イソップ童話集/きつねとつる

もりの中に、きつねとつるが、となりあって、すんで居りました。
ある日、つるは、きつねのうちから、おむかえがきたので、よろこんでたずねて行きますと、きつねは、
「よくいらっしゃいました。なんにもありませんが、どうかたくさんめし上って下さい。」
と、もうしました。
ところが、その御ちそうと云うのは、ひらたいお皿にいれたスープなので、つるのような、ながいくちばしでは、どうしても、すうことができません。
きつねは、
「おや、つるさんはスープはおきらいですか。」
などと云って、さもうまそうに、つるのぶんまで、すっかりたいらげてしまいました。
つるは、なんとかして、かたきをうってやりたいと思い、二三日たって、こんどは、きつねを、自分のうちへよびました。
そうして、ほそながいびんに、肉をいれてだしました。
きつねは、肉がだいすきですから、そのおいしいにおいをかぐと、のどをぐうぐういわせながら、どうにかして、口にいれたいと思いましたが、肉は、ほそながいびんのそこにあるのですから、どうしてもたべることができません。
つるは、そのようすを、さもきみよさそうに見おろしながら、
「こんなおいしい肉がおきらいとは、ざんねんですね、それでは私がいただいてしまいましょう。」
と、さも、おいしそうに、ながいくちばしをつっこんで、みんなたべてしまいました。