コリント人への後の書(文語訳)
第1章
編集1:1
編集神の御意によりてイエス・キリストの使徒となれるパウロ及び兄弟テモテ、書をコリントに在る神の教會、ならびにアカヤ全國に在る凡ての聖徒に贈る。
1:2
編集願はくは我らの父なる神および主イエス・キリストより賜ふ恩惠と平安と汝らに在らんことを。
1:3
編集讃むべき哉、われらの主イエス・キリストの父なる神、即ちもろもろの慈悲の父、一切の慰安の神、
1:4
編集われらを凡ての患難のうちに慰め、我等をして自ら神に慰めらるる慰安をもて、諸般の患難に居る者を慰むることを得しめ給ふ。
1:5
編集そはキリストの苦難われらに溢るる如く、我らの慰安も亦キリストによりて溢るればなり。
1:6
編集我ら或は患難を受くるも汝らの慰安と救とのため、或は慰安を受くるも汝らの慰安の爲にして、その慰安は汝らの中に働きて、我らが受くる如き苦難を忍ぶことを得しむるなり。
1:7
編集かくて汝らが苦難に與るごとく、また慰安にも與ることを知れば、汝らに對する我らの望は堅し。
1:8
編集兄弟よ、我らがアジヤにて遭ひし患難を汝らの知らざるを好まず、すなはち壓せらるること甚だしく、力耐へがたくして、生くる望を失ひ、
1:9
編集心のうちに死を期するに至れり。これ己を頼まずして、死人を甦へらせ給ふ神を頼まん爲なり。
1:10
編集神は斯かる死より我らを救ひ給へり、また救ひ給はん。我らは後もなほ救ひ給はんことを望みて神を頼み、
1:11
編集汝らも我らの爲に祈をもて助く。これ多くの人の願望によりて賜はる恩惠を、多くの人の感謝するに至らん爲なり。
1:12
編集われら世に在りて殊に汝らに對し、神の清淨と眞實とをもて、また肉の智慧によらず、神の恩惠によりて行ひし事は、我らの良心の證する所にして、我らの誇なり。
1:13
編集我らの書き贈ることは、汝らの讀むところ知る所の他ならず。
1:14
編集而して我は汝等のうち或者の既に知れる如く、我らの主イエスの日に我らが汝らの誇、なんぢらが我らの誇たるを終まで知らんことを望む。
1:15
編集この確信をもて先づ汝らに到り、再び益を得させ、
1:16
編集かくて汝らを經てマケドニアに往き、マケドニアより更に復なんぢらに到り、而して汝らに送られてユダヤに往かんことを定めたり。
1:17
編集かく定めたるは浮きたる事ならんや。わが定むるところ肉によりて定め、然り然り、否々と言ふが如きこと有らんや。
1:18
編集神は眞實にて在せば、我らが汝らに對する言も、然りまた否と言ふが如きにあらず。
1:19
編集我ら即ちパウロ、シルワノ、テモテが汝らの中に傳へたる神の子キリスト・イエスは、然りまた否と言ふが如き者にあらず、然りと言ふことは彼によりて成りたるなり。
1:20
編集神の約束は多くありとも、然りと言ふことは彼によりて成りたれば、彼によりてアァメンあり、我ら神に榮光を歸するに至る。
1:21
編集汝らと共に我らをキリストに堅くし、且われらに膏を注ぎ給ひし者は神なり。
1:22
編集神はまた我らに印し、保證として御靈を我らの心に賜へり。
1:23
編集我わが靈魂を賭けて神の證を求む、我がコリントに往くことの遲きは、汝らを寛うせん爲なり。
1:24
編集されど我らは汝らの信仰を掌どる者にあらず、汝らの喜悦を助くる者なり、汝らは信仰によりて立てばなり。
第2章
編集2:1
編集われ再び憂をもて汝らに到らじと自ら定めたり。
2:2
編集我もし汝らを憂ひしめば、我が憂ひしむる者のほかに誰か我を喜ばせんや。
2:3
編集われ前に此の事を書き贈りしは、我が到らんとき、我を喜ばすべきもの、反つて我を憂ひしむる事のなからん爲にして、汝らは皆わが喜悦を喜悦とするを信ずるに因りてなり。
2:4
編集われ大なる患難と心の悲哀とにより、多くの涙をもて汝らに書き贈れり。これ汝らを憂ひしめんとにあらず、我が汝らに對する愛の溢るるばかりなるを知らしめん爲なり。
2:5
編集もし憂ひしむる人あらば、我を憂ひしむるにあらず、幾許か汝ら衆を憂ひしむるなり。(幾許かと云へるは、われ激しく責むるを好まぬ故なり)
2:6
編集かかる人の多數の者より受けたる懲罰は足れり。
2:7
編集されば汝ら寧ろ彼を恕し、かつ慰めよ、恐らくは其の人、甚だしき愁に沈まん。
2:8
編集この故に我なんぢらの愛を彼に顯さんことを勸む。
2:9
編集前に書き贈りしは、凡ての事につきて汝らが從順なりや否やをも試み知らん爲なり。
2:10
編集なんぢら何事にても人を恕さば、我も亦これを恕さん、われ恕したる事あらば、汝らの爲にキリストの前に恕したるなり。
2:11
編集これサタンに欺かれざらん爲なり、我等はその詭謀を知らざるにあらず。
2:12
編集我キリストの福音の爲にトロアスに到り、主われに門を開き給ひたれど、
2:13
編集我が兄弟テトスに逢はぬによりて心に平安をえず、彼處の者に別を告げてマケドニヤに往けり。
2:14
編集感謝すべきかな、神は何時にてもキリストにより、我らを執へて凱旋し、何處にても我等によりてキリストを知る知識の馨をあらはし給ふ。
2:15
編集救はるる者にも亡ぶる者にも、我らは神に對してキリストの香しき馨なり。
2:16
編集この人には死よりいづる馨となりて死に至らしめ、かの人には生命より出づる馨となりて生命に至らしむ。誰か此の任に耐へんや。
2:17
編集我らは多くの人のごとく神の言を曲げず、眞實により神による者のごとく、神の前にキリストに在りて語るなり。
第3章
編集3:1
編集我等ふたたび己を薦め始めんや、また或人のごとく人の推薦の書を汝らに齎し、また汝等より受くることを要せんや。
3:2
編集汝らは即ち我らの書にして我らの心に録され、又すべての人に知られ、かつ讀まるるなり。
3:3
編集汝らは明かに我らの職によりて書かれたるキリストの書なり。而も墨にあらで活ける神の御靈にて録され、石碑にあらで心の肉碑に録されたるなり。
3:4
編集我らはキリストにより、神に對して斯かる確信あり。
3:5
編集されど己は何事をも自ら定むるに足らず、定むるに足るは神によるなり。
3:6
編集神は我らを新約の役者となるに足らしめ給へり、儀文の役者にあらず、靈の役者なり。そは儀文は殺し、靈は活せばなり。
3:7
編集石に彫り書されたる死の法の職にも光榮ありて、イスラエルの子等はそのやがて消ゆべきモーセの顏の光榮を見つめ得ざりし程ならんには、
3:8
編集まして靈の職は光榮なからんや。
3:9
編集罪を定むる職もし光榮あらんには、まして義とする職は光榮に溢れざらんや。
3:10
編集もと光榮ありし者も更に勝れる光榮に比ぶれば、光榮なき者となれり。
3:11
編集もし消ゆべき者に光榮ありしならんには、まして永存ふるものに光榮なからんや。
3:12
編集我らは斯くのごとき希望を有つゆゑに、更に臆せずして言ひ、
3:13
編集又モーセの如くせざるなり。彼は消ゆべき者の消えゆくをイスラエルの子らに見せぬために、面帕を顏におほひたり。
3:14
編集然れど彼らの心鈍くなれり。キリストによりて面帕の廢るべきを悟らねば、今日に至るまで舊約を讀む時その面帕なほ存れり。
3:15
編集今日に至るまでモーセの書を讀むとき、面帕は彼らの心のうへに置かれたり。
3:16
編集然れど主に歸する時、その面帕は取り除かるべし。
3:17
編集主は即ち御靈なり、主の御靈のある所には自由あり。
3:18
編集我等はみな面帕なくして、鏡に映るごとく主の榮光を見、榮光より榮光にすすみ、主たる御靈によりて主と同じ像に化するなり。
第4章
編集4:1
編集この故に我ら憐憫を蒙りて此の職を受けたれば、落膽せず、
4:2
編集恥づべき隱れたる事をすて、惡巧に歩まず、神の言をみださず、眞理を顯して神の前に己を凡ての人の良心に薦むるなり。
4:3
編集もし我らの福音おほはれ居らば、亡ぶる者に覆はれをるなり。
4:4
編集この世の神は此等の不信者の心を暗まして、神の像なるキリストの榮光の福音の光を照さざらしめたり。
4:5
編集我らは己の事を宣べず、ただキリスト・イエスの主たる事と、我らがイエスのために汝らの僕たる事とを宣ぶ。
4:6
編集光、暗より照り出でよと宣ひし神は、イエス・キリストの顏にある神の榮光を知る知識を輝かしめんために、我らの心を照し給へるなり。
4:7
編集我等この寶を土の器に有てり、これ優れて大なる能力の我等より出でずして、神より出づることの顯れんためなり。
4:8
編集われら四方より患難を受くれども窮せず、爲ん方つくれども希望を失はず、
4:9
編集責めらるれども棄てられず、倒さるれども亡びず、
4:10
編集常にイエスの死を我らの身に負ふ。これイエスの生命の我らの身にあらはれん爲なり。
4:11
編集それ我ら生ける者の常にイエスのため死に付さるるは、イエスの生命の我らの死ぬべき肉體にあらはれん爲なり。
4:12
編集さらば死は我等のうちに働き、生命は汝等のうちに働くなり。
4:13
編集録して『われ信ずるによりて語れり』とあるごとく、我等にも同じ信仰の靈あり、信ずるに因りて語るなり。
4:14
編集これ主イエスを甦へらせ給ひし者の我等をもイエスと共に甦へらせ、汝らと共に立たしめ給ふことを我ら知ればなり。
4:15
編集凡ての事は汝らの益なり。これ多くの人によりて御惠の増し加はり、感謝いや増りて神の榮光の顯れん爲なり。
4:16
編集この故に我らは落膽せず、我らが外なる人は壞るれども、内なる人は日々に新なり。
4:17
編集それ我らが受くる暫くの輕き患難は、極めて大なる永遠の重き光榮を得しむるなり。
4:18
編集我らの顧みる所は見ゆるものにあらで見えぬものなればなり。見ゆるものは暫時にして、見えぬものは永遠に至るなり。
第5章
編集5:1
編集我らは知る、我らの幕屋なる地上の家、壞るれば、神の賜ふ建造物、すなはち天にある、手にて造らぬ、永遠の家あることを。
5:2
編集我等はその幕屋にありて歎き、天より賜ふ住所をこの上に著んことを切に望む。
5:3
編集之を著るときは裸にてある事なからん。
5:4
編集我等この幕屋にありて重荷を負へる如くに歎く、之を脱がんとにあらで、此の上に著んことを欲すればなり。これ死ぬべき者の生命に呑まれん爲なり。
5:5
編集我らを此の事に適ふものとなし、その證として御靈を賜ひし者は神なり。
5:6
編集この故に我らは常に心強し、かつ身に居るうちは主より離れ居るを知る、
5:7
編集見ゆる所によらず、信仰によりて歩めばなり。
5:8
編集斯く心強し、願ふところは寧ろ身を離れて主と偕に居らんことなり。
5:9
編集然れば身に居るも身を離るるも、ただ御心に適はんことを力む。
5:10
編集我等はみな必ずキリストの審判の座の前にあらはれ、善にもあれ惡にもあれ、各人その身になしたる事に隨ひて報を受くべければなり。
5:11
編集斯く主の畏るべきを知るによりて人々に説き勸む。われら既に神に知られたり、亦なんぢらの良心にも知られたりと思ふ。
5:12
編集我等は再び己を汝らに薦むるにあらず、ただ我等をもて誇とする機を汝らに與へ、心によらず外貌によりて誇る人々に答ふることを得させんとするなり。
5:13
編集我等もし心狂へるならば、神の爲なり、心慥ならば、汝らの爲なり。
5:14
編集キリストの愛われらに迫れり。我ら思ふに、一人すべての人に代りて死にたれば、凡ての人すでに死にたるなり。
5:15
編集その凡ての人に代りて死に給ひしは、生ける人の最早おのれの爲に生きず、己に代り死にて甦へり給ひし者のために、生きん爲なり。
5:16
編集されば今より後われ肉によりて人を知るまじ、曾て肉によりてキリストを知りしが、今より後は斯くの如くに知ることをせじ。
5:17
編集人もしキリストに在らば新に造られたる者なり、古きは既に過ぎ去り、視よ、新しくなりたり。
5:18
編集これらの事はみな神より出づ、神はキリストによりて我らを己と和がしめ、かつ和がしむる職を我らに授け給へり。
5:19
編集即ち神はキリストに在りて世を己と和がしめ、その罪を之に負はせず、かつ和がしむる言を我らに委ね給へり。
5:20
編集されば我等はキリストの使者たり、恰も神の我等によりて汝らを勸め給ふがごとし。我等キリストに代りて願ふ、なんぢら神を和げ。
5:21
編集神は罪を知り給はざりし者を我らの代に罪となし給へり、これ我らが彼に在りて神の義となるを得んためなり。
第6章
編集6:1
編集我らは神とともに働く者なれば、神の恩惠を汝らが徒らに受けざらんことを更に勸む。
6:2
編集(神いひ給ふ
- 『われ惠の時に汝に聽き、
- 救の日に汝を助けたり』と。視よ、今は惠のとき、視よ、今は救の日なり)
6:3
編集我等この職の謗られぬ爲に何事にも人を躓かせず。
6:4
編集反つて凡ての事において神の役者のごとく己をあらはす、即ち患難にも、窮乏にも、苦難にも、
6:5
編集打たるるにも、獄に入るにも、騷擾にも、勞動にも、眠らぬにも、斷食にも、大なる忍耐を用ひ、
6:6
編集また廉潔と知識と寛容と仁慈と聖靈と虚僞なき愛と、
6:7
編集眞の言と神の能力と左右に持ちたる義の武器とにより、
6:8
編集また光榮と恥辱と惡名と美名とによりて表す。我らは人を惑す者の如くなれども眞、
6:9
編集人に知られぬ者の如くなれども人に知られ、死なんとする者の如くなれども、視よ、生ける者、懲さるる者の如くなれども殺されず、
6:10
編集憂ふる者の如くなれども常に喜び、貧しき者の如くなれども多くの人を富ませ、何も有たぬ者の如くなれども凡ての物を有てり。
6:11
編集コリント人よ、我らの口は汝らに向ひて開け、我らの心は廣くなれり。
6:12
編集汝らの狹くせらるるは我らに因るにあらず、反つて己が心に因るなり。
6:13
編集汝らも心を廣くして我に報をせよ。(我わが子に對する如く言ふなり)
6:14
編集不信者と軛を同じうすな、釣合はぬなり、義と不義と何の干與かあらん、光と暗と何の交際かあらん。
6:15
編集キリストとベリアルと何の調和かあらん、信者と不信者と何の關係かあらん。
6:16
編集神の宮と偶像と何の一致かあらん、我らは活ける神の宮なり、即ち神の言ひ給ひしが如し。曰く
- 『われ彼らの中に住み、また歩まん。:我かれらの神となり、
- 彼等わが民とならん』と。
6:17
編集この故に
- 『主いひ給ふ、
- 「汝等かれらの中より出で、之を離れ、
- 穢れたる者に觸るなかれ」と。:「さらば我なんぢらを受け、
6:18
編集われ汝らの父となり、
- 汝等わが息子むすめとならん」と、全能の主いひ給ふ』とあるなり。
第7章
編集7:1
編集されば愛する者よ、我らかかる約束を得たれば、肉と靈との汚穢より全く己を潔め、神を畏れてその清潔を成就すべし。
7:2
編集我らを受け容れよ、われら誰にも不義をなしし事なく、誰をも害ひし事なく、誰をも掠めし事なし。
7:3
編集わが斯く言ふは、汝らを咎めんとにあらず、そは我が既に言へる如く、汝らは我らの心にありて、共に死に共に生くればなり。
7:4
編集我なんぢらを信ずること大なり、また汝等をもて誇とすること大なり、我は慰安にみち、凡ての患難の中にも喜悦あふるるなり。
7:5
編集マケドニヤに到りしとき、我らの身はなほ聊かも平安を得ずして、樣々の患難に遭ひ、外には分爭、内には恐懼ありき。
7:6
編集然れど哀なる者を慰むる神は、テトスの來るによりて我らを慰め給へり。
7:7
編集唯その來るに因りてのみならず、彼が汝らによりて得たる慰安をもて慰め給へり。即ち汝らの我を慕ふこと、歎くこと、我に對して熱心なることを我らに告ぐるによりて、我ますます喜べり。
7:8
編集われ書をもて汝らを憂ひしめたれども悔いず、その書の汝らを暫く憂ひしめしを見て、前には悔いたれども今は喜ぶ。
7:9
編集わが喜ぶは汝らの憂ひしが故にあらず、憂ひて悔改に至りし故なり。汝らは神に從ひて憂ひたれば、我等より聊かも損を受けざりき。
7:10
編集それ神にしたがふ憂は、悔なきの救を得るの悔改を生じ、世の憂は死を生ず。
7:11
編集視よ、汝らが神に從ひて憂ひしことは、如何ばかりの奮勵・辯明・憤激・恐懼・愛慕・熱心・罪を責むる心などを汝らの中に生じたりしかを。汝等かの事に就きては全く潔きことを表せり。
7:12
編集されば前に書を汝らに書き贈りしも、不義をなしたる人の爲にあらず、また不義を受けたり人の爲にあらず、我らに對する汝らの奮勵の、神の前にて汝らに顯れん爲なり。
7:13
編集この故に我らは慰安を得たり。慰安を得たる上にテトスの喜悦によりて更に喜べり。そは彼の心なんぢら一同によりて安んぜられたればなり。
7:14
編集われ曩に彼の前に汝らに就きて誇りたれど恥づることなし、我らが汝らに語りし事のみな誠實なりし如く、テトスの前に誇りし事もまた誠實となれり。
7:15
編集彼は汝等みな從順にして畏れ戰き、己を迎へしことを思ひ出して、心を汝らに寄すること増々深し。
7:16
編集われ凡ての事に汝らに就きて心強きを喜ぶ。
第8章
編集8:1
編集兄弟よ、我らマケドニヤの諸教會に賜ひたる神の恩惠を汝らに知らす。
8:2
編集即ち患難の大なる試練のうちに彼らの喜悦あふれ、又その甚だしき貧窮は吝みなく施す富の溢るるに至れり。
8:3 8:4
編集われ證す、彼らは聖徒に事ふることに與る惠を切に我らに請ひ求め、みづから進みて、力に應じ、否これに過ぎて施濟をなせり。
8:5
編集我らの望のほかに先づ己を主にささげ、神の御意によりて我らにも身を委ねたり。
8:6
編集されば我らはテトスが前に此の慈惠のことを汝らの中に始めたれば、又これを成就せんことを勸めたり。
8:7
編集汝等もろもろの事、すなはち信仰に、言に、知識に、凡ての奮勵に、また我らに對する愛に富めるごとく、此の慈惠にも富むべし。
8:8
編集われ斯く言ふは汝らに命ずるにあらず、ただ他の人の奮勵によりて、汝らの愛の眞實を試みん爲なり。
8:9
編集汝らは我らの主イエス・キリストの恩惠を知る。即ち富める者にて在したれど、汝等のために貧しき者となり給へり。これ汝らが彼の貧窮によりて富める者とならん爲なり。
8:10
編集施濟のことに就きて我ただ意見を述ぶ、これは汝らの益なり。汝らは此の事をただに一年前より人に先だちて行ひしのみならず、又これを願い始めし事なれば、
8:11
編集今これを成し遂げよ、汝らが心より願ひしごとく、所有に應じて成し遂げよ。
8:12
編集人もし志望あらば、其の有たぬ所に由るにあらず、其の有つ所に由りて嘉納せらるるなり。
8:13
編集これ他の人を安くして汝らを苦しめんとにあらず、均しくせんとするなり。
8:14
編集すなはち今なんぢらの餘るところは彼らの足らざるを補ひ、後また彼らの餘る所は汝らの足らざるを補ひて、均しくなるに至らんためなり。
8:15
編集録して『多く集めし者にも餘る所なく、少く集めし者にも足らざる所なかりき』とあるが如し。
8:16
編集汝らに對する同じ熱心をテトスの心にも賜へる神に感謝す。
8:17
編集彼はただに勸を容れしのみならず、甚だ熱心にして、自ら進んで汝らに往くなり。
8:18
編集我等また彼とともに一人の兄弟を遣す。この人は福音をもて諸教會のうちに譽を得たる上に、
8:19
編集主の榮光と我らの志望とを顯さんがために、掌どれる此の慈惠に就きて、諸教會より我らの道伴として選ばれたる者なり。
8:20
編集彼を遣すは、此の大なる醵金を掌どるに、人に咎めらるる事を避けんためなり。
8:21
編集そは主の前のみならず、人の前にも善からんことを慮ぱかりてなり。
8:22
編集また一人の兄弟を彼らと共につかはす、我らは多くの事につきて屡次かれの熱心なるを認めたり。而して今は彼が汝らを深く信ずるに因りて、その熱心の更に加はるを認む。
8:23
編集テトスのことを言へば、我が友なり、汝らに對して我が同勞者なり。この兄弟たちの事をいへば、彼らは諸教會の使なり、キリストの榮光なり。
8:24
編集されば汝らの愛と我らが汝らに就きて誇れる事との證を、諸教會の前にて彼らに顯せ。
第9章
編集9:1
編集聖徒に施すことに就きては汝らに書きおくるに及ばず、
9:2
編集我なんぢらの志望あるを知ればなり。その志望につき汝らの事をマケドニヤ人に誇りて、アカヤは既に一年前に準備をなせりと云へり。かくて汝らの熱心は多くの人を勵ましたり。
9:3
編集されどわれ兄弟たちを遣すは、我が言ひしごとく汝らに準備をなさしめ、之につきて我らの誇りし事の空しくならざらん爲なり。
9:4
編集もしマケドニヤ人われと共に來りて汝らの準備なきを見ば、汝らは言ふに及ばず、我らも確信せしによりて恐らくは恥を受けん。
9:5
編集この故に兄弟たちを勸めて、先づ汝らに往かしめ、曩に汝らが約束したる慈惠を、吝むが如くせずして、惠む心よりせん爲に預じめ調へしむるは、必要のことと思へり。
9:6
編集それ少く播く者は少く刈り、多く播く者は多く刈るべし。
9:7
編集おのおの吝むことなく、強ひてすることなく、その心に定めし如くせよ。神は喜びて與ふる人を愛し給へばなり。
9:8
編集神は汝等をして常に凡ての物に足らざることなく、凡ての善き業に溢れしめんために、凡ての恩惠を溢るるばかり與ふることを得給ふなり。
9:9
編集録して
- 『彼は散して貧しき者に與へたり。
- その正義は永遠に存らん』とある如し。
9:10
編集播く人に種と食するパンとを與ふる者は、汝らにも種をあたへ、且これを殖し、また汝らの義の果を増し給ふべし。
9:11
編集汝らは一切に富みて吝みなく施すことを得、かくて我らの事により、人々神に感謝するに至るなり。
9:12
編集此の施濟の務は、ただに聖徒の窮乏を補ふのみならず、充ち溢れて神に對する感謝を多からしむ。
9:13
編集即ち彼らは此の務を證據として、汝らがキリストの福音に對する言明に順ふことと、彼らにも凡ての人にも吝みなく施すこととに就きて、神に榮光を歸し、
9:14
編集かつ神の汝らに給ひし優れたる恩惠により、汝らを慕ひて汝等のために祈らん。
9:15
編集言ひ盡しがたき神の賜物につきて感謝す。
第10章
編集10:1
編集汝らに對し面前にては謙だり、離れゐては勇ましき我パウロ、自らキリストの柔和と寛容とをもて汝らに勸む。
10:2
編集我らを肉に從ひて歩むごとく思ふ者あれば、斯かる者に對しては雄々しくせんと思へど、願ふ所は我が汝らに逢ふとき斯く勇ましくせざらん事なり。
10:3
編集我らは肉にありて歩めども、肉に從ひて戰はず。
10:4
編集それ我らの戰爭の武器は肉に屬するにあらず、神の前には城砦を破るほどの能力あり、我等はもろもろの論説を破り、
10:5
編集神の示教に逆ひて建てたる凡ての櫓を毀ち、凡ての念を虜にしてキリストに服はしむ。
10:6
編集且なんぢらの從順の全くならん時、すべての不從順を罰せんと覺悟せり。
10:7
編集汝らは外貌のみを見る、若し人みづからキリストに屬する者と信ぜば、己がキリストに屬する如く、我らも亦キリストに屬する者なることを更に考ふべし。
10:8
編集假令われ汝らを破る爲ならずして建つる爲に、主が我らに賜ひたる權威につきて誇ること稍過ぐとも恥とはならじ。
10:9
編集われ書をもて汝らを嚇すと思はざれ。
10:10
編集彼らは言ふ『その書は重くかつ強し、その逢ふときの容貌は弱く、言は鄙し』と。
10:11
編集斯くのごとき人は思ふべし。我らが離れをる時おくる書の言のごとく、逢ふときの行爲も亦然るを。
10:12
編集我らは己を譽むる人と敢へて竝び、また較ぶる事をせず、彼らは己によりて己を度り、己をもて己に較ぶれば智なき者なり。
10:13
編集我らは範圍を踰えて誇らず、神の我らに分ち賜ひたる範圍にしたがひて誇らん。その範圍は汝らに及べり。
10:14
編集汝らに及ばぬ者のごとく範圍を踰えて身を延すに非ず、キリストの福音を傳へて汝らにまで到れるなり。
10:15
編集我らは己が範圍を踰えて他の人の勞を誇らず、唯なんぢらの信仰の彌増すにより、我らの範圍に循ひて汝らのうちに更に大ならんことを望む。
10:16
編集これ他の人の範圍に既に備りたるものを誇らず、汝らを踰えて外の處に福音を宣傳へん爲なり。
10:17
編集誇る者は主によりて誇るべし。
10:18
編集そは是とせらるるは己を譽むる者にあらず、主の譽め給ふ者なればなり。
第11章
編集11:1
編集願はくは汝等わが少しの愚を忍ばんことを。請ふ我を忍べ。
11:2
編集われ神の熱心をもて汝らを慕ふ、われ汝らを潔き處女として一人の夫なるキリストに献げんとて、之に許嫁したればなり。
11:3
編集されど我が恐るるは、蛇の惡巧によりてエバの惑されし如く、汝らの心害はれてキリストに對する眞心と貞操とを失はん事なり。
11:4
編集もし人きたりて我らの未だ宣べざる他のイエスを宣ぶる時、また汝らが未だ受けざる他の靈を受け、未だ受け容れざる他の福音を受くるときは、汝ら能く之を忍ばん。
11:5
編集我は何事にもかの大使徒たちに劣らずと思ふ。
11:6
編集われ言に拙けれども知識には然らず、凡ての事にて全く之を汝らに顯せり。
11:7
編集われ汝らを高うせんために自己を卑うし、價なくして神の福音を傳へたるは罪なりや。
11:8
編集我は他の教會より奪ひ取り、その俸給をもて汝らに事へたり。
11:9
編集又なんぢらの中に在りて乏しかりしとき、誰をも煩はさず、マケドニヤより來りし兄弟たち我が窮乏を補へり。斯く凡ての事に汝らを煩はすまじと愼みたるが、此の後もなほ愼まん。
11:10
編集我に在るキリストの誠實によりて言ふ、我この誇をアカヤの地方にて阻まるる事あらじ。
11:11
編集これ何故ぞ、汝らを愛せぬに因るか、神は知りたまふ。
11:12
編集我わが行ふ所をなほ行はん、これ機會をうかがふ者の機會を斷ち、彼等をしてその誇る所につき我らの如くならしめん爲なり。
11:13
編集かくの如きは僞使徒また詭計の勞動人にして、己をキリストの使徒に扮へる者どもなり。
11:14
編集これ珍しき事にあらず、サタンも己を光の御使に扮へば、
11:15
編集その役者らが義の役者のごとく扮ふは大事にはあらず、彼等の終局はその業に適ふべし。
11:16
編集われ復いはん、誰も我を愚と思ふな。もし然おもふとも、少しく誇る機を我にも得させん爲に、愚なる者として受け容れよ。
11:17
編集今いふ所は主によりて言ふにあらず、愚なる者として大膽に誇りて言ふなり。
11:18
編集多くの人、肉によりて誇れば、我も誇るべし。
11:19
編集汝らは智き者なれば喜びて愚なる者を忍ぶなり。
11:20
編集人もし汝らを奴隷とすとも、食ひ盡すとも、掠めとるとも、驕るとも、顏を打つとも、汝らは之を忍ぶ。
11:21
編集われ恥ぢて言ふ、我らは弱き者の如くなりき。されど人の雄々しき所は我もまた雄々し、われ愚にも斯く言ふなり。
11:22
編集彼らヘブル人なるか、我も然り、彼らイスラエル人なるか、我も然り、彼らアブラハムの裔なるか、我も然り。
11:23
編集彼らキリストの役者なるか、われ狂へる如く言ふ、我はなほ勝れり。わが勞は更におほく、獄に入れられしこと更に多く、鞭うたれしこと更に夥だしく、死に瀕みたりしこと屡次なりき。
11:24
編集ユダヤ人より四十に一つ足らぬ鞭を受けしこと五度、
11:25
編集笞にて打たれしこと三たび、石にて打たれしこと一たび、破船に遭ひしこと三度にして、一晝夜海にありき。
11:26
編集しばしば旅行して河の難、盜賊の難、同族の難、異邦人の難、市中の難、荒野の難、海上の難、僞兄弟の難にあひ、
11:27
編集勞し、苦しみ、しばしば眠らず、飢ゑ渇き、しばしば斷食し、凍え、裸なりき。
11:28
編集ここに擧げざる事もあるに、なほ日々われに迫る諸教會の心勞あり。
11:29
編集誰か弱りて我弱らざらんや、誰か躓きて我燃えざらんや。
11:30
編集もし誇るべくは、我が弱き所につきて誇らん。
11:31
編集永遠に讃むべき者、すなはち主イエスの神また父は、我が僞らざるを知り給ふ。
11:32
編集ダマスコにてアレタ王の下にある總督、われを捕へんとてダマスコ人の町を守りたれば、
11:33
編集我は籠にて窓より石垣傳ひに縋り下されて其の手を脱れたり。
第12章
編集12:1
編集わが誇るは益なしと雖も止むを得ざるなり、茲に主の顯示と默示とに及ばん。
12:2
編集我はキリストにある一人の人を知る。この人、十四年前に第三の天にまで取去られたり(肉體にてか、われ知らず、肉體を離れてか、われ知らず、神しり給ふ)
12:3
編集われ斯くのごとき人を知る(肉體にてか、肉體の外にてか、われ知らず、神しり給ふ)
12:4
編集かれパラダイスに取去られて、言ひ得ざる言、人の語るまじき言を聞けり。
12:5
編集われ斯くのごとき人のために誇らん、されど我が爲には弱き事のほか誇るまじ。
12:6
編集もし自ら誇るとも我が言ふところ誠實なれば、愚なる者とならじ。されど之を罷めん。恐らくは人の我を見われに聞くところに過ぎて、我を思ふことあらん。
12:7
編集我は我が蒙りたる默示の鴻大なるによりて高ぶることのなからん爲に、肉體に一つの刺を與へらる、即ち高ぶることなからん爲に我を撃つサタンの使なり。
12:8
編集われ之がために三度まで之を去らしめ給はんことを主に求めたるに、
12:9
編集言ひたまふ『わが恩惠なんぢに足れり、わが能力は弱きうちに全うせらるればなり』さればキリストの能力の我を庇はんために、寧ろ大に喜びて我が微弱を誇らん。
12:10
編集この故に我はキリストの爲に微弱・恥辱・艱難・迫害・苦難に遭ふことを喜ぶ、そは我よわき時に強ければなり。
12:11
編集われ汝らに強ひられて愚になれり、我は汝らに譽めらるべかりしなり。我は數ふるに足らぬ者なれども、何事にもかの大使徒たちに劣らざりしなり。
12:12
編集我は徴と不思議と能力ある業とを行ひ、大なる忍耐を用ひて汝等のうちに使徒の徴をなせり。
12:13
編集なんぢら他の教會に何の劣る所かある、唯わが汝らを煩はさざりし事のみならずや、此の不義は請ふ我に恕せ。
12:14
編集視よ、茲に三度なんぢらに到らんとして準備したれど、尚なんぢらを煩はすまじ。我は汝らの所有を求めず、ただ汝らを求む。それ子は親のために貯ふべきにあらず、親は子のために貯ふべきなり。
12:15
編集我は大に喜びて汝らの靈魂のために物を費し、また身をも費さん。我なんぢらを多く愛するによりて、汝ら我を少く愛するか。
12:16
編集或人いはん、我なんぢらを煩はさざりしも、狡猾にして詭計をもて取りしなりと。
12:17
編集然れど我なんぢらに遣しし者のうちの誰によりて汝らを掠めしや。
12:18
編集我テトスを勸めて汝らに遣し、これと共にかの兄弟を遣せり、テトスは汝らを掠めしや。我らは同じ御靈によりて歩み、同じ足跡を蹈みしにあらずや。
12:19
編集汝らは夙くより我等なんぢらに對して辯明すと思ひしならん。されど我らはキリストに在りて神の前にて語る。愛する者よ、これ皆なんぢらの徳を建てん爲なり。
12:20
編集わが到りて汝らを見ん時、わが望の如くならず、汝らが我を見んとき、亦なんぢらの望の如くならざらんことを恐れ、かつ分爭・嫉妬・憤恚・徒黨・誹謗・讒言・驕傲・騷亂などの有らんことを恐る。
12:21
編集また重ねて到らん時、わが神われを汝等のまへにて辱しめ、且おほくの人の、前に罪を犯して行ひし不潔と姦淫と好色とを悔改めざるを悲しましめ給ふことあらん乎と恐る。
第13章
編集13:1
編集今われ三度なんぢらに到らんとす、二三の證人の口によりて凡てのこと慥めらるべし。
13:2
編集われ既に告げたれど、今離れをりて、二度なんぢらに逢ひし時のごとく、前に罪を犯したる者とその他の凡ての人々とに預じめ告ぐ、われ復いたらば決して宥さじ。
13:3
編集汝らはキリストの我にありて語りたまふ證據を求むればなり。キリストは汝らに對ひて弱からず、汝等のうちに強し。
13:4
編集微弱によりて十字架に釘けられ給ひたれど、神の能力によりて生き給へばなり。我らもキリストに在りて弱き者なれど、汝らに向ふ神の能力によりて彼と共に生きん。
13:5
編集なんぢら信仰に居るや否や、みづから試み自ら驗しみよ。汝らみづから知らざらんや、若し棄てらるる者ならずば、イエス・キリストの汝らの中に在す事を、
13:6
編集我は我らの棄てらるる者ならぬを汝らの知らんことを望む。
13:7
編集我らは汝らの少しにても惡を行はざらんことを神に祈る。これ我らの是とせらるるを顯さん爲にあらず、よし我らは棄てらるる者の如くなるとも、汝らの善を行はん爲なり。
13:8
編集我らは眞理に逆ひて能力なく、眞理のためには能力あり。
13:9
編集われら弱くして汝らの強きことを喜ぶ、また之に就きて祈るは、汝らの全くならん事なり。
13:10
編集われ離れ居りて此等のことを書き贈るは、汝らに逢ふとき、主の破る爲ならずして建つる爲に我に賜ひたる權威に隨ひて嚴しくせざらん爲なり。
13:11
編集終に言はん、兄弟よ、汝ら喜べ、全くなれ、慰安を受けよ、心を一つにせよ、睦み親しめ、然らば愛と平和との神なんぢらと偕に在さん。
13:12
編集潔き接吻をもて相互に安否を問へ、
13:13
編集凡ての聖徒なんぢらに安否を問ふ。
13:14
編集願はくは主イエス・キリストの恩惠・神の愛・聖靈の交感、なんぢら凡ての者と偕にあらんことを。