汝昔より汝の軛ををり汝の縛を截ちていひけるは我つかふることをせじと即ち汝すべての高山のうへと諸の靑木の下に妓女のごとく身をかがめたり

われ汝を植て佳き葡萄の樹となし全き眞の種となせしにいかなれば汝われに向ひて異なる葡萄の樹の惡き枝にかはりしや

たとひ嚥哘をもて自ら濯ひまたおほくの灰汁を加ふるも汝の惡はわが前に汚れたりと主ヱホバいひ給ふ

汝いかで我は汚れずバアルに從はざりしといふことを得んや汝谷の中のおこなひを觀よ汝のなせしことを知れ汝は疾走るわかき牝の駱駝にしてその途にさまよへり

汝は曠野になれたる野の牝驢馬なり其欲のために風にあへぐその欲のうごくときは誰かこれをとどめえん凡てこれを尋る者は自ら勞するにおよばすその月の中に之にあふべし

汝足をつつしみて跣足にならざるやうにし喉をつつしみて渇かぬやうにせよしかるに汝いふ是は徒然なり然りわれ異なる國の者を愛してこれに從ふなりと

盜人の執へられて恥辱をうくるがごとくイスラエルの家恥辱をうく彼等その王その牧伯その祭司その預言者みな然り

彼等木にむかひて汝は我父なりといひまた石にむかひて汝は我を生みたりといふ彼等は背を我にむけて其面をわれに向けずされど彼等災にあふときは起てわれらを救ひ給へといふ

汝がおのれの爲に造りし神はいづこにあるやもし汝が災にあふときかれら汝を救ふを得ば起つべきなりそはユダよ汝の神は汝の邑の數に同じければなり

汝等なんぞ我とあらそふや汝らは皆我に背けりとヱホバいひ給ふ

我が汝らの衆子を打しは益なかりき彼等は懲治をうけず汝等の劍は猛き獅子のごとく汝等の預言者を滅せり

なんぢらこの世の人よヱホバの言をきけ我はイスラエルのために曠野となりしや暗き地となりしや何故にわが民はわれら徘徊りて復汝に來らじといふや

それ處女はその飾物を忘れんや新婦はその帶をわすれんや然ど我民の我を忘れたる日は數へがたし

汝愛を得んとて如何に汝の途を美くするぞよされば汝の行はあしき事を爲すに慣たり

また汝の裾に辜なき貧者の生命の血ありわれ盜人の穿たる所にて之を見ずしてすべて此等の上にこれを見る

されど汝いふわれは辜なし故にその怒はかならず我に臨まじとみよ汝われ罪を犯さざりしといふにより我汝とあらそふべし

なんぢ何故にその途を易んとて迅くはしるや汝アツスリヤに恥辱をうけしごとくエジプトにも亦恥辱をうけん

汝兩手を頭に置てかしこよりも出去らんそはヱホバ汝のたのむところの者を棄れば汝彼等によりて望を遂ること無るべければなり

第3章

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世にいへるあり人もしその妻をいださんに去りゆきてほかの人の妻とならば其夫ふたたび彼に歸るべけんやさすれば其地はおほいに汚れざらんや汝はおほくの者と姦淫を行へりされど汝われに皈れよとヱホバいひ給ふ

汝目をあげてもろもろの童山をみよ姦淫を行はざる所はいづこにあるや汝は曠野にをるアラビヤ人の爲すがごとく路に坐して人をまてり汝は姦淫と惡をもて此地を汚せり

この故に雨はとどめられ春の雨はふらざりし然れど汝娼妓の額あれば肯て恥ず

汝いまより我を呼ていはざらんや我父よ汝はわが少時の交友なり

窮なくその怒を含まんや恒に之を存たんやと視よ汝はかくいへど力をきはめて惡を爲すなり

ヨシヤ王のときヱホバまた我にいひ給ひけるは汝そむけるイスラエルのなせしことを見しや彼はすべての高山にのぼりすべての靑木の下にゆきて其處に姦淫を行へり

彼このすべての事を爲せしのち我かれに汝われに歸れと言しかどもわれに歸らざりき其悖れる姊妹なるユダ之を見たり

我に背けるイスラエル姦淫をなせしにより我かれを出して離緣状をあたへたれどその悖れる姊妹なるユダは懼れずして往て姦淫を行ふ我これを見る

また其姦淫の噪をもてこの地を汚し且石と木とに姦淫を行へり

此諸の事あるも仍其悖れる姊妹なるユダは眞心をもて我にかへらず僞れるのみとヱホバいひたまふ

ヱホバまた我にいひたまひけるは背けるイスラエルは悖れるユダよりも自己を義とす

汝ゆきて北にむかひ此言を宣ていふべしヱホバいひたまふ背けるイスラエルよ歸れわれ怒の面を汝らにむけじわれは矜恤ある者なり怒を限なく含みをることあらじとヱホバいひたまふ

汝ただ汝の罪を認はせそは汝の神ヱホバにそむき經めぐりてすべての靑木の下にて異邦人にゆき汝等わが聲をきかざればなりとヱホバいひ給ふ

ヱホバいひたまふ背ける衆子よ我にかへれそはわれ汝等を娶ればなりわれ邑より一人支派より二人を取りて汝等をシオンにつれゆかん

われ我心に合ふ牧者を汝等にあたへん彼等は知識と明哲をもて汝等を養ふべし

ヱホバいひたまふ汝等地に增して多くならんときは人々復ヱホバの契約の櫃といはず之を想ひいでず之を憶えずこれを尋ねずこれを作らざるべし

その時ヱルサレムはヱホバの座位と稱へられ萬國の民ここに集るべし即ちヱホバの名によりてヱルサレムに集り重て其惡き心の剛愎なるにしたがひて行まざるべし

その時ユダの家はイスラエルの家とともに行みて北の地よりいで我汝らの先祖たちに與へて嗣しめし地に偕にきたるべし

我いへり嗚呼われいかにして汝を諸子の中に置き萬國の中にて最も美しき產業なる此美地を汝にあたへんと我またいへり汝われを我父とよび亦我を離れざるべしと

然にイスラエルの家よ妻の誓に違きてその夫を棄るがごとく汝等われに背けりとヱホバいひたまふ

聲山のうへに聞ゆ是はイスラエルの民の悲み祈るなり蓋彼等まがれる途にあゆみ其神ヱホバを忘るればなり

背ける諸子よ我に歸れわれ汝の退違をいやさん/視よ我儕なんぢに到る汝はわれらの神ヱホバなればなり

信に諸の岡とおほくの山に救を望むはいたづらなり誠にイスラエルの救はわれらの神ヱホバにあり

羞恥はわれらの幼時より我儕の先祖の產業すなはち其多の羊とそのおほくの牛および其子その女を呑盡せり

われらは羞恥に臥し我らは恥辱に覆はるべしそは我儕とわれらの列祖は我らの幼時より今日にいたるまで罪をわれらの神ヱホバに犯し我儕の神ヱホバの聲に遵はざればなり

第4章

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ヱホバいひたまふイスラエルよ汝もし歸らば我に歸れ汝もし憎むべき者を我前より除かば流蕩はじ

かつ汝は眞實と正直と公義とをもてヱホバは活くと誓はんさらば萬國の民は彼によりて福祉をうけ彼によりて誇るべし

ヱホバ、ユダとヱルサレムの人々にかくいひ給ふ汝等の新田を耕せ荊棘の中に種くなかれ。

ユダの人々とヱルサレムに住める者よ汝等みづから割禮をおこなひてヱホバに屬きおのれの心の前の皮を去れ然らざれば汝等の惡行のためわが怒火の如くに發して燃えんこれを滅すものなかるべし

汝等ユダに告げヱルサレムに示していへ箛を國の中に吹けとまた大聲に呼はりていへ汝等あつまれ我儕堅き邑にゆくべしと

シオンに指示す合圖の旗をたてよ逃よ留まる勿れそは我北より災とおほいなる敗壞をきたらすればなり

獅子は其森よりいでて上り國々を滅すものは進みきたる彼汝の國を荒さんとて旣にその處よりいでたり汝の諸邑は滅されて住む者なきに至らん

この故に汝等麻の衣を身にまとひて悲み哭けそはヱホバの烈しき怒いまだ我儕を離れざればなり

ヱホバいひたまひけるはその日王と牧伯等はその心をうしなひ祭司は驚き預言者は異むべし

我いひけるは嗚呼主ヱホバよ汝はまことに此民とヱルサレムを大にあざむきたまふすなはち汝はなんぢら安かるべしと云給ひしに劍命にまでおよべり

その時この民とヱルサレムにいふものあらん熱き風 曠野の童山よりわが民の女にふききたると此は簸るためにあらず潔むる爲にもあらざるなり

これよりも猶はげしき風われより來らん今我かれらに鞫を示さん

みよ彼は雲のごとく上りきたらん其車は颶風のごとくにしてその馬は鷹よりも疾し嗚呼われらは禍なるかな我儕滅さるべし

ヱルサレムよ汝の心の惡をあらひ潔めよ然ばすくはれん汝の惡き念いつまで汝のうちにあるや

ダンより告ぐる聲ありエフライムの山より災を知するなり

汝ら國々の民に告げまたヱルサレムに知らせよ攻めかこむ者遠き國より來りユダの諸邑にむかひて其聲を揚ぐと

彼らは田圃をまもる者のごとくにこれを圍むこは我に從はざりしに由るとヱホバいひ給ふ

汝の途と汝の行これを汝に招けりこれは汝の惡なり誠に苦くして汝の心におよぶ

嗚呼わが腸よ我腸よ痛苦心の底におよびわが心胸とどろくわれ默しがたし我靈魂よ汝箛の聲と軍の鬨をきくなり

敗滅に敗滅のしらせありこの地は皆荒されわが幕屋は頃刻にやぶられ我幕は忽ち破られたり

我が旗をみ箛の聲をきくは何時までぞや

それ我民は愚にして我を識らず拙き子等にして曉ることなし彼らは惡を行ふに智けれども善を行ふことを知ず

われ地を見るに形なくして空くあり天を仰ぐに其處に光なし

我山を見るに皆震へまた諸の丘も動けり

我見に人あることなし天空の鳥も皆飛されり

我みるに肥美なる地は沙漠となり且その諸の邑はヱホバの前にその烈しき怒の前に毀たれたり

そはヱホバかくいひたまへりすべて此地は荒地とならんされど我ことごとくは之を滅さじ

故に地は皆哀しみ上なる天は暗くならん我すでに之をいひ且これを定めて悔いずまた之をなす事を止ざればなり

邑の人みな騎兵と射者の咄喊のために逃て叢林にいり又岩の上に升れり邑はみな棄られて其處に住む人なし

滅されたる者よ汝何をなさんとするや設令汝くれなゐの衣をき金の飾物をもて身を粧ひ目をぬりて大くするとも汝が身を粧ふはいたづらなり汝の戀人らは汝をいやしめ汝のいのちを索るなり

われ子をうむ婦のごとき聲首子をうむ者の苦むがごとき聲を聞く是れシオンの女の聲なりかれ自ら歎き手をのべていふ嗚呼われは禍なるかな我靈魂殺す者のために疲れはてぬ


第5章

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汝等ヱルサレムの邑をめぐりて視且察りその街を尋ねよ汝等もし一人の公義を行ひ眞理を求る者に逢はばわれ之(ヱルサレム)を赦すべし

彼らヱホバは活くといふとも實は僞りて誓ふなり

ヱホバよ汝の目は誠實を顧みるにあらずや汝彼らを撻どもかれら痛苦をおぼえず彼等を滅せどもかれら懲治をうけず其面を磐よりも硬くして歸ることを拒めり

故に我いひけるは此輩は惟いやしき愚なる者なればヱホバの途と其神の鞫を知ざるなり

われ貴人にゆきて之に語らんかれらはヱホバの途とその神の鞫を知るなり然に彼らも皆軛を折り縛を斷り

故に林よりいづる獅子は彼らを殺しアラバの狼はかれらを滅し豹はその邑をねらふ此處よりいづる者は皆裂るべしそは其罪おほくその背違はなはだしければなり

我なに故に汝をゆるすべきや汝の諸子われを棄て神にあらざる神を指して誓ふ我すでに彼らを誓はせたれど彼ら姦淫して娼妓の家に群集る

彼らは肥たる牡馬のごとくに行めぐりおのおの嘶きて隣の妻を慕ふ

ヱホバいひたまふ我これらの事のために彼らを罰せざらんや我心はかくの如き民に仇を復さざらんや

汝等その石垣にのぼりて滅せされど悉くはこれを滅す勿れその枝を截除けヱホバのものに有ざればなり

イスラエルの家とユダの家は大に我に悖るなりとヱホバいひたまふ

彼等はヱホバを認ずしていふヱホバはある者にあらず災われらに來らじ我儕劍と飢饉をも見ざるべし

預言者は風となり言はかれらの衷にあらず斯彼らになるべしと

故に萬軍の神ヱホバかくいひたまふ汝等この言を語により視よわれ汝の口にある我言を火となし此民を薪となさんその火彼らを焚盡すべし

ヱホバいひ給ふイスラエルの家よみよ我遠き國人をなんぢらに來らしめん其國は强くまた古き國なり汝等その言をしらず其語ることをも曉らざるなり

その箙は啓きたる墓のごとし彼らはみな勇士なり

彼らは汝の穡れたる物と汝の糧食を食ひ汝の子女を食ひ汝の羊と牛を食ひ汝の葡萄の樹と無花果の樹を食ひまた劍をもて汝の賴むところの堅き邑を滅さん

されど其時われことごとくは汝を滅さじとヱホバいひたまふ

汝等何ゆゑにわれらの神ヱホバ此等の諸のことを我儕になしたまふやといはば汝かれらに答ふべし汝ら我をすて汝らの地に於て異なる神に奉へしごとく汝らのものにあらざる地に於て異邦人につかふべしと

汝これをヤコブの家にのべまたこれをユダに示していへ

愚にして了知なく目あれども見えず耳あれども聞えざる民よこれをきけ

ヱホバいひ給ふ汝等われを畏れざるか我前に戰慄かざるか我は沙を置て海の界となしこれを永遠の限界となし踰ることをえざらしむ其浪さかまきいたるも勝ことあたはず澎湃もこれを踰るあたはざるなり

然るにこの民は背き且悖れる心あり旣に背きて去れり

彼らはまた我儕に雨をあたへて秋の雨と春の雨を時にしたがひて下し我儕のために收穫の時節を定め給へる我神ヱホバを畏るべしと其心にいはざるなり

汝等の愆はこれらの事を退け汝等の罪は嘉物を汝らに來らしめざりき

我民のうちに惡者あり網を張る者のごとくに身をかがめてうかがひ罟を置て人をとらふ

樊籠に鳥の盈るがごとく不義の財彼らの家に充つこの故に彼らは大なる者となり富る者となる

彼らは肥て光澤あり其惡き行は甚し彼らは訟をたださず孤の訟を糺さずして利達をえ亦貧者の訴を鞫かず

ヱホバいひ給ふわれかくのごときことを罰せざらんや我心は是のごとき民に仇を復さざらんや

この地に驚くべき事と憎むべきこと行はる

預言者は僞りて預言をなし祭司は彼らの手によりて治め我民は斯る事を愛すされど汝等その終に何をなさんとするや

第6章

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ベニヤミンの子等よヱルサレムの中より逃れテコアに箛をふきベテハケレムに合圖の火をあげよそは北より災と大なる敗壞のぞめばなり

われ美しき窈窕なるシオンの女を滅さん

牧者は其群を牽て此處にきたりその周圍に天幕をはらん群はおのおのその處にて草を食はん

汝ら戰端を開きて之を攻べし起よわれら日午にのぼらん嗚呼惜かな日ははや昃き夕日の影長くなれり

起よわれら夜の間にのぼりてその諸の殿舍を毀たん

萬軍のヱホバかくいひたまへり汝ら樹をきりヱルサレムに向ひて壘を築けこれは罰すべき邑なりその中には唯暴逆のみあり

源の水をいだすがごとく彼その惡を流すその中に暴逆と威虐きこゆ我前に憂と傷たえず

ヱルサレムよ汝訓戒をうけよ然らざれば我心汝をはなれ汝を荒蕪となし住む人なき地となさん

萬軍のヱホバかくいひたまふ彼らは葡萄の遺餘を摘みとるごとくイスラエルの遺れる者を摘とらん汝葡萄を摘取者のごとく屢手を筐に入るべし

我たれに語り誰を警めてきかしめんや視よその耳は割禮をうけざるによりて聽えず彼らはヱホバの言を嘲りこれを悦ばず

ヱホバの怒わが身に充つわれ忍ぶに倦むこれを衢街にある童子と集れる年少者とに泄すべし夫も婦も老たる者も年邁し者も執へらるるにいたらん

その家と田地と妻はともに佗人にわたらん其はわれ手を擧てこの地に住る者を撃ばなりとヱホバいひたまふ

夫彼らは少さき者より大なる者にいたるまで皆貪婪者なり又預言者より祭司にいたるまで皆詭詐をなす者なればなり

かれら淺く我民の女の傷を醫し平康からざる時に平康平康といへり

彼らは憎むべき事を爲て恥辱をうくれども毫も恥ずまた愧を知らずこの故に彼らは傾仆るる者と偕にたふれん我來るとき彼ら躓かんとヱホバいひたまふ

ヱホバかくいひたまふ汝ら途に立て見古き徑に就て何か善道なるを尋ねて其途に行めさらば汝らの靈魂安を得ん然ど彼らこたへて我儕はそれに行まじといふ

我また汝らの上に守望者をたて箛の聲をきけといへり然ど彼等こたへて我儕は聞じといふ

故に萬國の民よきけ會衆よかれらの遇ところを知れ

地よきけわれ災をこの民にくださんこは彼らの思の結ぶ果なりかれら我言とわが律法をきかずして之を棄るによる

シバより我許に乳香きたり遠き國より菖蒲きたるは何のためぞやわれは汝らの燔祭をよろこばず汝らの犠牲を甘しとせず

故にヱホバかくいひたまふみよ我この民の前に躓礙をおく父と子とそれに蹶き隣人とその友偕に滅ぶべし

ヱホバかくいひたまふみよ民北の國よりきたる大なる民地の極より起る

彼らは弓と槍をとる殘忍にして憫なしその聲は海の如く鳴るシオンの女よかれらは馬に乗り軍人のごとく身をよろひて汝を攻めん

我儕その風聲をききたれば我儕の手弱り子をうむ婦のごとき苦痛と劬勞われらに迫る

汝ら田地に出る勿れまた路に行むなかれ敵の劍と畏怖四方にあればなり

我民の女よ麻衣を身にまとひ灰のうちにまろび獨子を喪ひしごとくに哀みていたく哭けそは毀滅者突然に我らに來るべければなり

われ汝を民のうちに立て金を驗る者のごとくなし又城のごとくなすこは汝をしてその途を知しめまた試みしめんためなり

彼らは皆いたく悖れる者なり歩行て人を謗る者なり彼らは銅のごとく鐵のごとし皆邪なる者なり

韛は火に焚け鉛はつき鎔匠はいたづらに鎔す惡者いまだ除かれざればなり

ヱホバ彼らを棄たまふによりて彼等は棄られたる銀と呼ばれん

第7章

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ヱホバよりヱレミヤにのぞめる言云ふ

汝ヱホバの室の門にたち其處にてこの言を宣て言ヘヱホバを拜まんとてこの門にいりしユダのすべての人よヱホバの言をきけ

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひ給ふ汝らの途と汝らの行を改めよさらばわれ汝等をこの地に住しめん

汝ら是はヱホバの殿なりヱホバの殿なりヱホバの殿なりと云ふ僞の言をたのむ勿れ

汝らもし全くその途と行を改め人と人との間を正しく鞫き

異邦人と孤兒と寡を虐げず無辜者の血をこの處に流さず他の神に從ひて害をまねかずば

我なんぢらを我汝等の先祖にあたへしこの地に永遠より永遠にいたるまで住しむべし

みよ汝らは益なき僞の言を賴む

汝等は盜み殺し姦淫し妄りて誓ひバアルに香を焚き汝らがしらざる他の神にしたがふなれど

我名をもて稱へらるるこの室にきたりて我前にたち我らはこれらの憎むべきことを行ふとも救はるるなりといふは何にぞや

わが名をもて稱へらるる此室は汝らの目には盜賊の巢と見ゆるや我も之をみたりとヱホバいひたまふ

汝等わが初シロに於て我名を置し處にゆき我がイスラエルの民の惡のために其處になせしところのことをみよ

ヱホバいひたまふ今汝ら此等のすべての事をなす又われ汝らに語り頻にかたりたれども聽かず汝らを呼びたれども答へざりき

この故に我シロになせしごとく我名をもて稱へらるる此室になさんすなはち汝等が賴むところ我汝らと汝らの先祖にあたへし此處になすべし

またわれ汝等のすべての兄弟すなはちエフライムのすべての裔を棄てしごとく我前より汝らをも棄つべし

故に汝この民のために祈る勿れ彼らの爲に歎くなかれ求むるなかれ又我にとりなしをなす勿れわれ汝にきかじ

汝かれらがユダの邑とヱルサレムの街になすところを見ざるか

諸子は薪を拾め父は火を燃き婦は麺を搏ねパンをつくりて之を天后にそなふ又かれら他の神の前に酒をそそぎて我を怒らす

ヱホバいひたまふ彼ら我を怒らするか是れおのが面を辱むるにあらずや

是故に主ヱホバかくいひたまふ視よわが震怒とわが憤怒はこの處と人と獸と野の樹および地の果にそそがん且燃て滅ざるべし

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ汝らの犠牲に燔祭の物をあはせて肉をくらヘ

そはわれ汝等の先祖をエジプトより導きいだせし日に燔祭と犠牲とに就てかたりしことなく又命ぜしことなし

惟われこの事を彼等に命じ汝ら我聲を聽ばわれ汝らの神となり汝ら我民とならん且わが汝らに命ぜしすべての道を行みて福祉をうべしといへり

されど彼らはきかず其耳を傾けずおのれの惡き心の謀と剛愎なるとにしたがひて行みまた後を我にむけて其面を向けざりき

汝らの先祖がエジプトの地をいでし日より今日にいたるまでわれ我僕なる預言者を汝らにつかはし日々晨より之をつかはせり

されど彼らは我にきかず耳を傾けずして其項を强くしその列祖よりも愈りて惡をなすなり

汝彼らに此等のすべてのことばを語るとも汝にきかずかれらを呼ぶとも汝にこたへざるべし

汝かく彼らに語れこれは其神ヱホバの聲を聽ずその訓を受ざる民なり眞實はうせてその口に絕たり

(シオンの女よ)汝の髮を剃りてこれを棄て山の上に哀哭の聲をあげよヱホバその怒るところの世の人をすててこれを離れたまへばなり

ヱホバいひたまふユダの民は我前に惡を行へり即ちその憎むべき者を我名をもて稱へらるる室に置てこれを汚せり

又ベンヒンノムの谷に於てトペテの崇邱を築きてその子女を火に焚かんとせり我これを命ぜずまた斯ることを思はざりし

ヱホバいひたまふ然ば視よ此處をトペテまたはベンヒンノムの谷と稱へずして殺戮の谷と稱ふる日きたらん其は葬るべき地所なきまでにトペテに葬るべければなり

この民の屍は天空の鳥と地の獸の食物とならんこれを逐ふものなかるべし

その時われユダの邑とヱルサレムの街に欣喜の聲 歡樂の聲 新婿の聲 新婦の聲なからしむべしこの地荒蕪ればなり

第8章

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ヱホバいひたまふその時人ユダの王等の骨とその牧伯等の骨と祭司の骨と預言者の骨とヱルサレムの民の骨をその墓よりほりいだし

彼等の愛し奉へ從ひ求め且祭れるところの日と月と天の衆群の前にこれを曝すべし其骨はあつむる者なく葬る者なくして糞土のごとくに地の面にあらん

この惡き民の中ののこれる餘遺の者すべてわが逐やりしところに餘れる者皆生るよりも死ぬることを願んと萬軍のヱホバ云たまふ

汝また彼らにヱホバかくいふと語るべし人もし仆るれば起きかへるにあらずやもし離るれば歸り來るにあらずや

何故にヱルサレムにをる此民は恒にわれを離れて歸らざるや彼らは詐僞をかたく執て歸ることを否めり

われ耳を側てて聽に彼らは善ことを云ず一人もその惡を悔いてわがなせし事は何ぞやといふ者なし彼らはみな戰場に馳入る馬のごとくにその途に歸るなり

天空の鶴はその定期を知り斑鳩と燕と鴈はそのきたる時を守るされど我民はヱホバの律法をしらざるなり

汝いかで我ら智慧ありわれらにはヱホバの律法ありといふことをえんや視よまことに書記の僞の筆之を僞とせり

智慧ある者は辱しめられまたあわてて執へらる視よ彼等ヱホバの言を棄たり彼ら何の智慧あらんや

故にわれその妻を他人にあたへ其田圃を他人に嗣しめん彼らは小さき者より大なる者にいたるまで皆貪婪者また預言者より祭司にいたるまで皆詭詐をなす者なればなり

彼ら我民の女の傷を淺く醫し平康からざる時に平康平康といへり

彼ら憎むべき事をなして恥辱らる然れど毫も恥ずまた恥を知らずこの故に彼らは仆るる者と偕に仆れんわが彼らを罰するときかれら躓くべしとヱホバいひたまふ

ヱホバいひたまふ我彼らをことごとく滅さん葡萄の樹に葡萄なく無花果の樹に無花果なしその葉も槁れたり故にわれ殲滅者を彼らにつかはす.

我ら何ぞ此にとどまるやあつまれよ我ら堅き城邑にゆきて其處に滅ん我儕ヱホバに罪を犯せしによりて我らの神ヱホバ我らを滅し毒なる水を飮せたまへばなり

われら平康を望めども善こと來らず慰めらるる時を望むにかへつて恐懼きたる

その馬の嘶はダンよりきこえこの地みなその强き馬の聲によりて震ふ彼らきたりて此地とその上にある者および邑とその中に住る者を食ふ

視よわれ呪詛のきかざる蛇蝮を汝らのうちに遣はさん是汝らを嚙べしとヱホバいひたまふ

嗚呼われ憂ふいかにして慰藉をえんや我衷の心惱む

みよ遠き國より我民の女の聲ありていふヱホバはシオンに在さざるか其王はその中に在ざるかと(ヱホバいひたまふ)彼らは何故にその偶像と異邦の虛き物をもて我を怒らせしやと

收穫の時は過ぎ夏もはや畢りぬされど我らはいまだ救はれず

我民の女の傷によりて我も傷み且悲しむ恐懼我に迫れり

ギレアデに乳香あるにあらずや彼處に醫者あるにあらずやいかにして我民の女はいやされざるや

第9章

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ああ我わが首を水となし我目を涙の泉となすことをえんものを我民の女の殺されたる者の爲に晝夜哭かん

嗚呼われ曠野に旅人の寓所をえんものを我民を離れてさりゆかん彼らはみな姦淫するもの悖れる者の族なればなり

彼らは弓を援くがごとく其舌をもて僞をいだす彼らは此地において眞實のために强からず惡より惡にすすみまた我を知ざるなりとヱホバいひたまふ

汝らおのおの其隣に心せよ何の兄弟をも信ずる勿れ兄弟はみな欺きをなし隣はみな讒りまはればなり

彼らはおのおの其隣を欺きかつ眞實をいはず其舌に謊をかたることを敎へ惡をなすに勞る

汝の住居は詭譎の中にあり彼らは詭譎のために我を識ことをいなめりとヱホバいひたまふ

故に萬軍のヱホバかくいひたまへり視よ我かれらを鎔し試むべしわれ我民の女の事を如何になすべきや

彼らの舌は殺す矢のごとしかれら詭をいふまた其口をもて隣におだやかにかたれども其心の中には害をはかるなり

ヱホバいひたまふ我これらの事のために彼らを罰せざらんや我心はかくのごとき民に仇を復さざらんや

われ山のために泣き咷び野の牧場のために悲むこれらは焚れて過る人なしまたここに牛羊の聲をきかず天空の鳥も獸も皆逃てさりぬ

われヱルサレムを邱墟とし山犬の巢となさんまたユダの諸の邑々を荒して住む人なからしめん

智慧ありてこの事を曉る人は誰ぞやヱホバの口の言を受てこれを示さん者は誰ぞやこの地滅されまた野のごとく焚れて過る者なきにいたりしは何故ぞ

ヱホバいひたまふ是彼ら我その前に立しところの律法をすて我聲をきかず之に從はざるによりてなり

彼らはその心の剛愎なるとその列祖たちがおのれに敎へしバアルとに從へり

この故に萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ視よわれ彼等すなはち斯民に茵蔯を食はせ毒なる水を飮せ

彼らもその先祖たちもしらざりし國人のうちに彼らを散しまた彼らを滅し盡すまで其後に劍をつかはさん

萬軍のヱホバかくいひたまふ汝らよく考へ哭婦をよびきたれ又人を遣はして智き婦をまねけよ

彼らは速にきたりて我儕のために哭哀しみ我儕の目に涙をこぼさせ我儕の目蓋より水を溢れしめん

シオンより哀の聲きこゆ云く嗚呼われら滅され我ら痛く辱めらる我らは其地を去り彼らはわが住家を毀ちたり

婦たちよヱホバの言をきけ汝らの耳に其口の言をいれよ汝らの女に哭ことを敎へおのおのその隣に哀の歌を敎ふべし

そは死のぼりてわれらの窓よりいり我らの殿舍に入り外にある諸子を絕し街にある壯年を殺さんとすればなり

ヱホバかくいへりと汝云ふべし人の屍は糞土のごとく田野に墮ちんまた收穫者のうしろに殘りて斂めずにある把のごとくならんと

ヱホバかくいひたまふ智慧ある者はその智慧に誇る勿れ力ある者は其力に誇るなかれ富者はその富に誇ること勿れ

誇る者はこれをもて誇るべし即ち明哲して我を識る事とわがヱホバにして地に仁惠と公道と公義とを行ふ者なるを知る事是なり我これらを悦ぶなりとヱホバいひたまふ

9:25 9:26

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ヱホバいひたまひけるは視よわれすべて陽の皮に割禮をうけたる者すなはちエジプトとユダとエドムとアンモンの子孫とモアブと野にをりてその鬚を剃る者とを罰する日きたらんそはすべて異邦人は割禮をうけずまたイスラエルの家も心に割禮をうけざればなり

第10章

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イスラエルの家よヱホバの汝らに語たまふ言をきけ


ヱホバかくいひたまふ汝ら異邦人の途に效ふ勿れ異邦人は天にあらはるる徴を懼るるとも汝らはこれを懼るる勿れ

異國人の風俗はむなしその崇むる者は林より斫たる木にして木匠の手に斧をもて作りし者なり

彼らは銀と金をもてこれを飾り釘と鎚をもて之を堅めて搖動かざらしむ

こは圓き柱のごとくにして言はずまた歩むこと能はざるによりて人にたづさへらる是は災害をくだし亦は福祉をくだすの權なきによりて汝らこれを畏るる勿れ

ヱホバよ汝に比ふべき者なし汝は大なり汝の名は其權威のために大なり

汝萬國の王たる者よ誰か汝を畏れざるべきや汝を畏るるは當然なりそは萬國のすべての博士たちのうちにもその諸國のうちにも汝に比ふべき者なければなり

彼らはみな獸のことくまた痴愚なり虛しき者の敎は惟木のみ

タルシシより携へ來し銀箔ウパズより携へ來し金は鍛冶と鑄匠の作りし物なり靑と紫をその衣となす是はすべて巧みなる細工人の工作なり

ヱホバは眞の神なり彼は活る神なり永遠の王なり其怒によりて地は震ふ萬國はその憤怒にあたること能はず

汝等かく彼らにいふべし天地を造らざりし諸神は地の上よりこの天の下より失さらんと

ヱホバはその能をもて地をつくり其智慧をもて世界を建てその明哲をもて天を舒べたまへり

かれ聲をいだせば天に衆の水ありかれ雲を地の極よりいだし電と雨をおこし風をその府庫よりいだす

すべての人は獸の如くにして智なしすべての鑄匠はその作りし像のために辱をとる其鑄るところの像は僞物にしてその中に靈魂なければなり

是らは虛き者にして迷妄の工作なりその罰せらるるときに滅ぶべし

ヤコブの分は是のごとくならず彼は萬物の造化主なりイスラエルはその產業の杖なりその名は萬軍のヱホバといふなり

圍の中に坐する者よ汝の包を地より取りあげよ

ヱホバかくいひたまふみよ我この地にすめる者を此度擲たん且かれらをせめなやまして擄へられしむべし

われ毀傷をうく嗚呼われは禍なるかな我傷は重し我いふこれまことにわが患難なりわれ之を忍べし

わが幕屋はやぶれわが繩索は悉く斷れ我衆子は我をすてゆきて居ずなりぬ幕屋を張る者なくわが幃をかくる者なし

牧者は愚にしてヱホバを求めず故に利達ずその群はみな散れり

きけよ風聲あり北の國より大なる騒きたる是ユダの諸邑を荒して山犬の巢となさん

ヱホバよわれ知る人の途は自己によらず且歩行む人は自らその歩履を定むること能はざるなり

ヱホバよ我を懲したまへ但道にしたがひ怒らずして懲したまへおそらくは我無に歸せん

汝を知ざる國人と汝の名を龥ざる族に汝の怒を斟ぎたまへ彼らはヤコブを噬ひ之をくらふて滅しその牧場を荒したればなり

第11章

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ヱホバよりヱレミヤにのぞめる言いふ

汝らこの契約の言をききユダの人とヱルサレムにすめる者に告よ

汝かれらに語れイスラエルの神ヱホバかくいひたまふこの契約の言に遵はざる人は詛はる

この契約はわが汝らの先祖をエジプトの地鐵の爐の中より導き出せし日にかれらに命ぜしものなり即ち我いひけらく汝ら我聲をきき我汝らに命ぜし諸の事に從ひて行はば汝らは我民となり我は汝らの神とならん

われ汝らの先祖に乳と蜜の流るる地を與へんと誓ひしことを成就んと即ち今日のごとしその時我こたへてアーメン、ヱホバといへり

またヱホバ我にいひたまひけるは汝すべて此等の言をユダの諸邑とヱルサレムの衢にしめし汝ら此契約の言をききてこれを行へといふべし

われ汝らの列祖をエジプトの地より導出せし日より今日にいたるまで切に彼らを戒め頻に戒めて汝ら我聲に遵へといへり

然ど彼らは遵はずその耳を傾けずおのおの其惡き心の剛愎なるにしたがひて歩めり故にわれ此契約の言を彼等にきたらす是はわがかれらに之を行へと命ぜしかども彼等がおこなはざりし者なり

またヱホバ我にいひたまひけるはユダの人々とヱルサレムに住る者の中に叛逆の事あり

彼らは我言をきくことを好まざりしところのその先祖の罪にかへり亦他の神に從ひて之に奉へたりイスラエルの家とユダの家はわがその列祖たちと締たる契約をやぶれり

この故にヱホバかくいひ給ふみよわれ災禍をかれらにくださん彼らこれを免かるることをえざるべし彼ら我をよぶとも我聽じ

ユダの邑とヱルサレムに住る者はゆきてその香を焚し神を龥んされど是等はその災禍の時に絕てかれらを救ふことあらじ

ユダよ汝の神の數は汝の邑の數のごとし且汝らヱルサレムの衢の數にしたがひて恥べき者に壇をたてたり即ちバアルに香を焚んとて壇をたつ

故に汝この民の爲に祈る勿れ又その爲に泣きあるひは求る勿れ彼らがその災禍のために我を呼ときわれ彼らに聽ざるべし

わが愛する者は我室にて何をなすや惡き謀をなすや願と聖き肉汝に災を脱れしむるやもし然らば汝よろこぶべし

ヱホバ汝の名を嘉果ある美しき靑橄欖の樹と稱たまひしがおほいなる喧嚷の聲をもて之に火をかけ且その枝を折りたまふ

汝を植し萬軍のヱホバ汝の災をさだめ給へりこれイスラエルの家とユダの家みづから害ふの惡をなしたるによるなり即ちバアルに香を焚きてわれを怒らせたり

ヱホバ我に知せたまひければ我これを知るその時汝彼らの作爲を我にしめしたまへり

我は牽れて宰られにゆく羔の如く彼らが我をそこなはんとて謀をなすを知ず彼らいふいざ我ら樹とその果とを共に滅さんかれを生る者の地より絕てその名を人に忘れしむべしと

義き鞫をなし人の心腸を察りたまふ萬軍のヱホバよ我わが訴を汝にのべたればわれをして汝が彼らに仇を報すを見せしめたまへ

是をもてヱホバ、アナトテの人々につきてかくいひたまふ彼等汝の生命を取んと索めて言ふ汝ヱホバの名をもて預言する勿れ恐らくは汝我らの手に死んと

故に萬軍のヱホバかくいひ給ふみよ我かれらを罰すべし壯丁は劍に死にその子女は飢饉にて死なん

餘る者なかるべし我災をアナトテの人々にきたらしめわが彼らを罰するの年をきたらしめん

第12章

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ヱホバよわが汝と爭ふ時に汝は義し惟われ鞫の事につきて汝と言ん惡人の途のさかえ悖れる者のみな福なるは何故ぞや

汝かれらを植たり彼らは根づき成長て實を結べりその口は汝に近けどもその心は汝に遠ざかる

ヱホバ汝われを知り我を見またわが心の汝にむかひて何なるかを試みたまふ羊を宰りに牽いだすがごとく彼らを牽いだし殺す日の爲にかれらをそなへたまへ

いつまでこの地は哭きすべての畑の蔬菜は枯をるべけんやこの地に住る者の惡によりて畜獸と鳥は滅さる彼らいふ彼は我らの終をみざるべしと

汝もし歩行者とともに趨てつかれなばいかで騎馬者と競はんや汝平安なる地を恃まばいかでヨルダンの傍の叢に居ることをえんや

汝の兄弟と汝の父の家も汝を欺きまた大聲をあげて汝を追ふかれらしたしく汝に語るともこれを信ずる勿れ

われ我家を離れわが產業をすて我靈魂の愛するところの者をその敵の手にわたせり

わが產業は林の獅子のごとし我にむかひて其聲を揚ぐ故にわれ之を惡めり

我產業は我におけること班駁ある鳥のごとくならずや鳥之を圍むにあらずや野のすべての獸きたりあつまれ來てこれを食へ

衆の牧者わが葡萄園をほろぼしわが地を踐踏しわがうるはしき地を荒野となせり

彼らこれを荒地となせりその荒地我にむかひて哭くなり一人もかへりみる者なければこの全地は荒たり

毀滅者は野のすべての童山のうへに來れりヱホバの劍地のこの極よりかの極までを滅ぼすすべて血氣ある者は安をえず

彼らは麥を播て荊棘をかる勞れども得るところなし汝らはその作物のために恥るにいたらん是ヱホバの烈き怒によりてなり

わがイスラエルの民に嗣しむる產業をせむるところのすべてのわが惡き隣にむかひてヱホバかくいふみよわれ彼等をその地より拔出しまたユダの家を彼らの中より拔出すべし

われ彼らを拔出せしのちまた彼らを恤みておのおのを其產業にかへし各人をその地に歸らしめん

彼等もし我民の道をまなび我名をさしてヱホバは活くと誓ふこと嘗て我民を敎へてバアルを指て誓はしめし如くせば彼らはわが民の中に建らるべし

されど彼らもし聽かざれば我かならずかかる民を全く拔出して滅すべしとヱホバいひたまふ

第13章

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ヱホバかくいひたまへり汝ゆきて麻の帶をかひ汝の腰にむすべ水に入る勿れ

われすなはちヱホバの言に遵ひ帶をかひてわが腰にむすべり

ヱホバの言ふたたび我にのぞみて云ふ

汝が買て腰にむすべる帶を取り起てユフラテにゆき彼處にてこれを磐の穴にかくせと

ここに於てわれヱホバの命じたまひし如く往てこれをユフラテの涯にかくせり

おほくの日を經しのちヱホバ我にいひたまひけるは起てユフラテにゆきわが汝に命じて彼處にかくさしめし帶を取れと

われすなはちユフラテにゆき帶を我隱せしところより掘取りしにその帶は朽て用ふるにたへず

またヱホバの言われにのぞみて云ふ

ヱホバかくいふ我かくの如くユダの驕傲とヱルサレムの大なる驕傲をやぶらん

この惡き民はわが言を聽ことをこばみ己の心の剛愎なるにしたがひて行み且他の神に從ひてこれにつかへ之を拜す彼等は此帶の用ふるにたへざるが如くなるべし

ヱホバいふ帶の人の腰に附がごとくわれイスラエルのすべての家とユダのすべての家を我に附しめ之を我民となし名となし譽となし榮となさんとせり然るに彼等はきかざりき

故に汝この言を彼らに語るべしイスラエルの神ヱホバかくいふ酒壺には皆酒盈つと彼汝にこたへていはん我儕豈酒壺に酒の盈ることを知ざらんやと

其時汝かれらにいふべしヱホバかくいふみよわれ此地に住るすべての者とダビデの位に坐する王等と祭司と預言者およびヱルサレムに住るすべての者に醉を盈せ

彼らを此と彼と打あはせて碎かん父と子をも然すべしわれ彼らを恤まず惜まず憐まずして滅さん

汝らきけ耳を傾けよ驕る勿れヱホバかたりたまふなり

汝らの神ヱホバに其いまだ暗を起したまはざる先汝らの足のくらき山に躓かざる先に榮光を皈すべし汝ら光明を望まんにヱホバ之を死の蔭に變へ之を昏黑となしたまふにいたらん

汝ら若これを聽ずば我靈魂は汝らの驕を隱なるところに悲まん又ヱホバの群の掠めらるるによりて我目いたく泣て涙をながすべし

なんぢ王と大后につげよ汝ら自ら謙りて坐せそはなんぢらの美しき冕汝らの首より落べければなり

南の諸邑は閉てこれを啓く人なしユダは皆擄移され盡くとらへ移さる

汝ら目を擧げて北より來る者をみよ汝らが賜はりし群汝のうるはしき群はいづこにあるや

かれ汝の親み馴たる者を汝の上にたてて首領となさんとき汝何のいふべきことあらんや汝の痛は子をうむ婦のごとくならざらんや

汝心のうちに何故にこの事我にきたるやといふか汝の罪の重によりて汝の裾は掲げられなんぢの踵はあらはさるるなり

エテオピア人その膚をかへうるか豹その斑駁をかへうるか若これを爲しえば惡に慣たる汝らも善をなし得べし

故にわれ彼らを散して野の風に吹散さるる皮壳のごとくせん

ヱホバいひたまふこは汝の得べき分わが量て汝にあたふる產業なり汝我をわすれて虛假を依賴ばなり

故にわれ汝の前の裳を剥ぎて汝の羞恥をあらはさん

われ汝の姦淫と汝の嘶と汝が岡のうへと野になせし汝の亂淫の罪と汝の憎むべき行をみたりヱルサレムよ汝は禍なるかな汝の潔くせらるるには尚いくばくの時を經べきや

第14章

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乾旱の事につきてヱレミヤにのぞみしヱホバの言は左のごとし

ユダは悲むその門は傾き地にたふれて哭くヱルサレムの咷は上る

その侯伯等は僕をつかはして水を汲しむ彼ら井にいたれども水を見ず空き器をもちて歸り恥かつ憂へてその首をおほふ

地に雨ふらずして土燥裂たるにより農夫は恥て首を掩ふ

また野にある麀は子をうみて之を棄つ草なければなり

野の驢馬は童山のうへにたちて山犬のごとく喘ぎ草なきによりて目眩む

ヱホバよ我儕の罪われらを訟へて證をなすとも願くは汝の名の爲に事をなし給へ我儕の違背はおほいなり我儕汝に罪を犯したり

イスラエルの企望なる者その艱るときに救ひたまふ者よ汝いかなれば此地に於て他邦人のごとくし一夜寄宿の旅客のごとくしたまふや

汝いかなれば呆てをる人のごとくし救をなすこと能はざる勇士のごとくしたまふやヱホバよ汝は我らの間にいます我儕は汝の名をもて稱へらるる者なり我らを棄たまふ勿れ

ヱホバこの民にかくいひたまへり彼らかく好んでさまよひ其足を禁めざればヱホバ彼らを悦ばずいまその愆をおぼえ其罪を罰すべし

ヱホバまた我にいひたまひけるは汝この民のために恩をいのる勿れ

彼ら斷食するとも我その呼龥をきかず燔祭と素祭を献るとも我これをうけず却てわれ劍と饑饉と疫病をもて彼らを滅すべし

われいひけるは嗚呼主ヱホバよみよ預言者たちはこの民にむかひ汝ら劍を見ざるべし饑饉は汝らにきたらじわれ此處に鞏固なる平安を汝らにあたへんといへり

ヱホバ我にいひたまひけるは預言者等は我名をもて詭を預言せりわれ之を遣さず之に命ぜずまた之にいはず彼らは虛誕の默示と卜筮と虛きことと己の心の詐を汝らに預言せり

この故にかの吾が遣さざるに我名をもて預言して劍と饑饉はこの地にきたらじといへる預言者等につきてヱホバかくいふこの預言者等は劍と饑饉に滅さるべし

また彼等の預言をうけし民は饑饉と劍によりてヱルサレムの街に擲棄られんこれを葬る者なかるべし彼等とその妻および其子その女みな然りそはわれ彼らの惡をその上に斟げばなり

汝この言を彼らに語るべしわが目は夜も晝もたえず涙を流さんそは我民の童女大なる滅と重き傷によりて亡さるればなり

われ出て畑にゆくに劍に死る者あり我邑にいるに饑饉に艱むものあり預言者も祭司もみなその地にさまよひて知ところなし

汝はユダを悉くすてたまふや汝の心はシオンをきらふや汝いかなれば我儕を撃て愈しめざるか我ら平安を望めども善ことあらず又醫さるる時を望むに却て驚懼あり

ヱホバよ我らはおのれの惡と先祖の愆を知るわれら汝に罪を犯したり

汝の名のために我らを棄たまふ勿れ汝の榮の位を辱めたまふ勿れ汝のわれらに立し契約をおぼえて毀りたまふなかれ

異邦の虛き物の中に雨を降せうるものあるや天みづから白雨をくだすをえんや我らの神ヱホバ汝これを爲したまふにあらずや我ら汝を望むそは汝すべて此等を悉く作りたまひたればなり

第15章

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ヱホバ我にいひたまひけるはたとひモーセとサムエルわが前にたつとも我こころは斯民を顧ざるべしかれらを我前より逐ひていでさらしめよ

彼らもし汝にわれら何處にいでさらんやといはば汝彼らにヱホバかくいへりといへ死に定められたる者は死にいたり劍に定められたる者は劍にいたり饑饉に定められたる者は饑饉にいたり虜に定められたる者は虜にいたるべしと

ヱホバ云たまひけるはわれ四の物をもて彼らを罰せんすなはち劍をもて戮し犬をもて噬せ天空の鳥および地の獸をもて食ひ滅さしめん

またユダの王ヒゼキヤの子マナセがヱルサレムになせし事によりわれ彼らをして地のすべての國に艱難をうけしめん

ヱルサレムよ誰か汝を憐まんたれか汝のために嘆かん誰かちかづきて汝の安否を問はん

ヱホバいひたまふ汝われをすてたり汝退けり故にわれ手を汝のうへに伸て汝を滅さんわれ憫に倦り

われ風扇をもて我民をこの地の門に煽がんかれらは其途を離れざるによりて我その子を絕ち彼らを滅すべし

彼らの寡婦はわが前に海濱の沙よりも多し晝われほろぼす者を携へきたりて彼らと壯者の母とをせめ驚駭と恐懼を突然にかれの上におこさん

七人の子をうみし婦は衰へて氣たえ尚晝なるにその日は早く沒る彼は辱められて面をあからめん其餘れる者はわれ之をその敵の劍に付さんとヱホバいひたまふ

嗚呼われは禍なるかな我母よ汝なに故に我を生しや全國の人我と爭ひ我を攻むわれ人に貸さず人また我に貸さず皆我を詛ふなり

ヱホバいひたまひけるは我實に汝に益をえせしめんために汝を惱す我まことに敵をして其艱の時と災の時に汝に求むることをなさしめん

鐵いかで北の鐵と銅を碎かんや

われ汝の資產と汝の資財を擄掠物とならしめ價をうることなからしめん是汝のすべての罪によるなりすべて汝の境のうちにかくなさん

われ汝の敵をして汝を汝の識ざる地にとらへ移さしめん夫我怒によりて火燃え汝を焚んとするなり

ヱホバよ汝これを知りたまふ我を憶え我をかへりみたまへ我を迫害るものに仇を復したまへ汝の容忍によりて我をとらへられしむる勿れ我汝の爲に辱を受るを知りたまへ

われ汝の言を得て之を食へり汝の言はわが心の欣喜快樂なり萬軍の神ヱホバよわれは汝の名をもて稱へらるるなり

われ嬉笑者の會に坐せずまた喜ばずわれ汝の手によりて獨り坐す汝憤怒をもて我に充したまへり

何故にわが痛は息ずわが傷は重くして愈ざるか汝はわれにおけること水をたもたずして人を欺く溪河のごとくなるや

是をもてヱホバかくいひたまへり汝もし歸らば我また汝をかへらしめて我前に立しめん汝もし賤をすてて貴をいださば我口のごとくならん彼らは汝に歸らんされど汝は彼らにかへる勿れ

われ汝をこの民の前に堅き銅の牆となさんかれら汝を攻るとも汝にかたざるべしそはわれ汝と偕にありて汝をたすけ汝を救へばなりとヱホバいひたまへり

我汝を惡人の手より救ひとり汝を怖るべき者の手より放つべし

第16章

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ヱホバの言また我にのぞみていふ

汝この處にて妻を娶るなかれ子女を得るなかれ

此處に生るる子女とこの地に之を生む母と之を生む父とに就てヱホバかくいひたまふ

彼らは慘しき病に死し哀まれず葬られずして糞土のごとくに田地の面にあらんまた劍と饑饉に滅されて其屍は天空の鳥と地の獸の食物とならん

ヱホバかくいひたまへり喪ある家にいる勿れまた往て之を哀み嗟く勿れそはわれ我平安と恩寵と矜恤をこの民より取ばなりとヱホバいひたまへり

大なる者も小さき者もこの地に死べし彼らは葬られずまた彼らのために哀む者なく自ら傷くる者なく髮をそる者なかるべし

またその哀むときパンをさきて其死者のために之を慰むるものなく又父あるひは母のために慰藉の杯を彼らに飮しむる者なかるべし

汝また筵宴の家にいりて偕に坐して食飮する勿れ

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ視よ汝の目の前汝の世に在るときにわれ欣喜の聲と歡樂の聲と新娶者の聲と新婦の聲とを此處に絕しめん

汝このすべての言を斯民に告るとき彼ら汝に問ふてヱホバわれらを責てこの大なる災を示したまふは何故ぞやまたわれらに何の惡事あるやわが神ヱホバに背きてわれらのなせし罪は何ぞやといはば

汝かれらに答ふべしヱホバいひたまふ是汝らの先祖われを棄て他の神に從ひこれに奉へこれを拜しまた我をすてわが律法を守らざりしによる

汝らは汝らの先祖よりも多く惡をなせりみよ汝らはおのおの自己の惡き心の剛愎なるにしたがひて我にきかず

故にわれ汝らを此の地より逐ひて汝らと汝らの先祖の識ざる地にいたらしめん汝らかしこにて晝夜ほかの神に奉へん是わが汝らを憐まざるによるなりと

ヱホバいひたまふ然ばみよ此後イスラエルの民をエジプトの地より導きいだせしヱホバは活くといふことなくして

イスラエルの民を北の地とそのすべて逐やられし地より導出せしヱホバは活くといふ日きたらん我かれらを我その先祖に與へしかれらの地に導きかへるべし

ヱホバいひたまふみよ我おほくの漁者をよび來りて彼らを漁らせまたその後おほくの獵者を呼來りて彼らを諸の山もろもろの岡および岩の穴より獵いださしめん

我目はかれらの諸の途を鑒る皆我にかくるるところなし又その惡は我目に匿れざるなり

われまづ倍して其惡とその罪に報いんそは彼らその汚れたる者の屍をもて我地を汚しその惡むべきものをもて我產業に充せばなり

ヱホバ我の力 我の城 難の時の逃場よ萬國の民は地の極より汝にきたりわれらの先祖の嗣るところの者は惟謊と虛浮事と益なき物のみなりといはん

人豈神にあらざる者をおのれの神となすべけんや

故にみよわれ此度かれらに知らしむるところあらん即ち我手と我能をかれらに知らしめん彼らは我名のヱホバなるを知るべし

第17章

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ユダの罪は鐵の筆金剛石の尖をもてしるされその心の碑と汝らの祭壇の角に鐫らるるなり

彼らはその子女をおもふが如くに靑木の下と高岡のうへなるその祭壇とアシラをおもふ

われ野に在る我山と汝の資產と汝のもろもろの財產および汝の四方の境の内なる汝の罪を犯せる崇邱を擄掠物とならしめん

わが汝にあたへし產業より汝手をはなさん又われ汝をして汝の識ざる地に於て汝の敵につかへしめんそは汝ら我をいからせて限なく燃る火を發したればなり

ヱホバかくいひたまふおほよそ人を恃み肉をその臂とし心にヱホバを離るる人は詛るべし

彼は荒野に棄られたる者のごとくならん彼は善事のきたるをみず荒野の燥きたる處鹽あるところ人の住ざる地に居らん

おほよそヱホバをたのみヱホバを其恃とする人は福なり

彼は水の旁に植たる樹の如くならん其根を河にのべ炎熱きたるも恐るるところなしその葉は靑く亢旱の年にも憂へずして絕ず果を結ぶべし

心は萬物よりも僞る者にして甚だ惡し誰かこれを知るをえんや

われヱホバは心腹を察り腎腸を試みおのおのに其途に順ひその行爲の果によりて報ゆべし

鷓鴣のおのれの生ざる卵をいだくが如く不義をもて財を獲る者あり其人は命の半にてこれに離れその終に愚なる者とならん

榮の位よ原始より高き者わが聖所たる者

イスラエルの望なるヱホバよ凡て汝を離るる者は辱められん我を棄る者は土に錄されん此はいける水の源なるヱホバを離るるによる

ヱホバよ我を醫し給へ然らばわれ愈んわれを救ひたまへさらば我救はれん汝はわが頌るものなり

彼ら我にいふヱホバの言は何にあるやいま之をのぞましめよと

われ牧者の職を退かずして汝にしたがひ又禍の日を願はざりき汝これを知りたまふ我唇よりいづる者は汝の面の前にあり

汝我を懼れしむる者となり給ふ勿れ禍の時に汝は我避場なり

我を攻る者を辱しめ給へ我を辱しむるなかれ彼らを怖れしめよ我を怖れしめ給ふなかれ禍の日を彼らに來らしめ滅亡を倍して之を滅し給ヘ

ヱホバ我にかくいひ給へり汝ゆきてユダの王等の出入する民の門及びヱルサレムの諸の門に立て

彼らにいへ此門より入る所のユダの王等とユダのすべての民とヱルサレムに住るすべての者よ汝らヱホバの言をきけ

ヱホバかくいひたまふ汝ら自ら愼め安息日に荷をたづさへてヱルサレムの門にいる勿れ

また安息日に汝らの家より荷を出す勿れ諸の工作をなす勿れ我汝らの先祖に命ぜしごとく安息日を聖くせよ

されど彼らは遵はず耳を傾けずまたその項を强くして聽ず訓をうけざるなり

ヱホバいひ給ふ汝らもし謹愼て我にきき安息日に荷をたづさへてこの邑の門にいらず安息日を聖くなして諸の工作をなさずば

ダビデの位に坐する王等牧伯たちユダの民ヱルサレムに住る者車と馬に乗てこの邑の門よりいることをえんまた此邑には限なく人すまはん

また人々ユダの邑とヱルサレムの四周およびベニヤミンの地と平地と山と南の方よりきたり燔祭 犠牲 素祭 馨香 謝祭を携へてヱホバの室にいらん

されど汝らもし我に聽ずして安息日を聖くせず安息日に荷をたづさへてヱルサレムの門にいらばわれ火をその門の内に燃してヱルサレムの殿舍を燬んその火は滅ざるべし

第18章

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ヱホバよりヱレミヤにのぞめる言いふ

汝起て陶人の屋にくだれ我かしこに於てわが言を汝に聞しめんと

われすなはち陶人の屋にくだり視るに轆轤をもて物をつくりをりしが

その泥をもて造れるところの器陶人の手のうちに傷ねたれば彼その心のままに之をもて別の器をつくれり

時にヱホバの言我にのぞみていふ

ヱホバいふイスラエルの家よこの陶人のなすが如くわれ汝になすことをえざるかイスラエルの家よ陶人の手に泥のあるごとく汝らはわが手にあり

われ急に民あるひは國をぬくべし敗るべし滅すべしといふことあらんに

もし我いひしところの國その惡を離れなば我之に災を降さんとおもひしことを悔ん

我また急に民あるいは國を立べし植べしといふことあらんに

もし其國わが目に惡く見ゆるところの事を行ひわが聲に遵はずば我これに福祉を錫へんといひしことを悔ん

汝いまユダの人々とヱルサレムに住る者にいヘヱホバかくいへり視よ我汝らに災をくださんと思ひめぐらし汝らをはかる計策を設く故に汝らおのおの其惡き途を離れ其途と行をあらためよと

しかるに彼らいふ是は徒然なりわれらは自己の圖維ところにしたがひ各自その惡き心の剛愎なるを行はんと

この故にヱホバかくいひたまふ汝ら異國のうちに問へ斯の如きことを聞し者ありやイスラエルの處女はいと驚くべきことをなせり

レバノンの雪豈野の磐を離れんや遠方より流くる冷なる水豈涸かんや

しかるに我民は我をわすれて虛き物に香を焚り是等の物彼らをその途すなはち古き途に蹶かせまた徑すなはち備なき道に行しめ

その地を荒して恒に人の笑とならしめん凡て其處を過る者は驚きてその首を搖らん

われ東風のごとくに彼らをその敵の前に散さん其滅亡の日にはわれ背を彼らに向て面をむけじ

彼らいふ去來われら計策を設てヱレミヤをはからんそれ祭司には律法あり智慧ある者には謀畧あり預言者には言ありて失ざるべし去來われら舌をもて彼を撃ちその諸の言を聽ことをせざらんと

ヱホバよ我にききたまへ又我と爭ふ者の聲をききたまへ

惡をもて善に報ゆべきものならんや彼らはわが生命をとらん爲に坑を掘れりわが汝の前に立て彼らを善く言ひ汝の憤怒を止めんとせしを憶えたまへ

さればかれらの子女を饑饉にあたへ彼らを劍の刃にわたしたまへ其妻は子を失ひ且寡となり其男は死をもて亡されその少者は劍をもて戰に殺されよかし

汝突然に敵をかれらに臨ませたまふ時號呼をその家の内より聞えしめよそは彼ら坑を掘りて我を執へんとしまた機檻を置てわが足を執へんとすればなり

ヱホバよ汝はかれらが我を殺さんとするすべての謀畧を知りたまふ其惡を赦すことなく其罪を汝の前より抹去りたまふなかれ彼らを汝の前に仆れしめよ汝の怒りたまふ時にかく彼らになしたまへ

第19章

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ヱホバかくいひたまふ往て陶人の瓦罇をかひ民の長老と祭司の長老の中より數人をともなひて

陶人の門の前にあるベンヒンノムの谷にゆき彼處に於てわが汝に告んところの言を宣よ

云くユダの王等とヱルサレムに住る者よヱホバの言をきけ萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ視よ我災を此處にくだすべし凡そ之をきく者の耳はかならず鳴らん

こは彼ら我を棄てこの處を瀆し此にて自己とその先祖およびユダの王等の知ざる他の神に香を焚き且辜なきものの血をこの處に盈せばなり

又彼らはバアルの爲に崇邱を築き火をもて己の兒子を焚き燔祭となしてバアルにささげたり此わが命ぜしことにあらず我いひしことにあらず又我心に意はざりし事なり

ヱホバいひたまふさればみよ此處をトペテまたはベンヒンノムの谷と稱ずして屠戮の谷と稱ふる日きたらん

また我この處に於てユダとヱルサレムの謀をむなしうし劍をもて彼らを其敵の前とその生命を索る者の手に仆しまたその屍を天空の鳥と地の獸の食物となし

かつ此邑を荒して人の胡盧とならしめん凡そここを過る者はその諸の災に驚きて笑ふべし

また彼らがその敵とその生命を索る者とに圍みくるしめらるる時我彼らをして己の子の肉女の肉を食はせん又彼らは互にその友の肉を食ふべし

汝ともに行く人の目の前にてその瓦罇を毀ちて彼らにいふべし

萬軍のヱホバかくいひ給ふ一回毀てば復全うすること能はざる陶人の器を毀つが如くわれ此民とこの邑を毀たんまた彼らは葬るべき地なきによりてトペテに葬られん

ヱホバいひ給ふ我この處とこの中に住る者とに斯なし此邑をトペテの如くなすべし

且ヱルサレムの室とユダの王等の室はトペテの處のごとく汚れん其は彼らすべての室の屋蓋のうへにて天の衆群に香をたき他の神に酒をそそげばなり

ヱレミヤ、ヱホバの己を遣はして預言せしめたまひしトペテより歸りきたりヱホバの室の庭に立ちすべての民に語りていひけるは

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ視よわれ我いひし諸の災をこの邑とその諸の郷村にくださん彼らその項を强くして我言を聽ざればなり

第20章

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祭司インメルの子ヱホバの室の宰の長なるパシユル、ヱレミヤがこの言を預言するをきけり

是に於てパシユル預言者ヱレミヤを打ちヱホバの室にある上のベニヤミンの門の桎梏に繋げり

翌日パシユル、ヱレミヤを桎梏より釋はなちしにヱレミヤ彼にいひけるはヱホバ汝の名をパシユルと稱ずしてマゴルミッサビブ(驚懼周圍にあり)と稱び給ふ

即ちヱホバかくいひたまふ視よわれ汝をして汝と汝のすべての友に恐怖をおこさしむる者となさん彼らはその敵の劍に仆れん汝の目はこれを見べし我またユダのすべての民をバビロン王の手に付さん彼は彼らをバビロンに移し劍をもて殺すべし

我またこの邑のすべての貨財とその得たる諸の物とその諸の珍寶とユダの王等のすべての儲蓄を其敵の手に付さん彼らはこれを掠めまた民を擄へてバビロンに移すべし

パシユルよ汝と汝の家にすめる者は悉く擄へ移されん汝はバビロンにいたりて彼處に死にかしこに葬られん汝も汝が僞りて預言せし言を聽し友もみな然らん

ヱホバよ汝われを勸めたまひてわれ其勸に從へり汝我をとらへて我に勝給へりわれ日々に人の笑となり人皆我を嘲りぬ

われ語り呼はるごとに暴逆殘虐の事をいふヱホバの言日々にわが身の恥辱となり嘲弄となるなり

是をもて我かさねてヱホバの事を宣ず又その名をもてかたらじといへり然どヱホバのことば我心にありて火のわが骨の中に閉こもりて燃るがごとくなれば忍耐につかれて堪難し

そは我おほくの人の讒をきく驚懼まはりにあり訴へよ彼を訴へん我親しき者はみな我蹶くことあらんかと窺ひて互にいふ彼誘はるることあらんしからば我儕彼に勝て仇を報ゆることをえんと

然どヱホバは强き勇士のごとくにして我と偕にいます故に我を攻る者は蹶きて勝ことをえずそのなし遂ざるが爲に大なる恥辱を取ん其羞恥は何時迄も忘られざるべし

義人を試み人の心膓を見たまふ萬軍のヱホバよ我汝に訴を申たれば我をして汝が彼らに仇を報すを見せしめよ

ヱホバに歌を謠へよヱホバを頌めよそは貧者の生命を惡者の手より救ひ給へばなり

ああ我生れし日は詛はれよ我母のわれを生し日は祝せられざれ

わが父に男子汝に生れしと告て父を大に喜ばせし人は詛はれよ

其人はヱホバの憫まずして滅したまひし邑のごとくなれよ彼をして朝に號呼をきかしめ午間に鬨聲をきかしめよ

彼我を胎のうちに殺さず我母を我の墓となさず常にその胎を大ならしめざりしが故なり

我何なれば胎をいでて艱難と憂患をかうむり恥辱をもて日を送るや

第21章

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ゼデキヤ王マルキヤの子パシユルと祭司マアセヤの子ゼパニヤをヱレミヤに遣し

バビロンの王ネブカデネザル我らを攻むれば汝われらの爲にヱホバに求めよヱホバ恒のごとくそのもろもろの奇なる跡をもて我らを助けバビロンの王を我らより退かしめたまふことあらんと曰しむ其時ヱホバの言ヱレミヤに臨めり

ヱレミヤ彼らにこたへけるは汝らゼデキヤにかく語ふべし

イスラエルの神ヱホバかくいひたまふ視よわれ汝らがこの邑の外にありて汝らを攻め圍むところのバビロン王およびカルデヤ人とたたかひて手に持ところのその武器をかへし之を邑のうちに聚めん

われ手を伸べ臂をつよくし震怒と憤恨と烈き怒をもて汝らをせむべし

我また此邑にすめる人と畜を撃ん皆重き疫病によりて死べし

ヱホバいひたまふ此後われユダの王ゼデキヤとその諸臣および民此邑に疫病と劍と饑饉をまぬかれて遺れる者をバビロンの王ネブカデネザルの手と其敵の手および凡そその生命を索る者の手に付さんバビロンの王は劍の刃をもて彼らを撃ちかれらを惜まず顧みず恤れまざるべし

汝また此民にヱホバかくいふと語るべし視よわれ生命の道と死の道を汝らの前に置く

この邑にとどまる者は劍と饑饉と疫病に死べしされど汝らを攻め圍むところのカルデヤ人に出降る者はいきん其命はおのれの掠取物となるべし

ヱホバいひたまふ我この邑に面を向しは福をあたふる爲にあらず禍をあたへんが爲なりこの邑はバビロンの王の手に付されん彼火をもて之を焚くべし

またユダの王の家に告べし汝らヱホバの言をきけ

ダビデの家よヱホバかくいふ汝朝ごとに義く鞫をなし物を奪はるる人をその暴逆者の手より救へ否ざれば汝らの行の惡によりて我怒火のごとくに發で燃て滅ざるべし

ヱホバいひたまふ谷と平原の磐とにすめる者よみよ我汝に敵す汝らは誰か降て我儕を攻んや誰かわれらの居處にいらんやといふ

我汝らをその行の果によりて罰せん又其林に火を起し其四周をことごとく焚つくすべしとヱホバいひたまふ

第22章

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ヱホバかくいひたまへり汝ユダの王の室にくだり彼處にこの言をのべていヘ

ダビデの位に坐するユダの王よ汝と汝の臣および此門よりいる汝の民ヱホバの言をきけ

ヱホバかくいふ汝ら公道と公義を行ひ物を奪はるる人をその暴虐者の手より救ひ異邦人と孤子と嫠婦をなやまし虐ぐる勿れまた此處に無辜の血を流す勿れ

汝らもし此言を眞に行はばダビデの位に坐する王とその臣および其民は車と馬に乗てこの室の門にいることをえん

然ど汝らもし此言を聽ずばわれ自己を指して誓ふ此室は荒地となるべしとヱホバいひたまふ

ヱホバ、ユダの王の家につきてかく曰たまふ汝は我におけることギレアデのごとくレバノンの巓のごとし然どわれかならず汝を荒野となし人の住はざる邑となさん

われ破壞者をまふけて汝を攻めしめん彼ら各人その武器を執り汝の美しき香柏を斫てこれを火に投いれん

多の國の人此邑をすぎ互に語てヱホバ何なれば此大なる邑にかく爲せしやといはんに

人こたへて是は彼等其神ヱホバの契約をすてて他の神を拜し之に奉へしに由なりといはん

死者の爲に泣くことなくまた之が爲に嗟くこと勿れ寧擄へ移されし者の爲にいたく嗟くべし彼は再び歸てその故園を見ざるべければなり

ユダの王ヨシヤの子シヤルム即ちその父に繼で王となりて遂に此處をいでたる者につきてヱホバかくいひたまへり彼は再び此處に歸らじ

彼はその移されし處に死んふたたび此地を見ざるべし

不義をもて其室をつくり不法をもて其樓を造り其隣人を傭て何をも與へず其價を拂はざる者は禍なるかな

彼いふ我己の爲に廣厦と涼しき樓をつくり又己の爲に窓を造り香柏をもて之を蔽ひ赤く之を塗んと

汝香柏を爭ひもちふるによりて王たるを得るか汝の父は食飮せざりしや公義と公道を行ひて福を得ざりしや

彼は貧者と患艱者の訟を理して祥をえたりかく爲すは我を識ことに非ずやとヱホバいひ給ふ

然ど汝の目と心は惟貪をなさんとし無辜の血を流さんとし虐遇と暴逆をなさんとするのみ

故にヱホバ、ユダの王のヨシヤの子ヱホヤキムにつきてかく曰たまふ衆人は哀しいかな我兄かなしいかな我姊といひて嗟かず又哀しいかな主よ哀しいかな其榮と曰て嗟かじ

彼は驢馬を埋るがごとく埋られん即ち曳れてヱルサレムの門の外に投棄らるべし

汝レバノンに登りて呼ばはりバシヤンに汝の聲を揚げアバリムより呼はれ其は汝の愛する者悉く滅されたればなり

汝の平康なる時我汝に語しかども汝は我にきかじといへり汝いとけなき時よりわが聲を聽ずこれ汝の故習なり

汝の牧者はみな風に呑つくされ汝の愛する者はとらへ移されん其時汝はおのれの諸の惡のために痛く恥べし

汝レバノンにすみ巢を香柏につくる者よ汝の劬勞子を產む婦の痛苦のごとくにきたらんとき汝の哀慘はいかにぞや

ヱホバいひたまふ我は活くユダの王ヱホヤキムの子ヱコニヤは我右の手の指環なれども我これを拔ん

われ汝の生命を索る者の手および汝が其面を畏るる者の手すなはちバビロンの王ネブカデネザルの手とカルデヤ人の手に汝を付さん

われ汝と汝を生し母を汝等がうまれざりし他の地に逐やらん汝ら彼處に死べし

彼らの靈魂のいたく歸らんことを願ふところの地に彼らは歸ることをえず

この人ヱコニヤは賤しむべき壞れたる器ならんや好ましからざる器具ならんや如何なれば彼と其子孫は逐出されてその識ざる地に投やらるるや

地よ地よ地よヱホバの言をきけ

ヱホバかくいひたまふこの人を子なくして其生命の中に榮えざる人と錄せそはその子孫のうちに榮えてダビデの位に坐しユダを治る人かさねてなかるべければなり

第23章

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ヱホバいひ給ひけるは嗚呼わが養ふ群を滅し散す牧者は禍なるかな

故にイスラエルの神ヱホバ我民を養ふ牧者につきて斯いふ汝らはわが群を散しこれを逐はなちて顧みざりき視よわれ汝らの惡き行によりて汝等に報ゆべしとヱホバいふ

われ我群の遺餘たる者をその逐はなちたる諸の地より集め再びこれを其牢に歸さん彼らは子を產て多くなるべし

我これを養ふ牧者をその上に立ん彼等はふたたび慄かず懼ずまた失じとヱホバいひたまふ

ヱホバいひたまひけるは視よわがダビデに一の義き枝を起す日來らん彼王となりて世を治め榮え公道と公義を世に行ふべし

其日ユダは救をえイスラエルは安に居らん其名はヱホバ我儕の義と稱らるべし

この故にヱホバいひ給ふ視よイスラエルの民をエジプトの地より導出せしヱホバは活くと人衆復いはずして

イスラエルの家の裔を北の地と其諸て逐やりし地より導出せしヱホバは活くといふ日來らん彼らは自己の地に居るべし

預言者輩のために我心はわが衷に壞れわが骨は皆震ふ且ヱホバとその聖言のためにわれは醉る人のごとく酒に勝るる人のごとし

この地は姦淫をなすもの盈ち地は呪詛によりて憂へ曠野の艸は枯る彼らの途はあしく其力は正しからず

預言者と祭司は偕に邪惡なりわれ我家に於てすら彼等の惡を見たりとヱホバいひたまふ

故にかれらの途は暗に在る滑なる途の如くならん彼等推れて其途に仆るべし我災をその上にのぞましめん是彼らが刑罰らるる年なりとヱホバいひたまふ

われサマリヤの預言者の中に愚昧なる事あるをみたり彼等はバアルに託りて預言し我民イスラエルを惑はせり

我ヱルサレムの預言者の中にも憎むべき事あるを見たり彼等は姦淫をなし詐僞をおこなひ惡人の手を堅くして人をその惡に離れざらしむ彼等みな我にはソドムのごとく其民はゴモラのごとし

この故に萬軍のヱホバ預言者につきてかくいひたまふ視よわれ茵蔯を之に食はせ毒水をこれに飮せんそは邪惡ヱルサレムの預言者よりいでて此全地に及べばなり

萬軍のヱホバかくいひたまふ汝等に預言する預言者の言を聽く勿れ彼等は汝らを欺きヱホバの口よりいでざるおのが心の默示を語るなり

常に彼らは我を藐忽ずる者にむかひて汝等平安をえんとヱホバいひたまへりといひ又己が心の剛愎なるに循ひて行むところのすべての者に向ひて災汝らに來らじといへり

誰かヱホバの議會に立て其言を見聞せし者あらんや誰か其耳を傾けて我言を聽し者あらんや

みよヱホバの暴風あり怒と旋轉風いでて惡人の首をうたん

ヱホバの怒はかれがその心の思を行ひてこれを遂げ給ふまでは息じ末の日に汝ら明にこれを曉らん

預言者等はわが遣さざるに趨り我告ざるに預言せり

彼らもし我議會に立ちしならば我民にわが言をきかしめて之をその惡き途とその惡き行に離れしめしならん

ヱホバいひ給ふ我はただ近くにおいてのみ神たらんや遠くに於ても神たるにあらずや

ヱホバいひたまふ人我に見られざる樣に密かなる處に身を匿し得るかヱホバいひたまふ我は天地に充るにあらずや

われ我名をもて謊を預言する預言者等がわれ夢を見たりわれ夢を見たりと曰ふをきけり

謊を預言する預言者等はいつまで此心をいだくや彼らは其心の詐僞を預言するなり

彼らは其先祖がバアルによりて我名を忘れしごとく互に夢をかたりて我民にわが名を忘れしめんと思ふや

夢をみし預言者は夢を語るべし我言を受し者は誠實をもて我言を語るべし糠いかで麥に比擬ことをえんやとヱホバいひたまふ

ヱホバ言たまはく我言は火のごとくならずや又磐を打碎く槌の如くならずや

故に視よわれ我言を相互に竊める預言者の敵となるとヱホバいひたまふ

視よわれは彼いひたまへりと舌をもて語るところの預言者の敵となるとヱホバいひたまふ

ヱホバいひたまひけるは視よわれ僞の夢を預言する者の敵となる彼らは之を語りまたその謊と其誇をもて我民を惑はす我かれらを遣さずかれらに命ぜざるなり故に彼らは斯民に益なしとヱホバいひ給ふ

この民或は預言者又は祭司汝に問てヱホバの重負は何ぞやといはば汝彼等にこたへてヱホバの重負は我汝等を棄んとヱホバの云たまひし事是なりといふべし

ヱホバの重負といふところの預言者と祭司と民には我その人と其家にこれを降さん

汝らはおのおの斯互に言ひその兄弟にいふべしヱホバは何と應へたまひしやヱホバは何と云たまひしやと

汝ら復びヱホバの重負といふべからず人の重負となる者は其人の言なるべし汝らは活る神萬軍のヱホバなる我らの神の言を枉るなり

汝かく預言者にいふべしヱホバは汝に何と答へ給ひしやヱホバは何といひたまひしやと

汝らもしヱホバの重負といはばヱホバそれにつきてかくいひたまふ我人を汝らに遣して汝等ヱホバの重負といふべからずといはしむるも汝らはヱホバの重負といふ此言をいふによりて

われ必ず汝らを忘れ汝らと汝らの先祖にあたへし此邑と汝らとを我前より棄ん

且われ永遠の辱と永遠なる忘らるることなき恥を汝らにかうむらしめん

第24章

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バビロンの王ネブカデネザル、ユダの王ヱホヤキムの子ヱコニヤおよびユダの牧伯等と木匠と鐵匠をヱルサレムよりバビロンに移せしのちヱホバ我にヱホバの殿の前に置れたる二筐の無花果を示したまへり

その一の筐には始に熟せしがごとき至佳き無花果ありその一の筐にはいと惡くして食ひ得ざるほどなる惡き無花果あり

ヱホバ我にいひ給ひけるはヱレミヤよ汝何を見しや我答へけるは無花果なりその佳き無花果はいと佳しその惡きものは至惡しくして食ひ得ざるほどに惡し

ヱホバの言また我にのぞみていふ

イスラエルの神ヱホバかくいふ我わが此處よりカルデヤ人の地に逐ひやりしユダの虜人を此佳き無花果のごとくに顧みて惠まん

我彼等に目をかけて之をめぐみ彼らを此地にかへし彼等を建て仆さず植て拔じ

我彼らに我のヱホバなるを識るの心をあたへん彼等我民となり我彼らの神とならん彼等は一心をもて我に歸るべし

ヱホバかくいひたまへり我ユダの王ゼデキヤとその牧伯等およびヱルサレムの人の遺りて此地にをる者ならびにエジプトの地に住る者とを此惡くして食はれざる惡き無花果のごとくになさん

我かれらをして地のもろもろの國にて虐遇と災害にあはしめん又彼らをしてわが逐やらん諸の處にて辱にあはせ諺となり嘲と詛に遭しめん

われ劍と饑饉と疫病をかれらの間におくりて彼らをしてわが彼らとその先祖にあたへし地に絕るにいたらしめん

第25章

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ユダの王ヨシヤの子ヱホヤキムの四年バビロンの王ネブカデネザルの元年にユダのすべての民にかかはる言ヱレミヤにのぞめり

預言者ヱレミヤこの言をユダのすべての民とヱルサレムにすめるすべての者に告ていひけるは

ユダの王アモンの子ヨシヤの十三年より今日にいたるまで二十三年のあひだヱホバの言我にのぞめり我これを汝等に告げ頻にこれを語りしかども汝らきかざりし

ヱホバその僕なる預言者を汝らに遣し頻に遣したまひけれども汝らはきかず又きかんとて耳を傾けざりき

彼らいへり汝等おのおのいま其惡き途とその惡き行を棄よ然ばヱホバが汝らと汝らの先祖に與へたまひし地に永遠より永遠にいたるまで住ことをえん

汝ら他の神に從ひこれに事へこれを拜み汝らの手にて作りし物をもて我を怒らする勿れ然ば我汝らを害はじ

然ど汝らは我にきかず汝等の手にて作りし物をもて我を怒らせて自ら害へりとヱホバいひたまふ

この故に萬軍のヱホバかく云たまふ汝ら我言を聽ざれば

視よ我北の諸の族と我僕なるバビロンの王ネブカデネザルを招きよせ此地とその民と其四圍の諸國を攻滅さしめて之を詫異物となし人の嗤笑となし永遠の荒地となさんとヱホバいひたまふ

またわれ欣喜の聲 歡樂の聲 新夫の聲 新婦の聲 磐磨の音および燈の光を彼らの中にたえしめん

この地はみな空曠となり詫異物とならん又その諸國は七十年の間バビロンの王につかふべし

ヱホバいひたまふ七十年のをはりし後我バビロンの王と其民とカルデヤの地をその罪のために罰し永遠の空曠となさん

我かの地につきて我かたりし諸の言をその上に臨しめん是ヱレミヤが萬國の事につきて預言したる者にて皆この書に錄さるるなり

多の國々と大なる王等は彼らをして己につかへしめん我かれらの行爲とその手の所作に循ひてこれに報いん

イスラエルの神ヱホバかく我に云たまへり我手より此怒の杯をうけて我汝を遣はすところの國々の民に飮しめよ

彼らは飮てよろめき狂はんこは我かれらの中に劍をつかはすによりてなり

是に於てわれヱホバの手より杯をうけヱホバのわれを遣したまふところの國々の民に飮しめたり

即ちヱルサレムとユダの諸の邑とその王等およびその牧伯等に飮せてこれをほろぼし詫異物となし人の嗤笑となし詛るる者となせり今日のごとし

またエジプトの王パロと其臣僕その牧伯等その諸の民と

諸の雜種の民およびウズの諸の王等およびペリシテ人の地の諸の王等アシケロン、ガザ、エクロン、アシドドの遺餘の者

エドム、モアブ、アンモンの子孫

ツロのすべての王等シドンのすべての王等海のかなたの島々の王等

デダン、テマ、ブズおよびすべて鬚をそる者

アラビヤのすべての王等曠野の雜種の民の諸の王等

ジムリの諸の王等エラムの諸の王等メデアのすべての王等

北のすべての王等その彼と此とにおいて或は遠者或は近きもの凡地の面にある世の國々の王等はこの杯を飮んセシヤク王はこれらの後に飮べし

故に汝かれらに語ていへ萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ我汝等の中に劍を遣はすによりて汝らは飮みまた醉ひまた吐き又仆て再び起ざれと

彼等もし汝の手より此杯を受て飮ずば汝彼らにいへ萬軍のヱホバかくいひたまふ汝ら必ず飮べし

視よわれ我名をもて稱へらるるこの邑にすら災を降すなり汝らいかで罰を免るることをえんや汝らは罰を免れじ蓋われ劍をよびて地に住るすべての者を攻べければなりと萬軍のヱホバいひたまふ

汝彼等にこの諸の言を預言していふべしヱホバ高き所より呼號り其聖宮より聲を出し己の住家に向てよばはり地に住る諸の者にむかひて葡萄を踐む者のごとく咷たまはん

號咷地の極まで聞ゆ蓋ヱホバ列國と爭ひ萬民を審き惡人を劍に付せば也とヱホバ曰たまへり

萬軍のヱホバかく曰たまふ視よ災いでて國より國にいたらん大なる暴風地の極よりおこるべし

其日ヱホバの戮したまふ者は地の此極より地の彼の極に及ばん彼等は哀まれず殮められず葬られずして地の面に糞土とならん

牧者よ哭き叫べ群の長等よ汝ら灰の中に轉ぶべし蓋汝らの屠らるる日滿れば也我汝らを散すべければ汝らは貴き器のごとく堕べし

牧者は避場なく群の長等は逃る處なし

牧者の呼號の聲と群の長等の哀哭きこゆ蓋ヱホバ其牧場を滅したまへば也

ヱホバの烈き怒によりて平安なる牧場は滅さる

彼は獅子の如く其巢を出たり滅す者の怒と其烈き忿によりて彼らの地は荒されたり

第26章

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ユダの王ヨシヤの子ヱホヤキムが位に即し初のころヱホバより此言いでていふ

ヱホバかくいふ汝ヱホバの室の庭に立我汝に命じていはしむる諸の言をユダの邑々より來りてヱホバの室に拜をする人々に告よ一言をも減す勿れ

彼等聞ておのおの其惡き途を離るることあらん然ば我かれらの行の惡がために災を彼らに降さんとせることを悔べし

汝彼等にヱホバかくいふといへ汝等もし我に聽ずわが汝らの前に置し律法を行はず

我汝らに遣し切に遣せし我僕なる預言者の言を聽ずば(汝らは之をきかざりき)

我この室をシロの如くになし又この邑を地の萬國に詛はるる者となすべし

祭司と預言者及び民みなヱレミヤがヱホバの室に立てこの言をのぶるをきけり

ヱレミヤ、ヱホバに命ぜられし諸の言を民に告畢りしとき祭司と預言者および諸の民彼を執へいひけるは汝は必ず死べし

汝何故にヱホバの名をもて預言し此室はシロの如くになりこの邑は荒蕪となりて住む者なきにいたらんと云しやと民みなヱホバの室にあつまりてヱレミヤを攻む

ユダの牧伯等この事をききて王の家をいでヱホバの室にのぼりてヱホバの家の新しき門の入口に坐せり

祭司と預言者等牧伯等とすべての民に訴ていふ此人は死にあたる者なり是は汝らが耳に聽しごとくこの邑にむかひて惡き預言をなしたるなり

是に於てヱレミヤ牧伯等とすべての民にいひけるはヱホバ我を遣し汝らが聽る諸の言をもて此宮とこの邑にむかひて預言せしめたまふ

故に汝らいま汝らの途と行爲をあらためて汝らの神ヱホバの聲にしたがへ然ばヱホバ汝らに災を降さんとせしことを悔たまふべし

みよ我は汝らの手にあり汝らの目に善とみゆるところ義とみゆることを我に行へ

然ど汝ら善くこれを知れ汝らもし我を殺さば必ず無辜ものの血なんぢらの身とこの邑と其中に住る者に歸せんヱホバ我を遣してこの諸の言を汝らの耳につげしめたまひしなればなり

牧伯等とすべての民すなはち祭司と預言者にいひけるは此人は死にあたる者にあらず是は我らの神ヱホバの名によりて我儕に語りしなりと

時にこの地の長老數人立て民のすべての集れる者につげていひけるは

ユダの王ヒゼキヤの代にモレシテ人ミカ、ユダの民に預言して云けらく萬軍のヱホバかくいひ給ふシオンは田地のごとく耕されヱルサレムは邱墟となり此室の山は樹深き崇邱とならんと

ユダの王ヒゼキヤとすべてのユダ人は彼を殺さんとせしことありしやヒゼキヤ、ヱホバを畏れヱホバに求ければヱホバ彼らに降さんと告給ひし災を悔給ひしにあらずや我儕かく爲すは自己の靈魂をそこなふ大なる惡をなすなり

又前にヱホバの名をもて預言せし人あり即ちキリヤテヤリムのシマヤの子ウリヤなり彼ヱレミヤの凡ていへるごとく此邑とこの地にむかひて預言せり

ヱホヤキム王と其すべての勇士とすべての牧伯等その言を聽り是において王彼を殺さんと欲ひしがウリヤこれをきき懼てエジプトに逃ゆきしかば

ヱホヤキム王人をエジプトに遣せり即ちアクボルの子エルナタンに數人をそへてエジプトにつかはしければ

彼らウリヤをエジプトより引出しヱホヤキム王の許に携きたりしに王劍をもて之を殺し其屍骸を賤者の墓に棄させたりと

時にシヤパンの子アヒカム、ヱレミヤをたすけこれを民の手にわたして殺さざらしむ

第27章

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ユダの王ヨシヤの子ヱホヤキムが位に即し初のころヱホバより此言ヱレミヤに臨みていふ

すなはちヱホバかく我に云たまへり汝索と軛をつくりて汝の項に置き

之をヱルサレムにきたりてゼデキヤ王にいたるところの使臣等の手によりてエドムの王モアブの王アンモン人の王ツロの王シドンの王に送るべし

汝彼らに命じて其主にいはしめよ萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ汝ら其主にかく告べし

われ我大なる能力と伸たる臂をもて地と地の上にをる人と獸とをつくり我心のままに地を人にあたへたり

いま我この諸の地を我僕なるバビロンの王ネブカデネザルの手にあたへ又野の獸を彼にあたへてかれにつかへしむ

かれの地の時期いたるまで萬國民は彼と其子とその孫につかへん其時いたらばおほくの國と大なる王は彼を己に事へしむべし

バビロンの王ネブカデネザルに事へずバビロンの王の軛をその項に負ざる國と民は我彼の手をもて悉くこれを滅すまで劍と饑饉と疫病をもてこれを罰せんとヱホバいひたまふ

故に汝らの預言者なんぢらの占筮師汝らの夢みる者汝らの法術士汝らの魔法士汝らに告て汝らはバビロンの王に事ふることあらじといふとも聽なかれ

彼らは謊を汝らに預言して汝らをその國より遠く離れしめ且我をして汝らを逐しめ汝らを滅さしむるなり

然どバビロンの王の軛をその項に負ふて彼に事ふる國々の人は我これをその故土に存し其處に耕し住しむべしとヱホバいひたまふ

我この諸の言のごとくユダの王ゼデキヤに告ていひけるは汝らバビロンの王の軛を汝らの項に負ふて彼と其民につかへよ然ば生べし

汝と汝の民なんぞヱホバがバビロンの王につかへざる國につきていひたまひし如く劍と饑饉と疫病に死ぬべけんや

故に汝らはバビロンの王に事ふることあらじと汝等に告る預言者の言を聽なかれ彼らは謊を汝らに預言するなり

ヱホバいひたまひけるは我彼らを遣さざるに彼らは我名をもて謊を預言す是をもて我汝らを逐はなち汝らと汝らに預言する預言者等を滅すにいたらん

我また祭司とこのすべての民に語りていひけるはヱホバかくいひたまふ視よヱホバの室の器皿いま速にバビロンより持歸さるべしと汝らに預言する預言者の言をきく勿れそは彼ら謊を汝らに預言すればなり

汝ら彼らに聽なかれバビロンの王に事へよ然ば生べしこの邑を何ぞ荒蕪となすべけんや

もし彼ら預言者にしてヱホバの言かれらの衷にあらばヱホバの室とユダの王の家とヱルサレムとに餘れるところの器皿のバビロンに移されざることを萬軍のヱホバに求むべきなり

萬軍のヱホバ柱と海と臺およびこの邑に餘れる器皿につきてかくいひたまふ

是はバビロンの王ネブカデネザルがユダの王ヱホヤキムの子ヱコニヤおよびユダとヱルサレムのすべての牧伯等をヱルサレムよりバビロンにとらへ移せしときに掠ざりし器皿なり

すなはち萬軍のヱホバ、イスラエルの神ヱホバの室とユダの王の室とヱルサレムとに餘れる器皿につきてかくいひたまふ

これらはバビロンに携へゆかれ我これを顧る日まで彼處にあらん其後我これを此處にたづさへ歸らしめんとヱホバいひたまふ

第28章

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この年すなはちユダの王ゼデキヤが位に即し初その四年の五月ギベオンのアズルの子なる預言者ハナニヤ、ヱホバの室にて祭司と凡の民の前にて我に語りいひけるは

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ我バビロンの王の軛を摧けり

二年の内にバビロンの王ネブカデネザルがこの處より取てバビロンに携へゆきしヱホバの室の器皿を再び悉くこの處に歸らしめん

我またユダの王ヱホヤキムの子ヱコニヤおよびバビロンに住しユダのすべての擄人をこの處に歸らしめんそは我バビロンの王の軛を摧くべければなりとヱホバいひたまふ

是に於て預言者ヱレミヤ、ヱホバの家に立る祭司の前とすべての民の前にて預言者ハナニヤと語ふ

預言者ヱレミヤすなはちいひけるはアーメン願くはヱホバかくなし給へ願くはバビロンに携へゆかれしヱホバの室の器皿及びすべて虜へうつされし者をヱホバ、バビロンより復びこの處に歸らしめたまはんと汝の預言せし言の成らんことを

然ど汝いま我なんぢの耳と諸の民の耳に語らんとする此言をきけ

我と汝の先にいでし預言者は古昔より多くの地と大なる國につきて戰鬪と災難と疫病の事を預言せり

泰平を預言するところの預言者は若しその預言者の言とげなばその誠にヱホバの遣はしたまへる者なること知らるべし

ここに於て預言者ハナニヤ預言者ヱレミヤの項より軛を取てこれを摧けり

ハナニヤ諸の民の前にて語りヱホバかくいひたまふわれ二年のうちに是の如く萬國民の項よりバビロン王ネブカデネザルの軛を摧きはなさんといふ預言者ヱレミヤ遂に去りぬ

預言者ハナニヤ預言者ヱレミヤの項より軛を摧きはなせし後ヱホバの言ヱレミヤに臨みていふ

汝ゆきてハナニヤにヱホバかくいふと告よ汝木の軛を摧きたれども之に代て鐵の軛を作れり

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいふ我鐵の軛をこの萬國民の項に置きてバビロンの王ネブカデネザルに事へしむ彼ら之につかへんわれ野の獸をもこれに與へたり

また預言者ヱレミヤ預言者ハナニヤにいひけるはハナニヤよ請ふ聽けヱホバ汝を遣はし給はず汝はこの民に謊を信ぜしむるなり

是故にヱホバいひ給ふ我汝を地の面よりのぞかん汝ヱホバに叛くことを敎ふるによりて今年死ぬべしと

預言者ハナニヤはこの年の七月死ねり

第29章

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預言者ヱレミヤ、ヱルサレムより書をかの擄へうつされて餘れるところの長老および祭司と預言者ならびにネブカデネザルがヱルサレムよりバビロンに移したるすべての民に送れり

是より先ヱコニヤ王と王后と寺人およびユダとヱルサレムの牧伯等および木匠と鐵匠はヱルサレムをされり

ヱレミヤその書をシヤパンの子エラサおよびヒルキヤの子ゲマリヤ即ちユダの王ゼデキヤがバビロンにつかはしてバビロンの王ネブカデネザルにいたらしむる者の手によりて送れり其書にいはく

萬軍のヱホバ、イスラエルの神すべて擄うつされし者即ち我ヱルサレムよりバビロンに移さしめし者にかくいふ

汝ら屋を建てこれに住ひ圃をつくりてその果をくらへ

妻を娶て子女をうみ又汝らの子に媳を娶り汝らの女を嫁がしめ彼らに子女を生しめよ此は汝等かしこに減ずして增んがためなり

我汝らを擄移さしめしところの邑の安を求めこれが爲にヱホバにいのれその邑の安によりて汝らもまた安をうればなり

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ汝らの中の預言者と卜筮士に惑はさるる勿れまた汝ら自ら作りしところの夢に聽したがふ勿れ

そは彼ら我名をもて謊を汝らに預言すればなり我彼らを遣さずヱホバいひたまふ

ヱホバかくいひたまふバビロンに於て七十年滿なばわれ汝らを眷み我嘉言を汝らになして汝らをこの處に歸らしめん

ヱホバいひたまふ我が汝らにむかひて懷くところの念は我これを知るすなはち災をあたへんとにあらず平安を與へんとおもひ又汝らに後と望をあたへんとおもふなり

汝らわれに龥はり往て我にいのらん我汝らに聽べし

汝らもし一心をもて我を索めなば我に尋ね遇はん

ヱホバいひたまふ我汝らの遇ところとならんわれ汝らの俘擄を解き汝らを萬國よりすべて我汝らを逐やりし處より集め且我汝らをして擄らはれて離れしめしその處に汝らをひき歸らんとヱホバいひたまふ

ヱホバわれらの爲にバビロンに於て預言者を立たまひしと汝らはいふ

ダビデの位に坐する王とこの邑に住るすべての民汝らと偕にとらへ移されざりし兄弟につきてヱホバかくいひたまふ

萬軍のヱホバかくいふ視よわれ劍と饑饉と疫病を彼らにおくり彼らを惡くして食はれざる惡き無花果のごとくになさん

われ劍と饑饉と疫病をもて彼らを逐ひまた彼らを地の萬國にわたして虐にあはしめ我彼らを逐やる諸國に於て呪詛となり詫異となり人の嗤笑となり恥辱とならしめん

是彼ら我言を聽ざればなりとヱホバいひたまふ我この言を我僕なる預言者によりて遣り頻におくれども汝ら聽ざるなりとヱホバいひたまふ

わがヱルサレムよりバビロンにおくりし諸の俘擄人よ汝らヱホバの言をきけ

我名をもて謊を汝らに預言するコラヤの子アハブとマアセヤの子ゼデキヤにつきて萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいふ視よわれ彼らをバビロンの王ネブカデネザルの手に付さん彼これを汝らの目の前に殺すべし

バビロンにあるユダの俘擄人は皆彼らをもて詛となし願くはヱホバ汝をバビロンの王が火にて焚しゼデキヤとアハブのごとき者となしたまはん事をといふ

こは彼らイスラエルの中に惡をなし鄰の妻を犯し且我彼らに命ぜざる謊の言をわが名をもて語りしによる我これを知りまた證すとヱホバいひたまふ

汝ネヘラミ人シマヤにかく語りいふべし

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいふ汝おのれの名をもて書をヱルサレムにある諸の民と祭司マアセヤの子ゼパニヤおよび諸の祭司に送りていふ

ヱホバ汝を祭司ヱホヤダに代て祭司となし汝らをヱホバの室の監督となしたまふ此すべて狂妄ひ且みづから預言者なりといふ者を獄と桎梏につながしめんためなり

然るに汝いま何故に汝らにむかひてみづから預言者なりといふところのアナトテのヱレミヤを斥責めざるや

そは彼バビロンにをる我儕に書を送り時尚長ければ汝ら家を建て之に住ひ圃をつくりてその實をくらへといへり

祭司ゼパニヤこの書を預言者ヱレミヤに讀きかせたり

時にヱホバの言ヱレミヤにのぞみていふ

諸の俘擄人に書をおくりて云べしネヘラミ人シマヤの事につきてヱホバかくいふ我シマヤを遣はさざるに彼汝らに預言し汝らに謊を信ぜしめしによりて

ヱホバかくいふ視よ我ネヘラミ人シマヤと其子孫を罰すべし彼ヱホバに逆くことを敎へしによりて此民のうちに彼に屬する者一人も住ふことなからん且我民に吾がなさんとする善事をみざるべしとヱホバいひたまふ

第30章

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ヱホバよりヱレミヤにのぞめる言いふ

イスラエルの神ヱホバかく告ていふ我汝に言し言をことごとく書に錄せ

ヱホバいふわれ我民イスラエルとユダの俘囚人を返す日きたらんヱホバこれをいふ我彼らをその先祖にあたへし地にかへらしめん彼らは之をたもたん

ヱホバのイスラエルとユダにつきていひたまひし言は是なり

ヱホバかくいふ我ら戰慄の聲をきく驚懼あり平安あらず

汝ら子を產む男あるやを尋ね觀よ我男が皆子を產む婦のごとく手をその腰におき且その面色皆靑く變るをみるこは何故ぞや

哀しいかなその日は大にして之に擬ふべき日なし此はヤコブの患難の時なり然ど彼はこれより救出されん

萬軍のヱホバいふ其日我なんぢの項よりその軛をくだきはなし汝の繩目をとかん異邦人は復彼を使役はざるべし

彼らは其神ヱホバと我彼らの爲に立んところの其王ダビデにつかふべし

ヱホバいふ我僕ヤコブよ懼るる勿れイスラエルよ驚く勿れ我汝を遠方より救ひかへし汝の子孫を其とらへ移されし地より救ひかへさんヤコブは歸りて平穩と寧靜をえん彼を畏れしむる者なかるべし

ヱホバいふ我汝と偕にありて汝を救はん設令われ汝を散せし國々を悉く滅しつくすとも汝をば滅しつくさじされど我道をもて汝を懲さん汝を全たく罰せずにはおかざるべし

ヱホバかくいふ汝の創は愈ず汝の傷は重し

汝の訟を理す者なく汝の創を裹む膏藥あらず

汝の愛する者は皆汝を忘れて汝を求めず是汝の愆の多きと罪の數多なるによりて我仇敵の撃がごとく汝を撃ち嚴く汝を懲せばなり

何ぞ汝の創のために叫ぶや汝の患は愈ることなし汝の愆の多きと罪の數多なるによりて我これを汝になすなり

然どすべて汝を食ふ者は食はれすべて汝を虐ぐる者は皆とらはれ汝を掠むる者は掠められん凡て汝の物を奪ふ者は我これをして奪はるる事にあはしむべし

ヱホバいふ我汝に膏藥を貼り汝の傷を醫さんそは人汝を棄られし者とよび尋る者なきシオンといへばなり

ヱホバかくいふ視よわれかの擄移されたるヤコブの天幕をかへし其住居をあはれまん斯邑はその故の丘垤に建られん城には宜き樣に人住はん

感謝と歡樂者の聲とその中よりいでん我かれらを增ん彼ら少からじ我彼らを崇せん彼ら藐められじ

其子は疇昔のごとくあらん其集會は我前に固く立ん凡かれを虐ぐる者は我これを罰せん

其首領は本族よりいで其督者はその中よりいでん我彼をちかづけ彼に近かん誰かその生命を繋て我に近くものあらんやとヱホバいふ

汝等は我民となり我は汝らの神とならん

みよヱホバの暴風あり怒と旋轉風いでて惡人の首をうたん

ヱホバの烈き忿はかれがその心の思を行ひてこれを遂るまでは息じ末の日に汝ら明にこれを曉らん

第31章

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ヱホバいひたまふ其時われはイスラエルの諸の族の神となり彼らは我民とならん

ヱホバかくいひたまふ劍をのがれて遺りし民は曠野の中に恩を獲たりわれ往て彼イスラエルに安息をあたへん

遠方よりヱホバ我に顯れていひたまふ我窮なき愛をもて汝を愛せり故にわれたえず汝をめぐむなり

イスラエルの童女よわれ復び汝を建ん汝は建らるべし汝ふたたび鼗をもて身を飾り歡樂者の舞にいでん

汝また葡萄の樹をサマリヤの山に植ん植る者は植てその果を食ふことをえん

エフライムの山の上に守望者の立て呼はる日きたらんいはく汝ら起よ我らシオンにのぼりて我儕の神ヱホバにまうでんと

ヱホバかくいひたまふ汝らヤコブの爲に歡びて呼はり萬國の首なる者のために叫べ汝ら示し且歌ひて言ヘヱホバよ願くはイスラエルの遺れる者汝の民を救ひたまへと

みよ我彼らを北の地よりひきかへり彼らを地の極より集めん彼らの中には瞽者 跛者 孕める婦 子を產みし婦ともに居る彼らは大なる群をなして此處にかへらん

彼ら悲泣來らん我かれらをして祈禱をもて來らしめ直くして蹶かざる途より水の流に歩みいたらしめん我はイスラエルの父にしてエフライムは我長子なればなり

萬國の民よ汝らヱホバの言をきき之を遠き諸島に示していヘイスラエルを散せしものこれを聚め牧者のその群を守るが如く之を守らん

すなはちヱホバ、ヤコブを贖ひ彼等よりも強き者の手よりかれを救出したまへり

彼らは來てシオンの頂によばはりヱホバの賜ひし福なる麥と酒と油および若き羊と牛の爲に寄集はんその靈魂は灌ふ園のごとくならん彼らは重て愁ふること無るべし

その時童女は舞てたのしみ壯者と老者もろともに樂しまん我かれらの悲をかへて喜となしかれらの愁をさりてこれを慰さめん

われ膏をもて祭司の心を飫しめ我恩をもて我民に滿しめんとヱホバ言たまふ

ヱホバかくいひたまふ歎き悲みいたく憂ふる聲ラマに聞ゆラケルその兒子のために歎きその兒子のあらずなりしによりて慰をえず

ヱホバかくいひ給ふ汝の聲を禁て哭こと勿れ汝の目を禁て涙を流すこと勿れ汝の工に報あるべし彼らは其敵の地より歸らんとヱホバいひたまふ

汝の後の日に望あり兒子等その境に歸らんとヱホバいひたまふ

われ固にエフライムのみづから歎くをきけり云く汝は我を懲しめたまふ我は軛に馴ざる犢のごとくに懲治を受たりヱホバよ汝はわが神なれば我を牽轉したまへ然ば我轉るべし

われ轉りし後に悔い敎を承しのちに我髀を撃つ我幼時の羞を身にもてば恥ぢかつ辱しめらるるなりと

ヱホバいひたまふエフライムは我愛するところの子悦ぶところの子ならずや我彼にむかひてかたるごとに彼を念はざるを得ず是をもて我膓かれの爲に痛む我必ず彼を恤むべし

汝のために指路號を置き汝のために柱をたてよ汝のゆける道なる大路に心をとめよイスラエルの童女よ歸れこの汝の邑々にかへれよ

違ける女よ汝いつまで流蕩ふやヱホバ新しき事を地に創造らん女は男を抱くべし

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひ給ふ我かの俘囚し者を返さん時人々復ユダの地とその邑々に於て此言をいはん義き居所よ聖き山よ願くはヱホバ汝を祝みたまへと

ユダとその諸の邑々に農夫と群を牧ふもの偕に住はん

われ疲れたる靈魂を飫しめすべての憂ふる靈魂をなぐさむるなり

茲にわれ目を醒しみるに我眠は甘かりし

ヱホバいひたまふ視よ我が人の種と畜の種とをイスラエルの家とユダの家とに播く日いたらん

我彼らを拔き毀ち覆し滅し難さんとうかがひし如くまた彼らを建て植ゑんとうかがふべしとヱホバいひ給ふ

その時彼らは父が酸き葡萄を食ひしによりて兒子の齒齪くと再びいはざるべし

人はおのおの自己の惡によりて死なん凡そ酸き葡萄をくらふ人はその齒齪く

ヱホバいひたまふみよ我イスラエルの家とユダの家とに新しき契約を立つる日きたらん

この契約は我彼らの先祖の手をとりてエジプトの地よりこれを導きいだせし日に立しところの如きにあらず我かれらを娶りたれども彼らはその我契約を破れりとヱホバいひたまふ

然どかの日の後に我イスラエルの家に立んところの契約は此なり即ちわれ我律法をかれらの衷におきその心の上に錄さん我は彼らの神となり彼らは我民となるべしとヱホバいひたまふ

人おのおの其隣とその兄弟に敎へて汝ヱホバを識と復いはじそは小より大にいたるまで悉く我をしるべければなりとヱホバいひたまふ我彼らの不義を赦しその罪をまた思はざるべし

ヱホバかく言すなはち是日をあたへて晝の光となし月と星をさだめて夜の光となし海を激してその濤を鳴しむる者その名は萬軍のヱホバと言なり

ヱホバいひたまふもし此等の規律我前に廢らばイスラエルの子孫も我前に廢りて永遠も民たることを得ざるべし

ヱホバかくいひたまふ若し上の天量ることを得下の地の基探ることをえば我またイスラエルのすべての子孫を其もろもろの行のために棄べしヱホバこれをいふ

ヱホバいひたまふ視よ此邑ハナネルの塔より隅の門までヱホバの爲に建つ日きたらん

量繩ふたたび直ちにガレブの岡をこえゴアテの方に轉るべし

屍と灰の谷またケデロンの溪にいたるまでと東の方の馬の門の隅にいたるまでの諸の田地皆ヱホバの聖き處となり永遠におよぶまで再び拔れまた覆さるる事なかるべし

第32章

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ユダの王ゼデキヤの十年即ちネブカデネザルの十八年の頃ヱホバの言ヱレミヤにのぞめり

その時バビロンの軍勢ヱルサレムを攻環み居て預言者ヱレミヤはユダの王の室にある獄の庭の内に禁錮られたり

ユダの王ゼデキヤ彼を禁錮ていひけるは汝何故に預言してヱホバかく云たまふといふや云く視よ我この邑をバビロン王の手に付さん彼之を取るべし

またユダの王ゼデキヤはカルデヤ人の手より脱れず必ずバビロン王の手に付され口と口とあひ語り目と目あひ觀るべし

彼ゼデキヤをバビロンに携きゆかんゼデキヤはわが彼を顧る時まで彼處に居んとヱホバいひたまふ汝らカルデヤ人と戰ふとも勝ことを得じと

ヱレミヤいふヱホバの言われに臨みていはく

みよ汝の叔父シヤルムの子ハナメル汝にきたりていはん汝アナトテに在るわが田地を買へそは之を贖ふ事は汝の分なればなりと

かくてヱホバの言のごとく我叔父の子ハナメル獄の庭にて我に來り云けるは願くは汝ベニヤミンの地のアナトテに在るわが田地を買へそは之を嗣ぎこれを贖ふことは汝の分なれば汝みつからこれを買ひとれとここに於てわれ此はヱホバの言なりと知りたれば

我叔父の子ハナメルがアナトテにもてる田地をかひて彼に銀十七シケルを稱てあたふ

すなはち我その契劵を書てこれに封印し證人をたて權衡をもて銀を稱て與ふ

而してわれその約定をのするところの封印せし買劵とその開きたるものを取り

わが叔父の子ハナメルと買劵に印せし證人の前および獄の庭に坐するユダ人の前にてその買劵をマアセヤの子なるネリヤの子バルクに與へ

彼らの前にてわれバルクに命じていひけるは

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かく云たまふ汝これらの契劵すなはち此買劵の封印せし者と開きたるものを取り之を瓦器の中に貯へて多くの日の間保たしめよ

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふそは此地に於て人復屋と田地と葡萄園を買ふにいたらんと

われ買契をネリヤの子バルクに付せしのちヱホバに祈りて云ひけるは

嗚呼主ヱホバよ汝はその大なる能力と伸たる腕をもて天と地を造りたまへり汝には爲す能はざるところなし

汝は恩寵を千萬人に施し又父の罪をその後の子孫の懷に報いたまふ汝は大なる全能の神にいまして其名は萬軍のヱホバとまうすなり

汝の謀略は大なり汝は事をなすに能あり汝の目は人のこどもらの諸の途を鑒はしおのおのの行に循ひその行爲の果によりて之に報いたまふ

汝休徴と奇跡をエジプトの地に行ひたまひて今日にまでいたるまたイスラエルと他の民の中にも然りかくして今日のごとくに汝の名を揚たまへり

汝は休徴と奇跡と強き手と伸たる腕と大なる怖しき事をもて汝の民イスラエルをエジプトの地より導きいだし

この地を彼らにたまへり是即ち汝がかれらの先祖等に與へんと誓ひたまひし乳と蜜の流るる地なり

彼等すなはち入てこれを獲たりしかども汝の聲に遵はず汝の例典を行はず凡て汝がなせと命じたまひし事を爲ざりしによりて汝この災を其上にくだらしむ

みよ壘成れり是この邑を取んとて來れるなり劍と饑饉と疫病のためにこの邑は之を攻むるカルデヤ人の手に付さる汝のいひたまひしことば旣に成れり汝之を見たまふなり

主ヱホバよ汝われに銀をもて田地を買へ證人を立よといひたまへり然るにこの邑はカルデヤ人の手に付さる

時にヱホバの言ヱレミヤに臨みていふ

みよ我はヱホバなりすべて血氣ある者の神なり我に爲す能はざるところあらんや

故にヱホバかくいふ視よわれ此邑をカルデヤ人の手とバビロンの王ネブカデネザルの手に付さん彼これを取るべし

この邑を攻るところのカルデヤ人きたり火をこの邑に放ちて之を焚ん屋蓋のうへにて人がバアルに香を焚き他の神に酒をそそぎて我を怒らせしその屋をも彼ら亦焚ん

そはイスラエルの子孫とユダの子孫はその幼少時よりわが前に惡き事のみをなしまたイスラエルの民はその手の作爲をもて我をいからする事のみをなしたればなりヱホバ之をいふ

此邑はその建し日より今日にいたるまで我震怒を惹き我憤恨をおこすところの者なれば我前よりわれ之を除かんとするなり

こはイスラエルの民とユダの民諸の惡を行ひて我を怒らせしによりてなり彼らその王等その牧伯等その祭司その預言者およびユダの人々とヱルサレムに住る者皆然なせり

彼ら背を我にむけて面を我にむけずわれ彼らををしへ頻に敎ふれどもかれらは敎をきかずしてうけざるなり

彼らは憎むべき物をわが名をもて稱へらるる室にたてて之を汚し

又ベンヒンノムの谷にあるバアルの崇邱を築きその子女をモロクに献げたりわれは彼らにこの憎むべきことを行ひてユダに罪を犯さしむることを命ぜず斯る事は我心におこらざりしなり

いまイスラエルの神ヱホバこの邑すなはち汝らが劍と饑饉と疫病のためにバビロン王の手に付されんといひしところの邑につきて斯いひたまふ

みよわれ我震怒と憤恨と大なる怒をもて彼らを逐やりし諸の國より彼らを集め此處に導きかへりて安然に居らしめん

彼らは我民となり我は彼らの神とならん

われ彼らに一の心と一の途をあたへて常に我を畏れしめんこは彼らと其子孫とに福をえせしめん爲なり

われ彼らを棄ずして恩を施すべしといふ永遠の契約をかれらにたて我を畏るるの畏をかれらの心におきて我を離れざらしめん

われ悦びて彼らに恩を施し心を盡し精神をつくして誠に彼らを此地に植べし

ヱホバかくいひたまふわれ此諸の大なる災をこの民に降せしごとくわがかれらに言し諸の福を彼等に降さん

人衆この地に田野を買はん是汝等が荒て人も畜もなきにいたりカルデヤ人の手に付されしといへる地なり

人衆ベニヤミンの地とヱルサレムの四周とユダの邑々と山の邑々と平地の邑々と南の方の邑々において銀をもて田野をかひ契劵を書きてこれに封印し又證人をたてんそは我かの俘囚者を歸らしむればなりとヱホバいひたまふ

第33章

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ヱレミヤ尚獄の庭に禁錮られてをる時ヱホバの言ふたたび彼に臨みていふ

事をおこなふヱホバ事をなして之を成就るヱホバ其名をヱホバと名る者かく言ふ

汝我に龢求めよわれ汝に應へん又汝が知ざる大なる事と祕密たる事とを汝に示さん

イスラエルの神ヱホバ壘と劍によりて毀たれたる此邑の室とユダの王の室につきてかくいひ給ふ

彼らカルデヤ人と戰はんとて來る是には我震怒と憤恨をもて殺すところの人々の屍體充るにいたらん我かれらの諸の惡のためにわが面をこの邑に蔽ひかくせり

視よわれ卷布と良藥をこれに持きたりて人々を醫し平康と眞實の豐厚なるをこれに示さん

我ユダの俘囚人とイスラエルの俘囚人を歸らしめ彼らを建て從前のごとくになすべし

われ彼らが我にむかひて犯せし一切の罪を潔め彼らが我にむかひて犯し且行ひし一切の罪を赦さん

此邑は地のもろもろの民の中において我がために欣喜の名となり頌美となり榮耀となるべし彼等はわが此民にほどこすところの諸の恩惠を聞ん而してわがこの邑にほどこすところの諸の恩惠と諸の福祿のために發振へ且身を動搖さん

ヱホバかくいひ給へり汝らが荒れて人もなく畜もなしといひしこの處即ち荒れて人もなく住む者もなく畜もなきユダの邑とヱルサレムの街に

再び欣喜の聲 歡樂の聲 新娶者の聲 新婦の聲および萬軍のヱホバをあがめよヱホバは善にしてその矜恤は窮なしといひて其感謝の祭物をヱホバの室に携ふる者の聲聞ゆべし蓋われこの地の俘囚人を返らしめて初のごとくになすべければなりヱホバ之をいひたまふ

萬軍のヱホバかくいひたまふ荒れて人もなく畜もなきこの處と其すべての邑々に再び牧者のその群を伏しむる牧場あるにいたらん

山の邑と平地の邑と南の方の邑とベニヤミンの地とヱルサレムの四周とユダの邑において群ふたたびその之を核ふる者の手の下を過らんとヱホバいひたまふ

ヱホバ言たまはく視よ我イスラエルの家とユダの家に語りし善言を成就ぐる日きたらん

その日その時にいたらばわれダビデの爲に一の義き枝を生ぜしめん彼は公道と公義を地に行ふべし

その日ユダは救をえヱルサレムは安らかに居らんその名はヱホバ我儕の義と稱へらるべし

ヱホバかくいひたまふイスラエルの家の位に坐する人ダビデに缺ることなかるべし

また我前に燔祭をささげ素祭を燃し恒に犠牲を献ぐる人レビ人なる祭司に絕ざるべし

ヱホバのことばヱレミヤに臨みていふ

ヱホバかくいふ汝らもし我晝につきての契約と我夜につきての契約を破りてその時々に晝も夜もなからしむることをえば

僕ダビデに吾が立し契約もまた破れその子はかれの位に坐して王となることをえざらんまたわが我に事ふるレビ人なる祭司に立し契約も破れん

天の星は數へられず濱の沙は量られずわれその如く我僕ダビデの裔と我に事ふるレビ人を增ん

ヱホバの言またヱレミヤに臨みていふ

汝この民の語りてヱホバはその選みし二の族を棄たりといふを聞ざるか彼らはかく我民を藐じてその眼にこれを國と見なさざるなり

ヱホバかくいひ給ふもしわれ晝と夜とについての契約を立ずまた天地の律法を定めずば

われヤコブと我僕ダビデとの裔をすてて再びかれの裔の中よりアブラハム、イサク、ヤコブの裔を治むる者を取ざるべし我その俘囚し者を返らしめこれを恤れむべし

第34章

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バビロンの王ネブカデネザルその全軍および己の手の下に屬するところの地の列國の人および諸の民を率てヱルサレムとその諸邑を攻めて戰ふ時ヱホバの言ヱレミヤに臨みていふ

イスラエルの神ヱホバかくいふ汝ゆきてユダの王ゼデキヤに告ていふべしヱホバかくいひたまふ視よわれ此邑をバビロン王の手に付さん彼火をもてこれを焚べし

汝はその手を脱れず必ず擒へられてこれが手に付されん汝の目はバビロン王の目をみ又かれの口は汝の口と語ふべし汝はバビロンにゆくにいたらん

然どユダの王ゼデキヤよヱホバの言をきけヱホバ汝の事につきてかくいひたまふ汝は劍に死じ

汝は安らかに死なん民は汝の先祖たる汝の先の王等の爲に香を焚しごとく汝のためにも香を焚き且汝のために嘆て嗚呼主よといはん我この言をいふとヱホバいひたまふ

預言者エレミヤすなはち此言をことごとくヱルサレムにてユダの王ゼデキヤにつげたり

時にバビロン王の軍勢はヱルサレムおよび存れるユダの諸の邑を攻めラキシとアゼカを攻て戰ひをる其はユダの諸邑のうちに是等の城の邑尚存りゐたればなり

ゼデキヤ王ヱルサレムに居る諸の民と契約を立てて彼らに釋放の事を宣示せし後ヱホバの言ヱレミヤに臨めり

その契約はすなはち人をしておのおの其僕婢なるヘブルの男女を釋たしめその兄弟なるユダヤ人を奴隸となさざらしむる者なりき

この契約をなせし牧伯等とすべての民は人おのおのその僕婢を釋ちて再び之を奴隸となすべからずといふをききて遂にそれに聽したがひてこれを釋ちしが

後に心をひるがへしてその釋ちし僕婢をひきかへりて再び之を伏從はしめて僕婢となせり

是故にヱホバの言ヱホバよりヱレミヤにのぞみて云

イスラエルの神ヱホバかくいふ我汝らの先祖をエジプトの地その奴隸たりし宅より導きいだせし時彼らと契約を立ていひけらく

汝らの兄弟なるヘブル人の身を汝らに賣たる者をば七年の終に汝らおのおのこれを釋つべし彼六年汝につかへたらば之を釋つべしと然るに汝らの先祖等は我に聽ず亦その耳を傾けざりし

然ど汝らは今日心をあらためておのおの其鄰人に釋放の事を示してわが目に正とみゆる事を行ひ且我名をもて稱へらるる室に於て我前に契約を立たり

然るに汝ら再び心をひるがへして我名を汚し各自釋ちて其心に任せしめたる僕婢をひき歸り再び之を伏從はしめて汝らの僕婢となせり

この故にヱホバかくいひたまふ汝ら我に聽ておのおの其兄弟とその鄰に釋放の事を示さざりしによりて視よわれ汝らの爲に釋放を示して汝らを劍と饑饉と疫病にわたさん我汝らをして地の諸の國にて艱難をうけしむべし

ヱホバこれを云ふ犢を兩にさきて其二個の間を過り我前に契約をたてて却つて其言に從はずわが契約をやぶる人々

即ち兩に分ちし犢の間を過りしユダの牧伯等ヱルサレムの牧伯等と寺人と祭司とこの地のすべての民を

われ其敵の手とその生命を索る者の手に付さんその屍體は天空の鳥と野の獸の食物となるべし

且われユダの王ゼデキヤとその牧伯等をその敵の手其生命を索むる者の手汝らを離れて去しバビロン王の軍勢の手に付さん

ヱホバいひたまふ視よ我彼らに命じて此邑に歸らしめん彼らこの邑を攻て戰ひ之を取り火をもて焚くべしわれユダの諸邑を住人なき荒地となさん

第35章

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ユダの王ヨシヤの子ヱホヤキムの時ヱレミヤにのぞみしヱホバの言いふ

汝レカブ人の家に往て彼らとかたり彼らをヱホバの室の一房に携きたりて酒をのませよと

是に於てわれハバジニヤの子なるヱレミヤの子ヤザニヤとその兄弟とその諸子およびレカブ人の全家を取り

これをヱホバの室にあるハナンの諸子の房につれきたれりハナンはイグダリヤの子にして神の人なり其房は牧伯等の房の次にして門を守るシヤレムの子マアセヤの房のうへに在り

我すなはちレカブ人の家の諸子の前に酒を滿したる壺と杯を置き彼らに告て汝ら酒を飮めといひければ

彼らこたへけるは我儕は酒をのまず蓋レカブの子なる我らの先祖ヨナダブ我らに命じて汝等と汝らの子孫はいつまでも酒をのむべからず

また汝ら屋を建ず種をまかず葡萄園を植ざれ亦これを有べからず汝らの生存ふるあひだ幕屋にをれ然らば汝らが寄寓ところの地に於て汝らの生命長からんと云たればなり

斯我らはレカブの子なるわれらの先祖ヨナダブの凡て命ぜし言に遵ひて我儕とわれらの妻と子女は生存ふるあひだ酒を飮ず

我らは住べき屋を建てず葡萄園も田野も種も有ずして

幕屋にをりすべて我儕の先祖ヨナダブが我らに命ぜしごとく行へり

然どバビロンの王ネブカデネザルがこの地に上り來りしとき我ら云けるは我らカルデヤ人の軍勢とスリア人の軍勢を畏るれば去來ヱルサレムにゆかんとすなはち我らはヱルサレムに住へり

時にヱホバの言ヱレミヤにのぞみていふ

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいふ汝ゆきてユダの人々とヱルサレムに住る者とに告よヱホバいひたまふ汝らは我言を聽て敎を受ざるか

レカブの子ヨナダブがその子孫に酒をのむべからずと命ぜし言は行はる彼らは今日に至るまで酒をのまず其先祖の命令に遵ふなり然るに汝らは吾汝らに語り頻りに語れども我にきかざるなり

我また我僕なる預言者たちを汝らに遣し頻りにこれを遣していはせけるは汝らいまおのおの其惡き道を離れて歸り汝らの行をあらためよ他の神に從ひて之に奉ふる勿れ然ば汝らはわが汝らと汝らの先祖に與へたるこの地に住ことをえんと然ど汝らは耳を傾けず我にきかざりき

レカブの子ヨナダブの子孫はその先祖が彼らに命ぜしところの命令に遵ふなり然ど此民は我に聽ず

この故に萬軍の神ヱホバ、イスラエルの神かくいふ視よわれユダとヱルサレムに住る者とに我彼らにつきていひし所の災を降さん我かれらに語れども聽ずかれらを召ども應へざればなり

茲にヱレミヤ、レカブ人の家にいひけるは萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ汝らはその先祖ヨナダブの命に遵ひその凡の誡を守り彼が汝らに命ぜしことを行ふ

是によりて萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふレカブの子ヨナダブには我前に立つ人いつまでも缺ることあらじ

第36章

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ユダの王ヨシヤの子ヱホヤキムの四年にこの言ヱホバよりヱレミヤに臨みていふ

汝卷物をとり我汝に語りし日即ちヨシヤの日より今日に至るまでイスラエルとユダと萬國とにつきてわが汝に語りしすべての言を之に錄せ

ユダの家わが降さんと擬るところの災をききて各自その惡き途をはなれて轉ることもあらん然ばわれ其愆とその罪を赦すべし

是に於てヱレミヤ、ネリヤの子バルクを召べりバルクすなはちヱレミヤの口にしたがひヱホバの彼に告たまひし言をことごとく卷物に錄せり

ヱレミヤ、バルクに云ひけるはわれは禁錮られたればヱホバの室に往くことを得ず

故に汝ゆきて汝が我の口にしたがひて卷物に錄したるヱホバの言をよみ斷食の日にヱホバの室に於て民の耳にこれを聽しめよまた之を讀みてユダの人々のその邑々より來れる者の耳に聽しむべし

彼らヱホバの前にその祈禱を献り各自其惡き途をはなれて轉ることもあらんヱホバの此民につきてのべたまひし怒と憤は大なり

斯てネリヤの子バルクは凡て預言者ヱレミヤが己に命ぜしごとくヱホバの室にてその卷物よりヱホバの言を讀り

ユダの王ヨシヤの子ヱホヤキムの五年九月ヱルサレムの諸の民およびユダの諸邑よりヱルサレムに來れる諸の民にヱホバの前に斷食を行ふべきこと宣示さる

バルク、ヱホバの室の上庭に於てヱホバの室の新しき門の入口の旁にあるシヤパンの子なる書記ゲマリヤの房にてその書よりヱレミヤの言を民に讀きかせたり

シヤパンの子なるゲマリヤの子ミカヤその書のヱホバの言を盡くききて

王の宮にある書記の房にくだりいたるに諸の牧伯等即ち書記エリシヤマ、シマヤの子デラヤ、アカボルの子エルナタン、シヤパンの子ゲマリヤ、ハナニヤの子ゼデキヤおよび諸の牧伯等そこに坐せり

ミカヤ、バルクが書を讀て民の耳に聽せしときに己が聽しところのすべての言を彼らに告ければ

牧伯等クシの子シレミヤの子なるネタニヤの子エホデをバルクに遣はしていはせけるは汝が民に讀きかせしその卷物を手に取て來れとネリヤの子バルクすなはち手に卷物を取りて彼らの許にきたりたれば

彼らバルクにいひけるは請ふ坐して之を我らに讀きかせよとバルクすなはち彼らに讀聞せたり

彼らその諸の言をききて倶に懼れバルクにいひけるは我ら必ずこの諸の言を王に告んと

またバルクに問ていひけるは請ふ汝いかにこの諸の言をかれの口にしたがひて錄せしや我らに告よ

バルク答へけるは彼その口をもてこの諸の言を我に述べたればわれ墨をもて之を書に錄せり

牧伯等バルクにいひけるは汝ゆきてヱレミヤとともに身を匿し在所を人に知しむべからずと

すなはち卷物を書記エリシヤマの房に置きて庭にいり王に詣りてこの諸の言を王につげければ

王その卷物を持來らせんとてヱホデを遣せりヱホデすなはち書記エリシヤマの房より卷物を取來りて之を王と王の側に立るすべての牧伯等に讀みきかせたり

時は九月にして王冬の室に坐せり其前に火の燃る爐あり

ヱホデ三枚か四枚を讀けるとき王小刀をもてその卷物を切割き爐の火に投いれて之を盡く爐の火に焚り

王とその臣僕等はこの諸の言をきけども懼れず亦その衣を裂ざりき

エルナタン、デラヤ、ゲマリヤ等王にその卷物を焚たまふ勿れと求めたれども聽ざりき

王ハンメレクの子ヱラメルとアヅリエルの子セラヤとアブデルの子セレミヤに書記バルクと預言者ヱレミヤを執へよと命ぜしがヱホバかれらを匿したまへり

王卷物およびバルクがヱレミヤの口にしたがひて記せし言を焚しのちヱホバの言ヱレミヤに臨みていふ

汝また他の卷物をとりユダの王ヱホヤキムが焚しところの前の卷物の中の言をことごとく其に錄せ

汝またユダの王ヱホヤキムに告よヱホバかくいふ汝かの卷物を焚ていへり汝何なれば此卷物に錄してバビロンの王必ず來りてこの地を滅し此に人と畜を絕さんと云しやと

この故にヱホバ、ユダの王ヱホヤキムにつきてかくいひ給ふ彼にはダビデの位に坐する者無にいたらん且かれの屍は棄られて晝は熱氣にあひ夜は寒氣にあはん

我また彼とその子孫とその臣僕等をその惡のために罰せんまた彼らとヱルサレムの民とユダの人々には我わが彼らにつきて語りしかども彼らが聽ことをせざりし所の禍を降すべし

是に於てヱレミヤ他の卷物を取てネリヤの子書記バルクにあたふバルクすなはちユダの王ヱホヤキムが火に焚たるところの書の諸の言をヱレミヤの口にしたがひて之に錄し外にまた斯る言を多く之に加へたり

第37章

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ヨシヤの子ゼデキヤ、ヱホヤキムの子コニヤに代りて王となるバビロンの王ネブカデネザル彼をユダの地に王となせしなり

彼もその臣僕等もその地の人々もヱホバが預言者ヱレミヤによりて示したまひし言を聽ざりき

ゼデキヤ王シレミヤの子ユカルとマアセヤの子祭司ゼパニヤを預言者ヱレミヤに遣して請ふ汝我らの爲に我らの神ヱホバに祈れといはしむ

ヱレミヤは民の中に出入せりそはいまだ獄に入られざればなり

パロの軍勢のエジプトより來りしかばヱルサレムを攻圍みたるカルデヤ人は其音信をききてヱルサレムを退けり

時にヱホバの言預言者ヱレミヤにのぞみていふ

イスラエルの神ヱホバかくいふ汝らを遣して我に求めしユダの王にかくいへ汝らを救はんとて出きたりしパロの軍勢はおのれの地エジプトへ歸らん

カルデヤ人再び來りてこの邑を攻て戰ひこれを取り火をもて焚べし

ヱホバかくいふ汝らカルデヤ人は必ず我らをはなれて去んといひて自ら欺く勿れ彼らは去ざるべし

設令汝らおのれを攻て戰ふところのカルデヤ人の軍勢を悉く撃ちやぶりてその中に負傷人のみを遺すとも彼らはおのおの其幕屋に起ちあがり火をもて此邑を焚かん

茲にカルデヤ人の軍勢パロの軍勢を懼れてヱルサレムを退きければ

ヱレミヤ、ベニヤミンの地にて民の中にその分を分ち取らんとてヱルサレムを出でてかの地に行きしが

ベニヤミンの門にいりし時そこにハナニヤの子シレミヤの子なるイリヤと名くる門守をり預言者ヱレミヤを執へて汝はカルデヤ人に降るなりといふ

ヱレミヤいひけるは詐なり我はカルデヤ人に降るにあらずと然どイリヤこれを聽ずヱレミヤを執へて侯伯等の許に引ゆけり

侯伯等すなはち怒りてヱレミヤを撻ちこれを書記ヨナタンの室の獄にいれたり蓋この室を獄となしたればなり

ヱレミヤ獄にいり土牢に入りてそこに多の日を送りしのち

ゼデキヤ王人を遣して彼をひきいださしむ而して王室にて竊にかれにいひけるはヱホバより臨める言あるやとヱレミヤ答へていひけるは有り汝はバビロン王の手に付されん

ヱレミヤまたゼデキヤ王にいひけるは我汝あるいは汝の臣僕或はこの民に何なる罪を犯したれば汝ら我を獄にいれしや

汝らに預言してバビロンの王は汝らにも此地にも攻來らじといひし汝らの預言者はいま何處にあるや

されば王わが君よ願くはいま我に聽たまへ請ふわが願望を受納れ給へ我を書記ヨナタンの家に歸らしめたまふなかれ恐らくは我彼處に死なんと

是においてゼデキヤ王命じてヱレミヤを獄の庭にいれしめ且邑のパンの悉く盡るまでパンを製る者の街より日々に一片のパンを彼に與へしむ即ちヱレミヤは獄の庭にをる

第38章

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マツタンの子シパテヤ、パシユルの子ゲダリヤ、シレミヤの子ユカル、マルキヤの子パシユル、ヱレミヤがすべての民に告たるその言を聞り

云くヱホバかくいひたまふこの邑に留まるものは劍と饑饉と疫病に死べし然どいでてカルデヤ人に降る者は生んすなはちその生命をおのれの掠取物となして生べし

ヱホバかくいひたまふこの邑は必ずバビロン王の軍勢の手に付されん彼之を取べしと

是をもてかの牧伯等王にいひけるは請ふこの人を殺したまへ彼はかくの如き言をのべて此邑に遺れる兵卒の手と民の手を弱くす夫人は民の安を求めずして其害を求むるなりと

ゼデキヤ王いひけるは視よ彼は汝らの手にあり王は汝らに逆ふこと能はざるなりと

彼らすなはちヱレミヤを取て獄の庭にあるハンメレクの子マルキヤの阱に投いる即ち索をもてヱレミヤを縋下せしがその阱は水なくして汚泥のみなりければヱレミヤは汚泥のなかに沈めり

王の室の寺人エテオピア人エベデメレク彼らがヱレミヤを阱になげいれしを聞り時に王ベニヤミンの門に坐しゐたれば

エベデメレク王の室よりいでゆきて王にいひけるは

王わが君よかの人々が預言者ヱレミヤに行ひし事は皆好らず彼らこれを阱になげ入たり邑の中に食物なければ彼はその居るところに餓死せん

王エテオピヤ人エベデメレクに命じていひけるは汝ここより三十人を携へゆきて預言者ヱレミヤをその死ざる先にを阱より曳あげよ

エベデメレクすなはちその人々を携へて王の室の庫の下にいり其處より破れたる舊き衣の布片をとり索をもてこれをを阱にをるヱレミヤの所に縋下せり

而してエテオピア人エベデメレク、ヱレミヤに告て汝この破れたる舊き衣の布片を汝の腋の下にはさみて索に當よと云ければヱレミヤ然なせり

彼らすなはち索をもてヱレミヤを阱より曳あげたりヱレミヤは獄の庭にをる

かくてゼデキヤ王人を遣はして預言者ヱレミヤをヱホバの室の第三の門につれきたらしめ王ヱレミヤにいひけるは我汝に問ことあり毫もわれに隱す勿れ

ヱレミヤ、ゼデキヤにいひけるは我もし汝に示さば汝かならず我を殺さざらんや假令われ汝を勸むるとも汝われに聽じ

ゼデキヤ王密にヱレミヤに誓ひていひけるは我らにこの靈魂を造りあたへしヱホバは活く我汝を殺さず汝の生命を索むる者の手に汝を付さじ

ヱレミヤ、ゼデキヤにいひけるは萬軍の神イスラエルの神ヱホバかくいひたまふ汝もしまことにバビロン王の牧伯等に降らば汝の生命活んまた此邑は火にて焚れず汝と汝の家の者はいくべし

然ど汝もし出てバビロンの王の牧伯等に降らずば此邑はカルデヤ人の手に付されん彼らは火をもて之を焚ん汝はその手を脱れざるべし

ゼデキヤ王ヱレミヤに云けるは我カルデヤ人に降りしところのユダ人を恐る恐くはカルデヤ人我をかれらの手に付さん彼ら我を辱しめん

ヱレミヤいひけるは彼らは汝を付さじ願くはわが汝に告しヱホバの聲に聽したがひたまへさらば汝祥をえん汝の生命いきん

然ど汝もし降ることを否まばヱホバこの言を我に示し給ふ

すなはちユダの王の室に遺れる婦は皆バビロンの王の牧伯等の所に曳いだされん其婦等いはん汝の朋友等は汝を誘ひて汝に勝り汝の足は泥に沈む彼らは退き去る

汝の妻たちと汝の子女等はカルデヤ人の所に曳出されん汝は其手を脱れじバビロンの王の手に執へられん汝此邑をして火に焚しめん

ゼデキヤ、ヱレミヤにいひけるは汝この事を人に知する勿れさらば汝殺されじ

もし牧伯等わが汝と語りしことを我儕に告げよ我らに隱す勿れ然ば我ら汝を殺さじ又王の汝に語りしことを告よといはば

汝彼らに答へて我王に求めて我をヨナタンの家に歸して彼處に死しむること勿れといへりといふべし

かくて牧伯等ヱレミヤにきたりて問けるに彼王の命ぜし言のごとく彼らに告たればその事露はれざりき是をもて彼ら彼とものいふことを罷たり

ヱレミヤはヱルサレムの取るる日まで獄の庭に居りしがヱルサレムの取れし時にも彼處にをれり

第39章

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ユダの王ゼデキヤの九年十月バビロンの王ネブカデネザルその全軍をひきゐヱルサレムにきたりて之を攻圍みけるが

ゼデキヤの十一年四月九日にいたりて城邑破れたれば

バビロンの王の牧伯等即ちネルガルシヤレゼル、サムガルネボ 寺人の長サルセキム 博士の長ネルガルシヤレゼルおよびバビロンの王のその外の牧伯等皆ともに入て中の門に坐せり

ユダの王ゼデキヤおよび兵卒ども之を見て逃げ夜の中に王の園の途より兩の石垣の間の門より邑をいでてアラバの途にゆきしが

カルデヤ人の軍勢これを追ひヱリコの平地にてゼデキヤにおひつき之を執へてハマテの地リブラにをるバビロンの王ネブカデネザルの許に曳ゆきければ王かしこにて彼の罪をさだめたり

すなはちバビロンの王リブラにてゼデキヤの諸子をかれの目の前に殺せりバビロンの王またユダのすべての牧伯等を殺せり

王またゼデキヤの目を抉さしめ彼をバビロンに曳ゆかんとて銅索に縛げり

またカルデヤ人火をもて王の室と民の家をやき且ヱルサレムの石垣を毀てり

かくて侍衞の長ネブザラダンは邑の中に餘れる民とおのれに降りし者およびその外の遺れる民をバビロンに移せり

されど侍衞の長ネブザラダンはその時民の貧しくして所有なき者等をユダの地に遺し葡萄園と田地とをこれにあたへたり

爰にバビロンの王ネブカデネザル、ヱレミヤの事につきて侍衞の長ネブザラダンに命じていひけるは

彼を取りて善く待へよ害をくはふる勿れ彼が汝に云ふごとくなすべしと

是をもて侍衞の長ネブザラダン寺人の長ネブシヤスバン博士の長ネルガルシヤレゼルおよびバビロンの王の牧伯等

人を遣してヱレミヤを獄の庭よりたづさへ來らしめシヤパンの子アヒカムの子なるゲダリヤに付して之を家につれゆかしむ斯彼民の中に居る

ヱレミヤ獄の庭に禁錮られをる時ヱホバの言彼にのぞみていふ

汝ゆきてエテオピア人エベデメレクに告よ萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいふわれ我語しところの禍を此邑に降さん福はこれに降さじその日この事汝の目前にならん

ヱホバいひたまふその日にはわれ汝を救はん汝はその畏るるところの人衆の手に付されじ

われ必ず汝を救はん汝は劍をもて殺されじ汝の生命は汝の掠取物とならん汝われに倚賴めばなりとヱホバいひたまふ

第40章

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侍衞の長ネブザラダンかのバビロンにとらへ移さるるヱルサレムとユダの人々の中にヱレミヤを鏈につなぎおきてこれを執へゆきけるが遂にこれを放ちてラマを去しめたりその後ヱホバの言ヱレミヤにのぞめり

茲に侍衞の長ヱレミヤを召てこれにいひけるは汝の神ヱホバ此處にこの災あらんことを言り

ヱホバこれを降しその云し如く行へり汝らヱホバに罪を犯しその聲に聽したがはざりしによりてこの事汝らに來りしなり

視よ我今日汝の手の鏈を解て汝を放つ汝もし我とともにバビロンにゆくことを善とせば來れわれ汝を善くあしらはん汝もし我と偕にバビロンにゆくを惡とせば留れ視よこの地は皆汝の前に在り汝の善とする所汝の心に合ふところに往べし

ヱレミヤいまだ答へざるに彼またいひけるは汝バビロンの王がユダの諸邑の上にたてて有司となせしシヤパンの子アヒカムの子なるゲダリヤの許に歸り彼とともに民の中に居れ或は汝の善とおもふところにゆくべしと侍衞の長彼に食糧と禮物をとらせて去しめたり

ヱレミヤすなはちミヅパに往きてアヒカムの子ゲダリヤに詣りその地に遺れる民のうちに彼と偕にをる

茲に田舍にある軍勢の長等および彼らに屬する人々バビロンの王がアヒカムの子ゲダリヤを立てこの地の有司となし男女嬰孩および國の中のバビロンに移されざる貧者を彼にあづけたることをききしかば

即ちネタニヤの子イシマエルとカレヤの子ヨハナンとヨナタンおよびタンホメテの子セラヤとネトパ人なるエパイの諸子と或マアカ人の子ヤザニヤおよび彼らに屬する人々ミヅパにゆきてゲダリヤの許にいたる

シヤパンの子アヒカムの子なるゲダリヤ彼らと彼らに屬する人々に誓ひていひけるは汝らカルデヤ人に事ることを怖るる勿れこの地に住てバビロンの王に事へなば汝ら幸幅ならん

我はミヅパに居り我らに來らんところのカルデヤ人に事へん汝らは葡萄酒と菓物と油とをあつめて之を器に蓄へ汝らが獲るところの諸邑に住めと

又モアブとアンモン人の中およびエドムと諸の邦にをるところのユダヤ人はバビロンの王がユダに人を遺したるシヤパンの子アヒカムの子なるゲダリヤを立てこれが有司となしたることを聞り

是においてそのユダヤ人皆その追やられし諸の處よりかへりてユダの地のミヅパに來りゲダリヤに詣れり而して多くの葡萄酒と菓物をあつむ

又カレヤの子ヨハナンおよび田舍にをりし軍勢の長たちミヅパにきたりてゲダリヤの許にいたり

彼にいひけるは汝アンモン人の王バアリスが汝を殺さんとてネタニヤの子イシマエルを遣せしを知るやと然どアヒカムの子ゲダリヤこれを信ぜざりしかば

カレヤの子ヨハナン、ミヅパにて密にゲダリヤに語りて言けるは請ふわれゆきて人知ずにネタニヤの子イシマエルを殺さんいかで彼汝を殺し汝に集れるユダ人を散しユダの遺れる者を滅すべけんやと

然るにアヒカムの子ゲダリヤ、カレヤの子ヨハナンにいひけるは汝この事をなすべからず汝イシマエルにつきて僞をいふなり

第41章

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七月ごろ王の血統なるエリシヤマの子ネタニヤの子イシマエル王の十人の牧伯等とともにミヅパにゆきてアヒカムの子ゲダリヤにいたりミヅパにて偕に食をなせしが

ネタニヤの子イシマエルおよび偕にをりし十人の者起上りバビロンの王がこの地の有司となせしシヤパンの子アヒカムの子なるゲダリヤを刀にて殺せり

イシマエルまたミヅパにゲダリヤと偕にをりし諸のユダヤ人と彼處にをりしカルデヤ人の兵卒を殺したり

彼がゲダリヤを殺してより二日の後いまだ誰も之を知ざりし時

ある人八十人その鬚を薙り衣を裂き身に傷つけ手に素祭の物と香を携へてシケム、シロ、サマリヤよりきたりてヱホバの室にいたらんとせしかば

ネタニヤの子イシマエル、ミヅパよりいでて哭きつつ行て彼らを迎へ彼等に逢てアヒカムの子ゲダリヤの許に來れといへり

而して彼ら邑の中に入しときネタニヤの子イシマエル己と偕にある人々とともに彼らを殺してその屍を阱に投いれたり

但しその中の十人イシマエルにむかひ我らは田地に小麥 麰麥油および蜜を藏し有り我らをころすなかれと言たれば彼らをその兄弟と偕に殺さずして已ぬ

イシマエルがゲダリヤの名をもて殺せし人の屍を投入れし阱はアサ王がイスラエルの王バアシヤを怖れて鑿し阱なりネタニヤの子イシマエルその殺せし人々を之に充せり

イシマエルはミヅパに遺りをる諸の民即ち王の諸女と侍衞の長ネブザラダンがアヒカムの子ゲダリヤに交付しところのミヅパに遺れる諸の民とを擄にせりネタニヤの子イシマエルすなはち彼らを擄にしアンモン人に往んとて去れり

カレヤの子ヨハナンおよび彼と偕に在る軍勢の長たちネタニヤの子イシマエルの爲し諸の惡事を聞ければ

その衆卒を率てネタニヤの子イシマエルと戰はんとて出でギベオンの池の旁にて彼に遇ふ

イシマエルと偕に在る人々はカレヤの子ヨハナンおよび彼とともに在る軍勢の長たちを見て欣べり

是をもてイシマエルがミヅパより擄へきたりし所の人々身をめぐらしてカレヤの子ヨハナンの許にゆけり

ネタニヤの子イシマエルは八人の者と偕にヨハナンを避け逃てアンモン人に往り

カレヤの子ヨハナンおよび彼とともにある軍勢の長等はネタニヤの子イシマエルがアヒカムの子ゲダリヤを殺してミヅパより擄へゆけるところの彼遺れる民すなはち兵卒婦人兒女寺人等を其手より取りかへして之をギベオンより携かへりしが

進てエジプトにいたらんとてベツレヘムの近傍にあるキムハムの住處に往て留れり

こはネタニヤの子イシマエルがバビロンの王の此地の有司となしたるアヒカムの子ゲダリヤを殺せしによりカルデヤ人を懼たればなり

第42章

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茲に軍勢の長たちおよびカレヤの子ヨハナンとホシャヤの子ヱザニヤ並に民の至微者より至大者にいたるまで

皆預言者ヱレミヤの許に來りて言けるは汝の前に我らの求の受納られんことを願ふ請ふ我ら遺れる者の爲に汝の神ヱホバに祈れ(今汝の目に見がごとく我らは衆多の中の遺れる者にして寡なり)

さらば汝の神ヱホバ我らの行むべき途となすべき事を示したまはん

預言者ヱレミヤ彼らに云けるは我汝らに聽り汝らの言に循ひて汝らの神ヱホバに祈らん凡そヱホバが汝らに應へたまふことはわれ隱す所なく汝らに告べし

彼らヱレミヤにいひけるは願くはヱホバ我儕の間にありて眞實なる信ずべき證者となりたまへ我らは汝の神ヱホバの汝を遣はして我らに告しめたまふ諸の事に遵ひて行ふべし

我らは善にまれ惡きにまれ我らが汝を遣すところの我らの神ヱホバの聲に遵はん斯我らの神ヱホバの聲に遵ひてわれら福をうけん

十日の後ヱホバの言ヱレミヤにのぞみしかば

ヱレミヤ、カレヤの子ヨハナンおよび彼と偕に在る軍勢の長たち並に民の至微者より至大者までを悉く招きて

これにいひけるは汝らが我を遣して汝らの祈を献げしめしところのイスラエルの神ヱホバかくいひ給ふ

汝らもし信に此地に留らばわれ汝らを建てて倒さず汝らを植て拔じそは我汝らに災を降せしを悔ればなり

ヱホバいひたまふ汝らが畏るるところのバビロンの王を畏るる勿れ彼をおそるる勿れわれ汝らとともにありて汝らを救ひ彼の手より汝らを拯ふべし

われ汝らを恤みまた彼をして汝らを恤ませ汝らを故土に歸らしめん

然ど汝らもし我らはこの地に留らじ汝らの神ヱホバの聲に遵はじと言ひ

また然りわれらはかの戰爭を見ず箛の聲をきかず食物に乏しからざるエジプトの地にいたりて彼處に住はんといはば

汝らユダの遺れる者よヱホバの言をきけ萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ汝らもし強てエジプトにゆきて彼處に住はば

汝らが懼るるところの劍エジプトの地にて汝らに臨み汝らが恐るるところの饑饉エジプトにて汝らにおよばん而して汝らは彼處に死べし

凡そエジプトにおもむき至りて彼處に住はんとする人々は劍と饑饉と疫病に死べしその中には我彼らに降さんところの災を脱れて遺る者無るべし

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ我震怒と憤恨のヱルサレムに住る者に注ぎし如くわが憤恨汝らがエジプトにいらん時に汝らに注がん汝らは呪詛となり詫異となり罵詈となり凌辱とならん汝らは再びこの處を見ざるべしと

ユダの遺れる者よヱホバ汝らにつきていひたまへり汝らエジプトにゆく勿れと汝ら今日わが汝らを警めしことを確に知れ

汝ら我を汝らの神ヱホバに遣して言へり我らの爲に我らの神ヱホバに祈り我らの神ヱホバの汝に示したまふ事をことごとく我らに告よ我ら之を行はんと斯なんぢら自ら欺けり

われ今日汝らに告たれど汝らは汝らの神ヱホバの聲に遵はず汝らはヱホバが我を遣して命ぜしめたまひし事には都て遵はざりき

然ば汝らはその往て住んとねがふ處にて劍と饑饉と疫病に死ることを今確に知るべし

第43章

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ヱレミヤ諸の民にむかひて其神ヱホバの言を盡く宣べその神ヱホバが己を遣して言しめたまへる其諸の言を宣をはりし時

ホシャヤの子アザリヤ、カレヤの子ヨハナンおよび驕る人皆ヱレミヤに語りていひけるは汝は謊をいふ我らの神ヱホバはエジプトにゆきて彼處に住む勿れと汝をつかはして云せたまはざるなり

ネリヤの子バルク汝を唆して我らに逆はしむ是我らをカルデヤ人の手に付して殺さしめバビロンに移さしめん爲なり

斯カレヤの子ヨハナンと軍勢の長等および民皆ヱホバの聲に遵はずしてユダの地に住ことをせざりき

斯てカレヤの子ヨハナンと軍勢の長等はユダに遺れる者即ちその逐やられし國々よりユダの地に住んとて皈りし者

男女嬰孩王の女たちおよび凡て侍衞の長ネブザラダンがシヤパンの子なるアヒカムの子ゲダリヤに付し置し者並に預言者ヱレミヤとネリヤの子バルクを取て

エジプトの地に至れり彼ら斯ヱホバの聲に遵はざりき而して遂にタパネスに至れり

ヱホバの言タパネスにてヱレミヤに臨みていふ

汝大なる石を手に取りユダの人々の目の前にてこれをタパネスに在るパロの室の入口の旁なる磚窰の泥土の中に藏して

彼らにいへ萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ視よわれ使者を遣はしてわが僕なるバビロンの王ネブカデネザルを召きその位をこの藏したる石の上に置しめん彼錦繡をその上に敷べし

かれ來りてエジプトの地を撃ち死に定まれる者を死しめ虜に定まれる者を虜にし劍に定まれる者を劍にかけん

われエジプトの諸神の室に火を燃さんネブカデネザル之を焚きかれらを虜にせん而して羊を牧ふ者のその身に衣を纒ふがごとくエジプトの地をその身に纒はん彼安然に其處をさるべし

彼はエジプトの地のベテシメシの偶像を毀ち火をもてエジプト人の諸神の室を焚べし

第44章

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エジプトの地に住るところのユダの人衆すなはちミグドル、タパネス、ノフ、パテロスの地に住る者の事につきてヱレミヤに臨みし言に曰く

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいふ汝らは我ヱルサレムとユダの諸邑に降せしところの災をみたり視よこれらは今日すでに空曠となりて住む人なし

こは彼ら惡をなして我を怒らせしによる即ちかれらは己も汝らも汝らの先祖等も識ざるところの他の神にゆきて香を焚き且これに奉へたり

われ我僕なる預言者たちを汝らに遣し頻にこれを遣して請ふ汝らわが嫌ふところの此憎むべき事を行ふ勿れといはせけるに

彼ら聽かず耳を傾けず他の神に香を焚きてその惡を離れざりし

是によりて我震怒とわが憤恨ユダの諸邑とヱルサレムの街にそそぎて之を焚たれば其等は今日のごとく荒れかつ傾圮たり

萬軍の神イスラエルの神ヱホバいまかくいふ汝ら何なれば大なる惡をなして己の靈魂を害しユダの中より汝らの男と女と孩童と乳哺子を絕て一人も遺らざらしめんとするや

何なれば汝ら其手の行爲をもて我を怒らせ汝らが往て住ふところのエジプトの地に於て他の神に香を焚きて己の身を滅し地の萬國の中に呪詛となり凌辱とならんとするや

ユダの地とヱルサレムの街にて行ひし汝らの先祖等の惡ユダの王等の惡其妻等の惡および汝らの身の惡汝らの妻等の惡を汝ら忘れしや

彼らは今日にいたるまで悔いずまた畏れず汝らと汝らの先祖等の前に立たる我律法とわが典例に循ひて行まざるなり

是故に萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいふ視よわれ面を汝らにむけて災を降しユダの人衆を悉く絕ん

又われエジプトの地にすまんとてその面をこれにむけて往しところの彼ユダの遺れる者を取らん彼らは皆滅されてエジプトの地に仆れん彼らは劍と饑饉に滅され微者も大者も劍と饑饉によりて死べし而して呪詛となり詫異となり罵詈となり凌辱とならん

われヱルサレムを罰せし如く劍と饑饉と疫病をもてエジプトに住る者を罰すべし

是をもてエジプトの地に往て彼處に住るところのユダの遺れる者の中に一人も逃れまたは遺りてその心にしたひて歸り住はんとねがふところのユダの地に歸るもの無るべし逃るる者の外には歸る者無るべし

是に於てその妻が香を他の神に焚しことを知れる人々および其處に立てる婦人等の大なる群衆並にエジプトの地のパテロスに住るところの民ヱレミヤに答へて云けるは

汝がヱホバの名をもてわれらに述し言は我ら聽かじ

我らは必ず我らの口より出る言を行ひ我らが素なせし如く香を天后に焚きまた酒をその前に灌ぐべし即ちユダの諸邑とヱルサレムの街にて我らと我らの先祖等および我らの王等と我らの牧伯等の行ひし如くせん當時われらは糧に飽き福をえて災に遇ざりし

我ら天后に香を焚くことを止め酒をその前に灌がずなりし時より諸の物に乏しくなり劍と饑饉に滅されたり

我らが天后に香を焚き酒をその前に灌ぐに方りて之に象りてパンを製り酒を灌ぎしは我らの夫等の許せし事にあらずや

ヱレミヤ即ち男女の諸の人衆および此言をもて答へたる諸の民にいひけるは

ユダの諸邑とヱルサレムの街にて汝らと汝らの先祖等および汝等の王等と汝らの牧伯等および其地の民の香を焚しことはヱホバ之を憶えまた心に思ひたまふにあらずや

ヱホバは汝らの惡き爲のため汝らの憎むべき行の爲に再び忍ぶことをえせざりきこの故に汝らの地は今日のごとく荒地となり詫異となり呪詛となり住む人なき地となれり

汝ら香を焚きヱホバに罪を犯しヱホバの聲に聽したがはずその律法と憲法と證詞に循ひて行まざりしに由て今日のごとく此災汝らにおよべり

ヱレミヤまたすべての民と婦等にいひけるはエジプトの地に居るユダの子孫よヱホバの言をきけ

萬軍のヱホバ、イスラエルの神かくいひたまふ汝らと汝らの妻等は口をもていひ手をもて成し我ら香を天后に焚き酒を灌ぎて立しところの誓を必ず成就んといふ汝ら必ず誓をたてかならず其誓を成就んとす

この故にエジプトの地に住るユダの人々よヱホバの言をきけヱホバいひたまふわれ我大なる名を指て誓ふエジプトの全地にユダの人々一人もその口に主ヱホバは活くといひて再び我名を稱ふることなきにいたらん

視よわれ彼らをうかがはん是福をあたふる爲にあらず禍をくださん爲なりエジプトの地に居るユダの人々は劍と饑饉に滅びて絕るにいたらん

然ど劍を逃るる僅少の者はエジプトの地を出てユダの地に歸らん又エジプトの地にゆきて彼處に寄寓れるユダの遺れる者はその立ところの言は我のなるか彼らのなるかを知るにいたるべし

ヱホバいひ給ふわがこの處にて汝らを罰する兆は是なり我かくして我汝らに禍をくださんといひし言の必ず立ことを知しめん

すなはちヱホバかくいひたまふ視よわれユダの王ゼデキヤを其生命を索むる敵なるバビロンの王ネブカデネザルの手に付せしが如くエジプトの王パロホフラを其敵の手その生命を索むる者の手に付さん

第45章

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ユダの王ヨシヤの子ヱホヤキムの四年ネリヤの子バルクが此等の言をヱレミヤの口にしたがひて書に錄せしとき預言者ヱレミヤこれに語りていひけるは

バルクよイスラエルの神ヱホバ汝にかくいひ給ふ

汝曾ていへり嗚呼我は禍なるかなヱホバ我憂に悲を加へたまへり我は歎きて疲れ安きをえずと

汝かく彼に語れヱホバかくいひたまふ視よわれ我建しところの者を毀ち我植しところの者を拔ん是この全地なり

汝己れの爲に大なる事を求むるかこれを求むる勿れ視よわれ災をすべての民に降さん然ど汝の生命は我汝のゆかん諸の處にて汝の掠物とならしめんとヱホバいひたまふ

第46章

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茲にヱホバの言預言者ヱレミヤに臨みて諸國の事を論ふ

先エジプトの事すなはちユフラテ河の邊なるカルケミシの近傍にをるところのエジプト王パロネコの軍勢の事を論ふ是はユダの王ヨシヤの子ヱホヤキムの四年にバビロンの王ネブカデネザルが撃やぶりし者なり其言にいはく

汝ら大楯小干を備へて進み戰へ

馬を車に繋ぎ馬に乗り盔を被りて立て戈を磨き甲を着よ

われ見るに彼らは懼れて退きその勇士は打敗られ狼狽遁て後をかへりみず是何故ぞや畏懼かれらのまはりにありとヱホバいひたまふ

快足なる者も逃えず強者も遁れえず皆北の方にてユフラテ河の旁に蹶き仆れん

かのナイルのごとくに湧あがり河のごとくに其水さかまく者は誰ぞや

エジプトはナイルの如くに湧あがりその水は河の如くに逆まくなり而していふ我上りて地を蔽ひ邑とその中に住る者とを滅さん

汝等馬に乗り車を驅馳らせよ勇士よ盾を執るエテオピア人プテ人および弓を張り挽くルデ人よ進みいづべし

此は主なる萬軍のヱホバの復仇の日即ちその敵に仇を復し給ふ日なり劍は食ひて飽きその血に醉はん主なる萬軍のヱホバ北の地にてユフラテ河の旁に宰ることをなし給へばなり

處女よエジプトの女よギレアデに上りて乳香を取れ汝多くの藥を用ふるも益なし汝は愈ざるべし

汝の恥辱は國々にきこえん汝の號泣は地に滿てり勇士は勇士にうち觸てともに仆る

バビロンの王ネブカデネザルが來りてエジプトの地を撃んとする事につきてヱホバの預言者ヱレミヤに告たまひし言

汝らエジプトに宣ベミグドルに示し又ノフ、タパネスに示しいふべし汝ら堅く立ちて自ら備よ 劍なんぢの四周を食ひたればなり

汝の力ある者いかにして拂ひ除かれしやその立ざるはヱホバこれを仆したまふに由るなり

彼多の者を蹶かせたまふ人其友の上に仆れかさなり而していふ起よ我ら滅すところの劍を避けてわが國にかへり故土にいたらんと

人彼處に叫びてエジプトの王パロは滅されたり彼は機會を失へりといふ

萬軍のヱホバと名りたまふところの王いひたまふ我は活く彼は山々の中のタボルのごとく海の旁のカルメルのごとくに來らん

エジプトに住る女よ汝移轉の器皿を備へよそはノフは荒蕪となり燒れて住む人なきにいたるべければなり

エジプトは至美しき牝の犢のごとし蜚虻きたり北の方より來る

また其中の傭人は肥たる犢のごとし彼ら轉向てともに逃げ立ことをせず是その滅さるる日いたり其罰せらるる時來りたればなり

彼は蛇の如く聲をいだす彼ら軍勢を率ゐて來り樵夫の如く斧をもて之にのぞめり

ヱホバいひ給ふ彼らは探りえざるに由りて彼の林を砍仆せり彼等は蝗蟲よりも多して數へがたし

エジプトの女は辱められ北の民の手に付されん

萬軍のヱホバ、イスラエルの神いひ給ふ視よわれノフのアモンとパロとエジプトとその諸神とその王等すなはちパロとかれを賴むものとを罰せん

われ彼らを其生命を索むる者の手とバビロンの王ネブカデネザルの手とその臣僕の手に付すべしその後この地は昔のごとく人の住むところとならんとヱホバいひたまふ

我僕ヤコブよ怖るる勿れイスラエルよ驚く勿れ視よわれ汝を遠方より救ひきたり汝の子孫をその擄移されたる地より救ひとるべしヤコブは歸りて平安と寧靜をえん彼を畏れしむる者なかるべし

ヱホバいひたまふ我僕ヤコブよ汝怖るる勿れ我汝と偕にあればなり我汝を逐やりし國々を悉く滅すべけれど汝をば悉くは滅さじわれ道をもて汝を懲し汝を全くは罪なき者とせざるべし

第47章

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パロがガザを撃ざりし先にペリシテ人の事につきて預言者ヱレミヤに臨みしヱホバの言

ヱホバかくいひたまふ視よ水北より起り溢れながれて此地と其中の諸の物とその邑と其中に住る者とに溢れかかるべしその時人衆は叫びこの地に住る者は皆哭くべし

その逞しき馬の蹄の蹴たつる音のため其車の響のため其輪の轟のために父は手弱りて己の子女を顧みざるなり

是ペリシテ人を滅しつくしツロとシドンにのこりて助力をなす者を悉く絕す日來ればなりヱホバ、カフトルの地に遺れるペリシテ人を滅したまふべし


ガザには髮を剃るの事はじまるアシケロンと其剩餘の平地は滅ぼさる汝いつまで身に傷くるや

ヱホバの劍よ汝いつまで息まざるや汝の鞘に歸りて息み靜まれ

ヱホバこれに命じたるなればいかで息むことをえんやアシケロンと海邊を攻ることを定めたまへり

第48章

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萬軍のヱホバ、イスラエルの神モアブの事につきてかくいひたまふ嗚呼ネボは禍なるかな是滅されたりキリヤタイムは辱められて取られミスガブは辱められて毀たる

モアブの榮譽は失さりぬヘシボンにて人衆モアブの害を謀り去來之を絕ちて國をなさざらしめんといふマデメンよ汝は滅されん劍汝を追はん

ホロナイムより號咷の聲きこゆ毀敗と大なる滅亡あり

モアブ滅されてその嬰孩等の號咷聞ゆ

彼らは哭き哭きてルヒテの坂を登る敵はホロナイムの下り路にて滅亡の號咷をきけり

逃て汝らの生命を救へ曠野に棄られたる者の如くなれ

汝は汝の工作と財寶を賴むによりて汝も執へられん又ケモシは其祭司およびその牧伯等と偕に擄へうつさるべし

殘害者諸の邑に來らん一の邑も免れざるべし谷は滅され平地は荒されんヱホバのいひたまひしがごとし

翼をモアブに予へて飛さらしむ其諸邑は荒て住者なからん

ヱホバの事を行ふて怠る者は詛はれ又その劍をおさへて血を流さざる者は詛はる

モアブはその幼時より安然にして酒の其滓のうへにとざまりて此器よりかの器に斟うつされざるが如くなりき彼擄うつされざりしに由て其味尚存ちその香氣變らざるなり

ヱホバいひたまふ此故にわがこれを傾くる者を遣はす日來らん彼らすなはち之を傾け其器をあけ其罇を碎くべし

モアブはケモシのために羞をとらん是イスラエルの家がその恃めるところのベテルのために羞をとりしが如くなるべし

汝ら何ぞ我らは勇士なり強き軍人なりといふや

モアブはほろぼされその諸邑は騰りその選擇の壯者は下りて殺さる萬軍のヱホバと名る王これをいひ給ふ

モアブの滅亡近けりその禍速に來る

凡そ其四周にある者よ彼のために歎けその名を知る者よ強き竿美しき杖いかにして折しやといへ

デボンに住る女よ榮をはなれて下り燥ける地に坐せよモアブを敗る者汝にきたりて汝の城を滅さん

アロエルに住る婦よ道の側にたちて闥ひ逃きたる者と脱れいたる者に事いかんと問ヘ

モアブは敗られて羞をとる汝ら呼はり咷びモアブは滅されたりとアルノンに告よ

鞫災平地に臨みホロン、ヤハヅ、メパアテ

デボン、ネボ、ベテデブラタイム

キリヤタイム、ベテガムル、ベテメオン

ケリオテ、ボズラ、モアブの地の諸邑の遠き者にも近き者にも臨めり

モアブの角は碎け其臂は折たりとヱホバいひたまふ

汝らモアブを醉はしめよ彼ヱホバにむかひて驕傲ればなりモアブは其吐たる物に轉びて笑柄とならん

イスラエルは汝の笑柄にあらざりしや彼盜人の中にありしや汝彼の事を語るごとに首を搖たり

モアブに住る者よ汝ら邑を離れて磐の間にすめ穴の口の側に巢を作る斑鳩の如くせよ

われらモアブの驕傲をきけり其驕傲は甚だし即ち其驕慢矜高驕誇およびその心の自ら高くするを聞り

ヱホバいひたまふ我モアブの驕傲とその言の虛きとを知る彼らは僞を行ふなり

この故に我モアブの爲に咷びモアブの全地の爲に呼はるキルハレスの人々の爲に嗟歎あり

シブマの葡萄の樹よわれヤゼルの哭泣にこえて汝の爲になげくべし汝の蔓は海を踰え延てヤゼルの海にまでいたる掠奪者來りて汝の果と葡萄をとらん

欣喜と歡樂園とモアブの地をはなれ去る我酒醡に酒無からしめん呼はりて葡萄を踐もの無るべし其喚呼は葡萄をふむ喚呼にあらざらん

ヘシボンよりエレアレとヤハヅにいたりゾアルよりホロナイムとエグラテシリシヤにいたるまで人聲を揚ぐそはニムリムの水までも絕たればなり

ヱホバいひたまふ我祭物を崇邱に献げ香をその諸神に焚くところの者をモアブの中に滅さんと

この故に我心はモアブの爲に簫のごとく歎き我心はキルハレスの人衆のために蕭のごとく歎く是其獲たるところの財うせたればなり

人みなその髮を剃り皆その鬚をそり皆その手に傷け腰に麻布をまとはん

モアブにては家蓋の上と街のうちに遍く悲哀ありそはわれ心に適ざる器のごとくにモアブを碎きたればなりとヱホバいひたまふ

嗚呼モアブはほろびたり彼らは咷ぶ嗚呼モアブは羞て面を背けたりモアブはその四周の者の笑柄となり恐懼となれり

ヱホバかくいひたまふ視よ敵鷲のごとくに飛來りて翼をモアブのうへに舒ん

ケリオテは取られ城はみな奪はるその日にはモアブの勇士の心子を產む婦のごとくになるべし

モアブはヱホバにむかひて傲りしゆゑに滅ぼされて再び國を成ざるべし

ヱホバいひたまふモアブにすめる者よ恐怖と陷阱と罟汝に臨めり

恐怖をさけて逃るものは陷阱におちいり陷阱より出るものは罟にとらへられん其はわれモアブにその罰をうくべき年をのぞましむればなりヱホバこれをいふ

遁逃者は力なくしてヘシボンの蔭に立つ是は火ヘシボンより出で火焔シホンのうちより出てモアブの地および喧閙をなす者の首の頂を燒ばなり

嗚呼禍なるかなモアブよケモシの民は亡びたり即ち汝の諸子は擄へうつされ汝の女等は執へゆかれたり

然ど末の日に我モアブの擄移されたる者を返さんとヱホバいひ給ふ此まではモアブの鞫をいへる言なり

第49章

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アンモン人の事につきてヱホバかくいひたまふイスラエルに子なからんや嗣子なからんや何なれば彼らの王ガドを受嗣ぎ彼の民その邑々に住や

ヱホバいひたまふ是故に視よわが戰鬪の號呼をアンモン人のラバに聞えしむる日いたらんラバは荒垤となりその女等は火に焚れんその時イスラエルはおのれの嗣者となりし者等の嗣者となるべしヱホバこれをいひたまふ

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