ロマ書 (ラゲ訳)

<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

ラゲ訳新約聖書エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

ロマ書

第1章 編集

1イエズス、キリストのしもべにして使徒しとされ、かみ福音ふくいんためわかたれたるパウロ、―― 2この福音ふくいんは、さきかみが、その預言よげんしやたちもつ聖書せいしようちに、御子おんこ我主わがしゆイエズス、キリストにきてやくたまひしものにして、 3この御子おんこ肉體にくたいにてはダヴィドのすゑよりり、 4聖德せいとくれいにては、大能たいのうもつて、死者ししやうちよりの復活ふくくわつによりて、かみ御子おんこしようせられたまへり。 5われその御名みなために、萬民ばんみん信仰しんかう服從ふくじゆうせしめんとて、恩寵おんちよう使徒しとしよくとをかうむりたるなり、 6なんぢ萬民ばんみんうちよりイエズス、キリストにされたるものなれば、―― 7書簡しよかんすべてロマにりてかみあいせられ聖徒せいとされたる人々ひとびとおくる。ねがはくは、わがちちにてましまかみおよびしゆイエズス、キリストより、恩寵おんちよう平安へいあんとをなんぢたまはらんことを。 8なんぢ信仰しんかうぜん世界せかい吹聽ふいちやうせらるるがゆゑに、われまづなんぢ一同いちどうためにイエズス、キリストにりてわがかみ感謝かんしやたてまつる。 9けだし祈祷きたううちえずなんぢ記念きねんし、 10つね如何いかにしてかかみ思召おぼしめしにより、何時いつしかやすらかなるみちて、つひなんぢいたらんとこひねがへるは、御子おんこ福音ふくいんおい一心いつしんつかまつかみの、わがためしようたまところなり。 11けだしなんぢことのぞむは、いさされい恩寵おんちようなんぢわけあたへて、なんぢ堅固けんごならしめんため12すなはなんぢうちりて、なんぢわれとのたがひ信仰しんかうもつあひすすむることためなり。 13兄弟等きやうだいたちよ、われ異邦いはうじんおけごとく、なんぢうちにもいささ好果かうくわため數次しばしばなんぢいたらんとこころざして、しかいままでさまたげられたることを、なんぢらざるをこのまず。 14われはギリシアじんにも異國いこくじんにも、學者がくしやにも學者がくしやにもところあり、 15ればまたなんぢロマにものにも福音ふくいんつたへんとほつすることせつなり。 16けだしわれ福音ふくいんはぢず、これすべしんずるものためには、ユデアじんはじめギリシアじんにもすくひとなるべきかみ能力のうりよくなればなり。 17すなはかみの[たまへる]信仰しんかうより信仰しんかういたこと福音ふくいんうちあらはる、かきしるして、「義人ぎじん信仰しんかうによりてきん」とあるがごとし。 18それおんいかりは、眞理しんり不義ふぎおさふる人々ひとびとの、すべての不敬ふけい不義ふぎうへあらはる。 19けだしかみきてられたる事柄ことがら彼等かれらには顯然あらはなり、かみすで彼等かれらこれあらはたまひたればなり。 20すなはそのべからざるところその永遠えいえん能力のうりよく神性しんせいも、世界せかい創造さうざう以來いらいつくられたるものによりてさとられ、あきらかにゆるがゆゑに、人々ひとびと弁解べんかいすることず。 21けだしすでかみりたれど、かみとしてこれ光榮くわうえいせず、また感謝かんしやせず、かえつ理屈りくつうちむなしくせられて、そのおろかなるこころくらくなれり。 22すなはみづか智者ちしやしようして愚者ぐしやり、 23ちざるかみ光榮くわうえいふるに、つべき人間にんげんとりけだものへびなどたるかたちもつてせり。 24これによりてかみ彼等かれらそのこころよくすなは淫亂いんらんうちまかたまひて、彼等かれらたがひそのはづかしむ、 25かみ眞實しんじつ虛僞きよぎへ、造物主ざうぶつしゆさしおきて造物ざうぶつおがみ、これつかふるにいたりたればなり。造物主ざうぶつしゆこそは世々よよしゆくせられたまふなれ、アメン。 26これによりてかみ彼等かれらづべき情慾じやうよくうちまかたまへり、けだし彼等かれらをんな自然しぜんようへて自然しぜんもどれるようし、 27をとこまたおなじくをんな自然しぜんようててたがひ私慾しよくやし、をとこをとこづべきことしてそのまよひあたひせるむくいおのけたり。 28またかみみとめたることしようせざりしがゆゑに、かみまた彼等かれらその邪心じやしんうちまかたまひて、彼等かれら不當ふたうなることすにいたれり。 29すなはあらゆる不義ふぎ惡心あくしん私通しつう貪吝どんりん不正ふせい滿ち、嫉妬しつと殺人さつじん爭闘さうとう詐欺さぎ狡猾かうくわつみ、讒害ざんがいするもの30誹謗ひばうするものかみうらもの侮辱ぶじよくするもの傲慢がうまんなるもの自負じふするもの惡事あくじ發明はつめいしや父母ふぼしたがはざるもの31愚者ぐしや背德はいとくしやにして、愛情あいじやうなく、忠實ちゆうじつなく、慈悲じひなき人々ひとびとたるなり。 32かかことおこなひとあたひす、とへるかみ判定はんていりたれども、これおこなふのみならずまたおこな人々ひとびと贊同さんどうするなり。

第2章 編集

1ればすべ是非ぜひするひとよ、なんぢ弁解べんかいすることず、けだし他人たにん是非ぜひするはおのれつみする所以ゆゑんなり、そのみづか是非ぜひするところおなことせばなり。 2われかくごとことひとたいして、かみ審判しんぱん眞理しんりかなへることれり。 3かかこともの是非ぜひしつつみづかこれおこなひとよ、なんぢかみ審判しんぱんまぬかれんとおもふか、 4かみ仁慈じんじ堪忍かんにん耐久たいきゆうとのゆたかなるをかろんずるか、かみ慈愛じあいなんぢ改心かいしんみちびきつつあるをらざるか。 5なんぢ頑固かたくな悔悛くいあらためざるこころとにりて、おのれためかみおんいかりみ、 6おのおのそのわざおうじてむくたまふべきかみただしき審判しんぱんあらはるべきおんいかりあたりてこれれん。 7すなは忍耐にんたいもつ善行ぜんぎやうつとめ、光榮くわうえい尊貴そんき不朽ふきうとをもとむる人々ひとびとには永遠えいえん生命せいめいもつむくたまふべしといへども、 8あらそへるひと眞理しんりふくせず不義ふぎひとには、いかりいきどほりとあるべし。 9すべあくおこなもの靈魂れいこんには、ユデアじんはじめギリシアじんにも、患難くわんなん辛苦しんくとあるべけれど、 10すべぜんおこなものにはユデアじんはじめギリシアじんにも光榮くわうえい尊貴そんき平安へいあんとあるべし。 11ひときてかたよたまことかみところなればなり。 12けだしすべ律法りつぱふなくしてつみをかししひと律法りつぱふなくしてほろびん、またすべ律法りつぱふありてつみをかししひと律法りつぱふによりて審判しんぱんせられん、 13律法りつぱふ聽聞ちやうもんしやかみ御前みまへ義人ぎじんたらずして、律法りつぱふ實行じつかうしやこそとせらるべければなり。 14けだし律法りつぱふたざる異邦いはうじんが、自然しぜん律法りつぱふことおこなときは、かか律法りつぱふたずといへどみづかおのれ律法りつぱふたるなり。 15彼等かれら律法りつぱふはたらきおのこころしるされたるをあらはし、その良心りやうしんこれしようし、そのおもひ相互あひたがひに、あるひとがあるひ弁解べんかいすることあればなり。 16これわが福音ふくいんぶるごとく、かみがイエズス、キリストをもつ人々ひとびと密事みつじ審判しんぱんたまふべきあきらかならん。 17しかるになんぢはユデアじんしようせられて律法りつぱふやすんじ、かみもつほこりし、 18その御旨みむねり、律法りつぱふさとされて一層いつそう有益いうえきなることみとめ、 19あへおのれもつ盲者めしひ手引てびき暗黑くらやみひと燈火ともしび20愚者おろかもの敎師けうし兒等こども師匠ししやうなりとし、律法りつぱふおい學識がくしき眞理しんりとののりてるものおもへり。 21りながらなんぢひとをしへておのれをしへず、ぬすなかれとべてみづかぬすみ、 22姦淫かんいんするなかれとひてみづか姦淫かんいんし、偶像ぐうざうにくみてせいなるものをおかし、 23律法りつぱふほこりつつみづか律法りつぱふやぶりてかみはづかしむ、 24かきしるして、「かみ御名みななんぢによりて異邦いはうじんうちののしらる」、とあるがごとし。 25なんぢ律法りつぱふまもとき割禮かつれいそのえきありといへども、律法りつぱふやぶときなんぢ割禮かつれいすで割禮かつれいとなれるなり。 26れば割禮かつれい[のひと]律法りつぱふ禁令きんれいまもらば、その割禮かつれい割禮かつれいひとしく視做みなさるべきにあらずや。 27かく生來せいらい割禮かつれい[のひと]律法りつぱふまつたうせば、ぶんおよ割禮かつれいありながら律法りつぱふやぶれるなんぢつみさだめん。 28けだしおもてしかあるひとがユデアじんたるにあらず、またあらはるものが割禮かつれいたるにあらず。 29心中しんちゆうしかあるひとこそユデアじんぶんによらずれいによるこころのものこそ割禮かつれいにして、そのほまれひとよりきたらずしかかみよりきたる。

第3章 編集

1らばユデアじんなんちやうぜるところかある、また割禮かつれいなんえきかある、 2おのおの方面はうめんおほし、すなはまづかみのたまひ御言おんことば彼等かれらたくせられたるなり。 3假令たとひ彼等かれらうちしんぜざるものありしも、これなにかあらん、彼等かれら信仰しんかうかみ眞實しんじつむなしからしむべきか、けつしてしからず。 4かみ眞實しんじつにてましまし、ひとすべいつはものなり。かきしるして「(しゆよ)これなんぢそのことばおいとせられ、審判しんぱんせられたまふもかちたまはんためなり」、とあるがごとし。 5もしわれ不義ふぎかみあらはすとせば、われなにをかはん、いかりくはたまかみ不義ふぎなるか、―― 6ひとごとくにへり――けつしてしからず、もししかりとせば、かみ如何いかにしてかこの審判しんぱんたまふべき。 7もしわれいつはりによりてかみ眞實しんじつあらはれ、その光榮くわうえいしたらんには、いかでかわれ罪人ざいにんさだめらるることあらんや。 8また――われののしられてしかとなふとある人々ひとびとはるるごとく――ぜんきたさんためあくすべけんや、かか人々ひとびとつみせらるるはうべなり。 9しからばなんぞや、われ異邦いはうじんさきだものなるか、けつしてしからず、すでにユデアじんもギリシアじんみなつみもとりとしようしたればなり。 10かきしるして、「たれただしきものなく、 11さとものなく、かみもとむるものなし、 12みなまよひてあひともむなしきものとなれり、ぜんものなし、一人ひとりだもあることなし。 13彼等かれらのどひらきたるはかなり、そのしたもつあざむき、そのくちびるしたまむしどくあり、 14そのくちのろひにがみとにち、 15そのあしながためはやく、 16やぶれわざはひとは、そのみちみちり、 17彼等かれら平和へいわみちらず、 18その目前めのまへかみたいするおそれなし」とあるがごとし。 19ただしすべ律法りつぱふところ律法りつぱふもと人々ひとびとむかひてふこと、われこれれり、これすべてのくちふさがりて、ぜん世界せかいかみ屈服くつぷくするにいたらんためなり。 20けだしかみ御前みまへには、如何いかなるひと律法りつぱふわざりてとせらるることあらじ、律法りつぱふりてるはつみ意識いしきなればなり。 21しかるに律法りつぱふ預言よげんしやとにしようせられて、かみの[たまふ]いま律法りつぱふほかあらはれたり。 22すなはちイエズス、キリストにおけ信仰しんかうよりかみの「たまふ」信仰しんかうするものすべておよび、すべてのうへり、けだ差別さべつあることなし、 23みなつみをかしたるものにして、かみ光榮くわうえいえうすればなり。 24人々ひとびととせらるるは、いさをなくしてただかみ恩寵おんちようり、キリスト、イエズスにおけあがなひりてなり。 25すなはかみ從前じゆうぜんつみしのたまひしに、そのゆるしもつおの正義せいぎあらはさんために、イエズス、キリストをなだめ犧牲いけにへそなへ、その御血おんちおけ信仰しんかうたしめ、 26いまおの正義せいぎしようせんとて、みづかその正義せいぎあらはたまひ、イエズス、キリストにおけ信仰しんかうひとをもたまひしなり。 27しからばほこところ何處いづこにかる、のぞかれたり。如何いかなるはふもつのぞかれたるか、わざもつてなるか、しからず、信仰しんかうはふもつてなり。 28けだしわれおもふに、ひととせらるるは律法りつぱふわざらずして信仰しんかうる。 29かみあにユデアじんのみのかみならんや、異邦いはうじんにもまたしかるにあらずや、しか異邦いはうじんにもかみたるなり。 30かみゆゐいつましまして、割禮かつれいひと信仰しんかうりてとし、割禮かつれいひとをも信仰しんかうりてとしたまへばなり。 31らばわれ信仰しんかうもつ律法りつぱふほろぼすか、しからず、かえつ律法りつぱふかたうするなり。

第4章 編集

1ればわれわがちちアブラハムは肉身上にくしんじやうよりしてなにたりとかはん、 2はアブラハムおこなひによりてとせられたらんにはほこところあるべきも、かみ御前みまへにはこれあらざればなり。 3けだし聖書せいしよなんとかへるぞ、[いはく]、「アブラハムかみしんぜり、かくそのこととしてかれせられたり」と。 4そもそもはたらひとむくいは、めぐみとせられずして負債ふさいとせらる、 5れどはたらかず、不敬ふけいしやとしたまかみ信仰しんかうするひとおいては、その信仰しんかうかみ恩寵おんちよう規定きていしたがひてとしてこれせらるるなり。 6かくごとくダヴィドも、ひとおこなひらずしてかみよりとせらるるをさいはひなりとへり、 7[いはく]、「その不義ふぎゆるされ、そのつみおほはれたるひとさいはひなるかな8つみしゆたまはざりしひとさいはひなるかな」と。 9らばこのさいはひは、ただ割禮かつれい[のひと]にのみとどまるか、はた割禮かつれい[のひと]にもおよぶか、われアブラハムの信仰しんかうとしてかれせられたりとひしが、 10如何いかにしてせられしぞ、割禮かつれいのち割禮かつれいときか、割禮かつれいのちあらずして割禮かつれいときなり。 11かつ割禮かつれいしるしは、割禮かつれいとき信仰しんかうれる印證いんしやうとしてこれけたり。これすべ割禮かつれいにて信仰しんかうするひとちちとなり、彼等かれらにも[信仰しんかうを]としてせられしめんためなり。 12またひと割禮かつれいある人々ひとびとちちたるのみならず、わがちちアブラハムの割禮かつれいとき信仰しんかうあと人々ひとびとにも割禮かつれいちちたらんためなり。 13けだしアブラハムまたその子孫しそんに、世界せかい世嗣よつぎたるべしとの約束やくそくありしは、律法りつぱふるにあら信仰しんかうれるなり。 14もし律法りつぱふ人々ひとびとにして世嗣よつぎたらば、信仰しんかうむなしくなり、約束やくそくはいせられたるなり。 15律法りつぱふいかりきたし、律法りつぱふなきところには違法いはふければなり。 16れば世嗣よつぎ信仰しんかうる、これかの約束やくそく恩寵おんちようしたがひて、すべての子孫しそんたいしてかためられんためなり。ただ律法りつぱふ子孫しそんのみならず、アブラハムの信仰しんかうりて子孫しそんたるひとためなり。 17けだしかきしるして、「われなんぢてておほくのたみちちたらしめたり」とあるがごとく、アブラハムはそのしんぜしところかみすなはしたるものかし、きものをばあたかるもののごとくにたまかみ御前みまへおいて、すべわれちちたるなり。 18かれは「なんぢ子孫しそんかくごとくならん」とはれしままに、希望きぼうすべくもあらざるになほ希望きぼうして、おほくのたみちちとならんことしんぜり。 19しかその信仰しんかうよわことなく、ほとんどさいおよびておのすでせるがごとく、サラのたいせるがごとくなるをかへりみず、 20またかみおん約束やくそくつきてもいぶからず躊躇ちうちよせず、かえつかみ光榮くわうえいたてまつりて、 21やくたまひしことことごとたまふべしと、くまでりて信仰しんかうかためたり、 22ゆゑこのこととしてかれせられたるなり。 23この、「としてかれせられたり」とかきしるされたるは、ただかれためのみならず、 24またわれためなり。すなはわれも、我主わがしゆイエズス、キリストを死者ししやうちより復活ふくくわつせしめたまひしかみ信仰しんかうするときは、[として]これせらるべし、 25かれわれつみためわたされ、またわれとせられんため復活ふくくわつたまひたればなり。

第5章 編集

1ればわれ信仰しんかうりてとせられ、我主わがしゆイエズス、キリストをもつかみ和睦わぼくしたるなり。 2またかれもつて、信仰しんかうによりていまてるところ恩寵おんちよういたことて、かみの(子等こどもの)光榮くわうえい希望きぼうもつほこりす。 3加之しかのみならずわれまた患難くわんなんことほこりとす、患難くわんなん忍耐にんたいしやうじ、 4忍耐にんたい練達れんたつしやうじ、練達れんたつ希望きぼうしやうずるをればなり。 5そもそも希望きぼうはぢきたさず、けだしわれたまはりたる聖靈せいれいもつて、かみあいわれこころそそがれたるなり。 6すなはちわれなほよわかりしに、キリストがときいたりて不敬ふけいしやためたまひしはなんぞや。 7それ義人ぎじんためするものまれなり、たれあへ善人ぜんにんためなんや。 8しかるにかみわれたいしてそのあいいちじるしくあらはたまふは、われなほ罪人つみびとたりしにときいたりて 9キリストわれためたまひしをもつてなり。ればいまわれその御血おんちもつとせられたれば、なほかれりていかりよりすくはるべきなり。 10けだしわれてきなりしを御子おんこによりてかみ和睦わぼくしたるものなれば、いわん和睦わぼくしたるのちかれ生命せいめいりてすくはるべきをや。 11加之しかのみならずわれまたいま和睦わぼくさせたまひし我主わがしゆイエズス、キリストにりて、かみもつほこりす。 12れば一人ひとりりてつみこのり、またつみりてりしごとく、ひとみなつみをかしたるがゆゑすべてのうへおよべるなり。 13けだし律法りつぱふづるまでは、つみりしかど、律法りつぱふなきをもつつみとせざれざりき。 14りながら、アダンよりモイゼにいたまで、アダンの犯罪はんざいごとつみをかさざりし人々ひとびとにもわうたりき。そもそもアダンは將來しやうらいのアダンの前表ぜんぺうなり。 15れどつみたまものとはひとしからず、すなは一人ひとりつみりてしたるものおほけれども、かみ恩寵おんちよう一人ひとりのイエズス、キリストのめぐみとにれるたまものは、ましおほくのひとあふれたるなり。 16またたまものひとつつみ結果けつくわとはひとしからず、すなは審判しんぱんひとつつみよりして、有罪いうざい宣告せんこくいたりしに、たまものおほくのつみよりとするにいたれるなり。 17けだし一人ひとりつみために、その一人ひとりよりしてわうとなりたれば、ましあふるるほど恩寵おんちようたまものとをかうむ人々ひとびとは、一人ひとりのイエズス、キリストにりて、生命せいめいおいわうとなるべし。 18れば一人ひとり犯罪はんざいもつ一切いつさい人間にんげんまで有罪いうざい宣告せんこくくるにいたりしごとく、一切いつさい人間にんげん一人ひとりもつとせられ生命せいめいるにいたれるなり。 19けだし一人ひとり從順じゆうじゆんりておほくのひと罪人ざいにんとせられしごとく、また一人ひとり從順じゆうじゆんりておほくのひと義人ぎじんとせらるべし。 20律法りつぱふ入來いりきたりてつみししかど、つみししところには恩寵おんちよう彌增いやませり。 21これつみもつわうとなりしごとく、恩寵おんちようまた我主わがしゆイエズス、キリストにりてもつわうとなり、永遠えいえん生命せいめいいたらしめんためなり。

第6章 編集

1らばわれなにをかはん、恩寵おんちようあふれんことしてつみとどまらんか、 2しからず、われつみしたるものなれば、いかでかなほつみくべき。 3らずやキリスト、イエズスにおいせんせられしわれが、みなそのしてせんせられたることを。 4けだしわれそのならはんために、洗禮せんれいもつかれともはうむられたるなり、これキリストがおんちち光榮くわうえいもつて死者ししやうちより復活ふくくわつたまひしごとく、われまたあたらしき生命せいめいあゆまんためなり。 5けだしわれかれがれてその狀態ありさま肖似あやかりたれば、その復活ふくくわつにもまた肖似あやかるべし。 6われふるひとかれとも十字架じふじかけられしは、つみほろぼされてふたたつみ奴隷どれいとならざらんためなることわれこれる、 7したるひとつみのがれたればなり。 8われしんず、われもしキリストとともしたらば、またキリストとともきんと。 9はキリストは死者ししやうちより復活ふくくわつして最早もはやたまことなく、さらこれつかさどことなかるべしとればなり。 10せしはつみためにして一度ひとたびたまひたれど、くるはかみためたまふなり。 11かくごとなんぢおのれを、つみにはしたるものなれども、かみためには我主わがしゆキリスト、イエズスにおいけるものおもへ。 12ゆゑつみなんぢそのしよよくしたがはしむるほど、なんぢすべきうちわうたるべからず。 13なほまたなんぢ五體ごたい不義ふぎ武器ぶきとしてつみささぐることなかれ、かえつしたりしにくるものとしておのれかみささげ、五體ごたいをもかみため武器ぶきとしてささげよ。 14なんぢすで律法りつぱふもとらずして恩寵おんちようもとるがゆゑに、つみなんぢつかさどことあるまじければなり。 15しからば如何いかにすべきか、われ律法りつぱふもとらずして恩寵おんちようもとるがゆゑつみをかすべきか、しからず。 16らずや、なんぢしたがはんとておのれ奴隷どれいとしてささぐれば、そのしたがところもの奴隷どれいとなることを。あるひつみ奴隷どれいとしていたり、あるひ從順じゆうじゆん奴隷どれいとしていたる。 17れどかみ感謝かんしやす、なんぢつみ奴隷どれいたりしに、交付ひきわたされてまなびたるをしへのりこころよりしたがひ、 18かつつみよりすくはれて奴隷どれいとなりたるなり。 19われなんぢにくよわきにたいして、ひと語法いひかたもつはん、すなはなんぢ不義ふぎため五體ごたい不潔ふけつ不義ふぎ奴隷どれいとしてささげたりしがごとく、いませいとならんため五體ごたい奴隷どれいとしてささげよ。 20なんぢつみ奴隷どれいたりしときたいしては自由じいうなりしが、 21そのときいまはぢこともつなん好果かうくわたりしぞ、すなはこれことはてあるのみ。 22いますでつみよりすくはれてかみしもべり、そのところ好果かうくわせいことにして、そのはて永遠えいえん生命せいめいなり。 23けだしつみ報酬はうしうなるに、かみたまもの我主わがしゆイエズス、キリストにれる永遠えいえん生命せいめいなり。

第7章 編集

1兄弟等きやうだいたちよ、われ律法りつぱふれる人々ひとびとへば、なんぢ律法りつぱふひとつかさどらるるはけるあひだのみなることらざるか。 2けだしをつとあるをんなは、をつと存命ぞんめいちゆう律法りつぱふもつこれつながるといへども、をつとすればこれたいする律法りつぱふかるるなり。 3ればをつと存命ぞんめいちゆうひとけば姦婦かんぷばるべきも、をつとしたるときその律法りつぱふよりゆるされ、ひとくも姦婦かんぷにはあらざるなり。 4ればわが兄弟等きやうだいたちよ、なんぢもキリストの[]たいりて、律法りつぱふたいしてしたるものとなれり。これ死者ししやうちより復活ふくくわつたまひしのものにぞくして、われかみむすばんためなり。 5けだしわれにくりしとき律法りつぱふれる罪科ざいくわしよよくむすばせんとて、われ五體ごたいうちはたらきたりしが、 6いまわれすでつながれたりし律法りつぱふよりゆるされて、ぶんふるきによらず、れいあたらしきにりてつかまつるにいたれり。 7しからばわれなにをかはん、律法りつぱふつみなるか、しからず。りながら律法りつぱふらずしてはわれつみらざりき。けだし律法りつぱふが「むさぼることなかれ」とはざればわれむさぼりらざりしに、 8つみ機會きくわいじようじ、おきてによりて、わがうち所有あらゆる慾望よくぼうひきおこせり。すなは律法りつぱふなきときつみしたるものにして、 9われ昔時むかし律法りつぱふなくてきたりしが、おきてきたりしかば、つみ生回いきかへりて、 10われせり、かくわれかさんとてあたへられたるおきては、きたすものとなれり。 11けだしつみおきて機會きくわいじようじてわれまどはし、かつこれもつわれころせり。 12律法りつぱふせいなり、おきてせいにしてかつただしくかつぜんなり。 13しからばぜんなるものわれとなりたるか、しからず、ただつみつみあきらかあらはれんために、ぜんなるものをもつわれきたし、おきてによりてはなはだつみふかきものとなるにいたりしなり。 14われ律法りつぱふ靈的れいてきなることる、れどわれ肉的にくてきにしてつみもとられたるものなり。 15けだしおこなところわれこれらず、こころざぜんこれさずして、いとあくこれせばなり。 16かくわれいとことせば、律法りつぱふ同意どういしてみづかこれぜんなりとす、 17ればいまこれおこなものは、最早もはやわれあらずしてわれ宿やどれるつみなり。 18けだしわれこれれり、ぜんわれに、すなはわがにく宿やどれるにあらず、こころざことわれちかしといへども、ぜんまつたうすることをず、 19こころざぜんこれさず、いとあくかえつこれせばなり。 20かくわれみづかいとことせば、最早もはやこれおこなものは、われあらずしてわれ宿やどれるつみなり。 21ればわれぜんさんとするときは、のりとして、あくわれちかきをおぼゆ。 22けだし精神せいしんりてはかみ律法りつぱふよろこぶといへども、 23われ五體ごたいほかのりありて、わが精神せいしんのり敵對てきたいし、われとりこにして五體ごたいのりしたがはしむるをみとむ。 24嗚呼ああわれ不幸ふかうひとなるかなたれこの肉體にくたいよりわれすくふべきぞ、 25我主わがしゆイエズス、キリストにれるかみ恩寵おんちようこれなり。ゆゑわれみづか精神せいしんりてはかみ律法りつぱふつかへ、肉身にくしんりてはつみのりつかふ。

第8章 編集

1ればキリスト、イエズスにりて、にくしたがひてあゆまざるひとおいては、最早もはやつみしよせらるべきところなし、 2生命せいめいあたふるれいのりは、キリスト、イエズスにおいつみとののりよりわれすくひたればなり。 3それにくもつよわれるがゆゑに、律法りつぱふあたはざりしを、かみつみにくごとかたちもつ御子おんこつみためつかはしたまひ、そのにくおいつみ處分しよぶんたまへり。 4これにくしたがはずれいしたがひてあゆめるわれおいて、律法りつぱふ禁令きんれいまつたうせられんがためなり。 5にくしたが人々ひとびとにくことこのみ、れいしたが人々ひとびとれいことこのむ。 6にくこのみ[と]なり、れいこのみ生命せいめいおよ平安へいあん[と]なる。 7にくこのみはかみ敵對てきたいしてかみ律法りつぱふふくせず、またふくするあたはざればなり。 8ればにく人々ひとびとは、かみ御意みこころかなあたはず。 9かみれいもしなんぢ宿やどたまはば、なんぢにくらずしてれいるなり。ひともしキリストのれいいうせずば、キリストのものにあらず。 10もしキリストなんぢいまさば、肉體にくたいつみためしたるものなれども、れいとせられたるためく。 11もしイエズスを死者ししやうちより復活ふくくわつせしめたまひしものれいなんぢ宿やどたまはば、そのよりイエズス、キリストを復活ふくくわつせしめたまひしものは、なんぢ宿やどたまへるそのれいによりて、なんぢぬべき肉體にくたいをもかしたまはん。 12れば兄弟等きやうだいたちよ、われにくたいして、にくしたがひてくべき負債ふさいあるものあらず、 13けだしなんぢもしにくしたがひてきなばすべく、れいもつにくわざころさばかえつくべし。 14何人なんびとによらず、かみれいみちびかるるひとかみたればなり。 15けだしなんぢけしは、さらおそれいだ奴隷どれいたるのれいあらず、とせらるるれいけしなり。われがアバすなはちちぶはこれためなり。 16けだし[せい]れいみづかわれ精神せいしんともに、われかみたるをしようたまふ。 17すでたればまた世嗣よつぎたり、すなはかみ世嗣よつぎにして、キリストと共同きようどう世嗣よつぎたるなり。これわれもしともくるしまば、光榮くわうえいまたともくべきためなり。 18われおもふに現世このよくるしみは、われうへあらはるべき將來しやうらい光榮くわうえいおよぶものにあらず、 19けだし造物ざうぶつあふぎててるは、かみ子等こどもあらはれんことてるなり。 20造物ざうぶつむなしきふくせしめられたるもこれこのまず、おのれ希望きぼうもつふくせしめたまひしものにたいしてしかするのみ。 21造物ざうぶつみづか腐敗ふはい奴隷どれいたることのがれて、かみ子等こども光榮くわうえい自由じいうべければなり。 22すなはわれる、造物ざうぶつみないまいたるまであひともなげき、かつ陣痛ぢんつうへるなりと。 23ただ造物ざうぶつのみならず、聖靈せいれい最初さいしよたまものたるわれも、みづかこころうちなげき、かみ子等こどもとせられて肉體にくたいあがなはれんことあふてるなり。 24けだしわれすくはれたるはなほ希望きぼうとどまる、ゆる希望きぼう希望きぼうあらず、すでところひとなんこれ希望きぼうせん。 25ざるところ希望きぼうするにあたりては、われ忍耐にんたいもつこれつ。 26かくごとく、聖靈せいれいまたわれよわきたすたまふ。けだしわれなにいのるべきかをらざれども、[せい]れいおんみづからふべからざるなげきもつて、われためもとたまふ。 27かくて、こころ見透みとほたまふものは[せい]れいのぞたまへるところたまふ。かみ御旨みむねしたがひて、聖徒せいとためもとたまへばなり。 28われれり、かみあいするものすなは規定きていおうじて聖徒せいとされたる人々ひとびとには、萬事ばんじともはたらきてそのためえきあらざるはなし、と。 29けだしかみ豫知よちたまへる人々ひとびとを、御子おんこすがた肖似あやからしめんと豫定よていたまへり、これ御子おんこおほくの兄弟きやうだいうち長子ちやうしたらんためなり。 30かく豫定よていたまひしひとにはまたこれし、たまひしひとまたこれとならしめ、とならしめたまひしひとには、またたまふに光榮くわうえいもつてしたまひしなり。 31これことくはへてわれまたなにをかはん、かみもしわれためにしたまはば、たれわれてきたいするものぞ、 32わが御子おんこをすらをしたまはず、かえつわれ一同いちどうためこれわたたまひたれば、いかでかこれへて、一切いつさいわれたまはざらんや。 33かみえらまれたる人々ひとびとうつたふるものたれぞ、とならしめたまかみならんか。 34これつみしよするものたれぞ、してしか復活ふくくわつし、かみみぎましましてなほわれため執成とりなたまふキリスト、イエズスならんか。 35ればキリストにたいするあいより、われ引離ひきはなものたれぞ、これ苦難くなんならんか、うれひか、うゑか、裸體らたいか、危險きけんか、迫害はくがいか、つるぎか、 36かきしるして「われ終日ひねもすしゆため危險きけんひ、ほふらるべきひつじごとくせらるるなり」とあるがごとし。 37れどわれこのすべてのことうちりて、われあいたまへるものにより、ちてなほあまりあり。 38けだしわれ確信かくしんす、も、せいも、天使てんしも、權勢けんせいも、能力のうりよくも、現在げんざいことも、未來みらいことも、(ちからも)、 39たかさもふかさも、如何いかなる造物ざうぶつも、我主わがしゆイエズス、キリストにおけかみいつくしみより、われはなるものなし、と。

第9章 編集

1われはキリスト[の御前みまへ]にまことひていつはらず、わが良心りやうしん聖靈せいれい一致いつちしてわれ證明しようめいす。 2われおほいなるうれひあり、わがこころ間斷たえまなき苦痛くつうあり。 3すなはわが兄弟等きやうだいたちためには、われほとんみづからキリストにてられんことをすらのぞまんとす。彼等かれら肉身上にくしんじやうわが親族しんぞくなり、 4イスラエルじんなり、かみとせらるることと、光榮くわうえいしよ契約けいやく律法りつぱふ拜禮はいれい約束やくそくとは彼等かれらのものなり。 5祖先そせんたち彼等かれらのもの、キリストも肉身上にくしんじやうよりすれば彼等かれらよりたまひしなり。すなは萬物ばんぶつうへ世々よよしゆくせられたまかみにてまします、アメン。 6れどかみ御言おんことばすたれりとふにはあらず、けだしイスラエルよりでしひとみなイスラエルじんたるにあらず、 7またアブラハムのすゑたるひとみなたるにあらず、ただし「イザアクよりづるものなんぢすゑばれん」とあり。 8すなはにくたる人々ひとびとかみたるにあらずして、約束やくそくたる人々ひとびとこそそのすゑとせらるるなれ。 9けだし約束やくそくことばは、「このときいたらばわれきたらん、しかして[つま]サラには一子いつしあるべし」とこれなり。 10加之しかのみならずレベッカもまた一人ひとりわが先祖せんぞイザアクによりて[雙兒ふたごを]懷胎くわいたいせしに、 11いまうまれずまた何等なんら善惡よしあしさざるうちに、かみ規定きてい選拔せんばつしたがひてそんするために、 12おこなひによらずめしによりて「あにおととつかへん」とはれたり。 13かきしるして「われイザアクをあいしエザウをにくめり」とあるがごとし。 14ればわれなにをかふべき、かみおい不義ふぎありや、しからず、 15はモイゼにのたまはく「あへあはれまんひとあはれみ、あへ慈悲じひほどこさんひと慈悲じひほどこさん」と。 16ればほつするひとにもはしひとにもらずして、あはれたまかみるなり。 17けだし聖書せいしよファラオンにいへらく「なんぢてしは、ことなんぢおい權能けんのうあらはし、わがぜん世界せかいつたへられんためなり」と。 18ればかみ思召おぼしめしひとあはれみ、思召おぼしめしひとかたくしたまふなり。 19これによりてなんぢあるひはん、らばなんなほとがたまふや、たれその思召おぼしめし抵抗ていかうせん、と。 20ああひとよ、なんぢたれなればかみいひさからふぞ。土器どきおのれつくりたるひとむかひて、何故なにゆゑわれつくりしぞとふか。 21陶師やきものしおなつちくれもつて、ひとつうつはたふとようためひとつうつはいやしきようためつくるのけんあるにあらずや。 22かみもしいかりあらはたまひ、おの權能けんのうらしめんとして、ほろぶべくそなはりたるうつはおほいなる忍耐にんたいもつしのたまひしに、 23光榮くわうえいあるべく豫備よびたまひしあはれみうつはたいして、おの光榮くわうえいゆたかなるをしめさんとしたまはば如何いかん24あはれみうつはとしてただにユデアじんうちよりのみならず、異邦いはうじんうちよりわれたまひしなり。 25これオゼアしよに、「われわがたみたらざりしものわがたみび、あいせられざりしものあいせらるるものと(び、あはれみざりしものあはれみものと)ばん、」 26また彼等かれらすでに、なんぢわがたみあらず、とはれしそのところおいて、けるかみ子等こどもとなへらるることあらん」とのたまひしがごとし。 27イザヤもイスラエルにきてよばはりけるは、「イスラエルのかずうみすなごとくなるも、のこもののみすくはれん。 28けだししゆ御言おんことばすみやか地上ちじやうおこなたまふべければ、もつこれすみやかまつたうしたまふべし」と。 29またイザヤが預言よげんして、「萬軍ばんぐんしゆもしわれたねのこたまはざりせば、われはソドマのごとり、ゴモラにたるものとりしならん」、とひしがごとし。 30しからばわれなにをかふべき。追求つゐきうせざりし異邦いはうじんとらへたり、ただし信仰しんかうれるなり。 31かえつてイスラエルはのり追求つゐきうしつつも、のりいたらざりき。 32これなんゆゑぞ、彼等かれら信仰しんかうらずしてげふるがごとくにしたればなり。すなはつまづいしつきあたれるなり、 33かきしるして、「よ、われシオンにおいつまづいしつきあたいはく、たれにもあれこれしんずるひとは、はづかしめらるるものなからん」と、あるがごとし。

第10章 編集

1兄弟等きやうだいたちよ、せつこころのぞところかみいのところは、彼等かれらすくはれんことなり。 2われ彼等かれらかみ熱心ねつしんなること證明しようめいす、れどその熱心ねつしん知識ちしき一致いつちせず、 3かみらず、かつおのてんことをつとめて、かみふくせざればなり。 4けだし律法りつぱふをはりはキリストにして、これしんずるひとおのおのとせられんためなり。 5かくてモイゼは律法りつぱふきて、「これせるひと律法りつぱふりてくべし」としるしたるに、 6信仰しんかうきてはへらく、「なんぢこころうちふことなかれ、たれてんのぼらんと」、これキリストを引下ひきくだためならん。 7あるひたれ陰府よみくだらんと」、これキリストをより呼起よびかへためならん。 8しかるに(聖書せいしよに)なんへるぞ、「御言おんことばなんぢちかく、なんぢくちり、なんぢこころり」と、これすなはわれぶるところ信仰しんかうことばなり。 9けだしなんぢもしくちもつしゆイエズスを宣言せんげんし、こころもつかみこれ死者ししやうちより復活ふくくわつせしめたまひしことをしんぜばすくはるべし。 10こころにはしんじてとせられ、くちには宣言せんげんして救靈たすかりべければなり。 11すなは聖書せいしよいはく、「(たれにもあれ)かれしんずるひとはづかしめられじ」と。 12けだし萬民ばんみんしゆゆゐいつましまして、たのたてまつ一切いつさいひとたいしてゆたかましませば、ユデアじんとギリシアじんとのべつあることなし。 13ゆゑたれにもあれしゆ御名みなたのひとすくはるべし。 14しからばいましんぜざりしもの如何いかにしてかこれたのまん、いまかざりしもの如何いかにしてかこれしんぜん、ぶるひとなくば如何いかにしてかこれくべき、 15つかはされずば如何いかにしてかべん、かきしるして「あなうるはし、さいはひ平和へいわげ、善事ぜんじぐる人々ひとびとあし」、とあるがごとし。 16れどもみな福音ふくいんしたがへるにはあらず、すなはちイザヤいはく、「しゆよ、われきてしんぜしものたれぞや」と。 17れば信仰しんかうくよりおこり、くはキリストの御言おんことばもつてす。 18れどわれはん、彼等かれらこえざりしか、と。しからず、しかも「そのこゑぜん世界せかい行渡ゆきわたり、そのことばはてにまでおよべり」 19れどわれはん、イスラエルはらざりしかと、[しからず]、モイゼまづいはく「わがたみたらざるものもつなんぢねたましめ、おろかなるたみたいしていからしめん」と。 20イザヤもまたあへいはく、「われさがさざりし人々ひとびとだされ、たづねざりし人々ひとびと公然こうぜんあらはれたり」と。 21またイスラエルにむかひていはく、「われしんぜずしてさからへるたみを、終日しうじつべててり」と。

第11章 編集

1しからばわれはん、かみそのたみたまひしかと、しからず、われもイスラエルじんにして、アブラハムのすゑ、ベンヤミンのぞくなればなり。 2かみ豫知よちたまひしおのれたみたまはざりしなり。なんぢエリアにきて聖書せいしよへることらざるか、すなはかれイスラエルじんかみうつたへてへらく、 3しゆよ、彼等かれらしゆ預言よげんしやたちころし、ことごとしゆ祭壇さいだんこぼてり、われ一人ひとりのこれるに、なほわがいのちもとめんとするなり」と。 4しかしてかみおんこたえなんのたまへるぞ、「われおのれために、バアルのまへひざまづかざる七千の男子だんしのこしたるなり」と。 5かくごとく、いまときまた恩寵おんちようえらみりてのこれるものすくはれたり。 6恩寵おんちようればわざるにあらず、しからざれば恩寵おんちよう最早もはや恩寵おんちようあらざるべし。 7しからばなんぞや、イスラエルじんそのもとたりしところず、えらまれたるひとこれて、ひと頑固かたくなになれり。 8かきしるして、「かみ彼等かれら茫然ぼうぜんたる精神せいしんべからざるききべからざるみみたまひて今日けふいたる」、とあるがごとし。 9ダヴィドまたいはく「ねがはくは彼等かれら食卓しよくたくあみとなり、わなとなり、つまづくものとなり、むくいとなれかし、 10そのくらみてえざらしめ、その何時いつかがましめたまへ」、と。 11ればわれはん、彼等かれらつまづきしはたふれんためなるかと、しからず、かえつ彼等かれらねたましむるやうその墮落だらくによりて、すくひ異邦いはうじんうへきたれり。 12もし彼等かれら墮落だらくとみとなり、その減少げんせう異邦いはうじんとみとならば、いわん彼等かれら全數ぜんすうをや。 13けだしわれなんぢ異邦いはうじんはん、われ異邦いはうじん使徒しとたるあひだは、が[せい]えき榮譽えいよきたさん。 14これ如何いかにもして、わが骨肉こつにくたるもの刺激しげきしてこれはげまし、その幾何いくばくかをすくはんためなり。 15けだし彼等かれら排斥はいせき和睦わぼくとならば、その採用さいようあにより再生さいせいするにおなじからざらんや。 16もしぱん初穗はつほせいならば全體ぜんたいしかあるべく、せいならばえだしかあるべし。 17假令たとひ幾何いくばくかのえだられて、野生やせい橄欖かんらんたりしなんぢこれがれ、橄欖かんらん液汁えきじふとをともにするものとなりたりとも、 18えだむかひてほこることなかれ、ほこらんとするも、なんぢたもつにあらずしてこそなんぢたもつなれ。 19なんぢあるひはん、えだられしはがれんためなりと。 20し、彼等かれらその信仰しんかうりてられしに、なんぢ信仰しんかうりててるなり。れどたかぶることなかれ、かえつおそれよ。 21けだしかみもとえだをしたまはざりしなれば、おそらくはなんぢをもをしたまはざるべし。 22ればかみ慈愛じあい嚴格げんかくとをよ、たふれし人々ひとびとたいしてはこれ嚴格げんかくなんぢたいしてはこれ慈愛じあいただしこれなんぢその慈愛じあいとどまればのみ、しからずんばなんぢとりのぞかるべし。 23彼等かれらもし信仰しんかうとどまらずばがるるならん、かみふたたこれぐことをたまへばなり。 24なんぢ生來せいらい野生やせいなる橄欖かんらんより切取きりとられ、その本性ほんせいはんして橄欖かんらんがれたれば、いわん本性ほんせいのものがもと橄欖かんらんがるるをや。 25兄弟等きやうだいたちよ、みづかさとしとすることなからんために、われなんぢこの奧義おくぎらざるをこのまず、すなはちイスラエルのいく部分ぶぶん頑固かたくなになれるは、異邦いはうじん全體ぜんたい入來いりきたるまでなり。 26かくてイスラエルはこぞりてすくはるるにいたるべし、かきしるして、「すくものシオンにきたり、ヤコブより不敬ふけいらしめん。 27われ彼等かれらつみとりのぞきたらんとき彼等かれらむすぶべき約束やくそくこれなり」、とあるがごとし。 28福音ふくいんきては、彼等かれらなんぢためてきなれども、選拔せんばつきてはその祖先そせんため至愛しあいものなり、 29かみたまものめしとは、取消とりけさるることなければなり。 30かくなんぢもとかみしたがはざりしに、いま彼等かれら從順じゆうじゆんりて慈悲じひかうむりしごとく、 31いま彼等かれらしたがはざるもまたなんぢの[かうむりし]慈悲じひりておのれ慈悲じひかうむらんためなり。 32これ衆人しゆうじんあはれたまはんために、かみこれ從順じゆうじゆんたまへるなり。 33嗚呼ああ高大かうだいなるかなかみとみ智惠ちゑ知識ちしきと。その判定はんていさとがたさよ、そのみちきはがたさよ。 34たれしゆ御心みこころり、たれこれともはかりたるぞ。 35たれまづこれあたへて、そのむくいものぞ。 36けだし萬事ばんじかれりてかれもつかれためり、光榮くわうえい世々よよかれす、アメン。

第12章 編集

1れば兄弟等きやうだいたちよ、わがかみもろもろあはれみりてなんぢすすむ。なんぢその肉身からだもつて、ける、せいなる、かみ御意みこころかなへる犧牲いけにへおの道理だうりてき禮拜れいはいとしてそなへよ。 2またこのならしたがことなく、かえつかみ御旨みむねすなはぜん御意みこころかなこと完全くわんぜんとの如何いかなるものなるかをさとらんため精神せいしん一新いつしんしてみづか改革かいかくせよ。 3けだしわれたまはりたる恩寵おんちようによりて、なんぢうちすべてのひとはん、おのれおもんずべき程度ていど以上いじやうおもんぜず、適宜てきぎに、しかかみ夫々それぞれ分配ぶんぱいたまひし信仰しんかうりやうしたがひておもんぜよ。 4けだしわれひとつからだおほくのえだありて、すべてのえだそのようおなじうせざるがごとく、 5われおほくのひとは、キリストにおいひとつからだにして、おのおのたがひえだたるなり。 6ればわれたまはりたる恩寵おんちようしたがひてたまものことにしたれば、預言よげん信仰しんかうしたがひてし、 7せいえきせいえきに[從事じうじし]、をしふるひとをしへに[とどまり]、 8すすめひとすすめし、あたふるひと淡白たんぱくもつてし、つかさどひと奮發ふんぱつもつてし、慈悲じひほどこひとよろこびもつてすべし。 9あい表裏へうりあるべからず、なんぢあくきらひてぜんき、 10兄弟きやうだいあいもつあひいつくしみ、たがひあひ推重すゐちようし、 11注意ちゆういおこたらず、熱心ねつしんにしてしゆつかへ、 12希望きぼうによりてよろこび、患難くわんなん忍耐にんたいし、えず祈祷きたう從事じうじし、 13聖徒せいと入用にうようたすけ、接待せつたいおこなひ、 14なんぢ迫害はくがいするひとしゆくせよ、しゆくしてのろふことなかれ。 15よろこ人々ひとびとともよろこび、人々ひとびとともき、 16こころあひおなじうし、たかきをおもはずしてひくきにあまんじ、みづかかしこしとすることなかれ。 17如何いかなるひとにもあくもつあくむくゆることなく、ただかみ御前みまへのみならず、衆人しゆうじんまへにもぜんなることはかり、 18なんぢちからおよかぎり、べくんば衆人しゆうじんあひせよ。 19至愛しあいなるものよ、みづか復讐ふくしゆうせずして[かみの]いかりまかせよ、かきしるして、「しゆのたまはく、復讐ふくしゆうわがことなり、われむくいん」とあればなり。 20かえつなんぢあだゑなばこれしよくせしめ、かわかばこれましめよ。くすればなんぢかれかうべ燃炭もえすみむならん、 21あくたるることなく、ぜんもつあくて。

第13章 編集

1ひとおのおのうへてるしよけんふくすべし。けだしけんにしてかみよりでざるはなく、げんところけんかみよりさだめられたるものなり、 2ゆゑけんさからふひとかみさだめさからひ、さからふ人々ひとびとおのれつみ3君主くんしゆおそるべきは、わざためあらずしてあしわざためなり。なんぢけんおそれざらんとほつするか、ぜんおこなへ、しからばかのよりほまれべし。 4なんぢえきせんためかみ役者えきしやなればなり。れどなんぢもしあくおこなはばおそれよ、かれいたずらつるぎぶるものにあらず、かみ役者えきしやにしてあくおこなひといかりもつむくゆるものなればなり。 5れば服從ふくじゆうすることは、なんぢ必要ひつえうにして、ただいかりためのみならず、また良心りやうしんためなり。 6けだしなんぢまたこれためぜいおさむ、彼等かれらかみ役者えきしやにして、これためつとむればなり。 7ればなんぢすべてのひと負目おひめかへせ、すなはぜいおさむべきひとにはぜいおさめ、課物かかりものはらふべきひとにはこれはらひ、おそるべきものにはおそれ、たふとぶべきものこれたふとべ。 8なんぢあひあいするのほかは、たれにも何等なんら負債ふさいあるべからず、ちかものあいするひと律法りつぱふまつたうしたるものなればなり。 9けだしなんぢ姦淫かんいんするなかれ、ころなかれ、ぬすなかれ、僞證ぎしようするなかれ、むさぼなかれ」、このほかいましめありといへども、なんぢちかものおのれごとくにあいせよとのことばうちつづまる。 10あい他人たにんしきことず、ゆゑあい律法りつぱふ完備くわんびなり。 11かくすべきはこれわれ時期じきれるゆゑなり。すなはねむりよりくべきときすできたれり、けだし信仰しんかうせしときよりもわれ救靈たすかりいまちかきにあり。 12けたり、ちかづけり、ればわれやみわざてて、ひかりよろひるべし、 13日中につちゆうごとただしくあゆむべくして、饕食たうしょく醉酗すいけう密通みつつう淫亂いんらん爭闘さうとう嫉妬しつととにあゆからず、 14かえつしゆイエズス、キリストをよ、かつあくよくおこるべきにくおもんばかりすことなかれ。

第14章 編集

1信仰しんかうよわひとくるに親切しんせつもつてし、おもところあらそふことなかれ。 2けだしあるひとすべてのものしよくするをしとするに、よわひと野菜やさいしよくす。 3しよくするひとしよくせざるひとかろんずべからず、しよくせざるひとまたしよくするひと是非ぜひすべからず、かみひと承容うけいたまひたればなり。 4なんぢたれなればぞくするしもべ是非ぜひするぞ、つもたふるるも、そのしゆかかはることなり。ただしかならずやつならん、かみこれたしむることたまへばなり。 5あるひととを弁別べんべつするに、ひと如何いかなるをもどういつにす、おのおのその料簡れうけんしたがふべきのみ。 6區別くべつするひとしゆためこれ區別くべつし、しよくするひとしゆためしよくす、かみ感謝かんしやすればなり。しよくせざるひとしゆためしよくせずしてまたかみ感謝かんしやす。 7けだしわれうちおのれためくるものなく、おのれためするものなし、 8われくるもしゆためき、するもしゆためすればなり。ゆゑわれくるもするもしゆものなり。 9けだしキリストのして復活ふくくわつたまひしは、死者ししや生者せいしやとをつかさどたまはんがためなり。 10しかるになんぢ何故なにゆゑ兄弟きやうだい是非ぜひするぞ、何故なにゆゑ兄弟きやうだいかろんずるぞ、われみなかみ法廷はふていつべきものなるをや。 11かきしるして、「しゆのたまはく、われくるなり、すべてのひざわがまへかがまり、すべてのしたかみ宣言せんげんするにいたらん」、とあるがごとし、 12すなはわれおのおのおのれことかみたださるべし。 13ればわれたがひつみさだむべからず、むしろなんぢ兄弟きやうだいまへに、つまづかすべきもの、あるひわなとなるものをかざらんことさだめよ。 14われしゆイエズスにおいかつ確信かくしんす、なにものかれによりてみづかきよからざるはなく、そのきよからざるは、きよからずとおもひとおいてのみ。 15もし食物しよくもつためなんぢ兄弟きやうだいうれひしむれば、なんぢすであいしたがひてあゆものあらず、キリストのしてあがなたまひしひとを、食物しよくもつためほろぼすことなかれ。 16ればわれてるきものはののしらるべかず、 17かみくに飲食いんしよくにあるにあらずして、聖靈せいれいれる平和へいわよろこびとにればなり。 18けだしこれもつてキリストにつかふるひとかみ御意みこころかなひ、人々ひとびとにもしとせらるるなり。 19ゆゑわれ平和へいわこと追求つゐきうして、ひととくつべきことたがひまもるべきなり。 20食物しよくもつためかみ事業じげふほろぼすことなかれ、すべてのものきよしといへども、しよくしてつまづかするひとにはあくとなる。 21肉食にくしよく飲酒いんしゆ其他そのたなんぢ兄弟きやうだいあるひこころいため、あるひつまづき、あるひよわくなることざるをしとす。 22なんぢに[かく]しんあらんか、これかみ御前みまへうちたもて。しとすることきておのれとがめざるひとさいはひなり、 23れどうたがひつつしよくしたるときつみせらる、は[かく]しんによりてざればなり、すべて[かく]しんらざることつみなり。

第15章 編集

1われつよものよわ人々ひとびと虛弱きよじやくになふべくして、おのれよろこばすべからず、 2なんぢおのおのちかひととくつべく、善事ぜんじもつこれよろこばすべし。 3けだしキリストはおのれよろこばしたまはず、かえつかきしるして、「なんぢ[しゆ]をののしれる人々ひとびと侮辱ぶじよくわれちかかれり」、とあるがごとくにたまへり。 4けだしすべさきかきしるされたることわれ敎訓けうくんとなり、われをして聖書せいしよ忍耐にんたい慰籍なぐさめとをもつて、希望きぼうたもたしめんためかきしるされたるなり。 5ねがはくは忍耐にんたい慰籍なぐさめとをたまかみなんぢをしてイエズス、キリストにしたがひてこころおなじうせしめ、 6ひとつこころひとつくちもつ我主わがしゆイエズス、キリストのかみにしてちちにてましますものをあがたてまつるをしめたまはんことを。 7ればキリストがかみ光榮くわうえいためなんぢ承容うけいたまひしごとく、なんぢたがひ承容うけいれよ。 8われはん、キリスト、イエズスが割禮かつれい[の人々ひとびと]の役者えきしやとなりたまひしは、かみ眞實しんじつあらはし、祖先そせんの[かうむりし]約束やくそくかため、 9また異邦いはうじんをしてかみそのあはれみによりてあがめしめたまはんためなり。かきしるして「ればしゆよ、われ異邦いはうじんうちなんぢ宣言せんげんし、かつ御名みなほめうたはん」とあるがごとし。 10またいはく、「異邦いはうじんたちよ、しゆたみともよろこべ」、 11またもろもろくにしゆ讃美さんびせよ、もろもろたみこれあがたてまつれ」とあり。 12またイザヤいはく、「イエッセのめざして異邦いはうじんをさむべきものおこらん、異邦いはうじんこれ希望きぼうせん」と。 13ねがはくは希望きぼうかみ信仰しんかうによりておこ一切いつさいよろこび平安へいあんとをなんぢ滿たしめ、聖靈せいれいちからもつなんぢ希望きぼうゆたかならしめたまはんことを。 14わが兄弟等きやうだいたちよ、われなんぢみづか慈愛じあい滿ち、かつすべての智識ちしき滿ちて、たがひ訓戒くんかいものなること確信かくしんす。 15れど兄弟等きやうだいたちよ、ややもすればあまりにはばかりなくなんぢ書贈かきおくりしこと、あたかなんぢをしておもひいださしめんとせるごとくなるは、これかみよりわれたまはりたる恩寵おんちようれり。 16この恩寵おんちようあるは、われ異邦いはうじんために、キリスト、イエズスの役者えきしやとなりて、かみ福音ふくいん祭務さいむ執行しつかうし、異邦いはうじん聖靈せいれいりてせいとせられ、御意みこころかなへる獻物ささげものとならんためなり。 17ればかみくわんして、キリスト、イエズスにおいほこるべきところあり。 18けだしキリストが異邦いはうじんしたがはしめんためわれもちひ、ことばおこなひとをもつて、 19しるし奇蹟きせきとの勢力ちからおよ聖靈せいれい能力ちからりてたまへることあらざれば、われあへこれかたらず。すなはちエルザレムよりイルリコ[しう]にいたまで地方ちはうめぐりて、キリストの福音ふくいん滿たせり。 20ただし福音ふくいんべしは、キリストの御名みなすでとなへられたるところあらず、他人たにんきたる基礎きそうへきづかざらんためなり。 21かきしるして、「いまげられざりし人々ひとびとこれん、かざりし人々ひとびとさとらん」、とあるがごとし。 22なんぢいたことこれためさまたげられて、われいままでとどめられたりしが、 23いまはやこの地方ちはうすべきことなく、なんぢいたらんことは、年來としごろせつなるねがひなれば、 24イスパニアへかんときに、立寄たちよりてなんぢことまたなんぢもつ幾分いくぶん滿足まんぞくたるのちなんぢより彼處かしこおくられんことこれわが希望きぼうなり。 25ればいまはエルザレムにいたり、聖徒せいとたちつかへんとす。 26けだしマケドニアおよびアカヤ[しう](の人々ひとびと)はエルザレムに聖徒せいと貧者ひんしやために、幾何いくばく醵金きよきんするをもつしとせり。 27かの人々ひとびとこれしとせしが、しか彼等かれら負債ふさいあるものなり。けだし異邦いはうじんは、彼等かれら靈的れいてき事物じぶつ分配ぶんぱいけたれば、肉的にくてき事物じぶつもつ彼等かれらきようすべきなり。 28ればわれこの用事ようじへ、その彼等かれらわけあたへてのちなんぢてイスパニアへかん。 29われなんぢいたらば、キリスト(の福音ふくいん)のゆたかなる祝福しゆくふくもついたるべきは、ところなり。 30ゆゑ兄弟等きやうだいたちよ、我主わがしゆイエズス、キリストにり、また聖靈せいれいいつくしみりて、われなんぢこひねがふ。わがためかみいのりもつわれともたたかへ。 31これユデアに信者しんじやよりすくはれんためかつもち贈物おくりものがエルザレムの聖徒せいとたちこころかなはんため32かみ御旨みむねしたがよろこびてなんぢいたり、なんぢともやすんずることためなり。 33ねがはくは平和へいわかみなんぢ一同いちどうともましまさんことを、アメン。

第16章 編集

1われ姉妹しまいにしてケンクライ敎會けうくわいぢよ執事しつじなるフェベをなんぢ依賴いらいす。 2聖徒せいととして相應ふさわしくこれしゆおい接待せつたいし、なんぢもとめんすべてのことおいこれたすけよ、かのをんなみづからもすでおほくのひとたすけ、われをもたすけたればなり。 3ふプリスカ、アクィラおよそのいへ敎會けうくわいにもよろしくとへ。彼等かれらがキリスト、イエズスにおけわが協力けふりよくしやにして、 4わが生命せいめいためおのくび差出さしいだせるは、ひとりわれのみならず、異邦いはうじんしよ敎會けうくわいまた彼等かれら感謝かんしやするところなり。 5エペネトによろしくとへ、これあいするひとにして、キリストにおける[せう]アジア最初さいしよ信者しんじやなり。 6なんぢためおほいに盡力じんりよくせしマリアによろしくとへ。 7アンドロニコおよびユニアによろしくとへ、彼等かれらわが親戚しんせきにして、われとも監獄かんごくり、その使徒しとうちたかく、われよりさきにキリストにきしものなり。 8しゆおいわが至愛しあいなるアンプリアトによろしくとへ。 9キリスト(イエズス)にりてわれ協力けふりよくしやなるウルバノおよあいするスタキスによろしくとへ。 10キリストにおい忠實ちゆうじつなるアッペルレによろしくとへ。 11アリストブルのいへなる人々ひとびとよろしくとへ。わが親族しんぞくヘロヂオンによろしくとへ。ナルキスのいへおいしゆ人々ひとびとよろしくとへ。 12しゆため盡力じんりよくする[婦人ふじん]トリフェナおよびトリフォザによろしくとへ。しゆためおほいに盡力じんりよくせし至愛しあいなる[婦人ふじん]ペルシデによろしくとへ。 13しゆおいえらまれしルフォおよかれははにしてまたわがははなるひとよろしくとへ。 14アッシンクリト、フレゴン、ヘルマス、バニトロバ、ヘルメスおよ彼等かれらとも兄弟等きやうだいたちよろしくとへ。 15フィロロゴおよびユリア、ネレオおよその姉妹しまい、オリンピアおよ彼等かれらとも聖徒せいと一同いちどうよろしくとへ。 16せいなる接吻せつぷんもつたがひよろしくとへ。キリストのしよ敎會けうくわいなんぢよろしくとへり。 17兄弟等きやうだいたちよ、われなんぢすすむ、なんぢまなびしをしへはんして、あらそひおよさまたげせる人々ひとびとみとめてこれけよ。 18けだしかかやからは、我主わがしゆキリストにつかへずしておのはらつかへ、あまきことばおよ諂諛こびへつらひもつて、無邪氣むじやきなる人々ひとびとこころまどはすなり。 19なんぢ從順じゆうじゆんなること何處いづこにもきこえたるは、なんぢためよろこところなり。ただのぞむらくはなんぢぜんたいしてかしこく、あくたいしてうとからんことを。 20ねがはくは平和へいわかみすみやかにサタンをなんぢあししたくだたまひ、我主わがしゆイエズス、キリストの恩寵おんちようなんぢともらんことを。 21わが協力けふりよくしやなるチモテオおよわが親族しんぞくなるルシオとヤソンとソシパテルと、なんぢよろしくとへり。 22この書簡しよかんきしわれテルシオ、しゆおいなんぢよろしくとふ。 23ぜん敎會けうくわいわれとの宿主やどぬしカヨなんぢよろしくとひ、まち主計しゆけいエラストおよ兄弟きやうだいクワルトなんぢよろしくとへり。 24ねがはくは我主わがしゆイエズス、キリストの恩寵おんちようすべなんぢともらんことを、アメン。 25なほながあひだもくせられしに、いま預言よげんしやたちしよおうじて、永遠えいえんかみめいり、信仰しんかうふくせしめんとて、萬民ばんみんあらはれたる奧義おくぎしめししたがひ、 26わが福音ふくいんとイエズス、キリストの宣敎せんけうとにおうじて、なんぢ堅固けんごならしむるをたまふもの、 27すなはゆゐいつ智者ちしやましませるかみに、イエズス、キリストをもつ世々よよ尊貴そんき光榮くわうえいとあれかし、アメン。