君が為め、春の野に出でて若菜摘む、我が衣手に雪は降りつつ。
春過ぎて、夏来にけらし白妙しろたへの、衣ほすてふあま香具山かぐやま
三芳野みよしのの、山の秋風小夜さよふけて、古郷ふるさと寒く衣打つなり。
秋の田の、かりほのいほとまをあらみ、わが衣手は露にぬれつつ。
きりぎりす、鳴くや霜夜の狭筵さむしろに衣片敷き独りかも寝ん。


  • 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』下、武蔵野書院、1975年。

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。