花も雪も払えば清き袂かな、ほんに昔の事よ、我待つ人も吾を待ちけん。鴛鴦をし雄鳥をとりに物思ひ羽の、凍るふすまに鳴く音はぞな。さなきだに、心も遠き夜半よはの鐘、聞くも淋しき独り寝の、枕に響く霞の音も、しやいつそ堰きかねて、落つる涙のつららより、辛き生命いのちは惜しからねども、恋しき人は罪深く、思はんことの悲しさに、捨てた憂き、捨てた浮世の山かづら。


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  • 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』下、武蔵野書院、1975年。

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