中城越来のおもろ 首里王府の御さうし 万暦四十一年五月廿八日 第二

おもろくさりおろちへが節

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42

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  東方(あがるい)に 向(む)かて
  板門(いちやぢや) 建(た)て直(なお)ちへ
  大国(だくに) 添(おそ)う 中城(なかぐすく)
又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)
  てだが穴(あな)に 向(む)かて

いちやぢやたてなおちへが節

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43

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  おもろくさり 降(お)ろちへ
  降(お)ろちへ 直(なお)しよわちへ
又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)

おもろくさりおろちへが節

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44

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  良(ゆ)かる真男(まいくが)
  のろ子(く)達(た) 集(つ)めて
  名(な)揚(あ)がりよわちへ
又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)

おもろくさりおろちへが節

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45

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  けさや つのひらせ
  今(いみや)は 攻(せ)めて 討(う)たん
  中城(なかぐすく)
又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)

おもろくさりが節

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46

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  月(つき)の数(かず) 夏(なつ)様(や)に
  歓(あま)ゑて 輝(かが)ちよわれ
又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)

おもろくさりが節

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47

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  上(かみ)の 百(もも)ぢやらの
  思(おも)て 想(さう)ぜて 来(こ)うば
  石(いし)と 金(かね)と
  合(あ)わちへす 戻(も[ど])せ
 又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)

あおりやへが節

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48

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  玉(たま)の三(みつ)廻(まわ)り
  廻ちへ 持ちへ
  按司(あぢ)添(おそ)いに みおやせ
又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)

おもろくさりが節

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49

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  泉(いずみ)清水(さうず) 出(い)ぢやちへ
  上下(かみしも)の下司(げす)の
  見(み)ちへど 羨(うらや)み居(よ)る
又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)

あおりやへが節

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50

一 はしかりが おもろ
  玉(たま)よ 揃(そろ)いわちへ
望月(もちづき) 遊(あす)ばす 清(きよ)らや
又 はしかりが 宣(せ)るむ

あおりやへが節

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51

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  玉(たま)の君(きみ) 手(て)摩(づ)て
  よきやのろす
おもろ音(ね)や 取(と)りよわれ
又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)

あおりやへが節

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52

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  泉(いずみ)清水(さうず) 出(い)ぢやちへ
  上下(かみしも)の下司(げす)の
  見(み)ちへど 羨(うらや)み居(よ)る
又 鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)

あおりやへが節

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53

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
  根(ね)国(くに) 在(あ)つる 隼(はやふさ) 
  徳(とく) 大みや
  掛(か)けて 引(ひ)き寄(よ)せれ
又 鳴響(とよ)む 国(くに)の根(ね)
  国(くに)の根(ね)に 在(あ)つる 隼(はやふさ)

くになかのしよりもりぐすくが節

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54

一 聞(きこ)ゑ中城(なかぐすく)
鳴響(とよ)む中城(なかぐすく)
按司(あぢ)数(かず)が 手(て)持(も)ち
中城(なかぐすく) 寄(よ)せれ
聞(きこ)ゑいろめきや
鳴響(とよ)むいろめきや
又 おれづむが 立(た)てば
  若(わか)夏(なつ)が 立(た)てば

しよりまへ((人?))が節

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55

一 よきやのろの
  けはやのろの
  廻(まわ)ちへ 持(も)ちちやる
又 名(な)高(だか)剣(つるぎ)
  押(お)し上(あ)げ剣(つるぎ)
又 中城(ぐすく)腰(こし)当(あ)て杜(もり)に

たいらこしらへが節

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56

一 あまみやよきやのろの
  ゑけ やれ ゑけ
又 しねりやよきのろの
又 御前(まへ) 輝(かゞ)居(お)らに
又御(お)側(そば) 輝(かゞ)居(お)らに

きこへあけしのが節

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57

一 屋宜(やぎ)の金(かな)杜(もり)に
  真(ま)人部(べ)の 拍子(ひやし) 打(う)たば
  君(きみ)も なよら
又 比嘉(ひが)の金(かな)杜(もり)に

きこへあけしのが節

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58

一 屋宜(やぎ)の金(かな)杜(もり)に
あけ加那志(がなし) 手(て)摩(づ)て
世勝(まさ)る見(み)揚(や)がり
誇(ほこ)りよわちへ
又 比嘉(ひが)の金(かな)杜(もり)に

きこへあけしのが節

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59

一 屋宜(やぎ)の金(かな)杜(もり)に
見物(みもの)屏風(みやぶ) 降(お)ろちへ
上下(かみしも)の 見物(みもの)する 清(きよ)らや
又 比嘉(ひが)の金(かな)杜(もり)に

きたたんよのぬしの節

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60

一 屋宜(やぎ)から 上(のぼ)る
  直垂(したたり)や 鎧(よろい)
  誰(たる)が 着(き)ちへ 似(に)せる
按司(あぢ)添(おそ)いてだす
召(め)しよわちへ 似(に)せれ
又 比嘉(ひが)から 上(のぼ)る

中にしのとよみうらか節

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61

一 中城(ぐすく)吉(よし)の浦(うら)
  吉(よし)の浦(うら)の 珍(めづ)らしや
  今日(けよ)から 屡々(しばしば) 見(み)らに
又 屋宜(やぎ)の浦(うら)の 吉(よし)の浦(うら)の

うらおそいおもろの節

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62

一 新垣(あらかき)の根高(ねだか)杜(もり)ぐすく
  てだが 栄(ふさ)よわるぐすく
又 天頂(てにつぎ)の根高(ねだか)杜(もり)

 

うらおそいおもろの節

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63

一 新垣(あらかき)の国(くに)の根(ね)に
  今日(けよ) し居(よ)る 使(つか)い
  百度(もゝと)の 使(つか)い
又 天頂(てにつぎ)の島(しま)の根(ね)に

くになかのしよりもりぐすくが節

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64

一 一(いちよ)の子(し)ぎや おもろ
  一郎子(いちらこ)が 宣(せ)るむ
  後(のち)も 今(みや)も ちよわれ
又 今日(けお)の良(ゆ)かる日(ひ)に
  今日(けお)のきやかる日(ひ)に

くになかのしよりもりぐすくが節

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65

一 安谷屋(あだにや)の若松(わかまつ)
  あはれ若松(わかまつ)
  枝差(よださ)ちへ 浦(うら)添(おそ)う 若松(わかまつ)
又 肝(きも)あぐみの若松(わかまつ)

うらおそいおもろの節

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66

一 安谷屋(あだにや)も 知(し)らたる
  肝(きも)あぐみ 知(し)らたる
  此(こ)の戦(いくさ)せぢ 遣(や)て 戻(もど)せ
又 鬼(おに)の君(きみ) 知(し)らたる
  寄(よ)らせ君(きみ) 知(し)らたる
又 与那覇子(よなはし)ぎや
  へと思(も)いが 刀(かたな)うち

うらおそいおもろの節

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67

一 聞(きこ)ゑ鬼(おに)の君(きみ)
  安谷屋(あだにや)の杜(もり)に
  上下(かみしも)の 十側(とそば)
  揃(そろ)いわちへ
又 鳴響(とよ)む鬼(おに)の君(きみ)
  肝(きも)あぐみの杜(もり)に

御さけやらはが節

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68

一 安谷屋(あだにや)の肝(きも)あぐみの杜(もり)に
  世果報(がほう) 寄(よ)せわる 貴(たゝ)み
又 ぐすくと 貴(たゝ)みと 撓(しな)て
又 貴(たゝ)みと 真(ま)撫(な)です((注))と 撓(しな)て

うらおそい節

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69

一 安谷屋(あだにや)は 根(ね) し遣(や)り
  鬼(おに)の君(きみ) 手(て)摩(づ)て
  世掛(が)けせぢ
  廻(まわ)ちへ 持(ま)ちちへ みおやせ
又 肝(きも)あぐみは 根 根(ね) し遣(や)り
  寄(よ)らせ君(きみ) 手(て)摩(づ)て

あかいんこがふねたてばが節

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70

一 安谷屋(あだにや)の泉(いずみ)清水(さうず)
  百(もゝ)ぢやらの 羨(うらや)も 清水(さうず)
又 肝(きも)あぐみの泉(いずみ)清水(さうず)
    点数(てんかず) 廿七

うらおそいおもろの節

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71

一 越来(ごゑく)杜(もり)ぐすく
  いきよいつな やちよこ((宿子))
  百(もゝ)浦(うら) 添(そ)わる 拍子(ひやし)
  打(う)ちちへ みおやせ
又 あがる杜(もり)ぐすく
又 遣(や)り笠(かさ)の親(おや)のろ

    

うらおそいおもろの節

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72

一 越来(ごゑく)綾庭(あやみや)に
  持(も)ち成(な)ちやる 生(い)け生(い)けしや
雲子(くもこ)真玉(まだま)縄(なわ)
又((注)) 貫(の)ちやる如(ごと)く
又 越来(ごゑく)奇(く)せ庭(みや)に

ねいしまいしの節

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73

一 越来(ごゑく)杜(もり)ぐすく
  御(お)庭(みや)頂(つぢ) 見(み)ちやる
又 あがる杜(もり)ぐすく

うらおそいおもろの節

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74

一 越来(ごゑく)小(こ)照(て)る曲(わ)に
命(ゑのち)伴(とも)添(おそ)いや
あまみきよが たくだる ぐすく
又 見物(みもの)小(こ)照(て)る曲(わ)に

うらおそいおもろの節

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75

一 越来(ごゑく)綾庭(あやみや)に
  金(こがね)木(げ)は 植(う)へて
金(こがね)木(げ)が下
君(きみ)の按司(あぢ)の
しのぐりよわる 清(きよ)らや
又 越来(ごゑく)奇(く)せ庭(みや)に

うらおそいおもろの節

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76

一 越来(ごゑく)小(こ)照(て)る曲(わ)に
命(ゑのち)伴(とも)添(おそ)いや
命(ゑのち)神殿に 使い
又 遣(や)り笠(かさ)の親(おや)のろ

うらおそいおもろの節

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77

一 越来(ごゑく)小(こ)照(て)る曲(わ)に
  あやつぢへに せゝ 栄(はや)せ
又 遣(や)り笠(かさ)の親(おや)のろ

中ぐすくおもろの節

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78

一 越来(ごゑく)世の主(ぬし)の
  真太求(またち)思(よも)い 生(な)しよわちへ
  此(こ)れど 果報(かほう)てだ
  越来(ごゑく)の 有(あ)らぎやめ ちよわれ
又 あがる世の主(ぬし)の

うらおそいおもろの節

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79

一 越来(ごゑく)世の主(ぬし)の
  鷲(わし)の嶺(みね) ちよわちへ
  今(いみや)からど 越来(ごゑく)は
  いみ気(き)や 勝(まさ)る
又 あがる世の主(ぬし)の
  古謝坂(こぢやひら(注)) ちよわちへ

うらおそへ節

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80

一 越来(ごゑく)世の主(ぬし)の
  鷲(わし)の嶺(みね) ちよわちへ
  東(ひが)の海(うみ) 見(み)居(よ)れば
  白波(しらなみ)や
  かなごり 襲(おそ)う様(や)に
又 あがる世の主(ぬし)の

うらおそへ節

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81

一 越来(ごゑく)世の主(ぬし)の
  若司(わかつかさ) 照(て)る日(ひ)おのかなが
  つくせど 寄(よ)り居(よ)る
又 あがる世の主(ぬし)の

うらおそい節

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82

一 越来(ごゑく)世の主(ぬし)の
  鼓(つゞみ)の按司(あぢ)鳴(な)り加那志(がなし) 
報国(ふうくに) 打(う)ち寄(よ)せれ
又 あがる世の主(ぬし)の

あんのつのけたちてだやればが節

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83

一 吾(あん)のつのけたち
  吾(あん)のおやけたち
  越来(ごゑく)のてだ
  頼(たる)です 来(き)ちやれ
又 今日(けお)の良(よ)かる日(ひ)に
 今日(けお)のきやかる日(ひ)に
又 たうたうは 走(は)ちへ
  坂々(ひらひら)は 這(は)うて

うらおそい節

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84

一 越来(ごゑく)杜(もり) 見揚(みやあ)げれば
  吾(あ)が成(な)さが
  ちよわ居(よ)り もちろちへ
  此(こ)が 来(き)居(よ)る 清(きよ)らや
又 あがる杜(もり) 見揚(みやあ)げれば

うらおそい節

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85

一 知花(ちばな)金城(かなぐすく)
  知花(ちばな)石城(いしぐすく)
  百島(もゝしま) まぢうん 石城(いしぐすく)
又 今日(けお)の良(ゆ)かる日(ひ)に
 今日(けお)のきやかる日(ひ)に

うらおそい節

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86

一 知花(ちばな)後嶽(こしだけ)に
  吾(あん)は 神(かみ) 手(て)摩(づ)ら
  神(かみ)や 吾(あん) 守(まぶ)れ
又 知花(ちばな)北嶽(にしだけ)に

うらおそい節

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87

一 池原(いけばる)の按司(あぢ)の
  平田(ひらた) 淀(よど)しよわちへ
  ほつむ杜(もり) 見(み)揚(やあ)げれば
  掛(か)け栄(ふさ)い 世の栄(ふさ)い しよわれ
又 国(くに)の根(ね)の按司(あぢ)の