イソップ童話集/太陽と風
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- あるとき、さむい北風と、あたたかな太陽とが、たがいに力じまんをはじめましたが、どちらも、自分の方がえらいと云いはって、いつまでたっても、はてしがありません。
- すると、太陽が、ふと、下の野原をとおって居るたびびとを見つけて、
- 「それじゃ北風さん、ひとつ、あのたびびとのきて居るがいとうを、どっちが早くぬがすか、ためして見ようではありませんか。まず、君からやって見たまえ。」
- と、云いました。
- そこで北風は、
- 「そんなことは何のぞうさもない」
- と、云って、たびびとめがけて、ありったけの力で、ひゅうひゅうふきまくりました。
- ところが、たびびとは、がいとうをぬぐどころか、ふけばふくほどがいとうのえりを立て、しっかりと両手でおさえてしまいました。
- 太陽はそれを見ると、
- 「さあ僕の番だ。よく見て居たまえよ。」
- と、云いながら、雲の間からかおを出して、あたたかい光を、一面に、そそぎかけました。すると、たびびとは、きゅうにあたたかくなったので、ほっとしたように、がいとうをぬぎました。
- 北風は、
- 「まけた、まけた。」
- と、云いながら、とおくへ、にげて行ってしまいました。