はしがき (フランシスコ会訳)

<聖書<旧約聖書 (フランシスコ会訳)<創世記 (フランシスコ会訳)

『聖書創世記 原文校訂による口語訳』
フランシスコ会聖書研究所、
1958年12月発行
『フランシスコ会訳聖書

はしがき 編集

 教皇ピオ十二世は、一九四三年九月三十日に発布された聖書研究の奨励に関する回勅 Divino afflante Spiritu のなかで、「信者のために、また神のことばがよりよく理解されるために、直接原文からの」聖書翻訳を勧めておられます。同教皇がこの少し前の箇所で言われたように、「神感をうけた著者自身によってしるされた原文は、他のいかなる訳本よりも-それが非常によく訳されていても、また古代語訳であろうと近代語訳であろうと-多くの権威と重要性をもつものであります」。また教皇は、「神感によって著者の筆から流れ出たささいな表現をも、最大の注意と敬意をはらってとらえ、著者の意味するところをさらに深く、よりじゅうぶんに理解するようにつとめることは、聖書学者の義務である」とも述べておられます。

 この回勅の精神にしたがい、駐日教皇庁公使マキシミリアン・デ・フルステンベルグ大司教は、フランシスコ会極東総長代理に対し、聖書研究所を設立し、近代における聖書研究の専門的方法ならびにその成果をじゅうぶんに取りいれ、聖書を原語(ヘブライ語、アラム語、ギリシャ語)から、あるいは原文の失われているものに対しては残存する最も古い訳本から、直接に翻訳するように懇請されました。  このことは、一九五五年の全国教区長会議において心からの賛同を得ました。

 本訳は、批判的研究により原典にまでさかのぼろうとするものであり、また同時に、教皇庁公使の指示にしたがい、「すべての人に理解されるように、飾らず、明解な表現と気品ある文体」(一九五六年五月十二日の当研究所の祝別式における教皇庁公使のことば)を用いたものであります。したがって、口語体をとり、原則として「当用漢字」と「現代かなづかい」によって書き表わしました。

 本書は当研究所が訳出しようとする旧新両約聖書の第一の書であります。最終の書の刊行後は、全体を通じて改訂統一し、解説と注を縮小して、手ごろな一冊物の聖書を出すつもりであります。

 言語の慣用法などについて、口頭あるいは書面をもってご教示くださったかたがたに対して、ここに深く感謝の意を表し、また聖書翻訳の道を開かれた諸先輩に対しても、心から敬意を表するものであります。さらにまた、本書の翻訳と出版のために、物心両面においてご援助くださったかたがた、特に本書の後援者および信仰弘布会本部に対して、心から深く謝意と表するしだいであります。

 本訳が神のことばの価値をそこなうことのないように、所員一同は最善の努力を惜しまなかったつもりでありますが、本書に不備な点がないとは申せません。読者各位に神のことばとしての本書を受けいれてくださるようにお願いすると同時に、翻訳上の欠陥についてはご寛容を請うものであります。

一九五八年 聖マリアのご奉献の祝日

 東 京

  フランシスコ会聖書研究所