「スピッツベルゲン」ニ關スル條約

朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ大正九年二月九日佛蘭西國巴里ニ於テ帝國全權委員カ關係各國全權委員ト共ニ署名シタル「スピッツベルゲン」ニ關スル條約ヲ批准シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽
攝政名

大正十四年一月十九日

內閣總理大臣子爵加 藤 髙 明

外務大臣男爵幣原喜重郎

條約第三號

亞米利加合衆國大統領、大不列顚愛蘭聯合王國及大不列顚海外領土皇帝印度皇帝陛下、丁抹國皇帝陛下、佛蘭西共和國大統領、伊太利國皇帝陛下、日本國皇帝陛下、諾威國皇帝陛下、和蘭國皇帝陛下、瑞典國皇帝陛下ハ

諾威國カ熊島ヲ含ム「スピッツベルゲン」群島上ニ主權ヲ有スルコトヲ承認スルト共ニ此等ノ地域ニ於テ其ノ開發ト平和的利用トヲ確保スヘキ衡平ナル制度ノ設ケラルルニ至ルヘキコトヲ希望シ

之カ爲條約ヲ締結スルノ目的ヲ以テ左ノ如ク各其ノ全權委員ヲ任命セリ

亞米利加合衆國大統領

佛蘭西國駐箚亞米利加合衆國特命全權大使「ヒュー、キァムブル、ウォレス」

大不列顚愛蘭聯合王國及大不列顚海外領土皇帝印度皇帝陛下

佛蘭西國駐箚英帝國特命全權大使「ダービー」伯

加奈陀

聯合王國駐在加奈陀辨務長官「サー、ジョージ、ハルシー、パーレー」

濠太利聯邦

聯合王國駐在濠太利辨務長官「アンドリュー、フィッシァー」

新西蘭

聯合王國駐在新西蘭辨務長官「サー、トーマス、マッケンジー」

南阿弗利加聯邦

聯合王國駐在南阿弗利加聯邦辨務長官代理「レジナルド、アンドリュー、ブランケンバーグ」

印度

「ダービー」伯

丁抹國皇帝陛下

佛蘭西國駐箚丁抹國特命全權公使「ヘルマン、アンケル、ベルンホフト」

佛蘭西共和國大統領

伊太利國皇帝陛下

參議院議員「マッジョリーノ、フェラーリス」

日本國皇帝陛下

佛蘭西國駐箚日本國特命全權大使松井慶四郞

諾威國皇帝陛下

佛蘭西國駐箚諾威國特命全權公使男爵「ヴェデル、ヤールスベルグ」

和蘭國皇帝陛下

佛蘭西國駐箚和蘭國特命全權公使「ヨーン、ラウドン」

瑞典國皇帝陛下

佛蘭西國駐箚瑞典國特命全權公使伯爵「エーレンスヴェルド」

右各員ハ其ノ全權委任狀ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ如ク協定セリ

第一條

締約國ハ熊島卽チ「ベーレン、アイランド」ト共ニ綠威東經十度乃至三十五度、北緯七十四度乃至八十一度ノ間ニ存在スル一切ノ島嶼殊ニ西「スピッツベルゲン」島北東島「バーレンツ」島「エッジ」島「ウィッヘ」諸島、希望島卽チ「ホーペン、アイランド」、「プランス、シァール」島竝付屬ノ島嶼及岩礁ヲ包含スル「スピッツベルゲン」群島ニ對スル諾威國ノ完全無缺ナル主權ヲ本條約ノ規定ニ從ヒ承認スルコトニ一致ス(付屬地圖參照[作成者註:同趣旨の地図を、原文において地図が掲載されている箇所に示した])

第二條

一切ノ締約國ノ船舶及國民ハ第一條所揭ノ地域及其ノ領水內ニ於ケル漁獵權ノ行使ヲ均等ニ許容セラルヘシ

諾威國ハ右地域及其ノ領水內ニ於ケル地方動植物ノ保存ヲ及必要アルトキハ其ノ繁殖ヲ確保スルニ適當ナル措置ヲ維持シ、採用シ又ハ命令スルノ權能ヲ有ス尤モ此等ノ措置ハ一切ノ締約國ノ國民ニ常ニ均等ニ適用セラルヘク其ノ中ノ或一國ノ利益ノ爲直接又ハ間接ニ何等ノ免除、特權又ハ恩典ヲ設クヘカラサルモノトス

土地占有者ニシテ第六條第七條ノ規定ニ依リ其ノ權利ヲ承認セラレタルモノハ(一)地方警察規則ノ條件ニ從ヒ住宅、家屋、倉庫、工場及土地開發ノ目的ヲ以テ爲サレタル設備ノ附近ニ於テ(二)企業又ハ開發事業ノ本據ヨリ十吉米ノ圏內ニ於テ其ノ有スル土地ノ上ニ排他的狩獵權ヲ享有スヘシ但シ右孰レノ場合ニ於テモ諾威國政府ノ本條ニ準據シテ制定スル規則ヲ遵守スヘキモノトス

第三條

一切ノ締約國ノ國民ハ事由及目的ノ如何ヲ問ハス第一條所揭ノ地域內ノ水域、峽江及港灣ニ到リ及之ニ寄港スルノ自由ヲ均等ニ有スヘシ右國民ハ當該地方ノ法令規則ヲ遵守スル限リ完全ナル均等ノ基礎ニ於テ海事上、工業上、鑛業上及商業上ノ一切ノ作業ニ何等ノ障礙ヲ受クルコトナク從事スルコトヲ得ヘシ

右國民ハ陸上ニ於テモ領水內ニ於テモ海事上、工業上、鑛業上及商業上ノ一切ノ企業ヲ實行經營スルコトヲ同シク均等條件ノ下ニ許サルヘク企業ノ如何ヲ問ハス獨占權ハ決シテ之ヲ設定スヘカラサルモノトス

沿岸貿易ニ關スル諾威國現行ノ法規ノ如何ニ拘ラス第一條所揭ノ地域ヲ發シ又ハ之ニ向フ締約國船舶ハ右地域ヨリ來タリ若ハ之ニ向フ旅客若ハ貨物ヲ搭載シ若ハ陸揚スル爲ニ又ハ其ノ他ノ目的ノ爲ニ往航復航共諾威國港灣ニ寄港スルノ權利ヲ有スヘシ

一切ノ締約國ノ國民竝其ノ船舶及貨物ハ一切ノ點ニ關シ殊ニ輸出、輸入及通過ニ關シ諾威國ニ於テ最惠國待遇ヲ享受スル國民、船舶及貨物ニ適用セラレサル何等ノ負擔又ハ制限ヲ課セラレルコトナカルヘク諾威國ノ國民竝其ノ船舶及貨物ハ之カ爲他ノ締約國ノモノト同一視セラレ何レノ點ニ付テモ一層ノ優遇ヲ享ケサルヘキモノトス

締約國中ノ或一國ノ領域ニ仕向ケラルル貨物ノ輸出ニ課スル負擔及制限ハ他ノ締約國(諾威國ヲ含ム)又ハ別國ノ領域ニ仕向ケラルル同種ノ貨物ノ輸出ニ課スルモノト異リ又ハ之ヨリ重キモノニ非サルコトヲ要ス

第四條

諾威國政府ノ認許ニ依リ又ハ其ノ經營ノ下ニ第一條所揭ノ地域內ニ既ニ設置セラレ又ハ將來設置セラルヘキ公衆用無線電信局ハ千九百十二年七月五日ノ無線電信條約又ハ同條約ニ代フル爲締結セラルヘキ國際條約ノ定ムル條件ニ從ヒ各國ノ船舶及締約國ノ國民ノ通信ノ爲完全ナル均等ノ基礎ニ於テ常ニ之ヲ公開スルコトヲ要ス

不動産ノ所有者ハ自己ノ用務ノ爲ニ常ニ無線電信裝置ヲ架設利用スルコトヲ得ヘク該無線電信裝置ハ私用ノ爲ニ他ノ固定又ハ移動無線電信局(船舶上及航空機上ニ設ケラレタルモノヲ含ム)ト通信スルノ自由ヲ有スヘシ但シ戰爭狀態ヨリ生スル國際義務ニ從フモノトス

第五條

締約國ハ第一條所揭ノ地域內ニ國際測候所ヲ設置スルノ有益ナルコトヲ承認ス其ノ構成ハ後日ノ條約ニ依リ之ヲ規定スヘシ

右ノ地域內ニ於テ科學的研究ヲ行フノ條件モ亦條約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ

第六條

締約國ノ國民ニ屬スル既得權ハ有效ト認メラルヘシ但シ本條ノ規定ヲ留保ス

本條約署名前ニ於ケル土地ノ占有又ハ先占ニ基ク權利ニ關スル請求ハ本條約附屬書ノ規定ニ從ヒテ處理セラルヘク該附屬書ハ本條約ト同一ノ效力ヲ有スヘシ

第七條

諾威國ハ第一條所揭ノ地域內ニ於ケル所有權(鑛業權ヲ含ム)ノ取得、享有及行使ノ方法ニ關シテハ締約國ノ一切ノ國民ニ對シ完全ナル均等ヲ基礎トシ且本條約ノ規定ニ準據スル待遇ヲ許與スルコトヲ約ス

公用徴收ハ公共ノ利益ヲ目的トシ且正當ナル補償金ノ支拂ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得サルヘシ

第八條

諾威國ハ主トシテ各種ノ稅金、課金又ハ料金竝勞働ノ一般的及特別的條件ノ見地ヨリ締約國(諾威國ヲ含ム)中ノ一國又ハ其ノ國民ノ爲ノ一切ノ特權、獨占權又ハ恩典ヲ排斥シ且各種ノ有給從業員ニ對シ其ノ身體上、道德上及智能上ノ福祉ニ必要ナル給料及保護ノ保障ヲ確保スヘキ鑛業法規ヲ第一條所揭ノ地域ニ付制定スルコトヲ約ス

徴收スヘキ稅金、課金及手數料ハ専ラ右地域內ノ費途ニ供セラルヘク且其ノ目的上正當ト認メラルル限度ヲ超過スルコトヲ得サルヘシ

特ニ鑛物ノ輸出ニ關シテハ諾威國政府ハ輸出稅ヲ設クルノ權能ヲ有スヘシ尤モ該稅ハ十萬以內ニ付テハ輸出鑛物ノ最高價格ノ百分ノ一ヲ超ユルコトヲ得サルヘク其ノ超過噸數ニ付テハ遞減率ニ從フヘシ價格ハ本船積込値段ノ平均ヲ計算シテ航行可能季終了ノ際之ヲ決定スヘシ

諾威國政府ハ鑛業法規ノ草案ヲ同法實施ノ爲定メタル日ヨリ三月前ニ他ノ締約國ニ通知スルコトヲ要ス右ノ期間內ニ其ノ一國又ハ數國カ該規則ノ施行前其ノ修正ヲ爲スコトヲ提議シタルトキハ諾威國政府ハ締約國ノ各一名ノ代表者ヨリ成ル委員會ノ審議決定ニ付スル爲右ノ提議ヲ他ノ締約國ニ通知スヘシ該委員會ハ諾威國政府ニ依リテ招集セラルヘク且其ノ招集ノ日ヨリ三月ノ期間內ニ決定ヲ爲スコトヲ要ス委員會ノ決定ハ表決ノ過半數ニ依ルヘシ

第九條

諾威國ハ其ノ國際聯盟加入ニ基キテ生スル同國ノ權利及義務ニ從フノ外第一條所揭ノ地域內ニ海軍根據地ヲ設置セス及其ノ設置ヲ容認セス且築城ヲ構設セサルコトヲ約ス前記地域ハ戰爭ノ目的ノ爲ニ之ヲ利用スルコトヲ得サルモノトス

第十條

締約國カ露西亞國政府ヲ承認スルノ結果露西亞國ヲシテ本條約ニ加入スルコトヲ得シムルニ至ル迄ノ間露西亞國ノ國民及會社ハ締約國ノ國民ト同一ノ權利ヲ享有スヘシ

右ノ國民及會社カ第一條所揭ノ地域內ニ於テ主張スルコトアルヘキ請求ハ第六條及本條約附屬書ノ定ムル條件ニ從ヒ丁抹國政府ノ仲介ニ由リ提出セラルヘク同政府ハ之カ爲周旋ヲ爲スコトニ同意ス

本條約ハ佛蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ正文トシ批准ヲ要ス

批准書ノ寄託ハ成ルヘク速ニ巴里ニ於テ之ヲ爲スヘシ

政府カ歐羅巴以外ノ地ニ在ル國ハ巴里ニ於ケル自國ノ外交代表者ニ由リ佛蘭西共和國政府ニ對シ單ニ其ノ批准濟ノ旨ヲ通報スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ成ルヘク速ニ批准書ヲ送付スルコトヲ要ス

本條約ハ第八條ノ規定ニ關スル限リ各署名國ノ批准後直ニ實施セラルヘク其ノ他ノ點ニ關シテハ同條ニ規定スル鑛業法規ト同時ニ實施セラルヘシ

第三國ハ正當ニ批准セラレタル本條約ニ對スル加入ヲ佛蘭西共和國政府ニ依リテ招請セラルヘシ右ノ加入ハ佛蘭西國政府宛ノ通吿ニ依リ行ハルヘク同政府ハ之ヲ他ノ締約國ニ通知スヘキモノトス

右證據トシテ前記各全權委員ハ本條約ニ署名ス

千九百二十年二月九日巴里ニ於テ本書二通ヲ作成シ一通ハ之ヲ諾威國政府ニ送付シ一通ハ之ヲ佛蘭西共和國政府ノ記錄ニ寄託保存スヘク本書ノ認證謄本ハ之ヲ各署名國ニ交付スヘシ

ヒュー、シー、ウォレス (印)
ダービー (印)
ジョージ、エッチ、パーレー (印)
アンドリュー、フィッシァー (印)
トーマス、マッケンジー (印)
アール、エー、ブランケンバーグ (印)
ダービー (印)
ハー、アー、ベルンホフト (印)
アー、ミルラン (印)
マッジョリーノ、フェラーリス (印)
松井慶四郞 (印)
ヴェデル、ヤールスベルグ (印)
イェー、ラウドン (印)
ジェー、エーレンスヴェルド (印)

附屬書編集

一 本條約署名前既ニ諸國政府ニ提出セラレタル一切ノ土地ノ請求ハ請求者ノ本國政府ヨリ該請求ノ審理ヲ擔當スル委員ニ對シ本條約實施ノ日ヨリ三月ノ期間內ニ之ヲ通吿スヘシ右委員ハ必要ナル資格ヲ有スル丁抹國民タル裁判官又ハ法律家ニシテ丁抹國政府ノ選任ニ係ルモノタルヘシ

二 該通吿ハ請求地域ノ限界ヲ明確ニスヘク且請求地域ヲ明示スル百萬分ノ一ヲ下ラサル梯尺ノ地圖ヲ之ニ添附スルコトヲ要ス

三 該通吿ト同時ニ請求審理費用支辨ノ爲請求地域一「エーカー」(四十「アール」)ニ付一「片」ノ金額ヲ供託スルコトヲ要ス

四 委員ハ其ノ必要ト認ムル他ノ一切ノ文書、證書又ハ情報ノ提出ヲ請求者ニ求ムルコトヲ得ヘシ

五 委員ハ右通吿アリタル請求ヲ審理スヘク之カ爲其ノ必要ト認ムル専門家ノ助力ヲ受ケ且必要ニ應シ實地調査ヲ行フコトヲ得ヘシ

六 委員ノ報酬ハ丁抹國政府及他ノ關係國政府協議シテ之ヲ定ムヘシ委員ハ其ノ使用ヲ必要ト認ムル補助員ノ報酬ヲ自ラ定ムヘシ

七 請求の審理後委員ハ直ニ承認スヘキモノト認ムル請求ト異議其ノ他ノ事由ノ爲後ニ揭クル仲裁裁判ニ付スヘキモノト認ムル請求トヲ精細ニ記載シタル報吿書ヲ作成スヘク右報吿書ノ謄本ハ該委員之ヲ關係國政府ニ送付スヘシ

八 第三號ニ基ク供託金ノ額カ請求審理費用ヲ支辨スルニ足ラサル場合ニ於テ委員カ當該請求ヲ理由アリト認ムルトキハ右委員ハ請求者ノ拂込ムヘキ追加金額ヲ直ニ指定スヘシ右金額ハ請求者ノ權原カ正當ト認メラレタル土地ノ面積ニ應シテ決定セラルヘシ

第三號ニ基ク供託金ノ額カ前記費用ノ額ヲ超過スルトキハ右差額ハ後ニ揭クル仲裁裁判ノ費用ニ之ヲ充ツヘシ

九 諾威國政府ハ委員カ正當ト認ムル請求ヲ爲シタル請求者ニ對シ當該土地ニ對スル排他的所有權ヲ之ニ確保スヘキ有效ナル權原證書ヲ付與スル爲本節第七號ニ揭クル報吿書ノ日附ヨリ三月ノ期間內ニ必要ナル措置ヲ執ルヘシ尤モ本條約第一條所揭ノ地域內ニ於テ既ニ實施セラレ又ハ將來實施セラルヘキ法令及規則ニ從フヘク且同條約第八條所揭ノ鑛業法規ヲ留保ス

尤モ本節第八號ニ基キ追加金額ノ拂込ヲ必要トスル場合ハ假權原證書ノ付與ニ止ムヘク該證書ハ當該請求者カ諾威國政府ノ定ムル相當ノ期間內ニ右拂込ヲ了シタル時ヨリ確定的ト爲ルモノトス

第一節所揭ノ委員カ論據ノ如何ヲ問ハス理由アリト認メサリシ請求ハ次ノ規定ニ從ヒテ処理セラルヘシ

一 承認セラレサリシ請求ヲ爲シタル請求者ノ本國政府ハ前節第七號ニ揭クル報吿書ノ日附ヨリ三月ノ期間內ニ各一名ノ仲裁裁判官ヲ選任スヘシ

委員ハ斯ク構成セラレタル裁判所ノ裁判長タルヘク可否同數ノ場合ニハ決定權ヲ有スヘシ委員ハ本節第二號ニ揭クル書類ノ受理ト裁判所ノ開廷ニ必要ナル手續ノ執行トヲ擔當スヘキ書記一名ヲ選任スヘシ

二 第一號ニ揭クル書記ノ任命ノ日ヨリ一月ノ期間內ニ請求者ハ其ノ請求ヲ明細ニ記載シタル覺書ヲ各自ノ本國政府ヲ經由シテ右ノ書記ニ送付スヘク該覺書ニハ請求者カ援用セムト欲スルコトアルヘキ文書及論證ヲ添附スヘシ

三 裁判所ハ其ノ付託セラレタル請求ヲ審理スル爲第一號ニ揭クル書記ノ任命ノ日ヨリ二月ノ期間內ニ「コーペンハーゲン」ニ開廷スヘシ

四 裁判所ノ用語ハ英吉利語タルヘシ文書又ハ論證ハ關係當事者ヨリ自國語ヲ以テ裁判所ニ之ヲ提出スルコトヲ得ヘシ但シ常ニ英吉利語ノ譯文ヲ添附スルコトヲ要ス

五 請求者ハ希望ヲ表示スルニ於テハ自身又ハ辯護人ヨリ裁判所ニ意見ヲ陳述スルノ權利ヲ有スヘク裁判所ハ其ノ必要ト認ムル補充的ノ説明書、文書又ハ論證ノ提出ヲ請求者ニ求ムルコトヲ得ヘシ

六 事件ノ辯論開始前ニ於テ裁判所ハ裁判費用中各當事者ノ分擔額ノ支辨ニ必要ト認ムル金額ノ供託又ハ擔保ヲ當事者ニ求ムルコトヲ要ス裁判所ハ右金額ヲ決定スルニ當リテハ主トシテ請求地域ノ面積ヲ基礎トスヘシ尚裁判所ハ特別ノ費用ヲ要スル事件ニ付テハ供託金ノ追加ヲ當事者ニ求ムルコトヲ得ヘシ

七 裁判官ノ報酬額ハ月俸トシ關係國政府之ヲ決定スヘク書記及裁判所ノ使用スル其ノ他ノ人員ノ給料ハ裁判長之ヲ決定スヘシ

八 本附屬書ノ規定ニ從フノ外裁判所ハ自ラ其ノ手續ヲ定ムル充分ナル權能ヲ有スヘシ

九 裁判所ハ請求ノ審理ニ當リ左ノ點ニ付考量スルコトヲ要ス

(イ) 適用シ得ヘキ國際法ノ法規

(ロ) 正義及衡平ノ一般原則

(ハ) 左ノ事情

(一) 請求ノ土地カ請求者又ハ其ノ前主ニ依リ最初ニ占有セラレタル日

(二) 請求カ請求者ノ本國政府ニ通吿セラレタル日

(三) 請求者又ハ其ノ前主カ右請求ノ土地ヲ開發經營セル程度右ニ關シ裁判所ハ千九百十四年乃至千九百十九年ノ戰爭狀態ニ基キ請求者カ其ノ事業ノ遂行ヲ妨ケラルルニ至リタル事情又ハ制限ヲ參酌スルコトヲ要ス

十 裁判ノ一切ノ費用ハ裁判所ノ定ムル割合ニ從ヒ請求者間ニ分擔セシメラルヘシ第六號ノ規定ニ依ル供託金ノ額カ裁判費用ノ額ヲ超過スルトキハ其ノ差額ハ請求ノ承認ヲ受ケタル當事者ニ對シ裁判所ノ衡平ト認ムル割合ニ從ヒ還付セラルヘシ

十一 裁判所ハ其ノ判定ヲ關係國政府ニ及一切ノ場合ニ於テ諾威國政府ニ通知スヘシ

諾威國政府ハ裁判所ニ依リ請求ノ承認ヲ受ケタル請求者ニ對シ判定受領後三月ノ期間內ニ有效ナル權原證書ヲ付與スル爲必要ナル措置ヲ執ルヘシ尤モ本條約第一條所揭ノ地域內ニ於テ既ニ實施セラレ又ハ將來實施セラルヘキ法令及規則ニ從フヘク且同條約第八條所揭ノ鑛業法規ヲ留保ス該權原證書ハ又請求者カ裁判費用中自己ノ負擔部分ヲ諾威國政府ノ定ムル相當ノ期間內ニ拂込タル後ニ非サレハ確定的ト爲ルコトナカルヘシ

第一節第一條ニ從ヒ委員ニ通吿セラレサリシ請求又ハ委員ノ承認ヲ得ス第二節ニ從ヒ裁判所ニ付託セラレサリシ請求ハ終局的ニ消滅シタルモノト看做サルヘシ
 
SPITSBERG
スピッツベルゲン
Bjørnøya = 熊島; Spitsbergen = 西スピッツベルゲン島; Nordaustlandet = 北東島; Barentsøya = バーレンツ; Edgeøya = エッジ島; Kong Karls Land = ウィッヘ諸島; Hopen = 希望島; Prins Karls Forland = プランス、シャール島
[作成者註:表題および各島の日本語名は原典の地図のまま]

(仏文、英文略)

 

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。