し諸種の器物が、北海道の到る處に發掘せらるゝこと等、皆「アイヌ」が舊來北海道に土着せしことを證明せり。されば北海道「アイヌ」は、本州より渡り來りたるものにあらずして、本州アイヌこそ北海道より分れて蔓延したるものと云ふべけれ。北海道は往昔渡島と稱し、渡島蝦夷の名は、阿倍比羅夫北征の時、始めて史上に見ゆと雖も、其の此處に住居せしは、其れよりも尙ほ甚だ古き事にして、北海道は「アイヌ」の最初よりの根據地たりしものゝ如し。
アイヌの傳說に據れば、往古此の地に「コロボックンクル」と稱するものあり。極めて矮小なる穴居人種、若くは神にして、アイヌ族