一ぴきの狼が、つかまえたうさぎをモリモリたべているうちに、ひょいと骨をのどに、ひっかけてしまいました。
狼はくるしがって、森中をかけまわりながら、
「この骨をぬいてくれた者には、うんとたくさんのおれいをする。」
と、申しました。
すると一羽の鶴が、おれいをもらいたかったので、
「では私がぬいてあげましょう。」
と、云って、そのながいくちばしを、狼の口のなかへつっこんで、うまく骨をぬきとってやりました。
そこで鶴は、
「さあ狼さん、やくそくのおれいを下さい。」
と、申しますと、やれやれとのどをさすっていた狼は、急に目をむいて、
「何だと、もう一度云ってみろ、この欲ばりめ、きさまはおれの口の中から、無事にそのくちばしをあげられたことを、この上もないおれいだ、とおもわないのか、さっさとにげないと、かみころすぞ。」
と、おどしつけました。