ピレモンへの書 (文語訳)

<文語訳新約聖書

w:舊新約聖書 [文語]』w:日本聖書協会、1950年

w:大正改訳聖書

ピレモンへの書

第1章

編集

キリスト・イエスの囚人たるパウロ及び兄弟テモテ、書を我らが愛する同勞者ピレモン、

我らの姉妹アピヤ、我らと共に戰鬪をなせるアルキポ及び汝の家にある教會に贈る。

願はくは我らの父なる神および主イエス・キリストより賜ふ恩惠と平安と、汝らに在らんことを。

われ祈るとき常に汝をおぼえて我が神に感謝す。

これ主イエスと凡ての聖徒とに對する汝の愛と信仰とを聞きたればなり。

願ふところは、汝の信仰の交際の活動により、人々われらの中なる凡ての善き業を知りて、榮光をキリストに歸するに至らんことなり。

兄弟よ、我なんぢの愛によりて大なる勸喜と慰安とを得たり。聖徒の心は汝によりて安んぜられたればなり。

この故に、われキリストに在りて、汝になすべき事を聊かも憚らず命じ得れど、

むしろ愛の故によりて汝にねがふ。

既に年老いて今はキリスト・イエスの囚人となれる我パウロ、縲絏の中にて生みし我が子オネシモの事をなんぢに願ふ。

かれ前には汝に益なき者なりしが、今は汝にも我にも益ある者となれり。

我かれを汝に歸す、かれは我が心なり。

我は彼をわが許に留めおきて、我が福音のために縲絏にある間、なんぢに代りて我に事へしめんと欲したれど、

なんぢの承諾を經ずして斯くするを好まざりき、是なんぢの善の止むを得ざるに出でずして心より出でんことを欲したればなり。

彼が暫時なんぢを離れしは、或は汝かれを永遠に保ち、

もはや奴隷の如くせず、奴隷に勝りて愛する兄弟の如くせん爲なりしやも知るべからず。我は殊に彼を愛す、まして汝は肉によりても主によりても、之を愛せざる可けんや。

汝もし我を友とせば、請ふ、われを納るるごとく彼を納れよ。

彼もし汝に不義をなし、または汝に負債あらば、之を我に負はせよ。

我パウロ手づから之を記す、われ償はん、汝われに身を以て償ふべき負債あれど、我これを言はず。

兄弟よ、請ふ、なんぢ主に在りて我に益を得させよ、キリストに在りて我が心を安んぜよ。

我なんぢの從順を確信して之を書き贈る。わが言ふところに勝りて汝の行はんことを知るなり。

而して我がために宿を備へよ、我なんぢらの祈により、遂に我が身の汝らに與へられんことを望めばなり。

キリスト・イエスに在りて我とともに囚人となれるエパフラス、

及び我が同勞者マルコ、アリスタルコ、デマス、ルカ皆なんぢに安否を問ふ。

願はくは主イエス・キリストの恩惠、なんぢらの靈と偕にあらんことを。