ホセア書(文語訳)

<聖書<文語訳旧約聖書

w:舊新約聖書 [文語]』w:日本聖書協会、1953年

w:明治元訳聖書

w:ホセア書

第1章

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これユダの王ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの世イスラエルの王ヨアシの子ヤラベアムの世にベエリの子ホセアに臨めるヱホバの言なり

ヱホバはじめホセアによりて語りたまへる時ヱホバ、ホセアに宣はく汝ゆきて淫行の婦人を娶り淫行の子等を取れ この國ヱホバに遠ざかりてはなはだしき淫行をなせばなり

是において彼ゆきてデブライムの女子ゴメルを妻に娶りけるがその婦はらみて男子を產り

ヱホバまた彼にいひ給ひけるは汝その名をヱズレルと名くべし 暫時ありて我ヱズレルの血をヱヒウの家に報いイスラエルの家の國をほろぼすべければなり

その日われヱズレルの谷にてイスラエルの弓を折べしと

ゴメルまた孕みて女子を產ければヱホバ、ホセアに言たまひけるは汝その名をロルマハ(憐まれぬ者)と名くべしそは我もはやイスラエルの家をあはれみて赦すが如きことを爲ざるべければなり

然どわれユダの家をあはれまん その神ヱホバによりて之をすくはん 我は弓劍戰爭馬騎兵などによりてすくふことをせじ

ロルハマ乳をやめゴメルまた孕みて男子を產けるに

ヱホバ言たまひけるはその子の名をロアンミ(吾民に非ざる者)と名くべし 其は汝らは吾民にあらず我は汝らの神に非ざればなり

然どイスラエルの子孫の數は濱の沙石のごとくに成ゆきて量ることも數ふる事も爲しがたく前になんぢらわが民にあらずと言れしその處にて汝らは活神の子なりと言れんとす

斯てユダの子孫とイスラエルの子孫は共に集り一人の首をたててその地より上り來らん ヱズレルの日は大なるべし

第2章

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汝らの兄弟に向ひてはアンミ(わが民)と言ひ汝らの姉妹にむかひてはルハマ(憐まるる者)と言へ

なんぢらの母とあげつらへ論辨ふことをせよ彼はわが妻にあらず我はかれの夫にあらざるなりなんぢら斯してかれにその面より淫行を除かせその乳房の間より姦淫をのぞかしめよ

然らざれば我かれを剥て赤體にしその生れいでたる日のごとくにしまた荒野のごとくならしめ潤ひなき地のごとくならしめ渇によりて死しめん

我その子等を憐まじ淫行の子等なればなり

かれらの母は淫行をなせりかれらを生る者は恥べき事をおこなへり蓋かれいへる言あり我はわが戀人等につきしたがはん彼らはわがパンわが水わが羊毛わが麻わが油わが飮物などを我に與ふるなりと

この故にわれ荊棘をもてなんぢの路をふさぎ垣をたてて彼にその徑をえざらしむべし

彼はその戀人たちの後をしたひゆけども追及ことなく之をたづぬれども遇ことなし是において彼いはん我ゆきてわが前の夫にかへるべしかのときのわが状態は今にまさりて善りきと

彼が得る穀物と酒と油はわが與ふるところ彼がバアルのために用ゐたる金銀はわが彼に増あたへたるところなるを彼はしらざるなり

これによりて我わが穀物をその時におよびて奪ひわが酒をその季にいたりてうばひ又かれの裸體をおほふに用ゆべきわが羊毛およびわが麻をとらん

今われかれの恥るところをその戀人等の目のまへに露すべし彼をわが手より救ふものあらじ

我かれがすべての喜樂すなはち祝筵新月のいはひ安息日および一切の節會をして息しめん

また彼の葡萄の樹と無花果樹をそこなはん彼さきに此等をさしてわが戀人の我にあたへし賞賜なりと言しがわれこれを林となし野の獣をしてくらはしめん

われかれが耳環頸玉などを掛てその戀人らをしたひゆき我をわすれ香をたきて事へしもろもろのバアルの日のゆゑをもてその罪を罰せんヱホバかく言たまふ

斯るがゆゑに我かれを誘ひて荒野にみちびきいり終にかれの心をなぐさめ

かしこを出るや直ちにわれかれにその葡萄園を與へアコル(艱難)の谷を望の門となしてあたへん彼はわかかりし時のごとくエジプトの國より上りきたりし時のごとくかしこにて歌うたはん

ヱホバ言たまふその日にはなんぢ我をふたたびバアリとよばずしてイシ(吾夫)とよばん

我もろもろのバアルの名をかれが口よりとりのぞき重ねてその名を世に記憶せらるること無らしめん

その日には我かれら(我民)のために野の獣そらの鳥および地の昆蟲と誓約をむすびまた弓箭ををり戰爭を全世界よりのぞき彼らをして安らかに居しむべし

われ汝をめとりて永遠にいたらん公義と公平と寵愛と憐憫とをもてなんぢを娶り

かはることなき眞實をもて汝をめとるべし汝ヱホバをしらん

ヱホバいひ給ふその日われ應へん我は天にこたへ天は地にこたへ

地は穀物と酒と油とに應へまた是等のものはヱズレルに應へん

我わがためにかれを地にまき憐まれざりし者をあはれみわが民ならざりし者にむかひて汝はわが民なりといはんかれらは我にむかひて汝はわが神なりといはん

第3章

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ヱホバわれに言給ひけるは汝ふたたび往てヱホバに愛せらるれども轉りてほかのもろもろの神にむかひ葡萄の菓子を愛するイスラエルの子孫のごとく そのつれそふものに愛せらるれども姦淫をおこなふ婦人をあいせよ

われ銀十五枚おほむぎ一ホメル半をもてわが爲にその婦人をえたり

我これにいひけるは汝おほくの日わがためにとどまりて淫行をなすことなく他の人にゆくことなかれ 我もまた汝にむかひて然せん

イスラエルの子輩は多くの日王なく君なく犠牲なく表柱なくエボデなくテラビムなくして居らん

その後イスラエルの子輩はかへりてその神ヱホバとその王ダビデをたづねもとめ末日にをののきてヱホバとその恩惠とにむかひてゆかん

第4章

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イスラエルの子輩よヱホバの言を聽けヱホバこの地に住る者と爭辨たまふ其は此地には誠實なく愛情なく神を知る事なければなり

ただ詛偽凶殺盗姦淫のみにして互に相襲ひ血血につづき流る

このゆゑにその地うれひにしづみ之にすむものはみな野のけもの空のとりとともにおとろへ海の魚もまた絶はてん

されど何人もあらそふべからずいましむ可らず汝の民は祭司と爭ふ者の如くなれり

汝は晝つまづき汝と偕なる預言者は夜つまづかん我なんぢの母を亡すべし

わが民は知識なきによりて亡さるなんぢ知識を棄つるによりて我もまた汝を棄ててわが祭司たらしめじ汝おのが神の律法を忘るるによりて我もなんぢの子等を忘れん

彼らは大なるにしたがひてますます我に罪を犯せば我かれらの榮を辱に變ん

彼らはわが民の罪をくらひ心をかたむけてその罪ををかすを願へり

このゆゑに民の遇ふところは祭司もまた同じわれその途をかれらにきたらせその行爲をもて之にむくゆべし

かれらは食へども飽ず淫行をなせどもその數まさずその心をヱホバにとむることを止ればなり

淫行と酒と新しき酒はその人の心をうばふ

わが民木にむかひて事をとふその杖かれらに事をしめす是かれら淫行の霊にまよはされその神の下を離れて淫行を爲すなり

彼らは山々の巓にて犠牲を献げ岡の上にて香を焚き橡樹 楊樹 栗樹の下にてこの事をおこなふ此はその樹蔭の美しきによりてなりここをもてなんぢらの女子は淫行をなしなんぢらの兒婦は姦淫をおこなふ

我なんぢらのむすめ淫行をなせども罰せずなんぢらの兒婦かんいんをおこなへども刑せじ其はなんぢらもみづから離れゆきて妓女とともに居り淫婦とともに献物をそなふればなり悟らざる民はほろぶべし

イスラエルよ汝淫行をなすともユダに罪を犯さする勿れギルガルに往なかれベテアベンに上るなかれヱホバは活くと曰て誓ふなかれ

イスラエルは頑強なる牛のごとくに頑強なり今ヱホバ恙羊をひろき野にはなてるが如くして之を牧はん

エフライムは偶像にむすびつらなれりその爲にまかせよ

かれらの酒はくされかれらの淫行はやまずかれらの楯となるべき者等は恥を愛しいたく之を愛せり

かれは風の翼につつまれかれらはその禮物によりて恥辱をかうむらん

第5章

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祭司等よこれを聽けイスラエルの家よ耳をかたむけよ 王のいへよ之にこころを注よ さばきは汝等にのぞまん そは我らはミズパに設くる羂タボルに張れる網のごとくなればなり

悖逆者はふかく罪にしづみたり我かれらをことごとく懲しめん

我はエフライムを知る イスラエルはわれに隱るるところ無し エフライムよなんぢ今すでに淫行をなせりイスラエルはすでに汚れたり

かれらの行爲かれらをしてその神に歸ること能はざらしむ そは淫行の霊その衷にありてヱホバを知ることなければなり

イスラエルの驕傲はその面にむかひて證をなしその罪によりてイスラエルとエフライムは仆れユダもまた之とともにたふれん

かれらは羊のむれ牛の群をたづさへ往てヱホバを尋ね求めん然どあふことあらじヱホバ旣にかれらより離れ給ひたればなり

かれらヱホバにむかひ貞操を守らずして他人の子を產り新月かれらとその產業とをともに滅さん

なんぢらギベアにて角をふきラマにてラッパを吹ならしベテアベンにて呼はりて言へベニヤミンよなんぢの後にありと

罰せらるるの日にエフライムは荒廢れん我イスラエルの支派の中にかならず有るべきことを示せり

ユダの牧伯等は境界をうつすもののごとくなれり我わが震怒を水のごとくに彼らのうへに斟がん

エフライムは甘んじて人のさだめたるところに從ひあゆむがゆゑに鞫をうけて虐げられ圧られん

われエフライムには蠧のごとくユダの家には腐朽のごとし

エフライムおのれに病あるを見ユダおのれに傷あるをみたり斯てエフライムはアツスリヤに往きヤレブ王に人をつかはしたれど彼はなんぢらを醫すことをえず又なんぢらの傷をのぞきさることを得ざるべし

われエフライムには獅子のごとくユダの家にはわかき獅子のごとし我しも我は抓劈てさり掠めゆけども救ふ者なかるべし

我ふたたびわが處にかへりゆき彼らがその罪をくいてひたすらわが面をたづね求むるまで其處にをらん彼らは艱難によりて我をたづねもとむることをせん

第6章

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來れわれらヱホバにかへるべし ヱホバわれらを抓劈たまひたれどもまた醫すことをなし我儕をうち給ひたれどもまたその傷をつつむことを爲したまふ可ればなり

ヱホバは二日ののちわれらむ活かへし三日にわれらを起せたまはん 我らその前にて生ん

この故にわれらヱホバをしるべし切にヱホバを知ることを求むべしヱホバは晨光のごとく必ずあらはれいで雨のごとくわれらにのぞみ後の雨のごとく地をうるほし給ふ

エフライムよ我なんぢに何をなさんやユダよ我なんぢに何をなさんやなんぢの愛情はあしたの雲のごとくまたただちにきゆる露のごとし

このゆゑにわれ預言者等をもてかれらを撃ちわが口の言をもてかれらえを殺せりわが審判はあらはれいづる光明のごとし

われは愛情をよろこびて犠牲をよろこばず神をしるを悦ぶこと燔祭にまされり

然るに彼らはアダムのごとく誓をやぶりかしこにて不義をわれにおこなへり

ギレアデは惡をおこなふものの邑にして血の足跡そのなかに徧し

祭司のともがらは山賊の群のごとく伏伺して人をそこなひシケムに往く大路にて人をころす彼等はかくのごとき惡きことをおこなへり

われイスラエルのいへに憎むべきことあるを見たりかの處にてエフライムは淫をおこなふイスフルは汚れたり

ユダよ我わが民の俘囚をかへさんときまた汝のためにも穫刈をそなへん

第7章

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われイスラエルを醫さんときエフライムの愆とサマリヤのあしきわざと露るかれらは詐詭をおこなひ内には偸盗いるあり外には山賊のむれ掠めさるあり

かれら心にわがその一切の惡をしたためたることを思はず今その行爲はかれらを圍みふさぎて皆わが目前にあり

かれらはその惡をもて王を悦ばせその詐詭をもてもろもろの牧伯を悦ばせり

かれらはみな姦淫をおこなふ者にしてパンを作るものに燒るる爐のごとし揑粉をこねてその發酵ときまでしばらく火をおこすことをせざるのみなり

われらの王の日にもろもろの牧伯は酒の熱によりて疾し王は嘲るものとともに手を伸ぶ

かれら伏伺するほどに心を爐のごとくして備をなすそのパンを燒くものは終夜ねむりにつき朝におよべばまた焔のごとく燃ゆ

かれらはみな爐のごとくに熱してその審士をやくそのもろもろの王はみな仆るかれらの中には我をよぶもの一人だになし

エフライムは異邦人にいりまじるエフライムはかへさざる餹餅となれり

かれは他邦人らにその力をのまるれども之をしらず白髮その身に雑り生れどもこれをさとらず

イスラエルの驕傲はその面にむかひて證をなすかれらは此もろもろの事あれどもその神ヱホバに歸ることをせず又もとむることをせざるなり

エフライムは智慧なくして愚なる鴿のごとし彼等はエジプトにむかひて呼求めまたアツスリヤに往く

我かれらの往ときわが網をその上にはりて天空の鳥のごとくに引堕し前にその公會に告しごとくかれらを懲しめん

禍なるかなかれらは我をはなれて迷ひいでたり敗壞かれらにきたらんかれらは我にむかひて罪ををかしたり我かれらを贖はんとおもへどもかれら我にさからひて謊言をいへり

かれら誠心をもて我をよばず唯牀にありて哀號べりかれらは穀物とあたらしき酒のゆゑをもて相集りかつわれに逆らふ

我かれらを敎へその腕をつよくせしかども彼らはわれにもとりて惡きことを謀る

かれらは歸るされども至高者にかへらず彼らはたのみがたき弓のごとし彼らのもろもろの牧伯はその舌のあらき言によりて劍にたふれん彼らは之がためにエジプトの國にて嘲笑をうくべし

第8章

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ラッパをなんぢの口にあてよ敵は鷲のごとくヱホバの家にのぞめりこの民わが契約をやぶりわが律法を犯ししによる

かれら我にむかひてわが神よわれらイスラエルはなんぢを知れりと叫ばん

イスラエルは善をいみきらへり敵これを追ん

かれら王をたてたり然れども我により立しにあらずかれら牧伯をたてたり然れども我がしらざるところなり彼らまたその金銀をもて己がために偶像をつくれりその造れるは毀ちすてられんが爲にせしにことならず

サマリヤよなんぢの犢は忌きらふべきものなりわが怒かれらにむかひて燃ゆかれら何れの時にか罪なきにいたらん

この犢はイスラエルより出づ匠人のつくれる者にして神にあらずサマリヤの犢はくだけて粉とならん

かれらは風をまきて狂風をかりとらん種ところは生長る穀物なくその穂はみのらざるべしたとひ實るとも他邦人これを呑ん

イスラエルは旣に呑れたり彼等いま列國の中において悦ばれざる器のごとく視做るるなり

彼らは獨ゐし野の驢馬のごとくアッスリヤにゆけりエフライムは物を餽りて戀人を得たり

かれら列國の民に物を餽りたりと雖も今われ彼等をつどへ集む彼らは諸侯伯の王に負せらるる重擔のために衰へ始めん

エフライムは多くの祭壇を造りて罪を犯すこの祭壇はかれらが罪に陷る階とはなれり

我かれらのために律法をしるして數件の箇條を示したれど彼らは反て之を異物とおもへり

かれらは我に献ふべき物を献ふれども只肉をそなへて己みづから之を食ふヱホバは之を納たまはず今かれらの愆を記え彼らの罪を罰したまはん彼らはエジプトに歸るべし

イスラエルは己が造主を忘れてもろもろの社廟を建てユダは塀をとりまはせる邑を多く増し加へたり然どわれ火をその邑々におくりて諸の城を燒亡さん

第9章

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イスラエルよ異邦人のごとく喜びすさむ勿れなんぢ淫行をなして汝の神を離る汝すべての麥の打塲にて賜はる淫行の賞賜を愛せり

打場と酒榨とはかれらを養はじ亦あたらしき酒もむなしくならん

かれらはヱホバの地にとどまらずエフライムはエジプトに歸りアッスリヤにて汚穢たる物を食はん

彼等はヱホバにむかひて酒を灌ぐべき者にあらずその祭物はヱホバの悦びたまふ所にあらずかれらの犠牲は喪に居もののパンのごとし凡てこれを食ふものは汚るべし彼等のパンは只おのが食ふためにのみ用ゐべくしてヱホバの家に入るべきにあらず

なんぢら集會の日とヱホバの節會の日に何をなさんとするや

視よかれら滅亡の故によりて去ゆきぬエジプトかれらをあつめメンピスかれらを葬らん蒺藜かれらが銀の寳物を獲いばら彼らの天幕に蔓らん

刑罰の日きたり應報の日きたれりイスラエルこれを知ん預言者は愚なるもの霊に感じたるものは狂へるものなりこれ汝の惡おほく汝の怨恨おほいなるに因る

エフライムは我が神にならべて他の神をも佇望めり預言者の一切の途は鳥を捕ふる者の網のごとく且その神の室の中にて怨恨を懐けり

かれらはギベアの日のごとく甚だしく惡き事を行へりヱホバはその惡をこころに記てその罪を罰したまはん

在昔われイスラエルを見ること荒野の葡萄のごとく汝らの先祖等を看ること無花果樹の始にむすべる最先の果の如くなししに彼等はバアルペオルにゆきて身を恥辱にゆだねその愛する物とともに憎むべき者とはなれり

エフライムの榮光は鳥のごとく飛さらん即ち產ことも孕むことも妊娠こともなかるべし

仮令かれら子等を育つるとも我その子を喪ひて遺る人なきにいたらしめん我が離るる時かれらの禍大なる哉

われエフライムを美地に植てツロのごとくなししかどもエフライムはその子等を携へいだして人を殺すに付さんとす

ヱホバよ彼らに與へたまへ汝なにを與ヘんとしたまふや孕まざる胎と乳なき乳房とを與へたまへ

かれらが凡の惡はギルガルにあり此故に我かしこにて之を惡めりその行爲あしければ我が家より逐いだし重て愛することをせじその牧伯等はみな悸れる者なり

エフライムは撃れその根はかれて果を結ぶまじ若し產ことあらば我その胎なる愛しむ實を殺さん

かれら聽從はざるによりて我が神これを棄たまふべしかれらは列國民のうちに流離人とならん

第10章

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イスラエルは果をむすびて茂り榮る葡萄の樹その果の多くなるがままに祭壇をましその地の饒かなるがままに偶像を美しくせり

かれらは二心をいだけり今かれら罪せらるべし神はその祭壇を打毀ちその偶像を折棄てたまはん

かれら今いふべし我儕神を畏れざりしに因て我らに王なしこの王はわれらのために何をかなさんと

かれらは虚しき言をいだし偽の誓をなして約をたつ審判は畑の畝にもえいづる茵蔯のごとし

サマリヤの居民はベテアベンの犢の故によりて戰慄かんその民とこれを悦ぶ祭司等はその榮のうせたるが爲になげかん

犢はアッスリヤに携へられ禮物としてヤレブ王に献げらるべしエフライムは羞をかうむりイスラエルはおのが計議を恥ぢん

サマリヤはほろびその王は水のうへの木片のごとし

イスラエルの罪なるアベンの崇邱は荒はてて荊棘と蒺藜その壇のうへにはえ茂らんその時かれら山にむかひて我儕をおほへ陵にむかひて我儕のうへに倒れよといはん

イスラエルよ汝はギベアの日より罪ををかせり彼等はそこに立り邪惡のひとびとを攻たりし戰爭はギベアにてかれらに及ばざりき

我思ふままに彼等をいましめん彼等その二の罪につながれん時もろもろの民あつまりて之をせめん

エフライムは馴されたる牝牛のごとくにして穀をふむことを好むされどわれその美しき頸に物を負しむべし我エフライムに軛をかけんユダは耕しヤコブは土塊をくだかん

なんぢら義を生ずるために種をまき憐憫にしたがひてかりとり又新地をひらけ今はヱホバを求むべき時なり終にはヱホバきたりて義を雨のごとく汝等のうへに降せたまはん

なんぢらは惡をたがへし不義を穫をさめ虚偽の果をくらへりこは汝おのれの途をたのみ己が勇士の數衆きをたのめるに縁る

この故になんぢらの民のなかに擾亂おこりて汝らの城はことごとく打破られんシャルマンが戰門の日にベテアルベルを打破りしにことならず母その子とともに碎かれたり

なんぢらの大なる惡のゆゑによりてベテル如此なんぢらに行へるなりイスラエルの王はあしたに滅びん

第11章

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イスラエルの幼かりしとき我これを愛しぬ我わが子をエジプトより呼いだしたり

かれらは呼るるに隨ひていよいよその呼者に遠ざかり且もろもろのバアルに犠牲をささげ雕たる偶像に香を焚り

われエフライムに歩むことををしへ彼等をわが腕にのせて抱けり然どかれらは我にいやされたるを知ず

われ人にもちゐる索すなはち愛のつなをもて彼等をひけり我がかれらを待ふは軛をその腮より擧のくるもののごとくにして彼等に食物をあたへたり

かれらはエジプトの地にかへらじ然どかれらがヱホバに歸らざるによりてアッスリヤ人その王とならん

劍かれらの諸邑にまはりゆきてその關門をこぼち彼らをその謀計の故によりて滅さん

わが民はともすれば我にはなれんとする心あり人これを招きて上に在るものに屬しめんとすれども身をおこすもの一人だになし

エフライムよ我いかで汝をすてんやイスラエルよ我いかで汝をわたさんや我いかで汝をアデマのごとくせんや爭でなんぢをゼボイムのごとく爲んやわが心わが衷にかはりて我の愛憐ことごとく燃おこれり

我わが烈しき震怒をほどこすことをせじ我かさねてエフライムを滅すことをせじ我は人にあらず神なればなり我は汝のうちにいます聖者なりいかりをもて臨まじ

かれらは獅子の吼るごとくに聲を出したまふヱホバに隨ひて歩まんヱホバ聲を出したまへば子等は西より急ぎ來らん

かれらエジプトより鳥のごとくアッスリヤより鴿のごとくに急ぎ來らん我かれらをその家々に住はしむべし是ヱホバの聖言なり

エフライムは謊言をもてイスラエルの家は詐僞をもて我を圍めりユダは神と信ある聖者とに屬きみつかずみ漂蕩をれり

第12章

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エフライムは風をくらひ東風をおひ日々に詐僞と暴逆とを増くはへアッスリヤと契約を結び油をエジプトに餽れり

ヱホバはユダと爭辨をなしたまふヤコブをその途にしたがひて罰しその行爲にしたがひて報いたまふ

ヤコブは胎にゐし時その兄弟の踵をとらへまた己が力をもて神と角力あらそへり

かれは天の使と角力あらそひて勝ちなきて之に恩をもとめたり彼はベテルにて神にあへり其處にて神われらに語ひたまへり

これは萬軍の神ヱホバなりヱホバは其記念の名なり

然ばなんぢの神にかへり衿恤と公義とをまもり恒になんぢの神を仰ぐべし

彼はカナン人(商賈)なりその手に詭詐の權衡をもち好であざむき取ことをなす

エフライムはいふ誠にわれは富る者となれり我は身に財寳をえたり凡てわが勞したることの中に罪をうべき不義を見いだす者なかるべし

我ヱホバはエジプトの國をいでしより以來なんぢらの神なり我いまも尚なんぢを幕屋にすまはせて節會の日のごとくならしめん

我もろもろの預言者にかたり又これに益々おほく異象をしめしたり我もろもろの預言者に托して譬喩をまうく

ギレアデは不義なる者ならずや彼らは全く虚しかれらはギルガルにて牛を犠牲に献ぐかれらの祭壇は圃の畝につみたる石の如し

ヤコブはアラムの野ににげゆけりイスラエルは妻を得んために人に事へ妻を得んために羊を牧へり

ヱホバ一人の預言者をもてイスラエルをエジプトより導きいだし一人の預言者をもて之を護りたまへり

エフライムは怒を激ふること極てはなはだしその主かれが流しし血をかれが上にとどめその恥辱をかれに歸らせたまはん

第13章

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エフライム言を出せば人をののけり彼はイスラエルのなかに己をたかうしバアルにより罪を犯して死たりしが

今も尚ますます罪を犯しその銀をもて己のために像を鋳その機巧にしたがひて偶像を作る是みな工人の作なるなり彼らは之につきていふ犠牲を献ぐる者はこの犢に吻を接べしと

是によりて彼らは朝の雲のごとく速にきえうする露のごとく打場より大風に吹散さるる穀殻のごとく窓より出ゆく煙のごとくならん

されど我はエジプトの國をいでてより以來なんぢの神ヱホバなり爾われの外に神を知ことなし我のほかに救者なし

我さきに荒野にて水なき地にて爾を顧みたり

かれらは秣場によりて食に飽き飽くによりてその心たかぶり是によりて我を忘れたり

斯るがゆゑに我かれらに對ひて獅子の如くなり途の傍にひそみうかがふ豹のごとくならん

われ子をうしなへる熊のごとく彼らに向ひてその心膜を裂き獅子の如くこれを食はん野の獣これを攫斷るべし

イスラエルよ汝の滅ぶるは我に背き汝を助くる者に背くが故なり

汝のもろもろの邑に汝を助くべき汝の王は今いづくにかあるなんぢらがその王と牧伯等とを我に與へよと言たりし士師等は今いづくにかある

われ忿怒をもて汝に王を與へ憤恨をもて之をうばひたり

エフライムの不義は包まれてありその罪はをさめたくはへられたり

劬勞にかかれる婦のかなしみ之に臨まん彼は愚なる子なり時に臨みてもなほ產門に入らず

我かれらを陰府の手より贖はん我かれらを死より贖はん死よなんぢの疫は何處にあるか陰府よなんぢの災は何處にあるか悔改はかくれて我が目にみえず

彼は兄弟のなかにて果を結ぶこと多けれども東風吹きたりヱホバの息荒野より吹おこらん之がためにその泉は乾その源は涸れんその積蓄へたるもろもろの賓貴器皿は掠め奪はるべし

サマリヤはその神にそむきたれば刑せられ劍に斃れんその嬰兒はなげくだかれその孕たる婦は剖れん

第14章

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イスラエルよ汝の神ヱホバに歸れよ汝は不義のために仆れたり

汝ら言詞をたづさへ來りヱホバに歸りていへ諸の不義は赦して善ところを受納れたまへ斯て我らは唇をもて牛のごとくに汝に献げん

アッスリヤはわれらを授けじ我らは馬に騎らじまたふたたび我儕みづからの手にて作れる者にむかひわが神なりと言じ孤兒は爾によりて憐憫を得べければなりと

我かれらの反逆を醫し悦びて之を愛せん我が怒はかれを離れ去たり

我イスラエルに對しては露のごとくならん彼は百合花のごとく花さきレバノンのごとく根をはらん

その枝は茂りひろがり其美麗は橄欖の樹のごとくその芬芳はレバノンのごとくならん

その蔭に住む者かへり來らんかれらは穀物の如く活かへり葡萄樹のごとく花さきその馨香はレバノンの酒のごとくなるべし

エフライムはいふ我また偶像と何のあづかる所あらんやと我これに應へたり我かれを顧みん我は蒼翠の松のごとし汝われより果を得ん

誰か智慧ある者ぞその人はこの事を暁らん誰か頴悟ある者ぞその人は之を知んヱホバの道は凡て直し義者は之を歩む然ど罪人は之に躓かん