スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約の効力発生に関する件

日本国政府は、平成十七年十月十九日にパリで採択された「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」の受諾書を平成十八年十二月二十六日に国際教育科学文化機関事務局長に寄託した。よって、同規約は、その第三十七条2の規定に従い、平成十九年二月一日に日本国について効力を生ずる。

なお、同規約の締約国は、平成十八年十二月十一日現在、次のとおりである。

オーストラリア連邦、バハマ国、ボリビア共和国、カナダ、中華人民共和国、クック諸島、デンマーク王国、アイスランド共和国、ジャマイカ、ラトビア共和国、リトアニア共和国、ルクセンブルク大公国、モーリシャス共和国、モナコ公国、モザンビーク共和国、ナミビア共和国、ナウル共和国、オランダ王国、ニュージーランド、ニジェール共和国、ナイジェリア連邦共和国、ノルウェー王国、ペルー共和国、ルーマニア、セーシェル共和国、南アフリカ共和国、スペイン、スウェーデン王国、ウクライナ、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国

平成十九年一月十八日

外務大臣 麻生 太郎

(訳文)

スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約

国際連合教育科学文化機関(以下「ユネスコ」という。)の総会は、二千五年十月三日から十月二十一日までパリにおいてその第三十三回会期として会合し、

ユネスコの目的が教育、科学及び文化を通じた諸国間の協力を促進することにより平和及び安全に貢献することであることを考慮し、

人権に関する既存の国際的な文書に言及し、

国際連合総会が教育、健康、開発及び平和を促進する手段としてのスポーツに関して二千三年十一月三日に採択した決議第五号(第五十八回会期)及び特に同決議7を認識し、

スポーツが健康の保護、道徳教育、文化教育及び体育並びに国際的な理解及び平和の促進において重要な役割を果たすべきであることを認識し、

スポーツにおけるドーピングの撲滅に向けた国際協力を奨励し、及び調整する必要性に留意し、

競技者によるスポーツにおけるドーピング並びにその結果としての競技者の健康、正々堂々とした競技態度の原則、不正行為の撲滅及びスポーツの将来に対する影響を憂慮し、

ドーピングがユネスコの体育及びスポーツに関する国際憲章並びにオリンピック憲章に具現された倫理上の原則及び教育上の価値を危険にさらしていることに留意し、

欧州評議会の枠組みに基づいて採択されたドーピング防止規約及び同規約の追加議定書が国内のドーピング防止政策及び政府間の協力の起源となる国際公法上の手段であることを想起し、

モスクワ(千九百八十八年)、プンタ・デル・エステ(千九百九十九年)及びアテネ(二千四年)でユネスコが開催した体育及びスポーツを担当する大臣及び上級職員による国際会議の第二回会合、第三回会合及び第四回会合において採択されたドーピングに関する勧告並びにユネスコ総会(二千三年)で採択された総会決議第九号(第三十二回会期)を想起し、

二千三年三月五日にコペンハーゲンで開催されたスポーツにおけるドーピングに関する世界会議で世界ドーピング防止機構により採択された世界ドーピング防止規範及びスポーツにおけるドーピングの防止に関するコペンハーゲン宣言に留意し、

優れた競技者が青少年に与える影響にも留意し、

優れた競技者が青少年に与える影響にも留意し、

予防戦略を最も効果的なものとするため、ドーピングの検知能力を向上させること及び使用に影響を与える要因への理解をより深めることを目的として、研究を実施し、及び推進する継続的な必要性を認識し、

ドーピングの防止においては、競技者、競技者支援要員及び社会全体に対する継続的な教育が重要であることも認識し、

ドーピング防止計画を実施する締約国の能力を形成する必要性に留意し、

スポーツについて責任を有する当局及び機関がスポーツにおけるドーピングを防止し、及びこれと戦うこと並びに特に正々堂々とした競技態度の原則に基づいてスポーツ競技会が適切に行われるようにすること及びその参加者の健康を保護することについて相互補完的な責任を有していることを認識し、

これらの当局及び機関がすべての適当な段階において最大限の独立性及び透明性を確保しつつ、これらの目的のために協力しなければならないことを認識し、

スポーツにおけるドーピングの撲滅を目的として、一層の、かつ、より強力な協力活動を行うことを決意し、

スポーツにおけるドーピングの撲滅がスポーツにおけるドーピングの防止のための基準とその実施との漸進的な調和並びに国内的及び国際的な規模での協力に一部依存していることを認識して、

この規約を二千五年十月十九日に採択する。

I 適用範囲編集

第一条 規約の目的

この規約は、体育及びスポーツの分野におけるユネスコの活動戦略及び活動計画の枠組みにおいて、スポーツにおけるドーピングの撲滅のため、ドーピングの防止及びこれとの戦いを促進することを目的とする。

第ニ条 定義

次に掲げる定義は、世界ドーピング防止規範の文脈により理解される。ただし、抵触する場合には、この規約の規定が優先する。

この規約の適用上、

1 「認定ドーピング管理試験所」とは、世界ドーピング防止機構によって認定された試験所をいう。

2 「ドーピング防止機関」とは、ドーピング管理過程の一部を開始し、実施し、又は強制するための規則の採用について責任を有する機関(例えば、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会、自己の競技会において検査を実施するその他の主要な競技会開催機関、世界ドーピング防止機構、国際競技連盟、国内のドーピング防止機関)をいう。

3 スポーツにおける「ドーピング防止規則に対する違反」とは、次の一又は二以上に該当するものをいう。

⒜ 競技者の生体から採取した検体に、禁止される物質又はその代謝物若しくは標識が存在すること。

⒝ 禁止される物質若しくは禁止される方法を使用すること又はその使用を企てること。

⒞ 適用のあるドーピング防止規則において認められた通知を受けた後に、検体の採取を拒否し、若しくはやむを得ない理由によることなく検体の採取を行わず、又はその他の手段で検体の採取を回避すること。

⒟ 競技会外検査への競技者の参加に関する適用のある要件に違反すること(要求される所在に関する情報を提出しないこと及び適切な規則に従って通告された検査を受けないことを含む。)。

⒠ ドーピング管理の一部を不当に改変すること又は不当な改変を企てること。

⒡ 禁止される物質又は禁止される方法を保有すること。

⒢ 禁止される物質又は禁止される方法の不正取引を行うこと。

⒣ 競技者に対する禁止される物質の投与、禁止される方法の使用若しくはそれらの行為を企てること又は支援、奨励、援助、示唆、隠ぺいその他のドーピング防止規則に違反する共同行為を行うこと若しくは共同行為を企てること。

4 「競技者」とは、ドーピング管理において、国際的又は国内的な規模のスポーツであって、国内のドーピング防止機関がそのように定義し、かつ、締約国が承認したものに参加するすべての者並びに一層下位の規模のスポーツ又は競技会であって締約国が承認したものに参加するその他の者をいう。教育及び訓練計画において、「競技者」とは、スポーツ団体の権限の下においてスポーツに参加する者をいう。

5 「競技者支援要員」とは、スポーツ競技会に参加し、又はそのための準備を行う競技者と共に行動し、又は治療を行う指導者、訓練者、監督、代理人、団体関係者、公式職員、医師又は医療関係者をいう。

6 「規範」とは、世界ドーピング防止機構が二千三年三月五日にコペンハーゲンで採択した世界ドーピング防止規範であって、この規約の付録一として添付するものをいう。

7 「競技会」とは、個人の競争、対戦競技、団体競技又は単独の競技をいう。

8 「ドーピング管理」とは、検査の配分計画の立案、検体の採取及び取扱い、試験所における分析、分析結果の管理、聴聞並びに不服申立てを含む過程をいう。

9 「スポーツにおけるドーピング」とは、ドーピング防止規則に対する違反が発生することをいう。

10 「正当な権限を有するドーピング管理チーム」とは、国際的な又は国内のドーピング防止機関の権限に基づいて活動するドーピング管理チームをいう。

11 「競技会検査」とは、競技会における検査と競技会外における検査とを区別することを目的とするものであって、国際競技連盟又は他の関係するドーピング防止機関の規則に別段の定めがない限り、特定の競技会との関連で競技者が検査のために選定される検査をいう。

12 「試験所に関する国際基準」とは、この規約の付録二として添付する基準をいう。

13 「検査に関する国際基準」とは、この規約の付録三として添付する基準をいう。

14 「無通告」とは、競技者に予告なしに実施され、かつ、検査の通告の時から検体の提供までの間競技者に対して継続して付添人を付けるドーピング管理をいう。

15 「オリンピック運動組織」とは、オリンピック憲章を指針とすることに同意し、かつ、国際オリンピック委員会の権限を認めているすべての者、すなわち、オリンピック競技大会における競技種目の国際競技連盟、国内オリンピック委員会、オリンピック競技大会組織委員会、競技者、審判員及び審査員、団体及びクラブ並びに国際オリンピック委員会の認定を受けたすべての団体及び機関をいう。

16 「競技会外ドーピング管理」とは、競技会におけるドーピング管理以外のドーピング管理をいう。

17 「禁止表」とは、禁止される物質及び禁止される方法を特定した表であって、この規約の附属書Iとして添付するものをいう。

18 「禁止される方法」とは、この規約の附属書Iとして添付する禁止表に掲げる方法をいう。

19 「禁止される物質」とは、この規約の附属書Iとして添付する禁止表に掲げる物質をいう。

20 「スポーツ団体」とは、一又は二以上のスポーツを行う競技会において決定機関として機能する団体をいう。

21 「治療目的使用に係る除外措置の許与に関する基準」とは、この規約の附属書Iとして添付する基準をいう。

22 「検査」とは、ドーピング管理過程のうち、検査の配分計画の立案、検体の採取及び取扱い並びに試験所への検体の輸送を含む部分をいう。

23 「治療目的使用に係る除外措置」とは、「治療目的使用に係る除外措置の許与に関する基準」に従って許与される除外措置をいう。

24 「使用」とは、禁止される物質を塗布し、服用し、注入し、若しくは摂取すること又は禁止される方法によりこれらを行うことをいい、その手段を問わない。

25 「世界ドーピング防止機構」(WADA)とは、千九百九十九年十一月十日にスイスの法令に基づいて設立されたそのような名称の法人をいう。

第三条 規約の目的を達成するための手段

この規約の目的を達成するため、締約国は、次のことを行う。

⒜ 国内的及び国際的な規模において規範の原則に適合する適当な措置をとること。

⒝ 競技者の保護及びスポーツにおける倫理の保持並びに研究成果の共有を目的とするあらゆる形態の国際協力を奨励すること。

⒞ スポーツにおけるドーピングの防止に取り組んでいる主要な機関、特に世界ドーピング防止機構と締約国との間における国際協力を促進すること。

第四条 規約と規範との関係

1 締約国は、スポーツにおけるドーピングとの戦いの国内的及び国際的な規模での実施を調整するため、次条に定める措置の基礎として規範の原則への支持を約束する。この規約は、締約国が規範を補完する追加的な措置をとることを妨げるものではない。

2 規範並びに付録二及び付録三の最新版は、参考のため採録するものであり、この規約の不可分の一部ではない。これらは、締約国に対して国際法に基づくいかなる拘束力を有する義務をも生じさせるものではない。

3 附属書は、この規約の不可分の一部を成す。

第五条 規約の目的を達成するための措置

各締約国は、この規約に定める義務を遵守するために適当な措置をとる。当該措置には、法令、規則、政策又は行政上の慣行を含めることができる。

第六条 他の国際的な文書との関係

この規約は、既に締結し、かつ、この規約の趣旨及び目的に合致する他の協定に基づく締約国の権利及び義務を変更するものではない。このことは、他の締約国のこの規約に基づく権利の享受又は義務の履行に影響を及ぼすものではない。

II 国内的な規模でのドーピング防止活動編集

第七条 国内における調整

締約国は、特に国内における調整を通じて、この規約の適用を確保する。締約国は、この規約に基づく義務を履行するため、ドーピング防止機関並びにスポーツ担当の当局及び団体を利用することができる。

第八条 禁止される物質及び禁止される方法の入手及びスポーツにおける使用の制限

1 締約国は、治療目的使用に係る除外措置に基づく場合を除き、競技者による禁止される物質及び禁止される方法のスポーツにおける使用を制限するため、適当な場合には、禁止される物質及び禁止される方法の入手を制限するための措置をとる。これらの措置には、競技者への不法取引に対する措置並びにこの目的のために生産、移動、輸入、流通及び販売を管理する措置を含む。

2 締約国は、治療目的使用に係る除外措置に基づく場合を除き、競技者による禁止される物質及び禁止される方法のスポーツにおける使用及び所持を防止し、及び制限する措置をとり、又は、適当な場合には、自国の管轄の下にある関係する団体に対してそのような措置をとるよう奨励する。

3 この規約に従ってとるいかなる措置も、スポーツにおいて禁止され、又は管理されていない限り、正当な目的による物質及び方法の入手を妨げるものではない。

第九条 競技者支援要員に対する措置

締約国は、ドーピング防止規則若しくはスポーツにおけるドーピングに関する他の規則に違反する競技者支援要員に対する制裁若しくは罰則を含む措置を自らがとるか又はスポーツ団体及びドーピング防止機関がこれらの措置をとることを奨励する。

第十条 栄養補給剤

締約国は、適当な場合には、栄養補給剤の生産者及び流通業者が栄養補給剤の販売及び流通に関する最良の慣行(分析的な組成及び品質保証に関する情報を含む。)を確立するよう奨励する。

第十一条 財政措置

締約国は、適当な場合には、次のことを行う。

⒜ すべてのスポーツを対象とする国内の検査計画を支援し、若しくはスポーツ団体及びドーピング防止機関が直接補助金若しくは贈与によって、又はこれらの機関に与えられる補助金若しくは贈与の全体を決定する際にドーピング管理のための費用を承認することによって、これらの機関が当該ドーピング管理を行えるよう支援するため、各国の予算の範囲内で資金を供与すること。

⒝ ドーピング防止規則の違反後に資格停止を受けている競技者又は競技者支援要員に対し、資格が停止されている間スポーツ関連の財政上の支援を停止する措置をとること。

⒞ 規範又は規範に従って採択されるドーピング防止規則を遵守していないスポーツ団体又はドーピング防止機関に対し、財政上その他スポーツ関連の支援を部分的に又は全面的に停止すること。

第十ニ条 ドーピング管理を容易にするための措置

締約国は、適当な場合には、次のことを行う。

⒜ 自国の管轄の下にあるスポーツ団体及びドーピング防止機関が規範に適合する方法(無通告検査、競技会外検査及び競技会検査を含む。)によりドーピング管理を実施することを奨励し、及び容易にすること。

⒝ 他国の正当な権限を有するドーピング管理チームによる自国のスポーツ団体及びドーピング防止機関の構成員の検査を認めることに合意するための交渉を奨励し、及び容易にすること。

⒞ ドーピング管理を分析する目的で、自国の管轄の下にあるスポーツ団体及びドーピング防止機関が認定ドーピング管理試験所を利用するための支援を行うこと。

III 国際協力編集

第十三条 ドーピング防止機関とスポーツ団体との協力

締約国は、この規約の目的を国際的な規模で達成するため、自国及び他の締約国の管轄の下にあるドーピング防止機関、当局及びスポーツ団体間の協力を奨励する。

第十四条 世界ドーピング防止機構の任務の支援

締約国は、国際的なドーピングとの戦いにおける世界ドーピング防止機構の重要な任務を支援する。

第十五条 世界ドーピング防止機構への平等な資金供与

締約国は、世界ドーピング防止機構の承認された年次基本予算に対して当局及びオリンピック運動組織が平等に資金供与を行う原則を支援する。

第十六条 ドーピング管理における国際協力

締約国は、スポーツにおけるドーピングとの戦いが、競技者に無通告で検査が行われ、かつ、検体が時宜を失することなく分析のために試験所へ輸送される場合にのみ効果的であることを認識して、適当な場合には、国内法及び国内的な手続に従って次のことを行う。

⒜ 世界ドーピング防止機構及び規範を遵守して活動するドーピング防止機関が、関係する主催国の規則に従うことを条件として、自国の領域であるか否かを問わず、自国の競技者に対して競技会又は競技会外においてドーピング管理を行う任務を容易にすること。

⒝ 正当な権限を有するドーピング管理チームがドーピング管理活動を行う際、国境を越える時宜を得た移動を容易にすること。

⒞ 検体の安全性及び信頼性を維持するような方法により、当該検体の国境を越える発送又は運搬が速やかに行われるよう協力すること。

⒟ 様々なドーピング防止機関が実施するドーピング管理に関する国際的な協調を支援し、及びそのために世界ドーピング防止機構と協力すること。

⒠ 自国の管轄の下にあるドーピング管理試験所と他の締約国の管轄の下にあるドーピング管理試験所との間の協力を促進すること(特に、認定ドーピング管理試験所を有する締約国は、他の締約国が要望する場合には、自国の管轄の下にある試験所に対し、他の締約国が自らの試験所を設立するために必要な経験、技術及び技能を得ることができるよう支援することを奨励すべきである。)。

⒡ 指定されたドーピング防止機関間における相互の検査に関する取決めであって規範に適合するものを奨励し、及び支援すること。

⒢ ドーピング防止機関が規範に適合して行うドーピング管理の手続及び検査結果の管理方法(スポーツにおける制裁措置を含む。)を相互に承認すること。

第十七条 任意の基金

1 この規約により、「スポーツにおけるドーピングの撲滅のための基金」(以下「任意の基金」という。)を設立する。任意の基金は、ユネスコの財政規則に従って設立される信託基金とする。締約国その他の者が支払うすべての拠出金は、任意とする。

2 任意の基金の資金は、次のものから成る。

⒜ 締約国による拠出金

⒝ 次の者からの拠出金、贈与又は遺贈

(ⅰ) 締約国以外の国

(ⅱ) 国際連合の機関及び計画(特に国際連合開発計画)並びにその他の国際機関

(ⅲ) 公私の団体又は個人

⒞ 任意の基金の資金から生ずる利息

⒟ 募金によって調達された資金及び任意の基金のために企画された行事による収入

⒠ 締約国会議が作成する任意の基金に関する規則によって認められるその他のあらゆる資金

3 締約国による任意の基金に対する拠出金は、世界ドーピング防止機構の年次予算に対する当該締約国の分担金の支払義務に代わるものとはみなされない。

第十八条 任意の基金の使用及び管理

任意の基金の資金については、締約国会議が承認した活動(特に、世界ドーピング防止機構の目的を考慮して、この規約に従い、締約国がドーピング防止計画を促進し、及び実施することを支援するもの)に資金供与を行うために当該会議が配分するものとし、また、この規約の運営経費に充てることができる。任意の基金に対する拠出には、政治的、経済的その他のいかなる条件も付することができない。

IV 教育及び研修編集

第十九条 教育及び研修に関する一般原則

1 締約国は、自国の有する手段の範囲内で、ドーピングの防止に関する教育及び研修の計画を支援し、立案し、及び実施する。スポーツ界一般のために、そのような計画は、次の事項に関して最新の及び正確な情報を提供することを目的とすべきである。

⒜ スポーツにおける倫理的価値に対するドーピングの害

⒝ ドーピングの健康に対する影響

2 競技者及び競技者支援要員のための教育及び研修の計画は、特に最初の研修においては、1に規定する事項のほか、次の事項に関する最新の及び正確な情報を提供することを目的とすべきである。

⒜ ドーピング管理の手続

⒝ ドーピングの防止に関する競技者の権利及び責任(規範に関する情報並びに関係するスポーツ団体及びドーピング防止機関のドーピング防止政策を含む。)。当該情報には、ドーピング防止規則に対する違反を行った際の結果を含む。

⒞ 禁止される物質及び禁止される方法の表並びに治療目的使用に係る除外措置

⒟ 栄養補給剤

第二十条 職業上の行為規範

締約国は、関連する権限のある職業上の集団及び機関がスポーツにおけるドーピングの防止に関係する適当な行動規範、適切な慣行及び倫理であって規範に適合するものを定め、及び実施するよう奨励する。

第二十一条 競技者及び競技者支援要員の関与

締約国は、競技者及び競技者支援要員がスポーツ団体その他の関係機関の行うドーピング防止活動のすべての面での積極的な参加を促進し、及び自国の有する手段の範囲内で支援するものとし、自国の管轄の下にあるスポーツ団体が同様のことを行うよう奨励する。

第二十二条 スポーツ団体及びドーピングの防止に関する継続的な教育及び研修

締約国は、スポーツ団体及びドーピング防止機関が第十九条に掲げる事項に関してすべての競技者及び競技者支援要員を対象とする継続的な教育及び研修の計画を実施するよう奨励する。

第二十三条 教育及び研修における協力

締約国は、適当な場合には、実効的なドーピング防止計画に関する情報、専門知識及び経験を共有するため、相互に及び関係する機関と協力する。

V 研究編集

第二十四条 ドーピングの防止に関する研究の促進

締約国は、スポーツ団体その他の関係機関と協力して、次の事項に関し、自国の有する手段の範囲内で、ドーピングの防止に関する研究を奨励し、及び促進する。

⒜ ドーピングの予防、検知方法、行動的及び社会的な性質並びに健康に対する影響

⒝ 科学的な根拠に基づく生理学的及び心理学的な研修計画であって、個人の誠実性を尊重したものを立案する方法及び手段

⒞ 科学的な発展によりもたらされたすべての新しい物質及び方法の使用

第二十五条 ドーピングの防止に関する研究の性質

締約国は、前条に規定するドーピングの防止に関する研究を促進する際には、次の条件を満たすことを確保する。

⒜ 国際的に認められた倫理的な慣行に従うこと。

⒝ 競技者に対する禁止される物質の投与及び禁止される方法の使用を回避すること。

⒞ ドーピングの防止に関する研究成果が悪用され、及びドーピングに応用されることを防止するための適切な予防措置がとられる場合においてのみ行われること。

第二十六条 ドーピングの防止に関する研究成果の共有

締約国は、適用のある国内法及び国際法に従うことを条件として、適当な場合には、他の締約国及び世界ドーピング防止機構との間で、利用可能なドーピングの防止に関する研究の成果を共有する。

第二十七条 スポーツ科学に関する研究

締約国は、次のことを奨励する。

⒜ 科学界及び医学界の構成員が規範の原則に従ってスポーツ科学に関する研究を行うこと。

⒝ 自国の管轄の下にあるスポーツ団体及び競技者支援要員が規範の原則に適合するスポーツ科学に関する研究を行うこと。

VI 規約の監視編集

第二十八条 締約国会議

1 この規約により、締約国会議を設置する。締約国会議は、この規約の最高機関である。

2 締約国会議は、原則として通常二年ごとに通常会期として会合する。締約国会議は、自らが決定するとき又は締約国の少なくとも三分の一の要請に基づき、臨時会期として会合することができる。

3 各締約国は、締約国会議において一の票を有する。

4 締約国会議は、その手続規則を採択する。

第二十九条 締約国会議の助言機関及びオブザーバー

世界ドーピング防止機構は、助言機関として締約国会議に招請される。国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会、欧州評議会並びに体育及びスポーツのための政府間委員会(CIGEPS)は、オブザーバーとして招請される。締約国会議は、その他の関係する団体をオブザーバーとして招請することを決定することができる。

第三十条 締約国会議の任務

1 この規約の他の規定に定めるほか、締約国会議は、次の任務を行う。

⒜ この規約の目的を促進すること。

⒝ 世界ドーピング防止機構との関係について討議し、及び同機構の年間基本予算の資金を調達する仕組みを検討すること。非締約国は、その討議に招請されることができる。

⒞ 第十八条の規定に従い、任意の基金の資金の使途についての計画を採択すること。

⒟ 次条の規定に従って締約国が提出する報告を検討すること。

⒠ 次条の規定に基づき、ドーピング防止制度の発展に応じてこの規約の遵守についての監視を継続的に検討すること。同条の規定を上回るすべての監視の仕組み又は方法は、第十七条の規定に基づいて設立する任意の基金を通じて資金が供与されるものとする。

⒡ この規約の改正案を採択のために検討すること。

⒢ 世界ドーピング防止機構が採択する禁止表及び治療目的使用に係る除外措置の許与に関する基準の修正を第三十四条の規定に従って承認するために検討すること。

⒣ この規約の枠組みの中で、締約国と世界ドーピング防止機構との間の協力を定め、及び実施すること。

⒤ 規範の実施に関する世界ドーピング防止機構からの報告書を会期ごとの検討のために要請すること。

2 締約国会議は、その任務の遂行に当たり他の政府間機関と協力することができる。

第三十一条 締約国会議への国別報告

締約国は、自国がこの規約を遵守するためにとった措置に関係するすべての情報を、ユネスコの公用語のうちの一により、二年ごとに事務局を通じて締約国会議に送付する。

第三十二条 締約国会議の事務局

1 締約国会議の事務局は、ユネスコ事務局長が提供する。

2 ユネスコ事務局長は、締約国会議の要請により、締約国会議が合意した要件に基づき世界ドーピング防止機構の役務を最大限活用する。

3 この規約に関係する運営経費は、適切な水準の既存の資金の範囲内におけるユネスコの通常予算、第十七条の規定に基づいて設立する任意の基金又は二年ごとに決められるこれらの適切な組合せから提供される。事務局に対する通常予算からの資金の提供は、真に最少限のものとし、任意の基金からもこの規約を支援するために提供されるべきものと理解される。

4 事務局は、締約国会議の書類及び会合の議題案を作成し、並びに締約国会議の決定が実施されることを確保する。

第三十三条 改正

1 各締約国は、ユネスコ事務局長にあてた書面による通報により、この規約の改正を提案することができる。同事務局長は、当該通報をすべての締約国に送付する。同事務局長は、当該通報の送付の日から六箇月以内に締約国の少なくとも二分の一が同意する場合には、次の締約国会議の会期にこの提案を提出する。

2 改正案は、締約国会議において、出席し、かつ、投票する締約国の三分の二以上の多数による議決で採択される。

3 採択された後は、この規約の改正は、締約国に対し、批准、受諾、承認又は加入のために送付される。

4 この規約の改正は、批准し、受諾し、承認し、又はこれに加入した締約国に対して、締約国の三分の二が3の規定に係る文書を寄託した日の後三箇月で効力を生ずる。この規約の改正は、その後批准し、受諾し、承認し、又はこれに加入する各締約国については、その批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託した日の後三箇月で当該締約国について効力を生ずる。

5 4の規定により改正が効力を生じた後にこの規約の締約国となる国は、別段の意思を表明しない限り、次のようにみなされる。

⒜ 改正された規約の締約国

⒝ 改正によって拘束されない締約国との関係においては、改正されていない規約の締約国

第三十四条 規約の附属書に関する特別の改正手続

1 世界ドーピング防止機構が禁止表又は治療目的使用に係る除外措置の許与に関する基準を修正する場合には、同機構は、ユネスコ事務局長にあてた書面による通知により、同事務局長に対してその修正を通告することができる。同事務局長は、その修正をこの規約の関係する附属書の改正案としてすべての締約国に対して速やかに通報する。附属書の改正は、締約国会議のいずれかの会期又は書面による協議により承認される。

2 締約国は、事務局長による通報後四十五日以内に、書面による協議の場合は事務局長にあてた書面により又は締約国会議において、改正案に対する異議を表明する。締約国の三分の二が異議を表明しない限り、当該改正案は締約国会議において承認されたものとみなす。 

3 事務局長は、締約国会議において承認された改正を締約国に通報する。改正は、その通報の後四十五日で効力を生ずる。ただし、事務局長に対して当該改正を受け入れない旨を事前に通報した締約国については、この限りでない。

4 1から3までの規定に従って承認された改正を受け入れない旨を事務局長に通報した締約国は、引き続き改正前の附属書に拘束される。

VII 最終規定編集

第三十五条 憲法上の連邦制又は非単一制

次の規定は、憲法上の連邦制又は非単一制を有する締約国について適用する。

⒜ この規約の規定であって、連邦又は中央の立法機関の立法権の下で実施されているものについては、連邦又は中央の政府の義務は、連邦制をとっていない締約国の義務と同一とする。

⒝ この規約の規定であって、邦、州又は県の権限の下で実施されるものであり、かつ、連邦の憲法制度によって邦、州又は県が立法措置をとることを義務付けられていないものについては、連邦の政府は、これらの邦、州又は県の権限のある機関に対し、採択についての勧告を付してその規定を通報する。

第三十六条 批准、受諾、承認又は加入

ユネスコの加盟国は、それぞれ自国の憲法上の手続に従い、この規約を批准し、受諾し、若しくは承認し、又はこれに加入するものとする。批准書、受諾書、承認書又は加入書は、ユネスコ事務局長に寄託する。

第三十七条 効力発生

1 この規約は、三十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された日の後一箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。

2 この規約は、この規約に拘束されることに同意する旨をその後表明する締約国については、批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後一箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。

第三十八条 規約の適用地域

1 いずれの国も、批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の際、自国が国際関係について責任を有し、及びこの規約の適用を受ける領域を特定することができる。

2 いずれの国も、その後いつでも、ユネスコにあてた宣言により、当該宣言において特定する他の領域についてこの規約の適用を拡大することができる。この規約は、当該他の領域については、寄託者が当該宣言を受領した日の後一箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。

3 1及び2の規定に基づいて行われたいかなる宣言も、当該宣言において特定された領域について、ユネスコにあてた通告により撤回することができる。そのような撤回は、寄託者が当該通告を受領した日の後一箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。

第三十九条 廃棄

締約国は、この規約を廃棄することができる。廃棄は、ユネスコ事務局長に寄託する文書により通告する。廃棄は、ユネスコ事務局長による当該廃棄の通告書の受理の後六箇月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。廃棄は、脱退が効力を生ずる日までは、廃棄を行う締約国の財政上の義務に何ら影響を及ぼすものではない。

第四十条 寄託者

ユネスコ事務局長は、この規約及びその改正の寄託者とする。ユネスコ事務局長は、寄託者としてこの規約の締約国及びユネスコの他の加盟国に対し、次の事項を通報する。

⒜ 批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託

⒝ 第三十七条の規定に従ってこの規約が効力を生ずる日

⒞ 第三十一条の規定に従って作成された報告書

⒟ 第三十三条及び第三十四条の規定に従って採択されたこの規約の改正又は附属書の改正並びに当該改正が効力を生ずる日

⒠ 第三十八条の規定に基づいて行われる宣言又は通告

⒡ 前条の規定に従って行われる通告及び廃棄が効力を生ずる日

⒢ この規約に関係するその他の行為、通告又は通報

第四十一条 登録

この規約は、ユネスコ事務局長の要請により、国際連合憲章第百二条の規定に従って、国際連合事務局に登録する。

第四十二条 正文

1 この規約(附属書を含む。)は、ひとしく正文であるアラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語により作成する。

2 この規約の付録は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語により提供する。

第四十三条 留保

この規約の趣旨及び目的と両立しないいかなる留保も、認められない。

二千五年十一月十八日にパリで、総会の第三十三回会期の議長及びユネスコ事務局長の署名を有する本書二通を作成した。これらの本書は、ユネスコに寄託するものとする。

以上は、ユネスコの総会が、パリで開催されて二千五年十月二十一日に閉会を宣言されたその第三十三回会期において、正当に採択した規約の真正な本文である。

以上の証拠として、下名は、二千五年十一月十八日にこの規約に署名した。

総会議長

ムーサ・ビン・ジャーファル・ビン・ハッサン

事務局長

松浦晃一郎

附属書I 二千五年の禁止表(二千五年一月一日に効力を生じた世界ドーピング防止規範)編集

いかなる薬物の使用も、医学的に正当な適用に限るべきである。

常に禁止される物質及び方法(競技会検査及び競技会外検査)編集

禁止される物質編集

S1 たんぱく同化剤編集

たんぱく同化剤は、禁止する。

1 たんぱく同化男性化ステロイド剤(AAS)

⒜ 外因性(注1)たんぱく同化男性化ステロイドとは、次のものを含む。

十八α‐ホモ‐十七β‐ヒドロキシエストロ‐四‐エン‐三‐オン、ボラステロン、ボルデノン、ボルジオン、カルステロン、クロステボール、ダナゾール、デヒドロクロロメチル‐テストステロン、デルタ一‐アンドロステン‐三・十七‐ジオン、デルタ一‐アンドロステンジオール、デルタ一‐ジヒドロテストステロン、ドロスタノロン、エチルエストレノール、フルオキシメステロン、ホルメボロン、フラザボール、ゲストリノン、四‐ヒドロキシテストステロン、四‐ヒドロキシ‐十九‐ノルテストステロン、メスタノロン、メステロロン、メテノロン、メタンジエノン、メタンドリオール、メチルジエノロン、メチルトリエノロン、メチルテストステロン、ミボレロン、ナンドロロン、十九‐ノルアンドロステンジオール、十九‐ノルアンドロステンジオン、ノルボレトン、ノルクロステボール、ノルエタンドロロン、オキサボロン、オキサンドロロン、オキシメステロン、オキシメトロン、キンボロン、スタノゾロール、ステンボロン、テトラヒドロゲストリノン、トレンボロン及び類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有する物質

⒝ 内因性(注2)たんぱく同化男性化ステロイドとは、次のものを含む。

アンドロステンジオール(アンドロスタ-五-エン-三β・十七β-ジオール)、アンドロステンジオン(アンドロスタ-四-エン-三・十七-ジオン)、デヒドロ-エピアンドロステロン(DHEA)、ジヒドロ-テストステロン、テストステロン並びに次の代謝物及び異性体

五α-アンドロスタン-三α・十七α-ジオール、五α-アンドロスタン-三α・十七β-ジオール、五α-アンドロスタン-三β・十七α-ジオール、五α-アンドロスタン-三β・十七β-ジオール、アンドロスタ-四-エン-三α・十七α-ジオール、アンドロスタ-四-エン-三α・十七β-ジオール、アンドロスタ-四-エン-三β・十七α-ジオール、アンドロスタ-五-エン-三α・十七α-ジオール、アンドロスタ-五-エン-三α・十七β-ジオール、アンドロスタ-五-エン-三β・十七α-ジオール、四-アンドロステンジオール(アンドロスタ-四-エン-三β・十七β-ジオール)、五-アンドロステンジオン(アンドロスタ-五-エン-三・十七-ジオン)、エピ-ジヒドロテストステロン、三α-ヒドロキシ-五α-アンドロスタン-十七-オン、三β-ヒドロキシ-五α-アンドロスタン-十七-オン、十九-ノルアンドロ-ステロン、十九-ノルエチオコラノロン

体内で自然に生成される禁止される物質(⒝に掲げるもの)について、競技者の検体中の禁止される物質、その代謝物若しくは標識の濃度又は他の関連物質の比率が人体に通常見られる値の範囲から乖離しており正常な内因性の生成量に合致する可能性が低い場合には、当該検体に当該禁止される物質が含まれるものとみなす。競技者が競技者の検体中の禁止される物質、その代謝物若しくは標識の濃度又は他の関連物質の比率が生理的又は病理的状態によることを証拠をもって証明した場合には、当該検体に当該禁止される物質が含まれるとはみなされない。状況及び濃度のいかんにかかわらず、試験所は、信頼し得る分析方法に基づいて禁止される物質が外因性のものであることを証明できる場合には、違反が疑われる分析結果として報告する。

試験所の分析結果が最終的なものではなく、及び前記の濃度が検出されない場合には、関係のあるドーピング防止機関は、禁止される物質の使用の可能性について重大な徴候があるときは、更なる調査(ステロイドの特徴の比較等)を実施する。

試験所が尿中のエピテストステロンに対するテストステロンの比率が四対一を超えて存在することを報告した場合には、当該比率が生理学的又は病理学的な状態によるか否かを判断するため更なる調査が義務付けられる。ただし、試験所が信頼し得る分析方法に基づいて禁止される物質が外因性のものであるとする違反が疑われる分析結果を報告する場合を除く。

調査を行う場合には、当該調査は、過去の又はその後の検査結果の再検討を含む。過去の検査結果を利用できない場合には、競技者は、三箇月の期間内に予告なしに少なくとも三回の検査を受ける。

競技者が調査に協力しない場合には、当該競技者の検体は、禁止される物質が含まれるものとみなす。

2 他のたんぱく同化剤には、少なくとも次のものを含む。

クレンブテロール、ゼラノール、ジルパテロール

注1 このS1の規定の適用上、「外因性」とは、体内で自然に生成されない物質をいう。

注2 このS1の規定の適用上、「内因性」とは、体内で自然に生成する物質をいう。

S2 ホルモン及びその関連物質編集

次の物質(類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有する物質を含む。)及びその物質の放出因子は、禁止する。

1 エリスロポエチン(EPO)

2 成長ホルモン(hGH)、インスリン様成長因 子(IGF-1)、機械的成長因子類(MGFs)

3 性腺刺激ホルモン類(LH,hCG)

4 インスリン

5 コルチコトロピン類

当該濃度が生理的又は病理的状態によるものであることを競技者が証明できない場合には、競技者の検体中に前記の禁止される物質若しくはその代謝物の濃度又は他の関係する比率若しくは標識が人体に通常見られる正常な値の範囲を著しく超えており正常な内因性の生成量に合致する可能性が低いときは、当該検体に前記の禁止される物質が含まれるものとみなす。

類似の化学構造若しくは生物学的効果をもつ物質、診断標識又は前記のホルモンの放出因子若しくは検出された物質が外因性のものであることを示す他の物質の放出因子の存在は、違反の疑われる分析結果として報告される。

S3 ベータ‐ニ作用剤編集

すべてのベータ‐二作用剤(D体及びL体を含む。)は、禁止する。当該作用剤の使用は、治療目的使用に係る除外措置を必要とする。

例外として、フォルモテロール、サルブタモール、サルメテロール及びテルブタリンは、ぜん息及び運動誘発性ぜん息又は気管支収縮を予防し、又は治療するために吸入を使用する場合には、略式の治療目的使用に係る除外措置を必要とする。

治療目的使用に係る除外措置の許与にかかわらず、試験所が一ミリリットルにつき千ナノグラムを超えるサルブタモールの濃度(単独及びグルクロン酸との抱合体の濃度)を報告した場合には、この異常な結果が吸入したサルブタモールの治療目的使用の結果であることを競技者が証明しないときは、その報告は、違反の疑われる分析結果とみなされる。

S4 抗エストロゲン活性の物質を有する薬剤編集

次の種類の抗エストロゲン物質は、禁止する。

1 アロマターゼ阻害薬には、少なくとも次のものを含む。

アナストロゾール、レトロゾール、アミノグルテチミド、エキセメスタン、ホルメスタン、テストラクトン

2 選択的エストロゲン受容体モジュレーター類(SERMs)には、少なくとも次のものを含む。

ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェン

3 その他の抗エストロゲン物質には、少なくとも次のものを含む。

クロミフェン、シクロフェニル、フルベストラント

S5 利尿剤及び他の隠ぺい剤編集

利尿剤及び隠ぺい剤は、禁止する。

隠ぺい剤には、少なくとも次のものを含む。

利尿剤(注)、エピテストステロン、プロベネシド、アルファ‐還元酵素阻害剤(例えば、フィナステリド、デュタステリド)、血漿増量剤(例えば、アルブミン、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン)

利尿剤には、次のものを含む。

アセタゾラミド、アミロリド、ブメタニド、カンレノン、クロルタリドン、エタクリン酸、フロセミド、インダパミド、メトラゾン、スピロノラクトン、チアジド類(例えば、ベンドロフルメチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド)、トリアムテレン及び類似の化学構造又は類似の生物学的な効果を有する物質

注 治療目的使用に係る除外措置は、競技者の尿が禁止される物質の閾値又は閾値寸前の利尿剤を含む場合には、効力を有しない。

禁止される方法編集

M1 酸素の運搬能力の強化編集

次のことは、禁止する。

⒜ 治療以外の目的での血液ドーピング(自己血、同種血若しくは異種血又は赤血球生成物(由来を問わない。)を含む。)を行うこと。

⒝ 少なくとも次の物質の使用により、酸素の吸収、運搬又は到達を人為的に促進すること。

パーフルオロケミカル、エファプロキシラール(RSR13)、修飾ヘモグロビン生成物(例えば、ヘモグロビンに基づく血液代替物、ヘモグロビンのマイクロカプセル生成物)

M2 化学的及び物理的な操作編集

次の事項は、禁止する。

ドーピング管理において採取された検体の信頼性及び有効性を変化させるため、当該検体を不当に改変すること又は不当な改変を企てること。

このような改変には、少なくとも静脈への点滴(注)、カテーテルの使用及び尿のすり替えを含む。

注 正当な急性の治療の場合を除き、静脈への点滴は、禁止する。

M3 遺伝子ドーピング編集

競技能力を強化する能力を有する細胞、遺伝子若しくは遺伝因子の治療以外の目的での使用又は遺伝子発現の調整は、禁止する。

競技会における禁止される物質及び禁止される方法編集

S1からS5まで及びM1からM3までに掲げるもののほか、次の物質は、競技会において禁止する。

禁止される物質編集

S6 興奮剤編集

次の興奮剤(適当な場合には光学異性体(D体及びL体)を含む。)は、禁止する。

アドラフィニル、アンフェプラモン、アミフェナゾール、アンフェタミン、アンフェタミニル、ベンズフェタミン、ブロマンタン、カルフェドン、カチン(注1)、クロベンゾレクス、コカイン、ジメチルアンフェタミン、エフェドリン(注2)、エチルアンフェタミン、エチレフリン、ファンプロファゾン、フェンカンファミン、フェンカミン、フェネチリン、フェンフルラミン、フェンプロポレクス、フルフェノレクス、メフェノレクス、メフェンテルミン、メソカルブ、メタンフェタミン、メチルアンフェタミン、メチレンジオキシアンフェタミン、メチレンジオキシ‐メタンフェタミン、メチルエフェドリン(注2)、メチルフェニデート、モダフィニル、ニケタミド、ノルフェンフルラミン、パラヒドロキシアンフェタミン、ペモリン、フェンジ‐メトラジン、フェンメトラジン、フェンテルミン、プロリンタン、セレギリン、ストリキニン及び類似の化学構造又は類似の生物学的な効果を有する物質(注3)

注1 カチンは、尿中の濃度が一ミリリットルにつき五マイクログラムを超える場合には、禁止する。

注2 エフェドリン及びメチルエフェドリンは、尿中の濃度が一ミリリットルにつき十マイクログラムを超える場合には、禁止する。

注3 二千五年の監視プログラムに含まれる 物質(ブプロピオン、カフェイン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピプラドロール、プソイドエフェドリン、シネフリン)は、禁止される物質とみなさない。

注釈 アドレナリンは、局所麻酔薬との併用又は局所(例えば、鼻、眼)への投与の場合には、禁止しない。

S7 麻薬編集

次の麻薬は、禁止する。

ブプレノルフィン、デキストロモラミド、ジアモルヒネ(ヘロイン)、フェンタニル及びその誘導体、ヒドロモルフォン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、ペチジン

S8 カンナビノイド編集

カンナビノイド(例えば、ハシシュ、マリファナ)は、禁止する。

S9 糖質コルチコイド編集

糖質コルチコイドは、経口若しくは経直腸で又は静脈内若しくは筋肉内に投与される場合には、すべて禁止する。糖質コルチコイドの使用には、治療目的使用に係る除外措置を必要とする。

その他のすべての投与経路による使用には、略式の治療目的使用に係る除外措置を必要とする。

皮膚外用剤は、禁止しない。

特定スポーツにおける禁止される物質編集

P1 アルコール編集

アルコール(エタノール)は、次に掲げるスポーツの競技会に限って禁止する。その検知は、呼気又は血液の分析により行う。それぞれの競技連盟のドーピング違反の閾値は、次の括弧内に表示する。

航空スポーツ(国際航空連盟)(一リットルにつき〇・二〇グラム)

アーチェリー(国際アーチェリー連盟)(一リットルにつき〇・一〇グラム)

自動車(国際自動車連盟)(一リットルにつき〇・一〇グラム)

ビリヤード(世界ビリヤード・スポーツ連合)(一リットルにつき〇・二〇グラム)

ブール(世界ブールスポーツ連合)(一リットルにつき〇・一〇グラム)

空手(世界空手道連盟)(一リットルにつき〇・一〇グラム)

近代五種(国際近代五種連合)(一リットルにつき〇・一〇グラム)(射撃種目を含む。)

モーターサイクル(国際モーターサイクリズム連盟)(一リットルにつき〇・〇〇グラム)

スキー(国際スキー連盟)(一リットルにつき〇・一〇グラム)
P2 ベータ遮断剤編集

ベータ遮断剤は、別段の定めがある場合を除くほか、次に掲げるスポーツの競技会に限って禁止する。

航空スポーツ(国際航空連盟)

アーチェリー(国際アーチェリー連盟)(競技会外検査においても、禁止する。)

自動車(国際自動車連盟)

ビリヤード(世界ビリヤード・スポーツ連合)

ボブスレー(国際ボブスレー・トボガニング連盟)

ブール(世界ブールスポーツ連合)

ブリッジ(世界ブリッジ連盟)

チェス(国際チェス連盟)

カーリング(世界カーリング連盟)

体操(国際体操連盟)

モーターサイクル(国際モーターサイクリズム連盟)

近代五種(国際近代五種連合)(射撃種目を含む。)

ナインピン・ボウリング(国際ボウリング連盟)

セーリング(国際セーリング連盟)(一対一の試合における舵柄係に限る。)

射撃(国際射撃連盟)(競技会外検査においても、禁止する。)

スキー(国際スキー連盟)(ジャンプ競技及びフリースタイル・スノーボード

水泳(国際水泳連盟)(ダイビング及びシンクロナイズド・スイミング)

レスリング(国際レスリング連盟)

ベータ遮断剤には、少なくとも次のものを含む。

アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ブノロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、エスモロール、ラベタロール、レボブノロール、メチプラノロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール

特定物質(注)

「特定物質」(注)とは、次に掲げるものをいう。

エフェドリン、L‐メチルアンフェタミン、メチルエフェドリン

カンナビノイド

すべての吸入ベータe二作用剤(クレンブテロールを除く。)

プロベネシド

すべての糖質コルチコイド

すべてのベータ遮断剤

アルコール

注 禁止表においては、医薬品として一般的に入手可能であるために故意でないドーピング規則の違反を特に犯しやすいもの又はドーピング剤として首尾よく乱用するおそれが低いものを、特定物質として指定することができる。特定物質を用いたドーピング違反については、当該特定物質の使用が競技力の向上を目的としたものでないことを競技者が証明できる場合には、軽減された制裁とすることができる。

附属書II 治療目的使用に係る除外措置の許与に関する基準(世界ドーピング防止機構(WADA)の「治療目的使用に係る除外措置に関する国際基準」(二千五年一月発効)より抜粋)編集

4.0 治療目的使用に係る除外措置の許与に関する基準編集

競技者は、禁止表に掲げる禁止される物質又は禁止される方法の使用を許可されることによって治療目的使用に係る除外措置を許与されることができる。治療目的使用に係る除外措置の申請は、治療目的使用に係る除外措置委員会(TUEC)によって審査される。治療目的使用に係る除外措置委員会は、ドーピング防止機関によって任命される。除外措置は、次の基準に厳格に従って認められる。

注釈 当該基準は、規範により定義され、かつ、規範が対象とするすべての競技者、すなわち、健常である競技者及び障害のある競技者に適用する。当該基準は、競技者個人の事情に応じて適用する。例えば、障害のある競技者にとって適当な一の除外措置は、他の競技者にとっては適当でない場合がある。

4.1 競技者が競技会に参加する日の二十一日前までに、治療目的使用に係る除外措置のための申請書を提出すること。

4.2 競技者が急性又は慢性の疾患を治療する過程において禁止される物質又は禁止される方法を用いなかった場合には、その健康に深刻な障害を受けるであろうこと。

4.3 禁止される物質又は禁止される方法を治療目的により使用することによって、疾患の正当な治療後に通常の健康状態に回復することから予想されるもの以上に追加的な競技能力が向上しないこと。「正常下限」の水準に内因性ホルモンを増加させるため、禁止される物質又は禁止される方法を使用することは、妥当な治療措置とはみなされない。

4.4 禁止される物質又は禁止される方法の使用に代わる適切な治療方法がないこと。

4.5 禁止される物質又は禁止される方法を使用する必要性が禁止表に掲げる物質の治療目的ではない従前の使用の全体又は一部の結果ではないこと。

4.6 治療目的使用に係る除外措置は、次の場合には、当該措置を許与した機関によって取り消されること。

⒜ 競技者が当該除外措置を許与したドーピング防止機関が課した要件又は条件を遵守しない場合

⒝ 治療目的使用に係る除外措置の有効期間が満了した場合

⒞ 競技者がドーピング防止機関より治療目的使用に係る除外措置を取り消す通知を受けた場合

注釈 各治療目的使用に係る除外措置には、治療目的使用に係る除外措置委員会が決定する特定の有効期間がある。治療目的使用に係る除外措置の期間が満了した後又はそれが撤回された後、当該治療目的使用に係る除外措置に従って投与された禁止される物質が競技者の体内になお存在している場合がある。このような場合には、検知結果の最初の検討を行ったドーピング防止機関は、当該結果が当該治療目的使用に係る除外措置の期間の満了又は撤回と合致するか否かを検討する。

4.7 治療目的使用に係る除外措置の申請は、次の場合を除き、遡及的な承認のために検討されないこと。

⒜ 緊急な治療又は急性な疾患の治療が必要であった場合

⒝ やむを得ない例外的な事情により、ドーピング管理に先立ち、申請者が申請書を提出するための十分な時間及び機会がなかった場合又は治療目的使用に係る除外措置委員会が申請を検討する時間及び機会がなかった場合

注釈 医学的な緊急性又は急性の疾患のため、治療目的使用に係る除外措置の申請に先立って禁止される物質の投与又は禁止される方法の使用が必要となることは少ない。同様に、競技への参加が差し迫っていることを理由として治療目的使用に係る除外措置の申請を迅速に検討することが求められる状況も少ない。治療目的使用に係る除外措置を許与するドーピング防止機関は、このような状況に対応できるような内部手続を有するべきである。

5.0 情報の秘密性の保持編集

5.1 申請者は、治療目的使用に係る除外措置委員会の委員及び、必要に応じて、他の独立した医療の専門家若しくは科学の専門家又は治療目的使用に係る除外措置の運用、審査若しくは不服申立てに関与するすべての必要とされる職員に対し、申請に関するすべての情報を送付することについての承諾書(書面による同意)を提出しなければならない。

5.2 治療目的使用に係る除外措置委員会の委員及び関係のあるドーピング防止機関の管理部門は、その活動を厳格に秘密のものとして行う。治療目的使用に係る除外措置委員会のすべての委員及び関係するすべての職員は、秘密保持に関する合意文書に署名するものとする。治療目的使用に係る除外措置委員会のすべての委員及び関係するすべての職員は、特に、次の情報の秘密性を保持する。

⒜ 競技者及びその治療に関与する医師から提供されたすべての医学的な情報及び記録

⒝ 申請の詳細な情報(申請の過程に関与する医師の氏名を含む。)

治療目的使用に係る除外措置委員会又は世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会が競技者に代わって健康に関する情報を得るという権利を取り消すことを希望する場合には、当該競技者の医師に対してその事実を書面により通告しなければならない。その結果として、当該競技者は、治療目的使用に係る除外措置の承認を受けず、又は既存の治療目的使用に係る除外措置の更新を受けることもない。

6.0 治療目的使用に係る除外措置委員会編集

治療目的使用に係る除外措置委員会は、次の指針に従って構成され、及び活動する。

6.1 治療目的使用に係る除外措置委員会には、競技者の処置及び治療に関する経験を有し、かつ、臨床医学、スポーツ医学及び運動医学の適正な知識を持つ少なくとも三人以上の医師を含めるべきである。決定の独立性を確保するため、治療目的使用に係る除外措置委員会の委員の多数は、ドーピング防止機関においていかなる公式な責務も持つべきではない。治療目的使用に係る除外措置委員会のすべての委員は、利害関係がないことに関する合意文書に署名する。障害のある競技者に関係する申請については、治療目的使用に係る除外措置委員会の少なくとも一人の委員は、障害のある競技者の処置及び治療に関する具体的な経験を有する者でなければならない。

6.2 治療目的使用に係る除外措置委員会は、治療目的使用に係る除外措置の申請の審査に際し、適当と認める医学上又は科学上の専門知識を求めることができる。

6.3 世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会は、6.1に規定する基準に従って構成される。世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会は、ドーピング防止機関が許与した治療目的使用に係る除外措置の決定を自己の発意に基づいて審査するために設置される。規範の4.4の規定に従い、世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会は、ドーピング防止機関によって治療目的使用に係る除外措置を非承認とされた競技者からの要請に基づき、その非承認の決定を覆す権限を有して審査を行う。

7.0 治療目的使用に係る除外措置の申請手続編集

7.1 治療目的使用に係る除外措置の審査は、すべての関係書類が添付された不備のない申請書を受領した後においてのみ行われる(付録一の治療目的使用に係る除外措置の申請書参照。)。申請手続は、厳格な医学上の秘密性の保持の原則に従って取り扱われなければならない。

7.2 付録一の治療目的使用に係る除外措置の申請書は、ドーピング防止機関が参考として追加的に情報を要求するために変更することができるが、いかなる欄又は項目も削除されない。

7.3 治療目的使用に係る除外措置の申請書は、ドーピング防止機関によって他の言語に翻訳することができるが、申請書の英文表記又はフランス文表記については、当該申請書に残しておかなければならない。

7.4 競技者は、二以上のドーピング防止機関に対して治療目的使用に係る除外措置の申請をすることができない。申請書には、競技者の競技種目並びに、適当な場合には、練習方法及び特定の守備位置又は役割を明記しなければならない。

7.5 申請書には、禁止される物質又は禁止される方法を使用するために行った現在又は過去の申請、当該申請を行った機関及び当該機関の決定を記載しなければならない。

7.6 申請書には、包括的な病歴並びに当該申請に関連するすべての検査結果、試験所の調査結果及び画像検査の結果が添付されていなければならない。

7.7 ドーピング防止機関の治療目的使用に係る除外措置委員会が追加的に要求する関係する調査、検査又は画像検査は、申請者又は申請者が所属する国内のスポーツ担当機関の費用負担によって行う。

7.8 申請書には、競技者の治療における禁止される物質又は禁止される方法の必要性を証明し、及びこの疾患の治療において使用が認められている代替薬を治療に用いることができない理由又は用いることができなかった理由を記述した適切な資格を有する医師による報告が添付されていなければならない。

7.9 申請書には、除外措置を求める禁止される物質又は禁止される方法の投与量、投与頻度、投与経路又は投与期間を記載しなければならない。

7.10 治療目的使用に係る除外措置委員会は、関係するすべての書類の受領から三十日以内に決定を行うべきであり、また、その決定は、関係するドーピング防止機関により競技者に対して書面により送付される。治療目的使用に係る除外措置がドーピング防止機関の検査対象者登録リストに掲げられている競技者に許与された場合には、当該競技者及び世界ドーピング防止機構は、治療目的使用に係る除外措置の有効期間及び関連条件に関する情報を含む承認を速やかに提供される。

7.11⒜ 世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会は、競技者より規範4.4の規定に従った再審査の請求を受領した場合には、ドーピング防止機関が許与した治療目的使用に係る除外措置の決定を規範4.4の規定に従って取り消すことができる。当該競技者は、ドーピング防止機関に治療目的使用に係る除外措置の申請のために当初提出したすべての情報を申請手数料を添えて世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会に提出する。当初の決定は、再審査手続が終了するまで有効とする。当該手続は、世界ドーピング防止機構が当該情報を受領した後三十日以上を要するべきではない。

⒝ 世界ドーピング防止機構は、いつでも審査を行うことができる。世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会は、三十日以内に審査を終了させる。

7.12 治療目的使用に係る除外措置を許与する決定が再審査で取り消された場合には、その取消しは、遡及して適用されてはならず、かつ、治療目的使用に係る除外措置が許与されていた期間における当該競技者の成績は、失効しない。当該取消しは、競技者に対する決定の通告の後十四日以内に効力を生ずる。

8.0 略式の治療目的使用に係る除外措置(ATUE)の申請手続編集

8.1 禁止される物質の一覧表に掲げられている物質の一部は、競技者の間で頻繁に発生する疾患の治療に使用されることが認められる。この場合には、4及び7の項の諸規定によりその詳細を定める完全な申請は、必要でない。このため、治療目的使用に係る除外措置の申請の略式手続を設ける。

8.2 当該略式の申請手続で認められる禁止される物質又は禁止される方法は、次のものに厳格に限定する。

ベータ‐二作用剤(フォルモテロール、サルブタモール、サルメテロール及びテルブタリン)の吸入使用及び糖質コルチコイドの局所使用

8.3 競技者は、8.2に掲げるいずれかの物質を使用するためには、ドーピング防止機関に治療の必要性を証明する医学的な通告書を提出する。付録二に定める医学的な通告書には、診断、薬物の名称、その投与量、使用経路及び治療期間を記載する。該当する場合には、診断を立証するために行われたすべての検査を含めるべきである(実際の検査結果及びその詳細を除く。)。

8.4 略式の申請手続は、次のものをいう。

⒜ 略式の申請過程の対象となる禁止される物質の使用に対する承認は、ドーピング防止機関が不備のない通告書を受領した時に効力を生ずる。不備のある通告書は、申請者に差し戻さなければならない。

⒝ ドーピング防止機関は、不備のない通告書を受領した場合には、その競技者に対して速やかにその受領を通知し、適当な場合には、当該競技者の所属する国際競技連盟、国内の競技連盟及び国内のドーピング防止機関に対しても通報する。ドーピング防止機関は、国際水準の競技者から通告書を受領したときにのみ、世界ドーピング防止機構に通報する。

⒞ 略式の治療目的使用に係る除外措置のための通告書は、次の場合を除くほか、遡及的な承認のために検討されることはない。

緊急な治療又は急性な疾患の治療が必要であった場合

例外的な事情により、ドーピング管理に先立ち、申請者が通告書を提出するための十分な時間及び機会がなかった場合又は治療目的使用に係る除外措置委員会が通告書を受理する時間及び機会がなかった場合

8.5⒜ 治療目的使用に係る除外措置委員会又は世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会の審査は、略式の治療目的使用に係る除外措置の有効期間内にいつでも開始することができる。

⒝ 競技者が略式の治療目的使用に係る除外措置の非承認に対する再審査を要請する場合には、世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会は、必要と認める追加的な医学的な情報を当該競技者に要求することができるものとし、そのための費用は、当該競技者が負担すべきである。

8.6 治療目的使用に係る除外措置委員会又は世界ドーピング防止機構の治療目的使用に係る除外措置委員会は、略式の治療目的使用に係る除外措置の承認をいつでも取り消すことができる。その場合には、競技者、競技者の所属する国際競技連盟及び関係するすべてのドーピング防止機関は、直ちに通報を受けるものとする。

8.7 承認の取消しは、競技者に決定が通報された後直ちに効力を生ずる。その場合であっても、当該競技者は、7の規定に基づいて治療目的使用に係る除外措置の申請を行うことができる。

9.0 情報センター編集

9.1 ドーピング防止機関は、7の規定に基づいて許与したすべての治療目的使用に係る除外措置及びこれを裏付けるすべての書類を世界ドーピング防止機構に提供するよう要求される。

9.2 ドーピング防止機関は、略式の治療目的使用に係る除外措置に関し、国際水準の競技者が8.4の規定に従って提出した医学的な通告書を世界ドーピング防止機構に提供する。

9.3 情報センターは、すべての医学的な情報に関して厳格な秘密性の保持を保証するものとする。

 

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