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さむしろ 作者:不詳
去年(こぞ)の秋、散りし梢(こずゑ)は紅葉(もみぢ)して、今はた峯は有明(ありあけ)の、月日(つきひ)ばかりを数えても、まつに甲斐なき村時雨(むらしぐれ)。時しも分(わ)かずふるからに、色も褪せつついつしかに、我袖(わがそで)のみや変るらん。鳴く音(ね)をそへてきりぎりす、夜半(よは)の枕に告げ渡る。嵐の末の鐘の声、結ばぬ夢も覚めやらで、ただ偲ばるる昔なりけり。
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。